遠山奈妓は詩織×眞帆の公式スポンサーに立候補します!
ソファで待っていると麗奈先輩が渋々来てくれた
ポットから紅茶を注いであげる。私が『お嬢様』だけどこれくらいはサービスしてやるか
「手短にお願い。言っておくけど貴女のお姉さんの名前を出しても無駄だからね」
麗奈先輩、その予想は外れですよ
私が繰り出す切り札はそっちじゃない
「最近どうすか?」
「はぁ?世間話なら結構だけど」
「違いますよ。陽咲先輩とどうなのかなって」
「貴女に関係ないじゃない、そもそも私は陽咲のことが好きとかじゃないから」
陽咲先輩の名前を出した途端、元々刺々しかった空気が更に尖ったのを感じる
それでも私は強がりな先輩に交渉を続けた
「あーそうなんですね。別に好きじゃないと?だったら陽咲先輩と詩織さんがくっついても良いんですね?」
「そ、それは駄目よ…『禁忌』なんだから」
明らかに動揺した麗奈先輩
陽咲先輩と詩織さんの関係が変化していることは知っている。詩織さんは陽咲先輩のことを『陽咲お姉さま』と呼んでいるからだ。
「このままで良いんですか?もう高二の夏ですよね?何もないまま卒業しちゃいますよ」
「…なにが言いたいのよ」
「チュウチュウランドでもっと仲良くなりましょうよ?仲良くなるだけなら『禁忌』じゃないですし、協力しますから」
「…分かったわよ。貴女がそんなに行きたいなら付き合ってあげる」
なんか言動が気に入らないけど交渉は成功したようだ
交渉成立の握手の代わりに麗奈先輩に抱きつく
「なッ!抱き合う必要ないじゃない///」
「いや、折角お金払ったんだし」
職業柄なのか言葉とは裏腹に私の背中に手を回してしまう麗奈先輩
結衣とは違う感触を楽しむ
「カーテンの向こうには貴女の彼女が居るのよ」
「お金払ってんだから浮気じゃないですよ。てかこの状況ちょっと興奮しますね」
「貴女って最低のケダモノだわ」
「その発言にも興奮しますね」
もう少し楽しみたかったのだが、アラームが鳴ると同時に麗奈先輩に押されて離されてしまった
そんな嫌がらなくてもいいのに
「…一つ忠告しておくわ、貴女は付き合ってから更に綺麗になっている。怖いくらいに」
「なんすか?口説いてんすか?」
「違う、自分の容姿を自覚なさいと言っているの。こういうことをしているといつか報いを受けるわよ」
「ご忠告どうも」
麗奈先輩のありがたいご忠告を受け流してカーテンを開ける
この忠告をもっと身に刻んでおくべきだったと後悔するのはまた先の話
「やったー!チュウチュウだー!!」
報告を聞いた結衣は嬉しさのあまり陽咲先輩とハイタッチした
彼女は勢いで隣にいた詩織さんともハイタッチしそうになったが直前で思い留まる
別にやってあげても良いんじゃね?
「そんなに浮かれないの、あくまでボランティア部と元部員の親睦会なんだから」
「元ボランティア部との親睦会?それなら眞帆も呼ぶのですか?」
「「「「え?」」」」
詩織さんの質問に全員が声を挙げた
部室に今日イチの静寂が訪れる
「な、なんですか?奈妓さんなんでそんなにニヤニヤしているのですか?気持ち悪い」
「気持ち悪い!?好きな人に向かってそんなこと言う!?」
「好きでも気持ち悪いものは気持ち悪いです。」
「キモくないって!ただ、詩織さんがなんだかんだで眞帆先輩のこと気になってんだなって思っただけ」
「わ、私はただ疑問に思ったから聞いただけです!気になってなんていません!」
テニス部のアイツのお株を奪う詩織さんのツンデレ具合に私はニヤニヤが止まらない
遠山奈妓は詩織×眞帆の公式スポンサーに立候補します!
「そうね。眞帆先輩も元ボランティア部なんだから呼ばないと駄目ね」
「あっ!だったら小鳥遊ちゃんのお姉さんも呼ばないとね」
「うぇ!?」
陽咲先輩の提案に私と一緒にニヤニヤしていた結衣が突如素っ頓狂な声を出した
気持ちは分かる。私も姉が付いてきたらめっちゃ嫌だ
…まさか着いてくるとか言い出さないよな




