かつての仲間が力を貸してくれる熱い展開
時は遡る
詩織さんに振られた日、私は自宅の鏡を見ながら悩んでいた
「は、はにゃーん♡」
詩織さんを止めて、小鳥遊と部活を救う
それには色仕掛けで彼女に禁忌を犯させるしかない
自分の中で精一杯のせくしーぽーずをしてみたが、イマイチしっくりこない
そもそも連日振られたせいで自己評価はストップ安だ
「果てしてこれはせくしーなのだろうか…」
どうしよう、時間が無い
詩織さんはきっと二日後に来るだろう
誰かに見てもらおうか…一瞬姉の顔が浮かんだが、すぐに首を振って振り払う
姉じゃ参考にならない、目の前でせくしーぽーずなんかしたら胸揉まれるだけでは済まなそう
…アイツに頼むか
「ぜ、絶対笑わないでよね!」
「わ、笑うハズないだろ」
翌日の放課後、例の空き教室
私が特訓相手に選んだのは、時久だった。
いつも会っている部員やクラスメイト相手だと恥ずかしい
時久なら疎いせくしーぽーずでも笑わないで見てくれるだろうという魂胆で彼女を選んだ
「い、行くよ」
「来い!」
時久が身構える
え?なんで身構えんの?説明したよね?伝わってない?サーブ打つと思われてる?
「は、はにゃーん♡」
「……………」
なんで黙る?もしかして引いた?
「か…」
「か?」
「可愛い///」
「可愛い?」
ちょっと待って!狙いと違う!
私が言われたいのはキュートじゃなくてセクシーなの!
アイドルじゃなくてグラビアアイドルになりたいの!
「うぐぅっ!」
口からおっさんみたいな声が漏れる
時久が急に抱き着いてきたからだ
「ちょ!落ち着け」
よく考えたら時久にせくしーぽーずを見せるのは彼女にとって酷だったかもしれない
連日振られて自己評価が低かったせいもあってそのあたりの判断が鈍っていた
彼女は私のことをまだ好きでいてくれている。
「奈妓…私はお前のことを…」
告白される!?
私には『お姉さま』が…あ、『お姉さま』には見事に振られたんだった
じゃあ時久と付き合っても良いのでは…?
ガラッ!
空き教室の扉が開かれる
また小鳥遊のお姉さんが入ってきたのかと思ってめっちゃビビったけど、違う人だった
「ん?邪魔であったか?」
「別れを切り出されたら泣きながら腰に縋りつく先輩!?」
「…それ言わないで」
入ってきたのは眞帆先輩だった
彼女につっこまれたのは随分久しぶりな気がする
ここで会ったのもなにかの縁、彼女にも特訓に付き合ってもらおうか
時久と違って遠慮なく出来そうだし
「と、言うワケで詩織さんを何としても墜とさないといけないんですよ。力を貸してくれませんか?」
時久と同じく眞帆先輩にも部活存続の危機について説明した。
小鳥遊に振られたのは伏せている。ハズいから
「うーむ、仮にも一度は愛を誓い合った者だからな…」
「あっちは元カノだと思ってないみたいですけどね」
「…それも言わないで」
「ああ!ごめんなさい!冗談です!」
なんか麗奈先輩のせいで先輩をイジる癖が出来たな
機嫌をこれ以上悪くさせないようにしないと
「私からもお願いします。奈妓に協力して下さい」
時久が助け舟を出してくれた
眞帆先輩はいつになく真剣な眼で彼女を見つめる
「…お主はそれで良いのか?」
「え?」
「部活が無くなればお主は奈妓と付き合う機会が出来るんだぞ」
「……………」
短い沈黙の後、時久は朗らかに微笑んだ
「私は奈妓の幸せを願っている。例え隣に居るのが私じゃなくても、奈妓の幸せが私の一番の願いだ」
「……………」
今度は眞帆先輩が黙る
なんか良いシーンっぽいからさっき抱き着かれて告白されそうになったのは黙っておこう
「フォフォフォフォッ」
「「?」」
「我の修行は厳しいぞ、若造よ…ついて来られるかの?」
「眞帆老師!」
それから眞帆老師の修行が始まった
宣言通り修行はかなり厳しいものだった。
以下ダイジェスト
「はにゃ~ん♡」
「否!もっと足を上げろ!真上に上げろ!」
「無理!バレリーナか!?」
「もっと笑顔だ!恥を捨てろ!」
「な、なぜ私まで…」
「フォフォフォフォッ、これにて免許皆伝じゃ、よく耐えたの」
「あ、ありがとうございます!」
「色々と失ってしまった気がする…」
二日間の修行を終えた
免許皆伝らしいし、これで詩織さんをメロメロに出来るだろ
「ちょっと来い」
「?」
眞帆先輩に手招きされる
もう修行終わったんだよな?訝し気に近づくと彼女は少し背伸びをして私の耳元で呟いた
「万が一効かなかったら×××しな」
「そ、そんなこと出来るワケないじゃないですか///」
最後に教わった禁呪は絶対に使わない
そう心に誓った




