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○○に恋愛相談してはいけない

「奈妓ちゃん聞いて!私のせいなの!私が先にキスしたから!!」


姉が必死に私の罪を否定してくれたが、完全に記憶を取り戻した私は居たたまれなくなって校長室から飛び出て廊下を走りだした


私は間違いを犯した

そしてまた間違いを犯しそうになった。




姉を離してはいけない




好きな人の為に罪を被ることは私だって出来ると思う

けど、その結果、好きな人に嫌われるとしたら?

…想像するだけで怖くなる。そんなことは耐えられない


姉はそれをやったんだ

私は姉に救われたのに恩知らずにも彼女を嫌ってしまっていた




――貴女の為ならどんな恨みを買っても構わない――


さっき聞いた姉の台詞

聴いた時は正直そこまで心に残らなかった。でも今ならその言葉の重さが分かる

姉は私の為なら私の恨みを買っても良かったんだ


姉を離しちゃダメだ

輪廻転生を信じてるワケじゃないけど、きっとこの次の次の次の人生だってこんな人と出会うことは出来ないだろう


……でも、でも!!

結衣を離すことも出来ないよ

もう彼女にあんな顔をさせたくない、あんな言葉を言わせたくない




ガラッ!


勢いよくボランティア部の部室の扉を開ける

闇雲に走っていたように見えたかもしれないが、実はどうしても()()に胸の内を聞いてもらいたくてここに向かっていた。


「奈妓さん!?真っ青な顔してどうしたのよ?」


返事の代わりに麗奈先輩の胸に飛び込む

陽咲先輩はいない、結衣とデート中なのだろう


「麗奈せんぱぁぁーい!!!」


「危なっ!?紅茶持ってるからやめなさいよ!貴女にかかってしまうわ!と、とりあえずソファに行きましょうよ」


麗奈先輩に抱きついたままソファに転がり込む


「一体全体なにがあったの?」


「ひっく、ひっく!」


「ゆっくりでいいから話してみなさい」


「ずびーー」


「……私のシャツで鼻かんでないかしら?」


引き剥がされてしまったが、麗奈先輩の表情は柔らかかった

淹れてくれた紅茶を飲み干してから私は親友に全てを話した


姉と結衣、どちらかを選ばないといけなくなったこと


気持ちは結衣に傾いたこと


けれども土壇場で『あの日』の真実を思い出したこと


全部、ぜんぶを話した

勇気を出して麗奈先輩への気持ちを話してくれた麗奈先輩なら何でも話せた

途中、先輩は一言も発さなかったが、時折、私の頭を優しく撫でてくれた


「…私、どうすれば良いですか?」


「貴女が正しいと思う道に進みなさい、後悔をしない選択をなさい」




「………月並み過ぎません?」


「相談しといてそんなこと言うな!」


「やっぱ処女に恋愛相談したのは間違いだったか」


「うっさい!」


麗奈先輩のツッコミが号令となって私はすくっと立ち上がった

さっきまでとは打って変って頭はすっきりしてる


「麗奈先輩、ありがとうございます。先輩がいてくれて本当に良かった」


「行くのね」


「はい、行ってきます」


「ついでに貴女の姉にお礼を言っておいてくれないかしら?」


「お礼?」


「私の机の中に陽咲と小鳥遊さんのデート写真を入れてきたのよ。最初はショックを受けたけど、その後に自分の気持ちに気付けたの」


「え?」


「ショックを受けるってことは、まだ陽咲のことが好きってことでしょ?」


「麗奈先輩!」


「私も後悔がない選択をしてみせるわ。陽咲にもう一度告白してみる。今度は回りくどい台詞なんて使わない、縋りついてでも気持ちを伝えてやるわ」


麗奈先輩にもう一度抱きつく

彼女の感触と香りも大好きになっていた


「お姉ちゃんに言っておきますね。喜んでくれると思います」


「え?喜びはしないんじゃないかしら。皮肉のつもりでお礼って言ったのだけど…」


「喜びますよ。きっとお姉ちゃんは写真を送ることで麗奈先輩にエールを贈っていたんだと思います」


「そ、それは違うと思うけど…」


姉は優しい人だ

麗奈先輩ともいずれは友達になれると思う


麗奈先輩からゆっくり離れて手を振って別れ、スマホで姉と結衣を屋上に呼び出す

私の気持ちを二人に伝えよう


決着の刻だ

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