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住居は快適な所が良いよね

【速報】まさかの妖精の王と夜の女帝が来ちゃった件について


…現実逃避してスレタイっぽく今の状況を纏めてみたけれど、やっぱり内容が濃い。

確かに、SSRやSRの魔物って言ったら貴族とか王族系が多いと思うよ。

でも、他にもっと色々あると思う。

うちのダンジョン、始まってまだ一ヶ月も立ってないのに貴族・王族系が4人もいるんだけど。凄い気を遣うじゃん。

イグニは基本的に「なんにでも興味を示す子供」みたいな感じで王様っぽくはないし、ベリアルも時々の所作とかやたら私に跪く所とか貴族っぽいけど、それ以外じゃあ普通に接してる。

だからって二人も王族系増加する?貴族系が増えても此方は面倒とか見れないし、出せるご飯もカレーとか親子丼とか大衆向けの物しか出せない。イグニとベリアルはそれでも喜んでいるようだけど。

あと、案の定ステータスがヤバい。


マリアの種族はリリス。確かRPGゲームではリリスってサキュバスの上位種とかだった気がする。<オペレーター>に確認を取ってみれば案の定その通りだった。

ベリアル達と比べてレベルが低いのと称号が一つだけしかないのは、マリアがSR級の魔物だからだろうか?

