本当の魅力とは
清純だと思われていたリリィの本性を知り愕然とする彼らの様子に、マリアはクスクスと笑った。
何故、マリアがこんな映像を持っているのか?
話は数日前に遡る。
――数日前。ケネーシア王国王城にて。
「~♪」
「エルミーヌ様、最近はご機嫌ですね。」
「ええ、この前アイネス様から頂いた美容品のお陰で肌の調子が良いの。」
「確かに、あの『りんす』や美容品などを使い始めてから、エルミーヌ様も王妃様達も皆更に美しさが増したような気がします。」
「アイネス様から貰ったお薬のお陰で症状も収まりましたし、お兄様の取り計らいのお陰で庭にも出歩けるようになりましたわ。次にアイネス様のダンジョンに行く時は王城にも来てくれないか尋ねてみようかしら?」
「それは良い提案ですね!きっと喜びますよ。」
夜の紅茶を飲みながら侍女と楽しげに会話をするエルミーヌ。
アイネスのお陰で今まで悩んでいた呪い…アレルギーの症状もピタリと収まり、呼吸困難に苦しめられる事はなくなった。
休学していた学園にももうすぐ復学できるようになるし、薬と一緒に貰った「りんす」や美容品を使ってたお陰でアレルギーの症状によってひどい有様だった肌や髪ツヤが戻り、それどころかもっと良くなった。
平和な夜を満喫していると、ベランダの方から窓をノックするような音が聞こえてきた。
「あら、何かしら?誰かがノックしているみたいね。」
「まさか!此処は3階でございますよ!」
突然のノックに不安になる二人。
エルミーヌが恐る恐るベランダの窓へと近づき、カーテンを開けた。
すると、そこには見覚えのある夢魔が立っていたのだ。
「キャーーーーーーー!!!!」
「ま、マリアさん?!」
「突然やって来てごめん、エルミーヌちゃん!中に入っても良い?」
突然の来訪者は、なんとマリアだったのだ。
マリアは手土産の入った袋を持って、エルミーヌに親しげに話しかけてきた。
エルミーヌは慌ててマリアを中に入れると、マリアを問い詰めた。
「マリアさん、貴方何故此処に!?」
「アイネスちゃんには外出許可貰ってきたよ!他の人にバレないように姿を消す魔法と気配を消す魔法は使ったわ!」
「そういう意味ではないですわ!貴方自分が一般の人間からどう見られているのか分かっていらっしゃるの!?」
「それは知ってる!ごめんね!でもエルミーヌちゃんにどうしてもお願いしたい事があるの!」
「お願い…?」
「このままだとアイネスちゃん、糞男に軟禁されちゃうかもしれないの!」
「はぁ!?!」
突然の言葉に素っ頓狂な声を上げてしまうエルミーヌ。
しかし、困った様子のマリアの表情を見て、彼女の話を聞くことを決めた。
##### #####
「なんですのその男は!無理やりスキルで女性を誑かそうとした上に、自分の思い通りに行かなかったからってエールを掛けるだなんて!無礼にも程がありますわ!」
「でしょ!?そう思うでしょ!エルミーヌちゃんなら分かってくれると思ってた!!」
マリアから事情を全て聞き、エルミーヌは今までにないほど激怒した。
突然のリリスの登場に震える侍女が注いでくれた紅茶を飲み、マリアが激しく頷いてみせる。
「複数の女性を囲い込んでいて、その中にアイネス様を入れようだなんて…!更には、嫌がるアイネス様に無理やり戦いを申し込むだなんて男としても人間としても終わってますわその男!」
「だよね!!!なのにアイネスちゃん、あたし達が馬鹿にされた事だけ怒ってて自分がされた事にはまっっっっっったく触れてもいないの!」
「話を聞いてるだけでもヒヤヒヤしましたわ…。アイネス様はもっと自分に気をかけるべきですわ!」
「そう言ってくれると思ったよ、エルミーヌちゃん!」
「マリアさん!」
がっしりと抱擁を交わすエルミーヌとマリアに、侍女は状況が読めずにオロオロと困惑した。
一度マリアから離れると、エルミーヌは言った。
「事情は分かりましたわ。それで、わたくしは何をすればよろしいですの?」
