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どうやらいつの間にかレベルアップしていたようだ

<オペレーター>に落ち着くように言われ、ひとまずマイホームのリビングにベリアルとゴブ郎を案内して、私は一息付いた。

一旦冷静になったことで、大分状況が整理出来るようになった。


今まで私以外の人は入ることが出来なかったマイホーム。

ゴブ郎やスライム、ウルフといった人型ではない魔物は入る事が出来たけれど、ベリアルやイグニ達のような人型の魔物は扉の境界線で阻まれてしまう。

しかし、今、私の前にはベリアルがいる。

コレは明らかに何かがおかしい。

前は不可能だったことが突然可能になっただなんて、普通は起きるはずじゃないのだ。

そうなると、まず疑うべきは私の持つステータスだ。

そう考えた私は、<オペレーター>に声を掛ける。


「<オペレーター>、ステータスを見せてもらえませんか?」

『了。ステータスを表示します。』


<オペレーター>は快く私の頼みを了承し、すぐに私の目の前にステータスを表示してくれた。

すると、とんでもないことが分かったのだった。


「……レベルが、上がってる?」


そう、前に確認した時はレベルが1だったはずの私のレベルが、レベル14まで上がっていたのだ。

それだけじゃない。

私の持っていた能力値やスキルの方にも、新たな変化が生まれていた。


【名前】小森 瞳子

【種族】ヒューマン

【職業】ダンジョンマスター

【年齢】17歳

【称号】ダンジョンマスター、異世界転移者、神に捨てられた者

【レベル】14


HP: 104/104 MP:86/86

力:14 防御:20 素早さ:20 魔法:25 運:31


【スキル】

アイテムボックス LV―

鑑定 LV―

隠蔽 LV20

威圧耐性 LV4


【ユニークスキル】

ホーム帰還 LV3


【付属スキル】

オペレーター LV―

ガチャ LV―

お出かけ LV1

ネットショッピング LV―

カスタム LV―

リフォーム LV2

招待 LV1


どうやらレベルが上がった事で、能力値もやや上昇したようだ。

<オペレーター>にこの能力値が大体どのくらいなのか聞いてみると、新入り冒険者の平均ぐらいらしい。村人から新入り冒険者にグレードアップとは、なんとも喜んで良いのか微妙なラインだ。


「ですが、なんで急にレベルなんて上がったんでしょう…」

『回答。ダンジョンマスターは<契約(コントラクト)>した魔物が敵を倒して経験値を稼いだ際、その経験値の数割を貰い受ける事が出来ます。<契約(コントラクト)>した魔物が大量の経験値を稼いだことでダンジョンマスターの貴方様のレベルが上がったと推測されます』

「あ、あー…。そういえばありましたね。大量の経験値を手に入れるような機会…。」


マリアとフォレスを召喚する前にあった、第三騎士団達の襲来。

私はその場にいなかったけれど、ベリアル達が彼らの相手をしたために私にも経験値を手に入れたのだろう。

少しズルい感じもするけれど、こういう仕組みなのであれば私もレベルを上げることが出来そうだ。


次に気になるのは、スキルの方。

幾つかスキルレベルが上がっているものや、新しいスキルが増えている。

<威圧耐性>は分かる。多分、ベリアルとイグニの喧嘩の仲裁で散々彼らの威圧の余波を受けたからだ。

いきなりスキルレベルが4まで行っている所を見ると、私も知らない内にかなりの威圧を浴びていたようだ。

ただ、これは普通に有難い。彼らの威圧は心臓に悪いんだもの。


<リフォーム>も、私が快適なマイホームを作るために<ネットショッピング>で貯めたRPを使ってあちこちをグレードアップさせていたからだろう。

リフォーム画面を確認してみれば、リフォーム出来る範囲が増えていた。

今度またマイホームの大改築をしてしまおう。


リフォームのスキルレベルが上がったことと、最近テオドールさん達に見てもらうアイテムを注文したり、マルクくん達のために薬やら服やらを結構注文したりしたことが理由なのか、<ホーム帰還>のスキルレベルも3に上がっていた。

恐らく、<ホーム帰還>のスキルレベルが上がったことが理由なのだろう。

付属スキルとして、<招待>が増えているのは。


<オペレーター>にスキルの説明を貰ったところ、<招待>の効果はそのまま文字通りのものだった。


<招待> LV1 ホームに人を呼ぶことが出来るスキル。招待した人にルールを課せる事が出来る。


要はベリアル達のような人型の魔物もマイホームに入れるようにすることが出来るスキルのようだ。

スキルレベルがあるのは、一度にマイホームに入ることが出来る人数が制限されているのだろうか?