それでも私から見れば十分すぎるほど能力値が高いし、強力そうなスキルが多い。

やはりサキュバス系だからか、持ってるスキルもお色気系や相手を惑わす系のスキルが殆どだ。完全にお色気担当である。ハニートラップとか出来そうだ。


それに対し、フォレスの種族はフェアリー・ロード…つまりは文字通り妖精の王様だ。

私がまず注目したのはそのレベルの高さと魔法の能力値の高さだ。

レベルが今まで一番だったイグニの138を通り越して200もあり、魔法の能力値がベリアルを越えている。

ただ、攻撃系の魔法やデバフ系といった戦闘系スキルが多いベリアルに対し、フォレスのスキルは主にサポート系スキル…バフ系や防御魔法といった物が多い。

見た目が朗らかな感じで争いとかあんまり得意そうじゃないし、完全にサポート系の魔物なのだろう。

しかし、一つ能力がよく分からないスキルがある。

<鱗粉散布>というスキルだ。

スキルレベルがないのでスキルというよりは特性に近いものなのだろうけれど、ただ鱗粉と言われても理解がしにくい。


「<オペレーター>さん、このフォレスの<鱗粉散布>って一体どんなスキルなんです?」

『回答。<鱗粉散布>はフェアリー種族のみが持っている付属スキルです。スキルの効果としては、彼らの持つ羽から特殊な鱗粉の散布を始める事が出来ます』

「……それだけ?」

『肯定。その通りです。』

「ただイケメンが更にイケメンになるだけですねそれ。」


顔面偏差値にまでバフをかけなくていいよ。

イケメンは虹の鱗粉放たなくてもイケメンのままだよ。

むしろそこにバフを掛けられたら余計に困る。


ああ、マリアとフォレスで印象が薄くなってしまったけれど、<ガチャ>で別にノーマル級の魔物も手に入れたのでその子達も召喚しないといけない。

何故SSRとSRの魔物は即召喚されるのに、ノーマル級とレア級の魔物は一度了承ボタンを押さないと召喚できないのだろうか。

普通逆だろう。SSRとSRの魔物が即召喚されたら女性のダンジョンマスターはその顔面偏差値で目が潰れるって。


「他の新入り魔物たちとも<契約(コントラクト)>して、他の皆に紹介しに行かないと…。」

「アイネス、メシ、ゴチソウ!」

「あー、はいはい。今日の夕飯はご馳走にしますよ。」

「****!ゴチソウ、カレー!」

「それはイグニさんのリクエストでしょ。カレー、ダメ」

「ナゼ!!!」

「そう何度も食べたら飽きますからね」


イグニのリクエストを即却下すれば、ショックを受けたようにイグニが叫んだ。

イグニの中では最高のご馳走=カレーになっているらしい。

カレーがご馳走って、子供か。

イグニには悪いが、今日の夕飯は新入りの魔物達が喜びそうな物を作るつもりだ。

イグニのリクエストはまた機会があったら聞いてあげよう。


「夕飯は二人を紹介し終わってベリアルに任せてからシシリー達と作りましょうか。さて、他の新入魔物を呼びますか……と、その前にマリア。」

「?」


私はマリアの方を向いて、片手で<ネットショッピング>の画面を操作しながらマリアに近づく。

イグニとフォレスは気迫に満ちた私の様子に驚き、マリアは突然近づかれたのが驚いたようで目を丸くして此方の顔を伺う。

そんな彼らの視線が集まる中、私はマリアに<ネットショッピング>の画面を見せて、言った。


「取り敢えず今着てる服、着替えようか。」


エアコン設置して適温を保っているとはいえ、ほぼ裸同然のバニーガール衣装は見てるこっちが寒いのだ。


##### #####


「ルートンさん、これも床に置いてください。ケルトさんはこの植物をこっちの植木鉢に入れてください。」


無事に全ての新入り魔物達の<契約(コントラクト)>を終え、皆に新入り達の紹介を終えた後、ベリアルに新人研修を任せて私はスケルトントリオとゴブ郎と共に新入り魔物達の部屋づくりをしていた。


新しく増えた魔物はフォレスとマリア二人を含め、4体だった。

フォレスとマリア以外に増えた新しい魔物の種族はオークとスライムだった。

豚って汚いイメージがあるけど、実はとても綺麗好きだという雑学をとあるクイズ番組で見た事があるのだけれど、オークも意外な事に綺麗好きだった。

新しく来たオーク…、命名『トン吉』に此方の渡した洋服(XXLサイズ)を喜んで着て、その前まで着ていた服はそっと畳んで此方に渡してくれた。

しかも、ラノベやRPGゲームでは欲深くて暴力的なテンプレオークのイメージとは裏腹にうぶだった。


ラノベやRPGゲームでテンプレオークの固定観念があった私は、魔物達全員の紹介を終えてベリアルとイグニが新人達を研修に連れて行く前にトン吉の服を購入した時に買っていたエロ本をトン吉にプレゼントしたのだ。

私は男性向けのエロ本は読んだ事はないので適当にグラビア雑誌を一冊選んでプレゼントしたのだけど、思いっきり首を横に振られて拒否られた。

一応ベリアル達もいたので紙袋に入れて渡したのだけれど、どうやらトン吉は興味がなかったようだ。彼には失礼な事をしてしまった。


今思い出すと、他の魔物達の反応もなんか変だった気がする。

トン吉が紙袋からグラビア雑誌を取り出した瞬間、イグニが顔を真っ赤にしてなんか奇声を上げた。

スケルトン達は大きく手を振ってパニック状態になり、ウルフとスライム達はアワアワと蠢き始め、ワイト達は慌てた様子でシルキーズの目を塞ぎ、フォレスは目を丸くしたまま固まった。

その中でベリアルとマリアは興味深げにグラビア雑誌をマジマジと見て、ゴブ郎は何が起きているのか分からないという様子で首を傾げていた。

そして、私はアラクネ三姉妹に正座をさせられて、お説教を受けた。彼女達からイラストと拙い日本語での説明を受けた所、どうもこの世界ではああいった本はないのだそうだ。何より、男性にああいった本を渡すべきではないと注意もされた。

なるほど、マナー的にアウトだったようだ。


確かによく考えてみると、私も父(40代後半、仕事はITエンジニア兼黒魔道士)にそういった本をプレゼントされたらグーで腹を殴っていただろう。

トン吉には悪いことをしてしまった。後でトン吉にはお詫びとしてドーナッツをプレゼントしよう。

しかし、まさか魔物たちがあんなにうぶだったとは知らなかった。

ベリアルとマリアは流石悪魔と上位サキュバスだからか特に反応もなかったけれど、他の魔物的には慣れない物だったようだ。

アラクネ三姉妹も来た当初はそこそこ露出度の高い服を着ていたのに、すっかり此方の文化に染まっている。

……これ、夏に水着なんて物を用意したらまた同じことになるのだろうか?