「協力してくれるの?」
「当たり前ですわ!アイネス様にはこの前助けてもらいましたし、気高い精神を持つリリスの貴方がわざわざ頭を下げてまで頼みに来てくれたんですもの!なにより、親しい友人を助けるのは当然ですわ。」
「エルミーヌちゃん…、ありがとう~~~!」
微笑んで協力を了承してくれたエルミーヌに、マリアは感動を覚え、思わず涙ぐんでしまう。
そんなマリアに対し、エルミーヌは真剣な表情に戻ってマリアに尋ねた。
「それで、わたくしは何をすればよろしいですの?」
「ある女の裏情報を調べて欲しいの!」
「女?そのアイネス様を侮辱したという男でなくて?」
「うん、『リリィ』っていう女。Sランクの冒険者で、男一人と女5人でチームを組んでいる一人よ!」
「リリィにSランク冒険者って…あの有名な支援魔法の使い手であるリリィですの!?」
まさかの大物の調査を頼まれ、目を丸くさせるエルミーヌ。
マリアはそのまま続けた。
「さっき、5人の女を連れた男に絡まれたって言ったでしょ?」
「えっ…ということはまさか、アイネス様を侮辱したという男のダンジョンマスターって、あの『タケル』ですの?!」
「そう。それで、リリィって子はあたしと同じリリスなの。他の女の子達も、エルダーウィッチとかヴァンパイア・ロードといった魔物よ。」
「な、なんということですの…!それじゃあつまり、冒険者ギルドの冒険者に危険な魔物が紛れ込んでいたってことですの?有り得ませんわ…。」
「まぁ、そうなるよねぇ。突然城に押しかけたあたしが言うことじゃないけどさ…。」
魔物から人々を守る冒険者…しかもその中でも英雄級の実績を持っているSランク冒険者がダンジョンマスターで、彼の連れている美しい女性達が皆彼によって召喚された魔物だと知り、エルミーヌは頭を抱えた。
もしもこの事が世に広まれば、国…いや、世界中で大問題になる。
そんな爆弾のような真実を告げたマリアはそのまま説明を続ける。
「タケルって男は<誘惑>でその女達に恋心を抱かせて心酔させて、自分の理想の環境を作って来たみたいなんだけど…、それだと一つ変な事があるんだよね。」
「変なこと?それはなんですの?」
「リリィって女までタケルに心酔している風な事よ。リリィって子はあたしと同じリリスで、魅了系のスキルは全く効かないのにね。」
この事を言われて気が付いたエルミーヌはハッとなる
リリスは夢魔達のトップに君臨する上位種族。
<誘惑>は勿論のこと、その上位スキルである<魅了>だって掛かることはない。
魅了系スキルのプロとも言えるリリスのリリィが、人間のタケルに恋心を抱くわけがないのだ。
「普通に恋心を抱いたとか、そういうのはありませんの?」
「有り得なくはないかもしれないけど…、殆ど有り得ないよ。そもそもリリスって自分の外見や魅力にはすごい自信があるから、他の女を誑かしてハーレム作るようなクズ男は絶対に好きにならないわ。」
「言われてみればそうですわね…。わたくしもそんな男は御免ですわ」
「そう考えると、リリィって子はわざわざ恋心を抱いている振りをしているってことになるんだけど、これって絶対なにか裏があるよね?何のためだと思う?」
「…ハッ、その男を自分の都合の良い方向へと誘導して操るためですわね!」
エルミーヌの推理に、マリアは頷いてみせる。
マリアは最初からずっと違和感を覚えていた。
人間であるタケルが夢魔の使うスキル…それも<魅了>より扱いづらくて夢魔達もあまり使わない<誘惑>を習得していることを。
人間が自然に習得出来るのはそれの一つ上位に当たる<魅了>で、<誘惑>が習得出来る事はあまりない。
更に、リリスであるリリィまで虜になっている様子だったのだから更に違和感が募った。
しかしアイネスからリリィ達の情報を貰った時、マリアはリリィがタケルの最初の魔物だったということを知り、この真実に気が付いたのだ。
