表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/119

時久京華エピローグ『新しくて懐かしい呼び名』

時久と例の空き教室で会う

いつもひっそりとしている空き教室だが、今日はいつもと様子が違う


「なにこれ?」


「…私も分からない」


教室の中は、何組かのペアが居る

私には分かる…こいつらはカップルだ

距離感が普通の友人同士のそれじゃない


問題なのは、いつからここが百合のたまり場になったのかということだ

私と時久が抱き合っていたことが噂になってるのではあるまいな


「とりあえず座るか、話があるのだろう?」


「う、うん」


時久に促されて、空いている席に座る

これ、私達もカップルだと思われてるよね…


「あっ」


思わず声が出てしまった

見覚えがある顔を見たからだ。

結構前に部室で私のことを襲おうとした金髪ヤンキー

驚いたことにその隣には生徒会副会長が居る

これは…推せる!すっごく萌える組み合わせなんですけど!副会長が攻めだと尚よし


「おっ」


その隣の組は、私に連絡先を渡そうとしたプレイガール先輩の姿。もちろん隣には可愛い女の子が居る。

私の視線に気付いたのかプレイガール先輩はウインクしてきた。ベーって舌を出して答える

この前、違う女の子と手繋いで歩いてたの見てるんだからな!


「えっ」


さらに隣の組は、結衣のお姉さんとその恋人のテニス部部長だった。

お姉さんに時久と一緒に居る所を見られるのはマズイと思ったが、それは杞憂だった。

二人はエグめなキスをしていて周りは眼に入ってこないようだ

…スカートの中に手入れてない?昼間ですよ?学校ですよ?


「ど、どうした?」


時久の声で我に返る

そうだ、私はカップル観察しに来たのではない

時久に向き直る。彼女に伝えなきゃいけないことがあるからここに呼び出したんだ


「あのさ…」


「うん」


「私…恋人が出来たんだ」


「そうか…『お姉さま』が見つかったんだな」


苦しい…でも時久が私に想いを伝えてくれたように、私もちゃんと伝えなきゃ


「違うの」


「え?」


「『お姉さま』は見つかった。けど私が好きなのは結衣だった。小鳥遊結衣…」


時久の瞳が暗く染まる

けれどもそれは一瞬だった。すぐに光を取り戻す。


「…良かったな、本当に好きな人と結ばれて」


…無理をしている。一瞬だけ濁った瞳を私は見逃さなかった。

時久は無理矢理自分の心を抑えて祝福してくれている。

『お姉さま』が好きだから付き合えないと断った癖に、『お姉さま』じゃない結衣と恋人になった卑怯な私を肯定してくれている。


「時久…」


思わず抱きしめたくなる

しかしそれは私の新たな『禁忌』に当たる。抱きしめるのは叶わない


「…これくらいなら良いだろう?」


右手に温かい感触を感じる。時久が握ってくれてるんだ

そっと彼女の手を机の下で握り返す。少しゴツゴツした手、毎日練習しているのが分かる

今だけ、今だけはこの心地よい感触に身を委ねよう




「あー!こんな所に居た!!」


「!!!!!」


空き教室に響き渡る声

皆の注目が声の主に集まる。声の主は私の最愛の彼女である小鳥遊結衣

最愛の彼女に最悪な状況で出くわしてしまった。


「おい、今、机の下で何やってた?」


「えへへへ」


「笑って誤魔化すなよ。付き合って二日目でキスマーク付けてきて、三日目で他の女の手握るとはどーゆー了見だぁ!!」


「結衣とは初日に【自主規制】したじゃん!」


「ちょ、それ言い訳にもなってないから!」


「奈妓、【自主規制】とはなんのことだ?」


「と、時久ちゃんにはまだ早いかなぁ」


私に向かっていた結衣の怒りは、時久にも向けられる


「時久さんだっけ、奈妓はもう私の彼女なんだから、気安く名前を呼び捨てにするのは止めてよね。」


「私は初めから名前で呼んでいた。それを今から変えろというのは恋人であっても道理に合わない」


睨み合う二人

教室中が私達の一挙手一投足に注目している

…そういえば、結衣のお姉さんもこの場に居たよね

不味いなぁ、また怒られる


恐る恐るお姉さんに視線を向ける

そこにはさっきよりさらにエグい状態のお姉さんと恋人の姿があった。肉眼だけどモザイクが見えるレベル。

…ここってラブホだったっけ?全然周り気にしてないじゃん。二人だけの空間じゃん


「…とにかく!呼び方変えて!じゃないと奈妓を貸してあげないよ?」


「そ、それは困る」


お姉さんに気が逸れている間に話が進んでいた

どうやら時久が私の呼び名を変えることで落ち着いたらしい


「私の呼び方どうすんの?」


時久に聞いてみる

彼女は少し考え込んだあと、恥ずかしそうにしながら私を新しい呼び名で呼んだ


「な、奈妓っち///」


「それもダメぇぇぇっ!!」


再び結衣の声が空き教室に響き渡った。

ちょっとドキっとしてしまったのは内緒だ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