表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/195

船内の制圧

 ふとアイネの方を見てみると、じっと立っているだけだった。相手の方は宙に浮いた状態で睨み合いになっている。

 術式阻害の魔道具の効果範囲外に誘おうとしているのかとも思ったが、アイネの立ち位置はそこまでギリギリの位置でもない。ならば相手が動かない理由は何か。

 それを探ってる暇が俺にはなかった。形勢有利と判断した相手が迫ってくる。こっちは左腕を使えないが、相手はグルグルと肩を回してやれるぜアピール。


「術式が使えないと雑魚と思われるのは心外だ」


 俺の方からも床を蹴り、正面の男へと向かう。

 掴みかかってきた男に対して、その脇をすり抜ける様に身を捻る。ただ進路自体は動かないので腰の辺りを掴まれた。上半身が相手の背中側へと抜けた状態から体を畳んで相手を挟む。

 相手は俺の腰をホールドした状態で勢いを回転に変えながら壁へと迫っていく。回転の速度を調整するのは難しいが、腰の位置で壁に当たる瞬間に頭が当たるように調整できるのだろう。


 それに対して俺は膝を相手の腹へと添えながら、相手の背中へと肘を叩きつける。筋肉に鎧われた背中には生半可な打撃は通じない。背骨を狙って的確に振り下ろす必要があった。

 迫る壁を意識しないようにより強く、ピンポイントで何度も肘を打ち付ける。


『ガッ』


 ヘルメットごしに聞こえた声にクリティカルな手応えを感じ、少し緩んだ腕から抜け出し背後に回る。完全に背面に回ってしまえば首に腕を回して……。


「いてぇっ」


 左肘が砕けていたのを痛みを感じてから思い出す。しかしこの体勢から緩めるなんてできない。左腕をヘルメットの下へと滑り込ませ、右腕でキリキリと絞り上げていく。筋肉マッチョな身体は肩の可動域が狭く、背後に回った俺を掴んでも力が入れられない。

 何度か壁へと当たるが、単に当たるだけならそれほどの衝撃もなく跳ね返るだけだ。

 後は痛みに耐えて締め上げていけば……抵抗する力が抜けて絞め落とせた。




 その瞬間、周囲の術式を無効化する魔道具が切られたのを感じる。次にやってくるのは、銃による集中砲火か。俺が絞め落とした男は無視した攻撃だな。

 しかし、その手は悪手だ。

 俺はマッチョの体を盾にしながら左肘を治癒術式で治し、防御結界を再構築する。

 アイネも宙にとどまったままの相手を盾に同様に体勢を整えて突っ込む。


 バリケードへと到達したら、後は至近からのスタン術式で兵士を無力化していく。

 残っていた最後のマッチョ兵は、術式で熱した両手持ちの斧を振り回して来たが、術式ありの状態ならでかい的でしかない。

 斧の間合いの外からスタン術式をぶつけて終了だった。


 ただその間に機関室へ飛び込んだ奴がいた。追いかけると魔力炉に何かを仕掛けようとしている。船の価値を諦めて吹き飛ばす気か。


『くそっ死ね、王国万歳っ』


 最後の兵が起動コマンドを発動させ、魔力炉の出力が無理矢理上げられていく。魔力炉に接続されて回路が過負荷で焼き切れ、行き場を失った魔力はオーバーロードされて一気に暴走、爆発しかねない状況へと陥っていく。


 しかし、魔力の干渉に長けた者がいた。アイネは己の髪を媒介に、魔力回路を形成して暴走しそうな魔力を吸い上げて鎮めていった。


『なっ』

「王国には魔術師が少ないのかね。その辺の知識不足が敗因だな」


 暴走を起こさずに程よく暖機された魔力炉に呆然とする兵士をスタン術式で無力化。意識を刈り取ってしまう。


「リリア、今ので最後だな?」

『うん、そうだよ』

「奴らのおかげで魔力炉の出力が上がった。転移できそうか?」

『少し調整がいりそうだけど大丈夫だって』

「分かった。こいつら叩き出したら星系を脱出するぞ」

『了解』

「テッド、奴らを叩き出すから手伝え」

「りょーかい」


 俺はテッドと手分けしてスタンさせておいた兵士をまとめて船外へ放り出す。お情けで救難信号のマーカーを付けておいてやった。こっちの動向は監視している奴がいるはずだから拾って貰えるだろう。