「多分あの男に<誘惑>を教えて習得させたのもリリィって女だよ。<誘惑>なんてマイナーなスキル、夢魔が直々に教えでもしない限り習得なんてしないスキルだもん。タケルって男が派手に<誘惑>使いまくれば、その女が魅了系スキルを使ってもバレにくくなるから。」
「そうなると、冒険者になることを勧めたのもそのリリィというリリスでしょうね。冒険者になって人としての実績を上げれば、獲物になる男性が寄ってきますし、娼館にも行きやすくなりますもの。」
「きっと最初に召喚されて早々にタケルって男を見限ったけど、上手く利用すれば一人で男達を襲うよりもずっとやりやすいと思ったんだろうね…。リリスらしいっちゃらしいよ。」
「……一応確認ですけど、マリアさんはこういう事は企まなかったのですね?」
「出来るわけないじゃん!だってあたしが来た時には既にベリアルさんやイグニさんがいたんだもん!」
「あー…」
「アイネスちゃんも頭も良いから下手に動いたらバレる可能性があるし、ダンジョンのご飯が美味しいからわざわざ男の精力吸い取って食事を取るなんて方法取らなくてもいいし、そもそも召喚されてすぐにリリスとしてのプライドをへし折られたし…。」
「と、とにかくマリアさんがリリィって方と同じじゃないようで安心しましたわ…。」
過去の敗北を思い出し落ち込むマリアの様子を見て、エルミーヌは申し訳ないと思いつつもマリアがリリィのようなリリスでないことに安堵した。
「もしこれが事実でしたら、色々な国で彼女に精力を搾り取られた被害者が多そうですわね。お兄様に言って過去の事件を調べて貰ってみますわ」
「アイネスちゃんの予測だと、タケルって男とその仲間達は此方のダンジョンの情報を知るためにこの国にやって来る可能性があるんだって。そうなるとその子もこの国でも男を襲う可能性があると思う。だからその子が起こしそうな場所に、これを数日間置きたいの。頼んでも良い?」
そう言ってマリアが出したのは、数十個を超える小型カメラとレコーダーだった。
エルミーヌはその魔道具を見て何かを記録するための魔道具である事を察し、ニコリと微笑んだ。
「ええ、構いませんわ。冒険者をしているリリスが襲いそうな場所ですと、人気のない場所か、男娼館の可能性が高いですわね。早朝にでも使いを出してそれらを設置させますわ。」
「ありがとう!本当に助かるよ~!」
「わっ、ちょっと…」
エルミーヌに抱きつくマリアに、エルミーヌはクスッと笑いつつもマリアを受け入れたのだった。
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こうして、マリアはエルミーヌの協力を得ることが出来た。
エルミーヌはリリィが狙いそうな場所全てにレコーダーとカメラを設置させ、タケル達がいった場所にあった事件を全て調べた。
するとマリア達が予想していた通り、タケル達が訪れた街でサキュバスに精力を搾り取られて殺されたと推測される変死体が出たケースが幾つもあったのだ。
更にタケル達がケネーシア王国に訪れると、全く同じような死体が数体発見されるようになった。
ダンジョン戦争前日にマリアが再び王国を訪れて回収されたカメラとレコーダーを確認すると、リリィが男娼の精力を搾り取って殺す様子がバッチリ取れていた。
更にはリリィの本性が分かるような発言も録音できたため、今こうして彼女の企みをタケル達に暴露したのだった。
案の定タケルはリリィの所業を全く知らなかったようで、リリィから距離を取り、恐ろしい物でも見るような目でリリィを見ていた。
『夢魔に魅了された人を元に戻すにはその子の本性と現実を叩きつけるのが一番だと思ってたけど、やっぱり効果は抜群だよね~。その分夢魔自身の精神的ダメージも抜群だけど。』
「リリィ…これは、本当なのか…?」
「ち、違います!信じてください!これはきっとアイネスさん達が作った幻です!」
