【遠山奈癒視点】差し出された手
姉視点です。
部屋で『日課』をしようとノートを開くが、一向に捗らない
理由は分かっている。奈妓ちゃんが小鳥遊結衣の家に泊まっているからだ
小鳥遊結衣…妹が作っていたチーズケーキは私のものじゃなくて彼女のものだった。
ハンバーグのお礼に妹が作ってくれたものだと勝手に勘違いした自分に腹が立つ
あの毒虫の着飾った姿を見た時、チーズケーキは私のものじゃないと確信した
落ち着いてなんていられなかった。お茶を持っていく振りをして妹の部屋の様子を見に行く、ノックはわざとしなかった。ドアを開けると、妹が毒虫にケーキを食べさせている場面が眼に入った。
二人はそういう関係なのだろうか?
あの日から私は妹に対する想いをひたすら自制してきた。
妹の恋愛対象が女性なら、自分は自制する必要がないのでは?
あの日と違って私たちはもう大人だ。今度は拒否されないのでは?
私は妹のサインを見逃していたのかもしれない
妹とハイタッチをしただけで満足してしまった。差し出された手を握って手繰り寄せなかった。だから毒虫に掠め盗られてしまった。
今日で『日課』は終わりだ
私は妹を取り戻す。前回のように衝動的には動いたりはしない、じっくり進めよう
もう失敗は許されない
☆用語解説☆
『あの日』 姉の奈癒が妹の奈妓に対して想いを伝えた日
この日から姉妹仲は拗れてしまった。




