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とある転生者の宇宙放浪記  作者: 結城明日嘩
私掠期

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対魔導騎士戦開始

 俺の役割は隊長機との交戦距離までアイネを運ぶこと。手前で急制動をかけて、慣性のまま進むアイネの魔導騎士を送り出す。

 宇宙船と魔導騎士を繋ぐワイヤーは500mなので、300mほどの距離で急上昇した。


 速度を上げた状態で2機の距離が近づく。

 エメラルドグリーンの隊長機は、両手でハルバードを体の正面で斜めになるように構えている。対するアイネ機は右手の槍をいつでも投げられる様に頭上に構え、左手の盾も正面へと回していた。


 100mほどまで近づいた所で槍を投擲。白く発光する槍は、付与術式で攻撃力を増している。光線系の光術式ではなく、温度変化の水系統らしい。

 温度上昇と言うと火系統と思いきや、この世界で発展した魔法科学において温度変化は水属性に分類されるようになっている。

 火系統は燃焼などの化学反応を制御する術式になっていた。あくまで物質同士が繋がり、そこで発生する酸化などを制御する。宇宙空間の様に空気のない状況ではあまり力を発揮できない。


 水系統というか氷系統は、物を凍らせる方向で研究されていき、やがで熱を冷ますのと熱を与える事は繋がっているとの発見された。

 前世で言うところの分子の振動の多寡を魔力で操作するのが水系統となっている。


 風系統に分類されるのは物が動く際に必要なエネルギーに関する事柄となっている。摩擦や慣


性といった移動に関する部分に作用した。空気抵抗などを緩和する流体力学に類するモノが、風系統の魔法として確立されている。


 そして土系統は物が存在する事自体がエネルギーという考え方だ。わかりやすく言うなら、物の重さ、質量を総括する。惑星に引き寄せられる引力、重力などが土系統として扱われる。

 物の密度なども関わり、物質を固くする技術なども含まれていた。


 水と火が相関関係にあるのは、化学反応と共に熱が発生しやすいからで、風と土に相関があるのは質量があると動くのにエネルギーが必要になるという部分に繋がりがある……らしい。


 光系統は光の操作や転移に使われる様に、時間や次元といった概念に作用する。ただ本当に時間の進みを操作する、例えば装甲を経年劣化させてボロボロにするといった威力を求めると膨大な魔力が必要だ。

 軍艦の主砲などの光術式はもっと限定的、魔力そのものを収束して相手に届かせたり、相手の魔力自体を発散させて術式を破壊したりという運用方法となっている。


 ちなみに闇系統は人の精神に作用するものが主となっていた。


 閑話休題。


 アイネ機が持つ槍は、水属性が付与されて高温となったヒートジャベリンという事だ。相手の機体に刺されば、そこから熱を伝えて相手を破壊する。

 相手のハルバードはまだ術式を起動していないようで、属性付与があるかは不明。硬さを上げるなら土、振りを早くするなら風で付与されているだろう。


 待ち受ける隊長機に、アイネ機が投じたジャベリンが迫る。その軌道を操作可能だと隊長も対戦闘機の戦いを見て知っているのか、ギリギリまで引き付けてからハルバードで叩き落とそうとした。

 その動きに合わせてアイネはジャベリンの軌道をズラす。完全には避けきれず、ハルバードの攻撃がジャベリンの後方へと接触。ジャベリンが回転しながら弾かれてしまった。


 しかし、次の瞬間に隊長機の左胸へと何かが突き立っていた。それは黒いジャベリン、白く目立つジャベリンとワイヤーで繋がれていた。

 一本を弾いたと思った瞬間に、次の一本が突き刺さる。漫画なんかで矢を2本同時に放って……なんてのは見たことあるが、今回のはもっとシンプルだな。重力のない宇宙空間であれば引っ張られる方向にそのまま追随する。

 前を弾いたとしても慣性のまま相手に命中すると。


「しかし、威力を上げる術式を起動していたら魔力レーダーに映るし、術式が乗ってなければ大した質量でもない槍にそこまでの威力はないよな」


 命中させられたとしても、そこまでの威力はきたいできない。そう考えていたのだが、隊長機は槍を受けたまま動きを止めている。


『テッド、追撃』

『りょ、了解っ』


 対空砲座のリックが通常弾で射撃を行う。魔導騎士相手だとかなりの命中数がないと防御結界を抜けないはずだが、あっさりと装甲へと直撃弾が命中していた。


「マジックキャンセルかっ」


 黒いジャベリンにもちゃんと術式が付与されていた。しかし、それは魔力レーダーには映らない。術式を阻害するマジックキャンセルだった。アイネと戦った際にも使われて苦戦させられた……いや、負けたんだが。


