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それはきっと恋だよ

翌日、急に誘ったのにも関わらず私が呼んだ人は家に来てくれた


「駅に迎えに来るくらいしなさいよ」


「だって暑いんですもん」


「貴女ねぇ…」


玄関で出迎えるなり文句を言ってきた麗奈先輩を軽くいなす

遊園地でもそうだったが、私服の彼女を見るのはなんか変な感じだ

前よりお洒落じゃね?私のこと好きなんじゃなかろうな?


立ち話もなんなので二階の私の部屋に行こうと促す

階段を上がり、自室のドアに手を掛けた所で、隣にある姉の部屋のドアが開いて姉が顔を出した。


「「あっ」」


姉と麗奈先輩がお互いを認識する

瞬時に発せられる殺気、二人を合わせる為に麗奈先輩を家に呼んだんだけど、ここまで険悪だとは思ってなかった。


「滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧き上がり 否定し痺れ 瞬き 眠りを妨げる 爬行する鉄の王女

絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ 破道の九十…」


「黒棺やめぇ!!」


鬼道が発動する直前で姉を抑える


「完全詠唱メッ!いっつも破道は五十番代までって言ってるよね!?」


「でも今は限定解除されてないし…」


「メッ!たらメェッ!!」


姉を叱責していたら今度は背後から狂気を感じた


「開門、休門、生門、傷門、杜門、景門、驚門…」


「八門遁甲やめぇ!!」


ギリギリ死門が開かれる前に麗奈先輩を抑える


「師匠に開いていいのは第五門までって言われてますよね!?」


「降りかかる火の粉は払うまでよ」


「払うどころの威力じゃないんすよ!」




なんとか二人を宥めて、自室に入れる


「粗茶ですがどうぞ」


「どう見ても牛乳なんだけど…」


一応客人なので、飲み物を麗奈先輩に出す

お茶を切らしてたので冷蔵庫に残ってた牛乳だ

身長高いからたぶん好きだろ


「奈妓ちゃん、この女に牛乳なんて勿体ないわ。牛の乳でも直飲みしてれば良いのよ」


「えー牛連れてくるのはめんどくさいなぁ」


「なんなのこの姉妹…」


自分用に用意した濃いめのカルピスで喉を潤した所で本題に入る


「三人で遊ぼう!」


ズバリ、今日麗奈先輩を家に呼んだのは姉と仲良くなって貰う為だ

その為に色々な催しを用意してある。

二人は案の定乗り気ではなかったが、私がゴリ押しすると渋々了承してくれた。




「「「はぁはぁはぁ」」」


駄目だぁ…

ゲームやボードゲーム、奥の手のツイスターゲームまでしてみたが、どうしても姉と麗奈先輩が場外乱闘してしまう

乙女三人が集まって楽しく遊んだ空気じゃないよ。バトル漫画みたいな吐息を全員が吐いてるよ

もうこうなったら奥の奥の手だ、秘儀、駄々こね発動!


「うぇぇぇぇん!お姉ちゃん達怖いのぉぉぉぉっ!もっと仲良くちてくれにゃいとイヤイヤなのーー!」


「な、奈妓ちゃんごめんね。お姉ちゃんもうちょっと頑張るからね。だから泣かないで、ね?」


「明らかにウソ泣きじゃない。実姉が騙されてどうするのよ」


「仲良くちてぇーーー!抱き合ってぇぇぇ!」


「そ、それはいくらなんでもちょっと」


「なにが目的なのよ…」


うぉぉぉ!エンペラータイム発動!

奥の奥の奥の手だぁぁぁッ!!!


「お願いします!お願いします!お願いします!二人が抱き合ってくれないと明日臀部を骨折するかもしれないんです!」


「ええ!?それは大変!」


「なわけないでしょ。この頑張りはなんなの?」


もはや得意技になった変顔高速土下座が功を奏して二人は抱き合ってくれることになった

いつからだろう…土下座を苦に感じなくなったのは…




「「……………」」


無言で抱き合う生徒会長と部長

もっとぎゅっと抱き合って欲しいのだが、今回はこれで良しとしよう


うん、思った通り絵になるな

二人は私が出会った仲でもとびきりの美形

絵にならないハズがない


ネタばらしすると、この二人にくっついて欲しいからわざわざ麗奈先輩を呼び出した

彼女らが付き合えば、姉は私のことばかり考えなくなるし、麗奈先輩だっていつまでも陽咲先輩のことを引きずっているのは辛いだろう

これが私が導き出した全員が幸せになる答えだ


「奈妓ちゃん、もういいかしら?」

「私ももう限界だわ」


早くもギブアップ宣言をしてきた二人

ここで終わってしまったら意味がない

美少女同士が抱き合ってるんだよ?心の奥底から湧き上がってくるものない?

私と結衣も最初は腐れ縁みたいな感じだったが、結局は両想いになった。この二人もそんな気は感じるんだよな…よし、もう一押ししてみるか


「ねぇ、なにか感じない?」


「悪寒がしてきたかな」


「それはきっと恋だよ」


「違うと思う」


「麗奈先輩は?」


「身体が痒くなってきたわ」


「それも恋ですね」


「蕁麻疹よ」


むぅ…思ったより反応が悪いな




「ぐふっ!!」

「ぐはっ!!」


もう一度土下座してキスでもさせようかと思っている矢先に二人は吐いた

この前の私みたいな嘔吐ではなく、血を濁流のように吐いた


「いやぁぁぁッ!私のお部屋が血と牛乳まみれになっちまったよぉぉぉッ!!!」


どうしてくれんだぁぁ!

詩織さんちのカーペットに比べたら月とスッポンだけど私は許さねーぞぉぉぉ!


…って

反応がない?


恐る恐る彼女らの様子を伺ってみるが、ピクリとも動かない


「え、死んだの?」


ここまで過剰なストレスを与えているとは思わなかった

これ私が捕まるの?お巡りさんになんて説明すれば良いの?


倒れてる麗奈先輩の近くで『ナギ』と書いてあるダイイングメッセージと思われる血文字を発見して、慌てて足で擦って証拠隠滅する

麗奈先輩が最後の力を振り絞って書いたんだろう


結衣…面会に来てくれよ…

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