カリスマ台無し
「私が『お姉さま』…奈妓ちゃんの想い人」
倉園麗奈が説明した『お姉さま』と自分の記憶が完全に一致した。
「やはりあの時、駅で奈妓さんを抱きしめたのは貴女だったのね」
「…そうよ。私、私しか居なかった。私にしか出来なかった。」
妹と私だけの場所を作って、徐々に愛を育んでいこうと思っていた
けれどそんな必要はなかった。妹は私のことを既に愛していた。
奈妓ちゃん…バカなお姉ちゃんでごめんね
「これ、なんだと思う?」
倉園麗奈が小さな小瓶を机に置く、あの時の香水だ
反射的に手を伸ばしたが、その前に香水を上に挙げられて阻止された
思わず、玩具を取り上げられた子供のようにぴょんぴょん飛び跳ねてしまう
「ボランティア部から手を引くことを誓いなさい」
「誓う!誓うから!渡して!」
渡された香水をひったくるようにして取る
元々、妹が目的だ。妹を手に入れられればボランティア部を潰す必要はない
それどころか今は倉園麗奈に感謝の気持ちさえある。あの日に彼女と屋上で会ったから私は妹の『お姉さま』になれた。来期は部費に 便宜を図ってやっても良い
シャワーのように香水を振りかける
「初めて香水を付ける中学生男子みたいね…」
「うるさい黙れ」
つれない私にやれやれと言わんばかりに手を広げてみせる倉園麗奈
「餞別代りに『場所』も提供してあげる。今から奈妓さんを呼ぶわ」
「…小鳥遊結衣も呼んで」
小鳥遊結衣を呼ぶ目的は一つ
目の前で妹と結ばれるところを見せつける為
あの日の香水は妹との恋幕の証であり、毒虫を殺す殺虫剤だ
全身を覆う香水の香りが心地よい
あの日と同じように香水は私に勇気をくれた




