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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
王国編

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集団任務への準備

 思ったよりも傭兵としての実績が赤点だったために、修理費用の捻出に苦心しそうな状況に陥る。今度の集団任務で実績を上げるのが必須だと言えた。

 修理工房から提示されたのは、海賊のお宝が積まれたコンテナ船の確保だが、それだとかなり無理をするしドヴェルグ星系の傭兵に喧嘩を売ることになってしまう。

 俺は平和を愛するんだよ、諍いなんて起こしたくはない。


「という事で海賊船を拿捕して部品を集めようかと思うのですが」


 港に停泊している小型宇宙船へと戻った俺はアイネ達に相談する。


「要は爆発しないように海賊船を壊せばいいんだな。推進装置だけを破壊する感じで」

「それはそうなんだが、宇宙船の砲だと紙装甲の海賊船はあっさり爆発しちゃうんだよ」

「なら砲を使わなきゃいいんじゃね?」ほらこの前使いそびれたスリングみたいなので石をぶつけるとか」

「ん?」

「術式だと、威力が強すぎるって事だろ。なら弱い攻撃を当てればいいじゃん」


 つまり光術式などを使わず、物理的にダメージを与えろと。本来なら高速で移動する宇宙船は、小さなゴミなどにぶつかってもダメージを受けるため、ある程度の防御結界を張っている。

 しかし海賊船は防御結界を極限まで薄くして消費魔力を減らし、その分機動力に割り振るセッティングとなっていた。

 全くのゼロだとビス一本に当たっても致命傷になりかねないので、多少なりとは防御結界を張っているとは思うが、普通の戦闘機ほどではないという事か。


「しかし術式の砲なら光速で弾が飛ぶが、物理的に弾を飛ばすと速度がかなり遅いぞ?」


 見えると同時に当たる光と物を撃ち出す弾では速度が全く違う。宇宙船の戦闘速度であれば、わずかに舵を切るだけで1秒、2秒で船の何十倍ものズレを生む。

 戦闘で回避機動中だと先読みで当てるなど至難の技となる。


「兄ちゃんが近づけてくれたら、俺が仕留めるさ」


 テッドは簡単に言ってのけた。しかし、散弾をばら撒けば命中率を上げることはできるが、それだと撃墜してしまい実弾を使う意味がなくなる。

 狙撃の精度で推進部を狙うなどできるのだろうか。


「少しシミュレーションで試してみるか」


 幸いにも定期的に行われる海賊討伐。船のスペックデータは傭兵ギルドに揃っている。それを使ってシミュレーターを設定する事はできた。




 集団任務までの2日をテッドとのシミュレーターで過ごしたのだが、テッドはアレか、新人類って奴なのか。

 海賊船はランダムに回避機動を取っているのに、一定距離まで近づくと的確に推進部やコックピットを撃ち抜いて無力化していく。

 本人曰く、移動先が見えるんだとか。


 俺はシミュレーターでは魔力感知で相手を捉えられない分、やや遅れて海賊船についていくのが精一杯。小型宇宙船のスペックに頼って距離を詰めるのに必死だった。操船判定としてはBランク評価なのに、テッドの射撃によりトータルはAランクになっていた。


「何にせよ、海賊船を無力化する目処はたったな」


 後は回収して集めれば、それなりの収入になるだろう。海賊船相手に高機動戦を仕掛けないといけないので、アイネの魔導騎士を運ぶことはできない。テッドが仕留めた海賊船をアイネに集めて貰うことになった。