 ジャベリンを1発当てたら撃破といった威力はなくてしばらくの間、防御結界中和と機動力の低下辺りの効果なのだろう。そのために撃破するには、デッドの攻撃が必要だったと。

 何にせよ、隊長機を無力化できたのは大きい。

 他の汎用機は射撃武器でこちらを攻撃してきていたり、距離を空けて様子を見ようとしていたり動きが統一されていない。

 攻撃は散発的で当たる雰囲気もなかった。


 俺は宇宙船を操縦して射撃してきている奴へと接近し、ワイヤーで引っ張っているアイネ機を放り投げると、アイネもそれを理解していて手元に引き戻していた白いジャベリンで仕留めにかかる。近距離から放たれたジャベリンは、ろくに反応できていない汎用機の胴体を貫いた。

 残り2騎になり逃亡しはじめる王国魔導騎士。しかし、こっちは宇宙船で直線加速力も最高速も上だ。背を向けて最大加速したところであっさりと追いつける。

 そのまま追い抜きざまにアイネがジャベリンで2騎とも大破させた。


 魔導騎士はかなり頑丈で、コックピット周りの気密も高いので多少貫いた所で、自動修復で穴を塞ぐくらいはやってのける。

 トドメを刺すなら魔力炉自体を貫いて、誘爆させるのが一番だが、アイネもそこは狙っていないらしい。

 安易に相手の命までは取らない、殺さないという人道的な意味よりは、負傷者を放置することで救助に時間を掛けさせる意味の方が大きいだろう。

 1個小隊を潰しても、まだ3個小隊残ってるしな。


 緩い包囲じゃ各個撃破されると判断したのか、残りの小隊は密集陣形を取って近づいてきていた。おかげで抜けられそうな隙間ができるが、そこは巡洋艦と戦闘機が埋めるように移動している。

 やはり部隊としての練度は決して低くはない。


「ジャベリンも見られてそうですね」

『あれは布石の1つです』


 小隊を撃破したところでワイヤーを巻き、宇宙船へとドッキングしたアイネは再度換装を行っているようだ。


『中央突破して穴を空けます』

「まだ戦闘機に削られた魔力も全快してないんですが」

『それくらい避けなさい』


 無慈悲な指示が飛ぶ。期待されていると良いように解釈しておくか。




 3個小隊、12騎の魔導騎士は楔形に並んで迫ってくる。各小隊が菱形に塊り、中央の部隊の左右、少し下がった位置に残り2部隊が控えていた。

 中央が一番厚く、左右どちらかに回避しても、控えた部隊が対応する単機相手には効果的な布陣だろう。

 ここに中央突破を仕掛けたら、後方の2部隊が左右から締め上げてくるはずだ。それでもアイネが突っ込めと言うなら、やってみせましょう。


 俺は加速しながら魔導騎士部隊へと突っ込んでいく。魔導騎士同士であれば、防御結界の堅さもあって白兵武器での殴り合いになるが、戦闘機や軽宇宙船相手だと射撃武器による攻撃となる。

 重量のあるガトリング系はさすがに持ってないみたいだが、連射可能なアサルトライフルくらいは装備していた。そこへ突っ込んでいくというのはかなりのリスクだ。


 当てられないために必要なのはやはり速度。直線的な動きではなく僅かずつ軌道を変えながら、正面からの射撃だと相手は点にしか見えない。なので弾幕を張って相手が引っかかるのを待つというのが基本戦術となる。

 やはり相手の練度は高く、部隊ごとに範囲を絞って隙間を埋めるように弾をばら撒いていた。


「弾幕ゲーってあんまり得意じゃないんだが……」


 弾切れで弾倉交換リロードする際にできる隙間を縫いながら距離を稼いでいく。それでも防御結界を掠める弾は出てくるので、防御結界の魔力残量を視界の隅に置きながら勝負を掛けた。

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