『あ、因みに今流した映像以外にもリリィちゃんが実際に男性を襲っている映像や赤裸々に色々言っちゃってるのもあるよ。なんだったら過去にリリィちゃんが襲ったと思われる変死体について纏めたのがあるから、それも見せてあげようか?自分たちが訪れた事のある街の殆どで起きたと分かったら、流石に認めざるを得ないよね?』
弁解しようとするリリィだったが、言い逃れなどさせないと言わんばかりにマリアが追い打ちを掛ける。
タケルと攻略部隊の魔物達から一斉に疑念の視線を向けられ、リリィは身体を震わせ言葉を詰まらせる。
そんなリリィに対し、マリアは愉しげに笑いながら喋る。
『ねぇ、どんな気持ち?そんな人間相手に媚を売って今まで築き上げてきた評価が、隠していた事がバレて一瞬でグチャグチャに壊された気分は?リリス的には一番キツいよね!というか映像で笑ってるリリィちゃん醜いし、今のリリィちゃんは本当ダサいよね。いつリリスからトロールに種族変化したのかな?ププーッ!』
リリィを思いっきり挑発するマリア。
その顔は隣で見ているスケルトントリオが見たことないほどの愉しげな笑顔だ。
タケル達に本性がバレて言葉を詰まらせていたリリィだったがついに我慢できなくなったのか、今までの清純そうな姿から一気に豹変した。
「てっめぇふざけんじゃねぇよこの糞ビッチが!!!テメーのせいで私が今までしてきた事が台無しになっただろうが!表出てこいやこのドブス!!」
『は~?ブスもビッチもアンタの事でしょ~?てか男食い漁ってる癖に清純系ぶるとかホント笑えるんだけど~!清純系を貫きたいんだったら頭の脳みそを一度洗ってきたらぁ?』
「うっせーんだよこの腹黒女!このクソ童貞がクソ味の濃いまっずいメシしか出さない上にベタベタ触ってうろついてるせいで碌なエネルギーを吸収できないんだよダァホ!適当な男捕まえて精力搾り取らなきゃやってけないんだっつーの!」
『え~なにそれ可哀想~~。アイネスちゃんとシルキーの二人が栄養満点、しかも美容に良い食事を3食用意してくれてエネルギーを吸収する心配とかないあたしのダンジョンじゃあ考えられなぁい!ダンジョンマスター運悪すぎ~♡』
「は~~~?じゃあテメーの主を私のメシ係に任命させてやるからさっさと寄越せこのマウント女!」
『はぁ!?アンタみたいな全身色んな意味でゆるゆるな女にうちのアイネスちゃんやるわけないじゃん!』
それまでの愛らしい姿は何処へ行ったのか。
マリアとリリィによるリリス同士の激しいキャットファイトを始めた。
もしもマリアがリリィの前にいたらスキルや魔法を使い物理的なキャットファイトを行っていただろう。
タケル達はなんとか止めようにも、リリィの豹変ぶりと二人の勢いが凄すぎてとても口出しできそうになかった。
『良い?アイネスちゃんはあんたと違って本当に良い子なの!あたしが来て間もない時に夢魔の特性を知った上で「冒険者から精力を補給できるエリアを追加しましょうか?」って提案してくれるぐらいには気を使ってくれるの!あんたみたいなリリスなんて毒草でも食ってなさいよ!』
「なにその夢魔の為と言っていいエリア!?あの何考えてるのか分かんない人間の小娘が本当に提案した訳!?」
『うん。「『けんけつ』みたいなもんですよね?殺さない程度に抑えてくれるなら作っておきます」って通訳越しで。アイネスちゃんの出してくれるご飯で十分だったしアイネスちゃん子供っぽいから流石に遠慮したけどさ。ま、あんたには喉から手が出るくらい欲しい場所だろうけどね~!』
「その上から目線でしか話す事の出来ない腐った口塞げよ性悪ドブス!!死ね!馬に顔面蹴られて顔凹まされて鼻血出しながら一回死ね!!」
『あんたが死になさいよこのクズ腹黒女!あんたがそっちのダンジョンマスターに<誘惑>なんて教えたせいでアイネスちゃんがひっどい難癖付けられて危うくそっちのヴァンパイア・ロードに殺されかけたんだっつーの!』
「それはそこの童貞男に言えよバーカ!私はあくまで<誘惑>を習得させてやっただけで、この馬鹿が好き勝手に使いまくったんだっつーの!」
「ば、馬鹿…!?」