「アイアンモールの連中への指導は中途半端になったけど大丈夫かねぇ」

「道筋はつけました。後は本人達次第でしょう」

「そういえば、あのパイロットは良かったんですか?」


 アイアンモールの貨物船を操縦する者を残さなくても良かったのだろうか。


「計器類をつけ替えればあの長男で良いでしょう」

「まあ器用貧乏な分、最低限はこなせそうでしたが……で、あのパイロットを連れて行く理由は?」

「上手く使えば便利です」

「はぁ」


 話を聞くとどうやらあのパイロットは、この星系から脱出したがっていたらしい。元々フロンティアラインは船員を集めて星系の外を目指していたらしい。しかし、前団長の事故死により計画が頓挫。その後も開拓船を奪って逃げるような勇気もなく、開拓船にいれば外宇宙へ出る機会も巡ってくるかもと居座っていたらしい。


「それならもっとアピールしてくればいいのに」

「子供達を見捨ててか?」

「しがらみに囚われてた感じですか」


 自己主張が強いタイプでもなく、自らが引っ張れる訳でもなく、ただ受け身で外へ出たいと思っていても、早々チャンスが巡って来るわけもなく、傭兵団と共に朽ちる覚悟だったと……。


「分かりませんねぇ」

「それでも培ってきた技術は確かです。利用する分には問題ありません」

「そうですか」

『ユーゴ兄、準備できたって』

「了解、こっちも準備できてるからいつでもいいぞ」


 俺とアイネ、テッドは元々乗ってた宇宙船の中にいた。万一に備えてというよりは、体を固定するシートが揃ってるというのが理由だが。

 開拓船クラスの船が動き出してもさほど変化は感じない。急激な加速は船体を傷めるからだ。

 なので格納庫にいても問題はないのだが、通信設備が整っている船の中だと、外部モニターを開拓船に繋いで動く様子を見ることができた。


「やっぱりこっちの船も相当ガタがきてますね。各種数値が安定してません」

「パーツを買って取り付ける程度はできるそうですが、パーツを買う余裕がなかったそうです」

「追っ手をまいたらどこかの星系でメンテですね」


 開拓船の前方に転移用の魔法陣が展開される。円形の陣には光る文様が浮かび上がっていく。転移先は隣接する星系のどこかで特に指定はしていない。元々辺境惑星であったこのコボルトの星系なので、隣接星系も大して発展していないからどこへ行っても変わらない。


 船体の先端が魔法陣に触れると、魔法陣の方も動いて1kmほどの船体を陣の中へと取り込んでいく。転移陣を維持するには膨大な魔力が必要なので展開する時間を短くするための方法だ。

 既に船の先端は隣の星系へと現出していて、後方の格納庫はまだコボルト星系という状態が少しあってから、全体が隣の星系へと転移した。


「各種数値異常なし。ただ魔力炉が安定してませんね。応急で回路を繋いだ部分に魔力溜まりができてます」


 兵士が暴走させようとした魔道具のせいで一時は船体への魔力供給を行う回路が焼き切れた。それをアイネが回路をつなぎ直して応急処置を施したが、やはり即席だとつなぎ目などに負荷がかかっていた。


「転移用の魔力補給の間に調整をお願いします」

「仕方ありませんね。船長使いの荒い船です」

「兄ちゃん、俺は?」

「備品の確認をリリアと進めてくれ。準備もなく出てきたから何が残ってるか分からん」

「了解」

「えー、パイロット?」

『コランだ』

「ああ、コラン。俺もコックピットに行くから船についての説明を頼む」

『わかった』


 兵士徴兵機関であったコボルト星系が今後どうなっていくかは分からないが、俺達が戻る訳にもいかないし、この船を把握もできてない状況では余裕もない。アイアンモールや残った子供達が気にならないと言ったら嘘になるが、これ以上は関われないだろう。

 というかこれから先、どこに向かうかすら決まってないからなぁ。まずは船が瓦解しないように修理をする所から始めないとだが、もう少し星系を渡らないと駄目か。


 問題は山積みだが、移動する拠点となる開拓船を奪えたのは僥倖。行動の自由度は増えるはず……だよな?

我ながら話の畳み方が雑になってしまいました。

無重力での戦闘って楽しいかと思ったら制約が多すぎて盛り上げられなかった。

ひとまずコボルトの星系での話は終了です。

開拓船の整備話へ続く?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
「俺はテッドと手分けしてスタンさせておいた兵士をまとめて船外へ放り出す。お情けで救難信号のマーカーを付けておいてやった。こっちの動向は監視している奴がいるはずだから拾って貰えるだろう」 殺そうと向か…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