妹だけど姉がこんなに爆笑しているのを見るのは初めてです。
いやいやいや、諦めるな
二人殺したら死刑って聞いたことあるぞ
断頭台に上がる前にやるべきことはある。考えろ、私はなんだかんだで局面を打破してきたじゃないか
奈妓ちゃん会議は片方千切れているアフロの奴がタンバリンを叩いてるだけで役に立たないので一人で必死に考える。そして思いついた
…これしかない
「で、どうして私達にこんなことさせたのよ?危うく三途の川を渡りかけたわよ」
「フン、そのまま戻って来なければ良かったのに」
数分後、私の策が功を成したのか、姉と麗奈先輩は蘇生した
麗奈先輩に事情調査を受けてしまっているが、取調室でカツ丼食べるよりかは数倍マシだ
「実は…お二人が付き合ったら良いなって思ってまして…」
「はぁ?なんでそうなるのよ」
「奈妓ちゃん、それは流石にちょっと…」
「だ、だって二人がくっついたら麗奈先輩は陽咲先輩のことを引きずらなくなるし、お姉ちゃんだって私のことばかり考えなくても良くなるでしょ?」
「ふざけるのも大概になさい、人の気持ちは操れるものじゃないわ」
「ちょっと待って、光宗陽咲のことを引きずらなくなるってどういうことなの?」
「この前の旅行で、観覧車乗った時に告白して振られたんだよ」
「バラすな!!」
「かかか観覧車で告白wwwその状況で振られる人っているのwwwくはぁ~www」
お腹を抱えて笑い転げる姉
妹だけど姉がこんなに爆笑したの見るの人生で初めてだよ
「ふ、振られた後、どうなったのwww?さぞかし気まずかったんでしょwうねwww」
「すっごく気まずかったよ。私もその場に居たし」
「奈妓ちゃんになんて拷問してくれてんのよ!!」
「うっさいわね。貴女だってキス直前で振られた癖に」
「一緒にするな!私は奈妓ちゃんのことを想って引いただけだから!」
「麗奈先輩だって陽咲先輩のこと想ってセフレを断ったよ!」
「バラすな!!」
「擁護したつもりなんすけど」
「ちょっと待って、『セフレ』ってどういうこと?」
「麗奈先輩が告白したら陽咲先輩は「セフレなら良いよ」って言ったんだよ」
「バラすな!!」
「せせ、セフレぇwww告白したら「セフレなら良いよ」って貴女完全にその程度の人間だと思われてるわねwww最高に惨めよw」
ドガン!
麗奈先輩が姉の太腿をついに蹴った
姉はペナルティエリア前のサッカー選手みたいに患部を抑えながら転がりだした
「…私のことはいくらバカにしてくれても良い、でも陽咲を侮辱するのは許さない」
「ま、待って下さい、追撃は話を聞いてからにして下さい」
姉を空中に放り投げて獅子連弾を喰らわせようとしていた麗奈先輩の額に人差し指を当ててなんとか止める。姉はそのままドスンと床に落ちたがそれくらいは良いだろ
「なによ?」
「お姉ちゃんが言うことも一理あります。麗奈先輩はあそこで結衣みたいに怒るべきだった」
「……………」
「もっと言えば『君ありて幸福』とか如何にも考えてきたような告白の台詞は使うべきじゃなかった。カッコ悪くても泥臭く思っていることを言うべきだったと思います」
「…もう過ぎたことよ。悔やんでも仕方ないし、あの日の告白は嘘じゃない。私は陽咲の幸せを今でも一番に願っている」
「ちょっと待って、『君ありて幸福』ってなに?」
「「赤いゼラニウム…花言葉は『君ありて幸福』」「陽咲…貴女に辛い過去があることは知っている。人を愛することを出来なくなったのは当然だと思う。でも…でもッ!私は貴女に愛を与え続けたい、返せなくても良い、だって私は貴女が居るだけで幸福なんだから…どうか貴女の隣に居させて」って告白したんだよ」
「バラすな!!なんで一言一句覚えてんのよ!?」
「実際には途中で遮られて振られましたけどね」
「『君ありて幸福』wwwどこから引用したのよwww途中で遮られて振られたって脈一ミリもないじゃないwww」
蹴られた太腿がまだ痛むのか、姉はそこを抑えながら爆笑している
時折痛むのか笑いながらも顔が引きつっている
笑うか痛がるかどっちかにしろよ
「麗奈先輩、コイツとくっつけようとしたことは謝ります。でも自分の気持ちに素直になって下さい。陽咲先輩にもう一度告白しましょうよ」
「しつこいわね。そんなことをしたら陽咲に迷惑を掛けるだけよ」
「告白って相手の迷惑を考えてするものですか?陽咲先輩もそうですけど先輩たちは相手のことを考え過ぎです。もっとエゴを出して良いんですよ」
「分かったような口を聞かないで!貴女は陽咲が小鳥遊さんに惚れたからそんなことを言っているのでしょ!?」
「そんなこと私はッ!」
「ちょっと待って、光宗陽咲が小鳥遊結衣に惚れたってどういうこと?」
ドガン!
今姉を蹴ったのは麗奈先輩じゃなくて私の方だ
ちょっと待って星人は地球の重力に耐えられなくなったのか動かなくなる
「自分が関係あることは説明しないの卑怯じゃないの…」
「びゅ~♪」
口笛を吹いてすっとぼけた私に麗奈先輩はドン引きした。




