100円
姉の意識が戻った所で全員で片付けをした
片付けと言っても散らかった物を戻すのが精一杯で、カーペットを染めた血と牛乳はどうしようもない
もうカーペットは諦めるけど、匂いが残ったら嫌だなぁ
「ねーお姉ちゃん」
「どうしたの?」
「麗奈先輩が帰る前に一つ聞いておきたいことがあるんだけど」
「倉園麗奈を好きになることは絶対に無いわ」
「うん、それは分かったけど、どうしてそんなに嫌いなのかなって思ってさ」
麗奈先輩はお姉ちゃんが『お姉さま』になることに一役買ったことは聞いている
だったら嫌いになる理由がないと思うんだけど…
「この女は身体能力以外、大したことない癖に偉そうにしているでしょ?それが癇に障るのよ」
「…それはちょっと分かるけど」
「分かるな!!」
ツッコミが少し変化した麗奈先輩にも聞いてみる
「麗奈先輩はなんでですか?」
「貴女の姉は家と学校で態度が違うのよ。学校、特に生徒会だと頗る尊大な態度を取っているの。そういう人間は基本的に信用していないわ」
「バラすな!!」
「それは薄々気づいてますけど…」
「な、奈妓ちゃん!?」
姉の新たな秘密が判明しなかった所で本格的にお開きムードになる
「悪いんだけど服を貸して貰えないかしら?このまま血が付いた服で帰れないわ」
「奈妓ちゃんの服クンクンするつもり!?」
「それはお姉ちゃんでしょ」
「な、奈妓ちゃん!?」
私の服を貸すことに姉が頑として認めなかったので、結局姉の服を麗奈先輩に貸すことを提案する
姉は勿論嫌がったが、私の服を貸すよりマシだと思ったのか渋々了承した
「借りた服とハンカチは洗って返すわ」
「あ、ハンカチじゃなくてぱんつです。そっちは今返して下さい」
「「え!?」」
姉と麗奈先輩が声を挙げてハンカチだと思ってた私のぱんつを広げた
おい、やめろ
「な、な、な、なんでぱんつなのよ?」
「ああああ゛ー!奈妓ちゃんのぱんつが穢れた血で汚れてしまってるぅぅ!!」
「二人が気絶した時、顔に被せておいたんですよ。あとお姉ちゃんはその言い方アウトだからやめて」
「なんでそんなことしたのよ?」
「今すぐ洗えば!いや、でも奈妓ちゃんの温もりまで消えてしまう!」
「いやぁ、眞帆先輩や時久との出来事でヒントを得たんですけど、私って何かするよりぱんつ見せた方が解決しちゃうんですよね。あの時、死んだと思って焦ったんで生き返そうと思ってやりました。感謝して下さいよ」
「バカか!?あんなんで死なないし、そんなんで生き返らないわよ!!」
「奈妓ちゃんこれと今穿いてるぱんつ交換してくれないかな?」
「するワケねーだろ!お姉ちゃんもぱんつ返せ!」
「今の貴女はツッコミじゃない!!」
麗奈先輩を見送って自分の部屋に戻る
なんかどっと疲れが来たな
色々頑張ったけど今回は特に収穫無かったし、余計に疲れた
「奈妓ちゃん…」
「!!!!!」
今更、部屋に姉が居ることに驚かない
私が驚愕したのは彼女が100円を差し出しているからだ
「お姉ちゃん…」
私達の間の『100円』は唯の100円じゃない
それの意味をお互いが知っている
ここでこれを受け取ったらどうなるか私は知っている
「……………」
無言でそれを受け取った
お姉ちゃんの切ない顔を見たら拒否することが出来なかった
「「……………」」
抱きしめる
夕日が姉妹の髪を照らした
「…奈妓ちゃんのこと好きで居ていいかなぁ」
「……………」
「好き、好き好き好き、壊れてしまいそうなくらい好き、妹じゃなくても好きになってたと思う」
「……………」
「お姉ちゃんもうちょっと自分勝手になりたいな。奈妓ちゃんに伝わらないことは分かってる。でも…それでもいつかちゃんとした告白したいな」
「………勝手にすれば」
麗奈先輩に伝えたかった気持ちは姉に届いてしまったらしい
収穫が無かったどころかマイナスだ
…マイナスだけど嫌な気持ちにはならなかった
時間が過ぎて、姉が離れようとしたが、私は彼女を引き寄せて離さない
「奈妓ちゃん?」
「…もうちょっとだけいいよ」
結衣、ごめん
やっぱり姉との関係を切ることは出来ないよ




