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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
青年期

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ソースの魔道具

 食堂の調理人にソースの開発を行っていく事で合意を得る中、オールセンから連絡が入ったので会いに行くことにした。

 工作室で一人作業を行っているオールセンへと話しかける。


「連絡ありがとう。整理はついたかな?」

「……分から、ない。分からない、だけど、負けたまま、約束を破るのもダ、ダメ、だと」

「なるほど。僕に魔法を教えるという話を覚えていてくれたんだね」


 などと言ってみたが、あまり丁寧な対応をするとかえってバカにしている様にも聞こえるか。


「では勝者の特権として、まずは僕が教えてもらおうか」


 俺はまず食堂の調理人とソースを作る話をして、そのソースを作る魔道具を作りたいという話を振る。

 元々は基礎的な部分を教えてもらおうかと考えていたが、明確な目標があった方がやりやすいだろう。


「そ、ソース?」

「ああ。食堂の食事って貴族的というか、味が濃く、刺激的な物が多いだろ。もっと味にバリエーションが欲しかったんだよ」

「ば、バリエーション?」


 論より証拠とばかりに、ソースの小皿を空間収納から取り出していく。


「これが胡麻ダレ、こっちがタルタルソース、このポン酢はちょっと酸味が強い、でケチャップ」


 食堂で出てくるソースは基本辛みの強いチリソースみたいなのだけ。辛さに段階がある程度、後はカレー風味というか、香草などで後味に差がついてる程度。

 辛子やわさびも薬味として存在している。


 俺はフライドポテトを取り出して、それぞれのソースを試してもらう。


「うっ……このポン酢、ダメ……」

「まあ、あんまりポテトにポン酢は使わないな」


 ポン酢といっても醤油が手に入らなかったので、酢や柑橘果汁、みりんや塩などで味を整えたものだが。

 胡麻ダレも味噌や醤油の代わりに塩やチーズなどを入れたやや洋風のタレになっている。まあ、この世界で和洋の区別もないのだが。


「ケチャップは、いい」

「定番だからな」


 チリソースにも含まれているから似たようなレシピは魔道具にもあるかもしれない。ただ魔道具で料理を作るようになって、それなりの年月が過ぎ、素材から作るというよりも、そういう味を作るという術式に変わっていっているので、ケチャップ部分だけを抜き出すというのは無理かもしれない。


「じゃあ、ケチャップソースの魔道具を作っていってみよう」

「わ、分かった」

「それでどんな情報が必要かな?」

「ええっと……」


 魔道具を作るというのは、術式を魔法陣に置き換えて、物に刻むという工程を踏む。

 今回はケチャップを作るという術式すらない所からのスタート。まずは術式を作らなければならない。


「作業工程、使う素材」


 ケチャップのベースとなるのは、トマトだ。この世界でも似たような果実はあるので、その中からあまり甘すぎない品種を煮込む。果実の時点で甘いと味のバランスを取るのが難しく、鍋で焦げつきやすかったりと、問題があるからだ。