突然の馬鹿呼ばわりにタケルは唖然となる。
リリィはもう全てを暴露するつもりなのか、そのまま話し続けた。
「この男はね、女の子を侍らせて英雄気取りするってアホみたいな願望を持ってる男なの。私がちょっと頬を赤らめるだけで私が自分を好きだって勘違いするような頭の軽い馬鹿。魔物を人間の街に一緒につれてきて冒険者にさせて、まあまあ顔の良い女達に片っ端から<誘惑>を使うようなクズ。」
「ば、馬鹿…、クズ…!?」
「挙げ句に下の弱い魔物を使ってのレベリングなんてやり始めちゃってさ、まあコイツのおかげで今や私はレベル150超えしたし、他の幹部の女4人も恋で頭がゆるゆるの馬鹿になって、私が好きに人間から精力を搾り取る事ができたってわけ♡そのままコイツを完全に洗脳して私にダンジョンマスター権限を移し替えてやろうと計画してた所でこんな邪魔なんてしやがって…!」
『うわぁ、そんな事考えてたんだ。ホントクズだね。』
「クズだから何かぁ?アンタみたいに陰から偉そうにしてる女と違って私はそれだけの力があるの。世の中は美しくて強い、魅力のある女が勝つように出来てんのよ!悔しかったら、そのブサイクな面でも晒してみたらぁ?ま、出来ないでしょうけど。アーッハッハッハッハ!!」
リリィは音声しか出さないマリアを嘲笑い、高笑いを上げる。
その姿は清純な女性を振る舞っていた頃の面影はなく、悪女そのものだった。
マリアはそんなリリィに対し激高することもなく「美しくて強い魅力のある女?」と鼻で笑った。
『確かに、魅力のある女の方が世の中都合良く働くっていうのは合ってるだろうね。』
「それみたか!!」
『でも、魅力のある女ってのはあんたの事じゃないわ。』
「はぁ?!」
眉を上げて聞き返したリリィに対し、マリアは告げた。
醜く顔を歪めるリリィをカメラの映像越しに見るマリアの顔は、まさに夜の女王と言って過言でないぐらいに気高く、美しく笑っていた。
『本当に魅力のある女ってのは、外見が美しくて、ステータスが優れてるだけの女じゃないわ。外見が綺麗で強かで、家事でも仕事でもなんでも熟せて、それで内面が良い女を指すのよ。ただ見た目が良くて強いけど周囲を駒にしか見てない女なんてただの性格ブス。アラクネ…いやスライムにだって勝てないわ。』
「なに…!?私がスライムごときに負けるぐらい魅力がないって言いたいの!?」
『実際、そうなるはずだよ。だって人を嘲笑ってる時のあんた、内面の性格の悪さが滲み出ちゃってて本当にブッサイクな顔してるんだもの。』
「なっ…!」
『人の性格って、案外顔に出るもんらしいのよ?あんたに引っかかるのはせいぜいそこのタケルって男のようなクズ男か女なら誰でも良いっていう安い男だけ…。性格ブスのあんたにはそんな男達がお似合いだよ!』
ハッキリとリリィに断言したマリアの声の力強さに、タケル達は思わず頬を赤らめた。
そんな中、性格ブスと言われたリリィの顔はまるで鬼のような恐ろしい顔になり、ギリギリと歯を食いしばって叫んだ。
「この、クソ女がああああああああああああああああ!!!この私の顔をブサイクなんて言いやがって!殺してやる!殺してやる!!殺してやるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
『あたしと戦いたいんだったら、迷宮に入れば?私は迷宮の何処かにいるよ。クズなあんた達を全力で邪魔してやるんだから!』
「ああ、入ってやるよ!そしてあんたを見つけ出して二度と人前に出れないような顔にしてやるわ!!!」
そう言って、リリィは怒りのままに鏡の迷宮の中へと入っていった。
その後ろ姿を見てハッと我に返ったタケルは、すぐに攻略部隊の魔物達に声を掛けた。
「ぼ、僕たちも先を進もう!早く最深部に辿り着かないと!」
タケルは攻略部隊の魔物達を連れ、迷宮の中へと入っていった。
そんな彼らの様子を、マリアはクスリと笑った。
「さぁ、ギッタンギッタンに叩き潰してやるんだから!」




