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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
王国編

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ドヴェルグ星系の修理工房

 次の集団任務にエントリーしてから開拓船の修理を依頼しに、傭兵ギルドで聞いたドヴェルグの修理工房へ向かう。ステーションの港近くに管理事務所があるらしい。普段は寄港船の修理、整備を行っているそうな。


「大型船の修理を依頼したいんだが」


 俺は受付嬢に来店した用件を伝える。ドヴェルグ星系の人は皆小柄……というには厚みがある……で、この受付嬢も130cmほどのようだ。受付カウンターも低めに作ってあるので、俺達が使うには座らないと高さが合わない。


「ではこちらに記入と資料があれば添付をお願いします」


 艦名や停泊座標を記す用紙に、添付画像として船の外観や内面図などの資料があれば欲しいとの事。


「こちら予約を入れまして、弊社の社員が内見に伺い、見積もりを出させて頂きます」


 といった流れの説明に前世の役所手続きを思い出す。型通りに進められると、何となく怖い。


「ちょっと待ってくれ。資金についての相談もあるんだが……」

「何でしょう?」

「今、手持ちがなくてな。開拓船を担保に修理を進めて欲しいんだが」

「少々お待ちください……はい、はい、ではそちらに……お待たせしました。金融部門へ案内いたします」


 途中、小声でどこかとやり取りしていた様だが、資金面で相談する専門の部署があるようだ。傭兵家業は収入が不安定だが、船の修理や部品は高額。現金一括が基本としても、そればかりでは成り立たない部分もあるのだろう。

 金欠者向けの専門の金融部門があるらしい。


「ようこそいらっしゃいました。金融部門を担当しておりますトルネオと申します」


 トルネオと名乗った男はドヴェルグ人で恰幅がよく、温和そうな口ひげを生やした男だった。


「まずはお客様の傭兵ギルドカードを確認させていただけますでしょうか」


 その目は笑っているようでどこか鋭さを感じさせる商人の目だった。この世界の傭兵達は乱暴者という感じではないが、それでも命で稼いでいる奴ら。それらと相対する金融部門、金貸しだ。表向きは柔和でも、その査定眼は厳しそうだ。


「ふむふむ、そこまでの暦ではないようで。帝国から王国経由でドヴェルグへと……ふむふむ」


 ギルドカードを使用すると、各星系での仕事の履歴が確認できる。報酬の詳細はないが、どれくらいの規模の任務をこなしたかが分かるようになっていた。


「これは……ふむ……うう〜ん」


 男は眉間にシワを寄せながら考えてから口を開く。


「この戦績で融資は厳しいですね」

「え……?」

「任務はあまり受けておられませんし、帝国の護衛任務は失敗。コボルト星系でも評価が悪い」


 護衛任務が失敗?

 思わず履歴を確認した所、魔石の輸送船を警護していたが、戦線の離脱により任務が失敗扱いになっていた。

 巡洋艦相手に大立ち回りしたという結果は任務外なので、護衛していた船から離れて行動して任務失敗という評価になっている。


 コボルト星系の方は軍から指名手配がなされていて、星系外へと逃亡となっており、コボルト狩りの仕方を教えた件は、内密にする代わりに魔導騎士を受け取っていたので、カードへの記載がなかった。

 つまり傭兵としては失格レベルで失敗続きという履歴になっている。


「開拓船の方もかなり古くて故障だらけ。実物を見ないと最終判断はできませんが、これを担保にというのは厳しい。こちらの船や魔導騎士なら値は付けられますが……使用予定がありますね?」


 小型宇宙船や魔導騎士は今度の集団任務で使う予定だ。海賊相手で有利な状況とは言え、戦地に赴くならそれを担保に金を借りるなんてことはできない。

 帰ってこなかったら借金だけ残るからな。


「まあ、こちらも鬼ではないですから、2日後の集団任務の結果が出てからの商談といたしましょう。そこで一定の戦果を上げるようなら、支払い能力があるとして融資いたしますよ」


