★ラブコメのお約束
翌日、お昼ご飯を食べた後、私は時久に指定された空き教室に向かう
時久のクラスに行っても良かったんだけどな…まぁ目立つのが嫌なんだろう
「奈妓!待っていたぞ!」
「う、うん」
空き教室の扉を開けると、既に時久が居た。
私の顔を見るなり目を輝かせた彼女に少し面食らいながら、横に座る
そんなに話したかったの?マジで私以外に喋る相手いないのか?
「昨日読んだ時代小説のことなんだが…」
時久は私が座るなり、好きな時代小説の話をしだした。
じ、時代小説ですよ奥さん!令和のJKが時代小説の話!
そりゃ友達居ないわ、私だって友達多い方じゃないけど、話題を合わせる努力はしている。
「そうなんだー強いねー」
時久の話に相槌を打つ、戦国武将なんて教科書に出てくる人以外知らねっての
今日は聞いてあげるけど、今度、話題を合わせることを教えてあげよう
「…そろそろいいか?」
「えっ?」
話の区切りが付いた所で時久は私に向き直る
「いいか?」ってなに?帰るってこと?
ギュッ
「!!!!!」
時久に抱き着かれた。
部活の癖で彼女の背中に手を回してしまってから気付く
こ、こ、こ、これはマズイのでは!?
誰もいない空き教室で抱き合う二人。こんなの誰が見たって恋人同士だし、お金を貰っていない状態で抱き合えば『禁忌』に触れたことになる。
椅子が向い合せじゃなくて、隣り合わせになってた時点で気付くべきだった!
カツカツカツ
時久の息遣いに混じって外から足音が聞こえてきた。こっちに向かってきている。
本格的にヤバい、私は急いで彼女から放れようとするが、放してくれない
それどころか、ますます力を籠めて抱きしめてくる。外の音が聞こえないくらい集中してるのか?こうなったら…
「んーーー!」
仕方なく、フォークダンスのように抱き合った状態で移動し、ロッカーの中に緊急避難する
幸いにもロッカーの中に掃除道具は入っておらず、かなり窮屈だが、二人入れる分のスペースはあった。
「奈妓?」
「シッ」
我に返った時久が話しかけてきたが、人差し指を口元で指して黙るように促す。
間髪入れず、空き教室の扉が開かれ、人が入ってくる
「!?」
ロッカーの隙間からみた乱入者の正体は小鳥遊の姉とその友達…じゃなくて恋人だった
激しく嫌な予感がする…
案の定、二人は先程まで私達が座っていた席に座り、いちゃつきだした
隣にいる時久から息を呑む音が聞こえてくる。
…もしかしてさっきより状況が悪くなってる?
コイツらまさか学校でおっぱじめないよな?時久と密着してる状態でそれは色々とやばい
チュッ
私の不安はどんどん現実に近づく。彼女たちはキスをし始める
同時に時久の息遣いも荒くなった。密着しているので私の胸も彼女にシンクロして動く
不安になったので、彼女の顔を見た。…それがいけなかった
「ちょっ!」
求めてると思われたのか、時久は顔を近づけ、私にキスしようとしてきた。
「んっ」
寸前の所で手で制したけど、その手が時久の胸に当たる。当たり判定デカ過ぎなんだよ!
彼女は一瞬、驚いた顔をしたが、すぐに表情を和らげる
「せっかちだな///」って顔してますけど違いますからね!
「あんっ!!」
拒否の意思を明確にしようと伸ばした膝は時久のスカートの間に入ってしまった
そんな大きい声出すなって!外の二人に気付かれ…
バンッ!
視界が急に明るくなる。小鳥遊姉とその恋人にロッカーを開けられたからだ。
密着している私達を見る彼女らの表情は険しい