 回収した海賊船は開拓船フロンティアラインの格納庫に積んでいく。そんな計画プランだ。




 集団任務へと参加する。主要な傭兵団を集めてブリーフィングが行われ、それぞれの受け持ちエリアが決められたらしい。

 俺達に割り振られたのは海賊の隠れ家と思われる小惑星帯からかなり離れた外縁ゾーン。逃げ出した海賊達をできるだけ叩けというのが役割だ。


 ただ拠点となってる箇所から四方八方へと逃げていく訳で、外へと距離が出るほど海賊船の密度は減っていく。

 それは戦力的に小さな個人や小規模の傭兵団にとっては危険が薄まり、狩る側を維持できるという事になる。

 しかし、稼ごうと思うと敵が分散して仕留めにくい状況になっていく。


「リリアの索敵能力に稼ぎが掛かっているな」

『任せてよユーゴ兄』


 テッドもそうだがリリアの宙域を見渡しての観察眼は新人類の領域だろう。幼い頃から実践してきた影響なのか。暗い宇宙に光る星々、その中から近距離を飛ぶ宇宙船の推進部スラスター光を見つけるのは、かなりの根気とセンスが求められる。

 それがチームの中で最も優れているのがリリアだった。


 リリアがレーダーで見つけた宇宙船にタグを打ち、そこへ俺が急行してテッドが仕留める。その残骸をアイネが回収し、開拓船の格納庫へと収める。

 ざっくりとそんな算段でこの任務にあたっていた。周囲には個人で任務にあたっている傭兵達がそれぞれに縄張りを主張しつつ存在する。


 個人の傭兵は前線で網を張る大手傭兵団と提携して、前線でタグ付けされた海賊船の情報を融通してもらうようだ。撃破した時の報酬の何%かを上納する形だな。

 大手としては情報を撒いた先の誰が撃破しても構わないのでかなりの数と提携している。個人傭兵としては自分が狩らないと報酬にならないので、他の傭兵より先んじようと前のめりになりがちだ。

 なので戦域を統制する管制官が配されていて、担当宙域から離れすぎると警告される様な仕組みができていた。


「効率がいいのか悪いのか」


 軍の様に指揮系統を一本化して与えられた役割を徹底する方が効率は良さそうだが、個々の兵装から操船、射撃技術までピンキリの傭兵は思わぬ戦果を上げることもある。

 税金で賄える軍人の数は限られる以上、傭兵を使う方が安上がりなのも確かで、それぞれが妥協したのが現状のシステムなんだろう。


「さて、始まった様だな」


 宙域に対して一斉に情報が飛ばされてきた。拠点から飛び出してきた海賊船が包囲の外縁部まで来るにはまだしばらくは掛かるだろう。

 リリアは遠方の宙域を睨みつつ、飛び交う情報を拾い、迎撃地点までやってくるタイミングを測ってくれる。


「一番長丁場になるのはリリアだからな。最初から飛ばしすぎるなよ」

『分かってるって』



 海賊がねぐらとして使用している小惑星帯。コボルト狩りで利用していた場所と雰囲気としては大差ない。

 そこには人為的に隠された砲台などもあり、中に入っての戦闘は危険だ。そのため周辺に展開した大型艦、傭兵団の母船からの砲撃で怪しい所へと一斉に攻撃が開始される。


 しかし海賊の基地には恒星からの光魔力を利用した防御結界が張られているので、それだけでは有効打とはなり得ない。蓄えられた魔力量も戦艦に比しても多いので、魔力枯渇を期待するのも難しい。

 艦砲射撃の役割は、そうした防御結界がどの区画に張られているのかをあぶり出す事だ。


 場所を確定したら戦闘機による突入が開始される。無人機を先に飛ばして小惑星に隠された砲台を見つけつつ、後続の有人機が撃破を重ねていく。

 無人機は反射能力に優れるものの欺瞞に弱い部分がある。魔力が遮断されてレーダーに映っていなかったり、小惑星の表面をカモフラージュされていると前もって発見するというのができない。

 あくまで撃たれた後での対応となる。


 しかし有能なパイロットは、ある種の勘に優れていて、怪しいと思う場所を何となく察することができた。それが長年に渡って蓄積された対海賊戦の経験なのか、人として備えた危機感知能力なのかは分からない。

 相手から撃たれる前に怪しい所を撃ち抜き、結果として砲台を減らしていく。


 そうした前哨戦から海賊狩りは始まる。

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