 親身になって相談を受けてるていだが、実質はかなり足元を見てくる態度だ。傭兵相手に長年やり取りしてきた面の皮の厚みを感じさせる威圧感がある。


「なぁに、コンテナ船の1つも押さえてくれれば大丈夫です」


 さも簡単な様に言っているが、集団任務に参加する傭兵がこぞって狙うコンテナ船を押さえると言うのは至難の技だ。ギルドカードの履歴を見てできっこないと踏んでいる。そんな雰囲気があった。


「ご活躍を期待していますよ」




 他の修理工房にも寄ってみたが、傭兵が現金もなしに掛け合える所はなかった。世の中、物を言うのはかねである。


「集団任務でコンテナ船を狙う……か」


 集団任務は海賊の拠点と見られる宙域を包囲して殲滅するのが任務だ。小惑星帯のような身を潜められる場所に作られた基地を攻撃する予定。

 襲撃を悟った海賊は、基地を放棄して物資を満載にしたコンテナ船を守りながら移動する。海賊側の抵抗は激しいし、味方のはずの傭兵が競争相手となる。共闘から出し抜く輩が出始めると、戦場は混沌とするのが見えていた。


 データバンクをあたってみると、過去にコンテナ船を巡って争った記録がたくさん出てきていた。稼ぎの桁が大きく変わるからな。

 基本的には大手の傭兵団が手を付けて占有を宣言したら決着なのだが、それまでに足の引っ張り合いが発生する。

 弱小どころか個人経営的な傭兵団が漁夫の利をかすめ取る様な事をして、大手に目を付けられる展開になれば、コボルト星系の二の舞だ。


「コンテナ船を狙うのはどう考えても悪手なんだよなぁ」


 そもそもコンテナ船は海賊達の稼ぎの結晶。激しい攻防が展開されるので、流れ弾も飛び交う戦場となっている。単艦でコンテナ船を押さえたと主張した所で、流れ弾と称してフレンドリーファイアに晒される危険すらある。


「要は稼げれば良いんだからコンテナ船に拘るのは悪手だ……が、どうすればよいか」



 この世界の海賊戦は、小型戦闘機タイプの海賊船とのドッグファイトだ。機動力重視で紙装甲。防御結界すらまともに積まずに、機動力に魔力を割振ってる様な船。

 これを攻撃するなら弾幕を張っての直撃狙いや、きっちり背後を取っての狙い撃ち。何にせよ、当たりさえすれば撃墜できる。

 撃墜スコアは船に搭載されている録画機器やレーダーで捉えた履歴などからの算出だ。


 撃破された戦闘機は光術式を当てられた事による加熱、魔力炉のオーバーロードでの自壊といった形で原型を留める事もなく砕け散る。回収できる物は何も無い。

 とはいえ小型戦闘機、魔力炉も積んでいれば武装もしている。回収できれば金になるのではなかろうか。特にこの星系の海賊は装備が充実しているみたいだし。


「しかし高機動で動き回る敵を捕まえるなんてできないからこその撃破だし」


 光術式は光速で飛ぶ。相手に対して直線的な射線を確保できれば当てられる。なので避ける方はロックオンされないように逃げ回る。ホーミング系の術式となると弾速が遅くなるので、急旋回したり囮を撒いたりで回避できる。

 当たれば墜ちる。当たらなければどうということもない。


「捕獲できる近距離戦に持ち込めれば魔導騎士で捕まえられる……のか?」


 王国軍の戦闘機相手にやった宇宙船から魔導騎士を吊るしての戦闘。ハンマーを撃破に使わず、飛行能力を奪うだけに留められたら捕まえられるか?

 一番の問題は、王国軍はこちらを撃破するつもりで襲ってきたが、海賊船は逃げるのが目的という点だ。

 魔導騎士を吊るした状態だと、宇宙船の機動力は落ちる。逃げ回る海賊船に追いつくのは難しいだろう。


「海賊船を捕まえるというのは無理筋なのか……」

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