【遠山奈癒視点】強襲
「伝令ィ!内偵からの情報!妹さんが校門を出ました!方角からして自宅に向かっているようです。」
「分かった。尾行はそこまでで良いわ。可愛いからって付いて行っちゃ駄目」
生徒会室で報告を受けた私はゆっくりと立ち上がる
「シスコンが…」
「何か言ったかしら?副会長」
「いえ、それより早く行きましょう」
聞こえていたのだが、今はそれどころではない
後でくすぐり同好会に引き渡しておこう
「出るわ」
「「「「「ハッ!」」」」」
他の役員を引き連れて廊下を颯爽と歩く
恐れおののいて道を譲る生徒達、今の生徒会は教員であっても逆らうことは許されない
ボランティア部の部室の前に着く
突撃隊長の役員に眼で合図を送る。意図を読み取った役員は部室の扉を少し開いて火を点けた爆竹を投げ入れた。
「えっ?」
パン!パン!パン!
「わー!なになになに!?」
中から悲鳴が聞こえ、間髪置かずに突撃隊が突入する
「クリア!」
「クリア!」
「クリア!」
「我々は生徒会執行部であるッ!生徒会名誉総統会長『遠山奈癒』の名においてボランティア部の強制捜査を断行する!部員は捜査に速やかに協力すること!」
副会長が捜査令状を掲げながら宣言する
視界には役員に拘束されている部員共の姿が写った。
既に捜査隊は名簿やモニターを押収し、ソファの指紋採取に取り掛かっている。
…少し違和感を感じる
あまりにも上手く行き過ぎている
ボランティア部は全く強制捜査を予測していなかったのか?奈妓ちゃんが帰ったのは本当に偶然なのか?
「かなり手荒いわね。これが生徒会のやり方?それなら私も考えがあるわ」
「喋るな!発言は許可していな…」
奥で突撃隊二人に捕らえられていた倉園麗奈が一瞬で拘束を解く
一人を手刀で倒し、もう一人の攻撃をかわしながら足払いで転ばせた
彼女のアクション映画ばりの動きに思わず感銘を受けてしまう
倉園麗奈…昔少しだけ話した仲
報告書によると家柄や学力は決して高いとは言えないが、運動力だけはずば抜けていた。
「動くな!部員がどうなっても良いのか!?」
突撃隊が拘束されている光宗陽咲と毒虫の首筋にペン先を突き立てながら叫んだ
倉園麗奈が抵抗するのは想定済み。彼女の弱みも調べがついている
「陽咲ッ!」
「麗奈!私のことは良いから!」
「ちょ!私も人質になってるんですけど!?」
あっさりと抵抗を止め、再び拘束される倉園麗奈
…違和感は杞憂だった?武力で抵抗するつもりで証拠隠滅を図らなかった?
「遠山奈癒!貴女には貸しがある!今ここで貸しを返せ!10分で良い、二人で話させて」
「喋るなと言っているだろうが!」
手刀を受けた突撃隊が倉園麗奈を強めに叩く
先程のことをかなり根に持っているらしい
「借り?ああ…あのことね。部員の減刑に使った方が賢明だと思うけど?」
「いや、10分二人きりで話すことに使わせて貰うわ」
倉園麗奈の弱み、淫行ボランティア部の部長なのだから複数の女をはべらかしているかと思っていたら違った。彼女の弱みは光宗陽咲だ。想い人の減刑よりも私と10分話すことを優先させる?
やはりなにか企んでいる…よっぽどの交渉材料があるのか?
「…良いでしょう」
「会長!危険です」
「構わないわ、お前たちは下がれ」
倉園麗奈がどんな交渉をしてくるか少し興味が湧いた
曲がりなりにもボランティア部の部長だ。つまらない内容ではないだろう
他の役員全員を部室の外に引かせる
彼女と二人きりになるが、人質は突撃隊に拘束されたままなので私の身に危険が及ぶことはない。




