体操服とメイド服
麗奈先輩を連れて、ホテルの外にあったベンチに座った
今気づいたけど私メイド服のままじゃん!隣に体操服のヤツが居るからなおさらキツい
ここだけハロウィンの渋谷かな?
「…付き合ってもらって悪いわね」
「つ、付き合ってませんけど!」
「なにを言ってるの?」
ああ、そっちの付き合ってか
付き合ってると思い込んでるヤベー女だと思っちゃったよ
「いや、なんでもないっす。それで話ってなんですか?」
「……………」
俯いてしまった麗奈先輩
片目が髪で隠れてるから表情は見えないが、なにか葛藤しているように見える
「…告白したら困るかしら?」
意を決して発せられた麗奈先輩の言葉
その一言で確信に変わってしまった
彼女がいる私に告白したら困るかと聞いているんだ
「き、気持ちは嬉しいでよ」
テンパって変な語尾になってしまった
今さらキャラ付けしてる場合じゃない
「そうよね…決めたわ!」
いつの間にかこっちに向き直っている麗奈先輩
決意を決めた彼女の瞳には私の顔が映っている
告白される!
「陽咲に告白するわ!」
「私には結衣がいるんでごめんなさ…ってえ゛?」
「なにを言ってるの?」
「いやいやいやなんでもないっす!」
あ、あぶねー
完全に自分に告白してくると思ってた
出会った女ほとんどを惚れさせてる罪な女だと勘違いしてたイタタ
「それでもう一つ相談があるのだけど」
「ちょっと待って下さい!ボランティア部はどうなるんですか?『禁忌』ですよ!」
「それは…詩織さんにお願いしようと思ってるわ」
「詩織さんに!?」
新入部員がいきなり部長になんの!?
とゆうか詩織さんに任せてホントに大丈夫か?ガチの淫行部になりそう
「貴女たちに『禁忌』を犯すなと散々注意してたのに自分勝手よね」
「いやーでも好きな気持ちは抑えられるものじゃないですからねー」
こくりと麗奈先輩は頷いてから、もう一つの相談を切り出した
「陽咲は私のこと好きだと思う?」
「……………」
急に冷静になった
なんだかんだ尊敬はしてたけど、その質問は正直ダサいと思う
今日の陽咲先輩の「私に抱きついてくれれば良かったのに」って台詞でイケると思ったクチか…
正直、陽咲先輩は私も経験あるけど思わせぶりなことを言うことがある。だから麗奈先輩を好きかどうかなんて分からない
「奈妓さん?」
黙った私の様子に気付いて麗奈先輩は不安そうに声を掛けてきた
はっきり言ってやらないと
「勝算がないと告白しないんですか?脈が無いって言ったら諦めるんですか?」
「!?」
「私は結衣にフラれたと思ってました。でも気持ちはどうしても伝えたくて告白した。先輩の覚悟はそんなもんなんですか!?」
バチン!
麗奈先輩が手のひらを振りかぶった瞬間、自分が引っぱたかれると思って眼を瞑った
でもビンタされたのは私じゃなかった。真っ赤に頬が腫れたのは麗奈先輩
彼女は自分で自分の頬を張ったのだ。脳金過ぎるよ…
「私が間違ってた、ありがとう。貴女に相談して良かったわ」
「麗奈先輩…」
私達はどちらかもなく抱き合った
これはボランティア部の仕事のハグでも恋人同士のハグでもない先輩と後輩という垣根を超えた友情のハグだ。女同士の友情は存在した
「ダブルデートしましょうね」
「フフッ気が早いわよ」
麗奈先輩と自分の部屋の前で別れる。
私は少し違和感を感じていた。エレベーターの中でスマホを確認したが、結衣から連絡が来ていない
流石にもう準備は終わってるよな…もしかして怒ってたりする?
部屋のドアを開けると、中は真っ暗だった
あれ?確か電気点けっぱなしだったと思うけど…
手探りで明かりのスイッチを探すが、途中で気配がしてその手が止まる
ままま、まさか泥棒が潜んでたりする?
麗奈先輩を押し出した勢いで部屋から出たから鍵掛けてなかったよ
「すぴー」
すぴー?
音の発生源のベットにスマホの画面を向けると、そこには結衣の寝顔が映った
「なーんだ」
びくびくしていた気持ちが収まる
起こさないようにして近づくが、その時もう一つの寝息が奏でられていることに気付いた
「すやぁー」
詩織さん!?
私のベットで結衣と詩織さんが寝ている
「……………」
私の推理は二秒も掛からなかった
①結衣が私の部屋に行く、私が居ないのでベットの上で待つ
②詩織さんが宣言通りに私の部屋に入る
③鉢合わせした二人は暫く喧嘩していたが、疲れて寝てしまった
これだろ
二人仲良く寝ているが、この二人に限ってそういうことは万に一つもないだろう
推理が完了した名探偵ナギ―は二人の間に強引に挟まりこんで寝た
『初夜』はまたお預けになったようだ
―――遠山奈妓と藤詩織がキスするまであと【8時間】―――
次話タイトル予告
【カウントダウンゼロ】




