歪んでる女ランキング一位
翌朝、教室に入るなり小鳥遊に話しかけられる
「ナギっちおはよー!」
「お、おはよ」
どういうことだ?
昨日あんなことがあったのに普通に話しかけてきた
もしかして、朦朧としていて覚えていないのか?
「あ、あのさ…昨日のことなんだけど」
「昨日?あー送ってくれてありがとね。てか今日国語の小テストあるんだって!サイアクだよねー」
小鳥遊の眼が一瞬泳いだのを私は見逃さなかった
そういうことかよ。昨日のことはお互い無かったことにしましょうってか?
彼女に冷たくされるのも予想していたが、これはこれでキツイな
私の気持ちも無かったことにされたみたいで酷く虚しい
キーンコーンカーンコーン
放課後を告げるチャイムが鳴る
部活に行く時間だ。けれども今の私には部活に行く意味が見いだせない
『お姉さま』いや、小鳥遊の気持ちを射止めることが出来なかったからだ
「ふぅ」
小さく息を吐くと、私は屋上に向かった
部活は辞める。でもケジメはつける。
「お待たせしました。話とは何でしょう?」
ケジメとは彼女、藤詩織のことだ
放課後、屋上で会う約束をしていた。
「スキデスツキアッテクダサイ」
「…どういうつもりですか?」
クリスマスにニンテンドースイッチを貰ったアメリカ人のクソガキみたいに喜ぶと思ったが、詩織さんは眉をひそめて全く喜ぶ素振りを見せない
おい、憧れの奈妓さんが告白してんだぞ、喜べ
「好きになるのに理由がいる?」
「いります。私のどこが好きなのか言ってみて下さい」
「顔」
「……………」
なんで黙るんだよ
お前だって私の顔が好きって言ってたじゃん
「つまらないですね」
沈黙を破り、吐き捨てられた言葉
彼女の瞳からは私に対する愛情を感じない、むしろ軽蔑するような眼差しだ
あれ?振られるの私?二日連続で?カワイソ過ぎるよ
「奈妓さん、自分が犠牲になってボランティア部を守ろうとしていますね?」
「そ、それは…」
「もっと正確に言うと小鳥遊さんを守ろうとしている?」
「!!!!!」
ここでようやく詩織さんは笑顔になった
「あはは、図星ですね。奈妓さんって本当に分かりやすいです。」
「…何でもするから小鳥遊と部活にはもう手を出さないでよ」
「何でもする…ですか…」
詩織さんの視線に思わず自分の身体を抱きしめる
「あはは、心配しなくて良いですよ。今の奈妓さんには何も魅力を感じません」
「…随分ハッキリ言ってくれるね」
「気付いたんです。恋愛ってその気がない人間を墜とすのが一番楽しいのです。尻尾を振る奈妓さんみたいな負け犬を相手にしてもつまらない。私に牙を向く人の方が墜としがいがあります。」
「牙を向く…それって…」
「そうです。小鳥遊さんです。」
「!!!!!」
歪んでる。コイツは今まで会ってきた人の中で断然狂っている。二位は我が姉!
「ああ…想像するだけで高揚します。小鳥遊さんに別れを告げたらどんな顔をするのでしょう///あの三年生の先輩みたいに泣いて私の腰に縋りついてくるかもしれませんね」
「眞帆先輩にそんな酷いことを…」
交渉決裂、詩織さんは私の横を通り抜けて去って行った。
こうなったら実力行使しかない、恋人になることは出来なかったけど、彼女に小鳥遊は渡せない
私の部活動はもう少し続くようだ。




