★『お姉さま』じゃなくて『お嬢様』
夕飯時、夏休みに『チュウチュウランド』に行くことを家族に告げた
外泊することに反対されるんじゃないかと少し心配していたがそれは杞憂だった。
お母さんは涙ぐみながら喜んでくれて、お父さんは「ちょっと夜風に当たってくる」って言って子供が出来た時に止めていたタバコを吸った
そんなにぼっちだと思われてたの?ちょっと複雑…
お風呂上りに早速『チュウチュウランド探検隊』のLINEを闇金ウシジマくんのスタンプで荒らして楽しんでいたら部屋のノックが鳴る
このノックは…
「奈妓ちゃん、ちょっといいかな?」
姉(変態)だ
「なに?」
「みんなでお泊りはまだちょっと早いんじゃないかな…」
うわぁ…
両親の許可得てんのに姉に反対されたよ
夕飯の時に表情が曇ってたからなんとなく想像はしてたけど
…って
近けぇよ!!
ごめん、ちょっと一回止めて
近いって、立ち位置と常識を守ってよ
あと嗅いでくんな!ハァハァすんな!吐息がかかってきてんだよ!!
離れてって!ほんとに怒るよ!
ぜぇぜぇぜぇ
…やっと離れてくれた。ぱんつ窓から投げたらそっち行ってくれた
えー気を取り直してもう一度
お風呂上りに早速『チュウチュウランド探検隊』のLINEを闇金ウシジマくんのスタンプで荒らして楽しんでいたら部屋のノックが鳴る
このノックは…
「奈妓ちゃん、ちょっといいかな?」
姉(変態)だ
「なに?」
「みんなでお泊りはまだちょっと早いんじゃないかな…」
うわぁ…
両親の許可得てんのに姉に反対されたよ
夕飯の時に表情が曇ってたからなんとなく想像はしてたけど
「もう高校生だし、問題ないよ」
「でも…みんな女の子でしょ?」
男女で旅行に行くようなノリで心配してくる姉
まぁ女と付き合ってるからその心配はあながち間違いではないのだけど
「全員女でなにか問題が?だいたいお姉ちゃんには関係ないじゃん、私を縛らないでよ」
「お姉ちゃんも一緒に行きたいなぁ…」
「はぁ!?」
予想が現実になっちゃったよ
「ご飯の時も言ったけどボランティア部の親睦会なの、お姉ちゃん関係ないよね?むしろ潰そうとしてきたよね?」
「お、お姉ちゃんもボランティア部に入る!」
「ええっ!?」
そんなの駄目だろ
私が許しても麗奈部長が承認しない、いや…?面白いと思って採用するか?
てかそれ以前に…
「ボランティア部に入ったら知らない女に抱かれるんだよ?出来る?」
「できにゃい…奈妓ちゃん以外に触られたくにゃい」
情けない声を出して姉は泣いて出て行ってしまった
普段私が姉を触ってるみたいに言うな逆だろ
姉が出て行った後、暫くベットの上でスマホを弄っていたが、さっきまでの楽しい気持ちは鳴りを潜めてしまっていた。
「ふぅ…」
ちょっと言い過ぎたかな?関係ないとか言っちゃった…
姉は私のことが恋愛的な意味で好きだ
過去に姉は私を手に入れようと生徒会の権力まで使ってきたが最後の最後で妹の幸せを優先して手を引いた。
その負い目が少しあって多少のセクハラなら許している(結衣には内緒だけど)
チュウチュウランドに連れて行くのはやっぱり出来ないけど、埋め合わせはしておいた方が良いのではないか?
…なんだかんだで私は姉に甘いのかもしれない
「これ…お金入れて」
姉の部屋に入るなり私は自分の部屋から持ってきた貯金箱を姉に突き出す
彼女はなにか勘違いしたみたいで札を入れようとした。
「違う、100円で良い」
「え?」
100円の意味は姉もボランティア部を調べる過程で知っているだろう
コインが貯金箱に入るのを見届けると私はその場にぺたんと座って彼女に両手を差し出した
ベットの上じゃなくて床の上に座ったのは念の為だ
「奈妓ちゃん…」
恐る恐る抱きしめてくる姉
抱きしめられた瞬間、バラの香りと同時に『あの夏』の記憶がフラッシュバックする
駅で抱きしめてくれた『お姉さま』…私が好きだった人の感触
『お姉さま』の正体は姉だった。でも私が選んだのは結衣
そうだ、私が好きなのは『お姉さま』じゃなくて結衣なんだ
今の『お姉さま』は『お嬢様』だから感触に心奪われちゃダメだ
「はい、終わり」
心の中で数えてたカウントがゼロになった所で姉から離れる
今のは100円貰ったから仕事なんだ、浮気じゃない
麗奈先輩の時も使った『金が発生している時は浮気じゃない』理論だ
「ごめんね…お姉ちゃんワガママ言ったね。楽しんで来てね」
「うん、お土産買ってくるよ」
問題が解決したと判断した私は立ち上がって部屋から出ようとする
けれども姉にパジャマの上着を引っ張られて阻止された
「なに?」
「あのね…一つお願いがあるの」
お願い?自撮り送るとかか?それくらいなら…
「ぱんつ下さい」
ゴンッ!
「痛っ!」
頭を振りかぶって頭突きしてやった
「変態!!!」
コイツってちょっと甘くするとすぐ調子乗るよな
―――遠山奈妓と藤詩織がキスするまであと【11日】―――




