とある創造神とダンジョン支援システムの報告日誌
小森が異世界転移して2日目――――
『告。送信主の希望によりダンジョン運営のチュートリアルを開始。その後、ダンジョンの混合ガチャで初回限定を使用し、SSR魔物アークデビルロードを召喚しました。』
「アークデビルロード!?!それって確か0.002%の確率でしか召喚できない激レアだよね?!なんで初っ端から召喚に成功できてるんだい!?」
『告。更に追加でクレームの送信です。「試しにガチャやってアークデビルロード引いたんですけど異世界言語スキルがないせいで全く会話が出来ないです。あとアークデビルロードがイケメン過ぎる」との事です。』
「ちょ、異世界言語スキルも渡されてなかったのかい!?そして最後の文句は何!?えぇ…、それ大丈夫かい?アークデビルロードってかなり気難しいだろう?逃げ出されたりしてないかい?」
『回答。送信主は食物を渡す事でアークデビルロードを懐柔、その後ベリアルという名を授けて<契約>を済ませ、更にスケルトン3体を召喚。魔物たち全員の私室を用意して共に食事を取られました』
「いや凄い仲良くなってるね!?」
小森が異世界転移して3日目――――
『告。送信主が配下の魔物たちを集めてダンジョン経営に関する会議を開催。その会議によって今後のダンジョン経営のコンセプトや宝箱の中身を決定したようです。』
「へぇ、普通はダンジョンマスターが勝手に自分達で決めちゃうものだけど、魔物たちと話し合うのか…。あれ、でも確かその子異世界言語スキルがないはずじゃあ…」
『回答。ホワイトボードを使用しイラストでの対話、更にはボディーランゲージを使って意思疎通を試みているようです。更に、ダンジョン支援システムの方で送信主の配下の魔物達に連絡線を通し、送信主の説明の支援をしました』
「いやそれでも凄いね?というかさらっとダンジョン支援システムの権限を使ったって本当?ねえ本当?因みに、その子は一体どんなダンジョンを作るつもりなのかい?シンプルな洞窟系?それとも悪魔とスケルトンがいるなら墓地系とか?」
『回答。地球に存在する「遊園地のアトラクション」という施設をモデルにしたダンジョンにするそうです。一つのダンジョンに複数の道を用意し、それぞれ別のストーリーを付けるのだそうです。』
「え、なにそれ普通に面白そう」
小森が異世界転移して4日目――――
『告。送信主の配下のスケルトン1体がダンジョン前に設置するための看板を作る際に金槌で自分の指を打ち軽傷を負いました』
「ああ…それは地味に痛いやつだね…」
『告。スケルトンの軽傷を目撃した送信主はスケルトン1体に包帯と絆創膏を使用し軽傷部分を接続。さらにそれを目撃したアークデビルロードがスケルトン1体に治癒魔法を掛け、威圧を放ちました。』
「凄い嫉妬してる!?」
小森が異世界転移して6日目――――
『希望。地球の「なぞなぞ全集」に関する知識のダウンロードの許可をください。』
「あれ、報告はどうしたんだい???なんでナゾナゾ全集?」
『告。送信主がダンジョンのルートの一つに設置する仕掛けとして地球に存在するなぞなぞを使用する事を提案。そのなぞなぞが実際に通用するかを検証するためアークデビルロードとゴブリン1体とスケルトン1体と<オペレーター>を使い、ナゾナゾの数問を提示。見事、通用するだろうという判断が降りました』
「あ、ああ…なるほど。それでナゾナゾ全集を…。因みに結果はどうだったんだい?やっぱり、君には簡単すぎたのかな?」
『回答。質問を理解できませんでした。』
「え?いや、だから、君には簡単だっ」
『回答。質問を理解できませんでした。』
「だか」
『回答。質問を理解できませんでした。』
「あ、うん…(解けなかったのかぁ…)」
小森が異世界転移して9日目――――
『告。送信主のダンジョンに冒険者六名が侵入。冒険者達を筋書き通りに誘導し、結果として7830DPの獲得に成功しました。』
「おお、結構多くDPが取れてるじゃないか!確かに、毎日報告を聞いていた感じ面白そうだからね…。初めてにしては良いスタートだよ」