テレビやゲーム機はマイホームに置いているので、マリアやイグニが喜びそうだ。

しかし、招待した人にルールを課す事が出来るという意味が良く分からない。

一体どういう事だろう?


『回答。貴方様がルールを設定することにより、ホームにいる者に限定してそのルールを遵守させることが出来ます』

「え、つまりは「ジャンケンで私に負けろ」とかいうルールを決めたらその人は絶対にジャンケンに勝てなくなるって事ですか?」

『肯定。そういうことです。』

「なにそれ、能力がエグすぎる」


どんなルールでも招待客は絶対遵守ということは、『私の命令に絶対に従え』とか『武器を構えたら自害しろ』なんてルールも従わせる事が出来るということだ。

流石にマイホームで誰かを自害させる気はないけれど、私がその気になればそうすることが出来るということだ。

なんと恐ろしいスキルだろう。

このルール設定というのは、封印しておこう。

ダンジョンの中にいる時は物騒なルールを設定なんてしないだろうけど、これは下手に使うと大惨事になりかねない。


「それにしても、知らない間にレベルアップしていたとは…。そういえば襲撃があった日とか、鑑定してもらいたいアイテムの候補を注文してた時にメッセージっぽいものがあったかも…。」


あの時は後で確認しようとしたけれど、色々と仕事やトラブルがあって結局そのまま忘れていたのだ。

ステータスが自分で見れないというのはかなり不便なものだ。

こうやって自分で変化に気付かないと、スキルが増えたことにすら気づかない。


ふとベリアルの方を見てみると、ベリアルはなんだか夢心地といった様子でリビングの中を見ていた。

それはそうだろう。

技術班のおかげでかなり快適化されているものの、ダンジョンの居住スペースにあるベリアル達の個室と私のマイホームじゃあ広さも中のインテリアもマイホームの方が圧倒的に良い。

贅沢過ぎると文句言われるだろうか…と思っていると、ベリアルが口を開いた。


「ココ、ガ、アイネス**、ノ、スキル、ノ、ナカ?」

「はい、そうですよ。なんでも自分の家に転移するためのユニークスキルらしくて。<ネットショッピング>もこのスキルの付属スキルなんですが…生活面には困らないスキルですけど、あんまり使えないですよね。」