 その後、塩や酢、スパイスなどで味を整えていく。俺が今回目指すのは、今までにないソースなので、甘めに仕上げたいので玉ねぎなどを炒めて多めに入れていた。


 ざっくりと作業手順を伝え、そこで使用した素材も書き出していく。

 ソースレベルの分量であれば、術式に錬成術を混ぜて、別の素材を変換しつつ味を均一にするなどの手法も取れる。

 これを肉や野菜丸ごと料理を錬成するとなると、消費魔力が膨大になり、一食作るのにビル一個を稼働させる魔力を消費するとか、効率が悪くなる。

 なので基本的には、素材を用意して、それを料理する魔道具を使うのだ。


「どこを、魔道具に、するの?」

「できれば材料は、その時々で変えたいから、煮込んで味を整える部分かな」

「それくらいなら、難しくない」


 そう言ってのけるオールセン。料理の術式は少なく、既存の物をアレンジといっても簡単ではなさそうなんだが。


「工程、録画する」

「眼の前で作れってことだね。わかった。厨房を借りようか」

「ここでいい」


 そう言ってオールセンは、マジックバッグから携帯コンロを取り出す。マジックバッグは俺が良く使ってる空間収納の魔道具だ。

 合わせて卓上換気扇も用意している。風の精霊によって、煙を吸い込み、匂いまで除去した空気を生み出すらしい。

 さらに録画用の機材や各種センサーをセッティングしていく。俺はケチャップの試作するのに用意したトマトや玉ねぎ、調味料などを用意していく。


 まずはトマトを細かく切って加熱し、ヘラで押しつぶしながら煮込む。ザルで濾してきめ細かくしてからじっくりと煮込んでいく。

 そこへ玉ねぎを飴色になるまで炒めて、すりおろしたニンニクや少量の赤唐辛子などと煮込む。

 その他、酢にシナモンなどの香草を入れて少し加熱して溶かし込む。


 それらを合わせてじっくりと煮込んでいくと、水気が減って粘性が出始めた辺りでできあがりだ。


「ま、こんなところだな。味も悪くないだろ」

「はい、良いと、思います」


 そう言いながら、オールセンはセンサー類をチェックしていく。各魔力の数値から、温度などを確認し、何をどれくらい熱すれば良いか、かき混ぜる具合など、細かくメモをとっていた。


「思った、より、シンプルでした。これ、なら、工程は、再現できる」

「ほう。術式から組み立てられるのか?」

「は、はい。というか、料理用魔道具の術式が、かなり使え、ます」


 料理自体を魔法で作る術式を知らないので、魔道具の術式となると全く分からない。オールセンが言うには、バラして魔法陣を見たらわかるらしいが、必要な魔法陣を探すだけで大変だろう。

 料理用魔道具は、焼く、蒸す、煮るなどの火加減調整だけでいくつもの術式が必要だ。素材を入れるだけで料理を作れるように、様々な工程を段取り良く進めていくには、統括制御する術式もあるだろうし、それを読み解くのは今の俺にはできなかった。


「まず火力を素材に伝える術式は……」


 サラサラとメモ用紙に術式を書いていく。火の魔力を使う陣だとはわかるが、武器などの魔法陣に比べると術式が細かい。単に攻撃するだけの武器と違って、やり過ぎれば炭になり、生焼けでも困る。片面だけ焼けてもダメだし、中まで火が通ってないのもまずい。

 武器などを作るより、料理用魔道具の方が、繊細で複雑な機構が必要だった。


 それをメモ用紙に次々と書いていくオールセンの頭には、どれだけの術式が詰まっているのか。刷り込み学習で刻まれた俺なんかより、もっと多くの術式を覚えているとしか思えない。


「魔力量の調整や制御に、必要な術式には、パターンがある。それを、踏まえれば、そんなに、覚えなくていい」

「そうは言っても……」

「ボクは、昔から、色々な魔道具を分解して、共通点を探して、きたから」


 その声には自信が感じられた。好きこそものの上手なれじゃないだろうが、やはり興味のある事をずっと続けていれば力になっていくのだろう。


「なるほど……じゃあ、その術式を教えてもらって良いかな?」

「う、うん」


 火の術式を中心に、火力を調整したり、時間を決めたり、素材の状況を調べるセンサー類や魔力の制御など、魔法としての術式と魔法陣に落とし込んだ時の図形を対比しながら教えてくれた。

 脳裏にある術式と比較して、その式の意味も理解できていく。


 また魔法陣を作る際に、魔力のロスを抑えるために式同士を近づける部分と干渉を避けるためにスペースが必要な箇所などは、魔法の術式にも当てはまる部分があり、今までロスさせていた部分を有効に利用できそうだ。


 そして改めてオールセンの魔法の知識量に圧倒される。魔力量が低いために魔道具に頼ってるとの事だが、魔力量さえあれば魔術師としての力量もかなり高かっただろう。

 ただ本人としては、パズルを組み立てる感覚で魔法陣をこねくり回し、理想の魔道具を作り上げるのが楽しいらしく、俺の依頼したケチャップ作成魔道具もしっかりと仕上げてくれた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 警戒度下がってそう。 ただでさえ強いやつに自分の強みを持ってかれたらめちゃくちゃきついはずだったのに。
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