『告。その後送信主は混合ガチャ10連を回しました。ガチャの結果、R級魔法武器1、N級魔物スライム5、N級魔物ワイト3、SSR級魔物エンシェントサラマンダードラゴン1の召喚に成功しました』
「待って!?!?」
小森が異世界転移して12日目――――
『告。エンシェントドラゴンとアークデビルロードがダンジョン内で口論を開始、送信主が仲介に入った事で1時間後に口論は収束しました。』
「また喧嘩?本当にヒヤヒヤするなぁ…。エンシェントドラゴンとアークデビルロードが本気で喧嘩なんてしたらそのダンジョンはおろか、周囲10kmは焼け野原になるからね。送信主の子が仲介に入ってなかったらと思うと恐ろしいよ…。にしても、毎日のように喧嘩するのにエンシェントドラゴンはよくダンジョンから脱走しないなぁ。普通、天敵や相性の悪い魔物がいたら出ていってしまうのに…」
『回答。どうやらエンシェントドラゴンは送信主の提供する食事や娯楽にハマっているらしく、アークデビルロードの存在のために送信主のダンジョンを離れるのが嫌だそうです。』
「そんな理由で!?一体どれだけ充実した生活を提供してるんだい?!」
小森が異世界転移して14日目――――
『告。エンシェントドラゴンとアークデビルロードの険悪な関係を問題視した送信主が彼らに序列階級を決めるための決闘を行わせました。』
「あ、とうとう解決させるつもりなんだね。因みに彼らにどんな決闘方法にしたんだい?」
『回答。地球のスポーツの一つ。バドミントンです』
「スポーツで決闘!?」
『告。魔法、スキルの使用とフィールドの破壊を禁止し、決闘内容の公平化を試みたようです。』
「確かにそれだったらダンジョンが破壊されるなんて事はなさそうだけど…まさかスポーツで決着を付けるなんて…。結果はどうなったんだい?」
『回答。19対19のマッチポイントの状態でラリーを続けた結果、シャトルが耐えきれなくなり空中で破壊。その後、新ルールに則った試合方法により、10対0でゴブリンがエンシェントドラゴンとアークデビルロードに勝利しました。』
「えええええええええ?!?!なにその急展開!?記録はないのかい?!」
『回答。存在します。ご覧になられますか?』
「勿論だよ!一体何がどうなってゴブリンが勝つ事になったの?!」
小森が異世界転移して16日目――――
『告。送信主のダンジョン内にて、ケネーシア王国の騎士団内部でのトラブルにより三人の騎士が奇襲を受けました。三名の人間の内2名は重傷、1名は無傷なものの気絶状態です。』
「ああ、人間達のトラブルに巻き込まれたのか…。結構いるんだよね、ダンジョンでは死体が吸収されるからそこで証拠隠滅を図る人間たちって。」
『告。送信主はダンジョンの風評被害を防止するために三人の騎士を治療と保護を行いました。送信主は三人の騎士達との対談により和解。三人の騎士は一日ダンジョン内で夜を明かすそうです。』
「あ、人間を助けたんだね。よく考えれば送信主の子も同じ人間で、しかもまだ若いらしいからね…。助けたくなるよね…。配下の魔物達はその人間たちに危害を加える様子は?」
『回答。ありません。魔物たちは送信主の命令に従い、三人の騎士に好意的に接しているようです。ゴブリンに至ってはおやつのカステラを分けてあげる始末です。』
「予想以上に好意的だね??普通ゴブリンって人見たら即襲撃ってくらい知性が低いはずだけど?!」
小森が異世界転移して18日目――――
『告。送信主のダンジョンに先日の襲撃事件の実行犯である人間たちが襲来。送信主は居住スペースに避難。その間に配下の魔物達によって人間たちの殲滅を開始。3時間後。無事に終了いたしました。』
「送信主の精神状態はどうかな?」
『回答。問題ありません。送信主もこの未来は予測していたようで、覚悟はしていたようです。』
「そうか、それなら良いんだ。」
『……疑問。送信主が居住スペースに避難したことに関しての質問はしないのですね?』