「トンデモナイ!!!」

「うわっ」


普段大声を出す事のないベリアルの声に、私は思わず後ずさった。

ベリアルはハッと気がつくと、一つ咳払いをして、口を開く。


「アイネス**、コノ、スキル、ハ、カナリ、キョウリョク。」

「え…?」

「コノ、スキル、ヲ、ツカウ、ドンナ、キケン、ナ、バショ、デモ、イキノコル。セイゾン、ニ、タケタ、ツヨイ、スキル。」

「えっと…このスキルがあればどんな危険からも生き残れるから、かなり強力ってことですか?」

「ハイ。ダンジョンマスター、ナラ、ダレモガ、ホシガル、スキル。」


なるほど。そう言われると私の<ホーム帰還>はかなりダンジョンマスター向けのスキルだ。

ダンジョンを破壊するにはダンジョンコアを壊すか、ダンジョンマスターの息の根を止めればいい。

ダンジョンコアは容易く破壊できるような代物ではないけれど、ダンジョンマスターは違う。

彼らは自分の命を守るために強力な魔物を近くに置くか、強力な力を持つ必要がある。

しかし、私のユニークスキルはそれらを全く必要としない。

マイホームは異空間にあるため、災害に巻き込まれることもない。

どんな強力な魔物だって私が自ら招待しない限り、誰もマイホームの中には入れないのだ。

強力な護衛を傍に置く必要がなければその戦力を侵入者の討伐に使えるし、無理なレベリングだってしなくて済む。

そう考えれば、マイホームはまさにダンジョンマスターなら喉から手が出る程欲しいスキルだろう。


「ソト、ノ、モノ、ニ、オシエル、ヒカエル、ベキ。コレ、ダレカ、シル、ト、アイネス**、ヲ、ネラウ、カノウセイ、アル」

「そう言われると、確かにその通りですね…。奴隷飼い殺しエンドとか恐ろしすぎますもん。」


スキル自体は生存に長けているものの、私自身の能力値はかなり低いので、捕まえることは容易い。

もしも捕まってしまえば、安全地帯確保のための奴隷として扱われることになるだろう。

ああ、だけど今回のことで、ベリアルにはこのスキルについて知られてしまったな。

ベリアルは口が堅い方だと思っているけれど、何があるか分からない。

なんとか口止めしないとなぁ、と思い、私はベリアルに話しかける。


「ベリアルさん、一つ約束しませんか?」

「ヤクソク?」

「私のユニークスキルを、信頼出来る人達以外に漏らさない約束です。」

「ハイ、モチロン。コノ、イノチ、ニ、カケル、チカウ。」

「いや、命は賭けなくて良いんですが…。」


ベリアルの真剣な様子だと、約束を破る可能性は低いだろう。

ひとまず、形だけでも約束をしたと見せることにした。


「とりあえず、約束ということなので指切りでもしておきましょうか?」

「ユビ、キリ?ユビ、ヲ、キル?」

「いや、本気では指を切りませんからね?」


自分の指をスパッと切るような動作をしたベリアルに、私は否定した。

確かに指切りという名前も勘違いさせやすいけれど、その発想がすぐ出るのは物騒すぎる。

私は自分の小指をベリアルの小指と絡ませる。


「こうやって約束をする者同士の小指を絡ませて、歌を歌うんですよ」

「ウタ?」

「ゆっびきりげんまん、うっそついたら針千本のーます♪」

「!?」

「ゆっびきった!」


歌を歌いきり、私は絡めていた小指を離した。

ポカーンとした様子のベリアルに、私は告げる。


「これで約束は結ばれましたね。もしも約束を破ったら針千本…とは言わずとも、青汁ぐらいは飲ませますからね。」

「アオジール…、アレ、イグニレウス、サケブ、ホド、ニガイ。」

「ああ、あの時のイグニさんの絶叫ぶりは凄まじかったですよね。私は逆にフォレスがゴクゴク飲んでたのに驚きました。あれ、私のいた場所でも苦手な人が多いんですよ。美容や健康には良いので、飲みやすいように改良したりもしてるんですが」

「ソレ、ヲ、キク、マリア、タチ、ジョセイ、タチ、ハ、タクサン、ノム、ハジメル。」

「美容も気にするのも良いですけど、食べ物くらいは好きに食べて良いと思うんですけどね…」


エルミーヌさん達がやって来た日の夕飯時に、試しに青汁がどんな物か飲んでみたいとイグニとフォレス言ってきたので青汁を渡したのだ。

そしたら、結果はそれぞれ予想通りの結果になった。

イグニは盛大に吹き出して絶叫を上げ、フォレスはそのまま飲み干した。

その後、笑っている魔物達に青汁は美容に良い事を伝えると、女性陣がこぞって青汁を飲みたいと言い始めたのだ。

マリア達だけでなく、エルミーヌさんとシャロディさんまで青汁を飲むと言い出した時は驚いた。

まあ、全員飲みきれなくて悔しがってたけど…。

あれは結構な賑やかっぷりだった。


「じゃあ、そろそろダンジョンの方に戻りましょうか?そろそろ夕食の準備もしなきゃいけないので」

「ハイ、アイネス**。」

「ぎゃーう!」


褒め殺しでパニックになったり私のレベルアップが発覚したりして気付かなかったけれど、自由時間を始めてから結構な時間が経っていた。

今日はイグニの強い要望でカレーライスを作ることになっているのだ。

今回はマルクくんもいるので、子供が食べても大丈夫な甘さも揃えた方が良いだろう。

まったく、今日も今日とて大忙しだ。




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