政府が極秘に造り出した姉型完璧アンドロイド
首をすぼめながら終礼を受ける
まさか『平身低頭』になる作戦をまた使うとはなぁ
頬にもキスマークが付いているので、頬杖を付いて隠す。
先生から見たら凄く落ち込んでるように見えない?心配して呼び出されたらどうしよ
仲の良いグループで喋ってたら彼女が急にキスしてきてこうなりましたって説明できないよ
ドキドキしていたが、どうやら杞憂で終わりそうだ
終礼はもう終わりに近づいている。あとは『礼』を乗り切ればなんとかなる
ほっぺ抑えながらお辞儀するのは不自然過ぎるけどやるしかない
ガラッ
!?
突然の乱入者に教室中がどよめく
「奈妓、来なさい」
「ふぇ?」
乱入者の正体はテロリストではなく、我が姉だった
クラスメイト達の視線を物ともせず彼女はこちらに真っすぐ近づいてきて、私の手を取って教室から連れ出す。
出る時に先生が「まだ終礼中ですよ」と制止してくれたが、姉の「姉妹ですので」という言葉に引き下がってしまった。
いやいやいや「姉妹ですので」は終礼からバっくれる理由にならんでしょー
「あの毒虫…私の奈妓に傷をつけやがって………許さない」
私の手を引きながらブツブツと結衣に対する文句を唱え続ける姉
身体中に刻まれたキスマークは既にバレてるみたい
「お、お姉ちゃんもっとゆっくり歩いてよ」
「『お姉ちゃん』ではなくて『奈癒』と呼びなさい」
奈癒ぅ!?呼んだこと無いよ
物心ついた時から『お姉ちゃん』って呼んでるよ。それを今更、名前で呼び捨てにしろと?
放課後は姉が恋人になるってルールだけど、それはかなり抵抗がある
「奈妓?」
「は、はい奈癒お姉ちゃん」
「『お姉ちゃん』は必要ないわ」
「…分かったよ奈癒」
いつもの『奈妓ちゃん』ではなく呼び捨てにしてくる姉の剣幕に押されて折れてしまった
うう…なんか怖い、甘々な姉の方が好きだなぁ
学校から出た私達は駅前のカラオケに入った
姉妹でカラオケはキツいんよ
「~♪」
パチパチパチ
唄い終わった姉に乾いた拍手をする
採点してたら100点を叩き出しそうな美声だが、政府が極秘に造り出した姉型完璧アンドロイドにはもう今更驚かない
姉に促されてマイクを掴む、アンドロイドには次唄う人の気持ちは分からないのかな?
二時間唄い続けてようやくカラオケから解放される
なんで全部私の好きな曲、唄ってくんだよ。私のスマホの中見てないよな!?
家に帰るのかと思ったが、お洒落な感じのカフェに誘導されてそこに入る
もし結衣と入ったらウキウキな気分になるんだろうけど、今日の怖い感じの姉だと気が重い
夕飯前なので飲み物だけ頼む
可愛いエプロンを付けた店員さんが持ってきてくれてそれを受け取る
その時、見てしまった。奥の席で楽しそうに会話する結衣と陽咲先輩の姿を
「あっ」
「どうしたの?」
「な、なんでもないよ」
思わず声を出してしまい、姉に問われたが誤魔化した
そうだった…私と姉がデートしている間、結衣と陽咲先輩もデートするルールだった
見ないように頑張るが、どうしても気になってチラチラ見てしまう
すっごく楽しそうにしてやがるぅ!
なぁーんで夕方にパンケーキなんて食べてんだよ!?この後帰るんだよね?この後の為に腹ごしらえしてるんじゃないよね?陽咲先輩に食べられちゃダメだかんね!!
結衣がまたボランティア部の女に手を出されないか心配過ぎて尾行したかったが、姉から逃れる術はなく、家に帰って来てしまった。
「奈妓ちゃんありがとう、楽しかったわ」
「う、うん私も…」
元の甘々お姉ちゃんモードになった姉
なんなの?ギャップ狙いか?全然キュンと来ないぞ
それより結衣だ、私の彼女が陽咲先輩の九人目の彼女にされてないか気が気でない
「結衣ぃ…」
自分の部屋で結衣に通話を掛けてみたが、出る気配がない
「なにしてんだよぉ」
結局連絡がついたのは九時過ぎだった
門限越えてんぞ!!
「なに?」
「なにって…陽咲先輩と今まで一緒に居たの?」
電話越しの素っ気ない声に戸惑う
お昼に蕩けるようなキスしたのにこの豹変ぶりはなに?
姉よ…私に効くギャップはこっちだぞ
「居たけど普通にデートしてただけだよ。奈妓もそうでしょ」
「そうだけど…帰ってきたら連絡くらいしてよ」
「今帰ってきたんだって、今日はもう疲れたから明日話そ」
「え、まっ」
にべもなく通話を切られる
ぐぉぉぉぉッ!!女心って分からねぇーーー!