「送信主の子はまだ若いし、地球は管理が行き届いていてとても平和な場所だと聞く。だから自分と同じ種族の殲滅だなんて出来るだけ見たくないはずだ。それに、自分に出来ない事を配下に任せるのは決して悪い事ではないさ。」
『理解。回答に納得しました。』
「人間は、本当に脆いからね。身も、心も。」
小森が異世界転移して19日目――――
『告。送信主がDPの配分の最中に手違いで混合ガチャ10連を回しました。結果、R級魔法武器2、R級ポーション1、N級魔法武器3、N級魔物スライム1、R級魔物オーク1、SR級魔物リリス1、SSR級魔物フェアリーロード1の召喚に成功しました』
「待って?????」
小森が異世界転移して26日目――――
『告。送信主へアラクネ3体、シルキー2体からリリスの態度に関する問題の相談が行われました。』
「あー、やっぱり来たか。上位魔物に対する下級魔物達の不満…。意外と多いらしいんだよね…。」
『告。送信主はこの件を問題視し、三日後に決闘の場を作る事を魔物たちに約束しました。』
「アラクネやシルキー達が上位の魔物に対して決闘か…。前は同格の力を持つ魔物2体による決闘だったけど、今回のはすぐ結果が決まりそうだなぁ。因みに送信主の子は今度はどんな決闘内容にするつもりなんだい?」
『回答。女性として磨くべき能力を披露。第三者の男性魔物達に判定させるつもりだそうです』
「え、それだとリリスが有利過ぎやしないかい?それに女性として磨くべき能力って?」
『回答。判定対象は全部で5つ。ルックス、料理、掃除、裁縫、仕事力です。』
「え、なにそれ面白そう。また記録してくれないかな?」
『了解。畏まりました。』
小森が異世界転移して29日目――――
『告。送信主がアラクネ達との約束どおりに決闘の場を開催致しました。』
「待ってたよ。結果を大まかに聞いてもいいかい?」
『回答。料理部門の最優秀者はシルキーA、優秀者はシルキーB、最下位はリリスです。』
「うわ、最初から凄い結果だね」
『告。なお、リリスは料理に幻惑魔法を掛けて見た目と味を最上にしようと考えていたようですが、参考資料の写真と全く同じ事が発覚。即刻アークデビルロードに解除されました。』
「きっと魔法を使えばなんとかなると思っちゃったんだなぁ…。」
『告。掃除部門の最優秀者はスライム、優秀者はアラクネB、最下位はリリスです。』
「スライムも参加してるの!?」
『告。裁縫部門の最優秀者はアラクネA、優秀者はアラクネC、最下位はリリスです。』
「アラクネ達って裁縫得意だからね。」
『告。仕事力部門の最優秀者はシルキーBとアラクネB、優秀者はスライム、最下位はリリスです。なお、正答率が30%を切ったリリスには今後アークデビルロードからの指導が付くようです』
「仕事をちゃんとやらないのは流石にねぇ……。」
『告。ルックス部門の最優秀者はアラクネC、優秀者はスライムでした。』
「え!?リリスがルックスで負けたのかい!?家事や仕事に関してはまだしも!」
『肯定。その通りです。』
「逆にそのアラクネCとスライムがどんな格好したのか気になるなぁ…。」
『回答。ルックス部門の参加者達の写真が此方になります。』
「うわ胸でっ……失礼。このセーターの子がアラクネCかな?確かに、リリス達とは服が変わっているね。」
「楽しそうだね、アーノールくん。」
「ひっ、イェラン神!?」
「ふむ……、それは問題のクレームの送信主の配下の魔物達かね?」
「は、はい!け、決して遊んでた訳では…」
「わたしは、このチャイナ服の子が好みだね。」
「…え?」
「アラクネの彼女にとても似合っているよ。」
「は、はあ……。」
小森が異世界転移して31日目――――
『告。送信主は問題なくダンジョンの経営を行っております。問題だったリリスも下級魔物達への態度を改め、仕事を真面目に行うようになりました。』
「……ねぇ、オペレーターシステム。」
『回答。はい、なんでしょう?』
「この送信主の子、とても楽しそうに生活しているね……。」
『……回答。そういう風に見えるのでしたらそうなのかと推測されます。』




