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キスしてから恋人になるもんなの!?

翌日の昼休み、私は時久の元へ向かう

今日も空き教室で会う約束をしている。勿論抱き合うのが目的じゃない、誤解を解く為だ


「奈妓…昨日はすまなかった。夢中になり過ぎていたようだ」


「いやぁ…私も悪かったし」


既に着いていた時久に迎えられる

私は並んでセッティングされてある椅子に座った


ぴとっ


「!!!!!」


席に座るが否や時久が肩を寄せてくる

と、時久さん!?お話しは?お話ししないの!?

完全に恋人だと思われてんじゃん!


「と、時久」


「ど、どうした?」


時久から離れるように上半身をずらす。彼女にとってその動作は意外だったようで動揺が見て取れる

心が痛む…でも、言わなきゃ


「わ、私は時久と付き合ってない」


「そういえばまだ口付けをしていなかったな」


なにその返答!?話がかみ合ってなくない?

キスしてから恋人になるもんなの?恋人になってからキスするもんだと思ってた


「そういうことじゃなくて…他に好きな人がいるの」


時久の表情が消えた

女侍に斬られないか心配だ


「それは…酷いな。私のはじめてまで奪っておいて」


「奪ってないから!」


あれで奪ったことになるの!?時久の中学には保健体育なかったの?


「納得できない、せめて奈妓の好きな人を教えてくれ」


「私の好きな人は…」




私は時久に『お姉さま』のことを説明した。『お姉さま』と添い遂げることが夢だと言った。

今更だけど、顔も声も知らない相手を好きになったというのは頓狂な話だと我ながら思う

でも、それが真実だから、私は『お姉さま』を見つけるまでキスは出来ない


「…それが奈妓の夢なんだな」


「うん…ごめん」


怒られたり笑われたりされるかもしれないと少し思っていたが杞憂だったようだ

時久はちゃんと話を聞いてくれて受け入れてくれた


「謝るな。夢を追い続けるお前を否定しない」


「時久…」


時久に抱き着きたくなる衝動を必死に抑える

もし彼女が中学の時にチームメートだったら私はあんな惨めな気持ちになることはなかっただろう

彼女に負けて良かったと今なら思える。


「私の夢にも付き合ってくれないか?」


「え?」




数分後、私達はテニスコートに立っていた

着替える時間なんてないから、制服のままだ

あの夏以来にラケットを握る。こんな重たかったっけ?いっつも乳しか持ってないからなまってるな


「いくぞ」


「うん」


時久が軽くだしたボールを打ち返す

彼女の夢とは私ともう一度テニスがしたいということだった。

一瞬えっちな要求されるのではないかと身構えた私をぶん殴りたい

お母さん、お父さん、お姉ちゃん、私は汚れてしまったよ…


「ふっ!」


「はっ!」


軽いラリーから始まったが、いつしか本気の打ち合いになっていた

あの夏と違い、私が最初から劣勢だ。勘が鈍っているだけじゃない、時久の実力が明らかに上がっている。部活サボって女にうつつを抜かしているワケじゃなかったのか


「勝負あったな」


時久のスマッシュで決着が付いた。あの夏のようにダブルフォルトじゃない

息を整えてからネットに向かう


「やっぱり時久は卑怯だ」


「なっ!なにが卑怯なんだ!?」


「制服でテニスさせるなんてえっちだよ。ぱんつ見る為に誘った?」


「そ、そんなつもりじゃない!」


顔を真っ赤にして怒る時久に私は笑って手を指し伸ばす

からかわれたことを理解した彼女は苦笑いしながら手を握ってくれた

今度の握手は空虚じゃない、私はあの夏の呪縛から解き放たれた。

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