【自社規制】【自社規制】【自社規制】
急遽泊まることになったのにも関わらず、小鳥遊家は温かく迎え入れてくれた
小鳥遊姉も友達を呼んでいたので、私と小鳥遊家と小鳥遊姉の友達で食卓を囲む
小鳥遊姉の友達はなんと春に私をテニス部に勧誘した先輩だった。あの時は失礼なことをしたと思っていたのだが、先輩は気にしている様子も見せずに気さくに話しかけてくれた。
夕食後、代わりばんこにお風呂に入り、小鳥遊の部屋でくつろぐ
下着がきついけど、また殺害予告されそうなので黙っておく
「ナギっちにこれ似合いそう」
小鳥遊に差し出された雑誌を見る
女子大生が着てそうな大人っぽい服装だ、小鳥遊と並んで歩いたら栄えそうだな
「私にはどれが似合うカナ?」
「うーん」
雑誌のページをめくって小鳥遊に似合いそうな服を探す
「------っ」
「え?」
雑誌から視線を外して小鳥遊を見る。なにか音が聞こえた気がしたけど、音の正体は彼女ではないらしい
気を取り直して視線を雑誌に戻す。
「これはどう?」
「えー?フリルが子供っぽくないカナー」
「-----んっ!」
また聞こえた…さっきよりもハッキリと聞こえた
「まーた始まったよ」
始まったって何のこと?
まさか小鳥遊家は霊が出るとか?か、帰りたい…迎えに来てお姉ちゃん…
「-----あんっ!!」
「あ…」
霊じゃなかった、霊の方が良かった
壁の向こう、小鳥遊姉の部屋から聞こえてくる音は…
喘ぎ声だ
もう雑誌どころじゃない、壁の向こうの情事が気になってしょうがない
小鳥遊の姉と友達…いや、恋人がしてるんだ…
小鳥遊の姉の恋人はさっき私達に気さくな笑顔を向けてくれたけど、今はどんな表情をしてるんだろうか…
小鳥遊の様子を盗み見ると慣れっこなのか冷めた様子だ
「……………」
壁から視線を戻した小鳥遊と目が合う
き、気まずい!さっき小鳥遊のことを意識してしまったから余計に気まずい
「お、お姉さんが責める方なんですねぇ…」
テンパってとんでもないことを小鳥遊に言ってしまった
彼女は眉を顰める。そうだよね!実姉のプライベートなこと言われたら嫌だよね!悪かった
「---【自社規制】---」
「あーうざ」
「ちょ」
壁ドンしようとする小鳥遊を必死に止める
お二人の楽しみを邪魔するのはヤボでしょ
「放してナギっち!」
「そんなことしたら悪いよ!」
「---【自社規制】---」
「壁殴ると一瞬静かになるから!」
「---【自社規制】---」
「---【自社規制】---」
「一瞬しかやめないのかよ!」
「---【自社規制】---」
「一瞬でもビビらさないと気がすまない!」
「---【自社規制】---」
「ビビらす必要ないじゃん!止めることないって」
「---【自社規制】---」
「---【自社規制】---」
「---【自社規制】---」
うっさ!
どんだけ盛ってんだよ!!高二だろ!?
てか、こっちの声もあっちに聞こえてるよね!?私たちもプレイの一環に利用されてんのか!?
「…そんなに止めたくないの?」
気付くと小鳥遊は腕を下ろしていた。じっと私を見つめている
「う、うん」
「---【自社規制】---」
小鳥遊を止めるのに気を取られていたが、この状況は危険だ
私まで流されてしまいそう…
「ナギっちってえっちなんだね」
「ち、違っ」
「---【自社規制】---」
「---【自社規制】---」
私はただ、お若い二人が楽しんで貰いたいだけだ。ホントだよ
「覗いてみる?」
「---【自社規制】---」「---【自社規制】---」
「えっ?」
の、の、の、覗く!?
ブラで鼻血出すくらいなのに、そんなの見たら全身の毛穴から血が噴き出すんじゃなかろうか
「---【自社規制】---」「---【自社規制】---」「---【自社規制】---」
小鳥遊がスマホを操作しだす。
まさか…部室みたいにカメラが設置してあるのか?
見てもいいのだろうか?ダメだよな。でも…後学の為にちょっとだけなら…
「ほら」
操作を終えた小鳥遊が、私に肩を寄せて画面を見せてくる
カシャ
その瞬間、スマホのインカメラが作動した。
「ナギっちのスケベ顔もーらい!」
画面には鼻の下を伸ばした私の顔が写っている
「たぁかぁなぁしぃぃっ!!」
スマホを奪おうと小鳥遊に襲い掛かった
こんなの保存されたら、一生小鳥遊に逆らえない
「きゃっ!」
勢いあまって小鳥遊を押し倒してしまう
か、顔が近い…
「な、ナギっち…?」
ドン!
いきなり壁から打音が聞こえてきたので、びっくりして顔を離す。
壁ドンされたんだ…
あっちに壁ドンされるのはおかしくない?
二人の情事はその後も続き、日を跨いでようやく終わった。
何回か攻守交替してたような気がする。
「そろそろ寝よっか」
そう言うと、小鳥遊は眼を擦りながらベットにモゾモゾと入っていく
私も寝よう。寝て今日のことは忘れよう。
「私の布団は?」
客人に寝床を提供しない不届き者に質問する
彼女は自分の掛布団をめくってみせた
「え?」
「一緒に寝るんだよー」
「えええええ!?」
ムリムリムリだよ!
いや、嫌とかじゃなくて自制するのがムリなんだよ!
小鳥遊は知らないだろうけど、トイレでお前のことドチャクソに犯してやりたいって思ったんだよ?
それでなくても、さっきの自主規制連発で興奮してんだって!一緒に寝るのはムリだ
「はーやーく」
ベッドをぽんぽん叩いて催促する小鳥遊
その可愛い所作に私は抗えない、ツンデレモードは終了したけど、甘々モードはまだ継続中みたい
「し、失礼します」
私が変に畏まってベットに入ると、小鳥遊は身を起こして明かりを消した。
一瞬キスされるのかと思った。今日の私はどうかしてる
視界が利かなり、嗅覚が研ぎ澄ませれたのか、隣に居る小鳥遊の香りを嫌でも意識してしまう
今日は同じシャンプーを使ったから自分も同じ香りをしているのだろう
「ナギっち…」
「うぇ!?」
急に話しかけられたので、声が裏返った。
意識していることを感づかれてないと良いけど
「興奮してるのカナ?」
「バカ言え」と、普段みたいにつっこむのは簡単だ
けれども私はそれが出来なかった。もしここで肯定したらどうなるんだろう?
今度は私達が壁の向こうの二人に声を聴かせることになるのか…
「…小鳥遊は?」
質問を質問で返す。ここで肯定する勇気はどうしても持てなかった。
小鳥遊はむくりと起き上がって私の顔を覗き込む
「た、小鳥遊?」
「興奮してても襲っちゃダメだよ♡」
「ば、バカ!」
再び寝転がる小鳥遊、数分後には寝息が聞こえてきた
その横で私は眠ることが出来ない、興奮しているからではない、自己嫌悪しているからだ
私は卑怯だ…『お姉さま』が好きでありながら、小鳥遊の愛情も受けようとしていた。
小鳥遊に誘われた体で一線を越えようとしていた自分が情けない




