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★【遠山奈妓視点】公園で全力で遊ぶなぎちゃん(15)とゆいちゃん(15)

場面は現在へ

「んっ!」


上下に跳ねる結衣の身体

連動して私の身体も動く


「ちょ!奈妓もうやめっ」


制止の声は届いたがそれでも私は上下運動を止めることは出来ない

完全に夢中になっているからだ


「は、激し過ぎだって!なんか怖いよ」


「大丈夫、怖くないよ」


額に流れる汗を拭いながら私はさらに力を籠めた




「いい加減にしろぉぉぉッ!!!」


「ぐふッ!」


挿絵(By みてみん)


シーソーを伝ってきた結衣の蹴りをモロに喰らって私は砂場に転がり落ちた

子供たちが作っていたトンネルの中にすっぽりと頭が入る。

ああ…ひんやりして気持ち良い


「おらぁぁぁッ!!!」


休息は一瞬だった。結衣に思いっきり足を引っ張られてトンネルから頭が抜ける

眩しい日差しと同時に冷めた顔の結衣と子供たちが視界に写った。

子供たちよ…お姉さんみたいな大人になっちゃダメだぞ☆


「なんで高校生がそんなにシーソーで夢中になれんだよ!」


「結衣と一緒ならなんでも夢中になれるよ☆」


「そのウインクやめろ!なんで高校生のカップルが三日連続公園の遊具で遊んでんだよ!!」


「家からボール持ってこよっか?」


「そういう問題じゃないんだよ!!!高校生のカップルっぽいお洒落なことがしたいの!私ら小学生か!?」


「でもさー」


「なに?」


「…お金ないじゃん」


逆立っていた結衣のツインテールは私の一言で萎れてしまった。




「はぁ…」


公園のベンチで並んで座る

初デートではロマンチックな雰囲気だったが、今の二人の間にそんな雰囲気は微塵もない


「そうだよね…お金ないもんね…怒ってごめん」


「いいよ。明日はボールと一輪車持ってくるよ」


「それはいらない…」


キレが無いツッコミをしてから結衣はスマホに眼を落した

彼女が見ている画面は私にも見覚えがある

テーマパーク『チュウチュウランド』のサイトだ。


そう…私達はこの夢の国に夏休み、夜行バスで遊びに行く為に節約をしているのだ。

誤解をして欲しくはないのだが、私達の家庭は決して貧乏ではない。貧乏ではないのにお金がない理由はズバリ、散財してしまったからだ。お互い初めての恋人ということで浮かれてやれカフェだのやれ映画だのやれショッピングだの班長にビールを貰ったカイジ並みに散財してしまったのだ。


ウチの学校はバイト禁止だし稼ぐことも出来ない、部活で女に抱かれていたのはボランティアだから1円も貰ってないし…かくなるうえは…


「お姉ちゃんにおこずかい借りよっかな」


「…それはやめて」


「す、すみません」


苦渋の提案も否定されてしまった

結衣って姉の話をすると機嫌悪くなるんだよね

姉も私に好意を持ってるから仕方ないかもしれないんだけど、もうちょっと仲良くして欲しいなぁ


「はぁ…」


私も結衣と似た溜息を付きながらスマホに眼を通す

画面にはもはや見慣れてしまった『チュウチュウランド』が映る


!?


見慣れた画面の下に見慣れないバナーが出ていた

反射的にそれをタップする


「これだぁッ!」


私の叫び声に結衣はビクンと肩を震わせて反応した


「な、なに?」


結衣との距離をもっと詰めてスマホの画面を見せる


「団体学割キャンペーン?」


「うん、これで行こうよ」


「でも…二人で行きたいし…」


上目遣いで見つめてくる結衣。くそぉ可愛いなぁ

こんな顔、私以外には絶対しないでよね…

思わず悪かったと言って抱きしめたくなったがグっと堪えて我慢する。


「私だって二人きりで行きたいよ。でもこのままだとチュウランドに行っても園内の可愛いレストランには行けないし、お土産だって買えないよ?」


「お土産は欲ちぃ…」


少し結衣の気持ちが揺らぐのを感じた

もう一押しだ


「このプランなら夜行バスの日帰りじゃなくて泊りがけで行けるよ」


「奈妓…」


結衣が顎を上げて真っすぐに私を見つめる

彼女が何を言おうとしているか手に取るように分かる。「奈妓…最高!抱いて!!」だろ?




「友達いないじゃん」


「今夜は寝かせないぞって…え?」


「このプランって5名以上からって書いてあるよね。私の友達呼んでも良いけどそれだと奈妓が蚊帳の外になるよね」


「恋人を蚊帳の外にすんなし!てか結衣の友達ってクラスの子でしょ?だったら私も同じクラスだから友達だし蚊帳の外んないよ!!」


「…『ミユち』や『ナツキン』と最近どんなこと喋ったカナー?」


「えー『藍川さん』と『喜田さん』とは最近…えーと…」


「名字のさん付けに直してる時点で友達じゃねーよ」


残酷な現実を突きつけられてしまった

私って友達いなかったんだ…気持ちに余裕がなかった中学時代と比べて人と喋ってるから普通に友達いると思い込んでいたけど、よく考えたら学校の外で遊ぶような人は結衣とプレステ4以外いない


「考えてくれたのは嬉しいよ」


そう言って黙り込んでしまった私の肩にそっと触れる結衣

優しさが逆に痛い…


「あっ部活のみんなは!?」


「部活はもう辞めてるし、あの部長が乗るとは思えないけど」


確かにあの堅物の麗奈部長が乗るとは思えない

でもやるだけやってみても良いのかもしれない

日記帳が『きょうはゆいちゃんとこうえんであそびました』だけでほぼ終わる夏休みは嫌だ


「なんとかするから!明日部室行こ!!」


プランは家に帰ってから考えよう

持ち帰って考えるのは私の得意技だ(成功するとは限らない)

大好きな彼女の為に頑張るぞーーー!




―――遠山奈妓と藤詩織がキスするまであと【12日】―――

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