いつかプールを作って泳ごうかと思ってたけれど、魔物達がこれなら難しそうだ。


アラクネ三姉妹の説教が終わった後、私は新入り達に部屋のインテリアのリクエストと食事の要望を聞いた。

衣食住は生活するに当たって最も大事なことだ。

住む部屋は住人にとって快適な所じゃないと住心地が悪くてストレスが溜まるし、食事もその人によって好みが違う。

実際、魔物達の好みも一体一体違うのだ。

ベリアルは一度私がティーセットをプレゼントして以降、紅茶やお茶菓子にハマっていて住む部屋もフランスの貴族かってほど気品溢れるインテリア。

それに対しイグニはドラゴンの性質からか肉は好きだけど野菜はそのままだと絶対食べようとしないし、住んでる部屋は雑誌に載っていそうな秘密の隠れ家風のインテリアだ。

スケルトン達は自分達で定期的にインテリアを変えて模様替えをしているし、アラクネ三姉妹は一緒の部屋で天井にハンモックを設置して寝泊まりしているし、シルキーズは二段ベッドで一緒の部屋で住んでいるし、ウルフは全員犬カフェ風の部屋でくっついて眠っている。

ワイト達も人間のように自分好みのインテリアの部屋で生活していて、スライムは…睡眠を必要としていないらしいけれど、夜中は一つの部屋に皆集まっている。

ゴブ郎と私は当然マイホーム暮らしだ。仕事場であるダンジョンから徒歩0分で、コンビニにも行き放題の快適な暮らしっぷりだ。


そんな、衣食住に他以上に力を入れている私のダンジョンでは、新入りには最初にインテリアのリクエストと食事のリクエストを聞くようにしている。

地球じゃ食物アレルギーなんて厄介な物もあったし、魔物達は人間とは身体の造りや生活スタイルが違うからそれに合わせたものでないと生活に支障が出るからね。

そしてイグニの通訳とホワイトボードでのイラスト会話を試みて確認した所、やはりそれぞれ違う好みを持っていた。


スライムは他のスライムと同じように夜は同じ部屋で生活をするらしく、トン吉は大きいベッドを求めてきた。

マリアは洋風の女性らしい部屋と夢魔らしく大きくて寝心地の良い寝具を求め、フォレスは植物が沢山ある場所を求めたのだ。

マリアとトン吉のリクエストは<ネットショッピング>で簡単に彼らの望む物は見つかったけれど、フォレスのリクエストは中々に難しい。

なにせ、元々このダンジョンは洞窟の中。植物もなければ陽の光も入ってこない。

DPを消費して<カスタム>をすれば森ステージを用意出来るだろうけれど、それだとフォレスが住むのには大きすぎてしまうしDPも余計に消費する。

そこで私がフォレスに提案したのは、和室だった。


和室の床に使われる畳はイグサと呼ばれる草を使って作られた物だし、あちこちに植物を植えた植木鉢を幾つか用意すればわざわざ森に設定しなくても植物を置ける。

試しに<ネットショッピング>で置き畳を購入してフォレスに見せてみたら、凄く気に入ってくれた。

今は妖精系の魔物がシルキーズとフォレスしかいないから皆と同じ8畳の個室だけど、今後DPが溜まって妖精系の魔物が増えるようなら彼らが生活するスペースとして森林部屋も作ったほうが良いだろう。


更に、フォレスのリクエストはインテリアだけではなかった。

フォレスはどうやらベジタリアンというものらしく、肉好き野菜嫌いのイグニとは正反対に野菜好き肉嫌いらしいのだ。

イグニは心底信じられないような顔をしていたけれど、海外では意外と多いそうだし、フォレスは森育ちっぽいからベジタリアンだとしても特に驚きはしなかった。

卵や乳製品、魚は大丈夫か確認してみたらなんでも此方の世界では魚と卵と牛乳を食べ物として飲食する文化がないらしく、分からないと答えられた。

魚と乳製品と卵が大丈夫ならそこまで料理のレシピが狭まれる事はない。

ということで今日は、ベジタリアン向けの料理を夕飯として作る事になった。

イグニは肉がないと聞いてかなり嫌そうな顔をしていたけれど安心して欲しい。

私のいた地球には肉を使っていない大豆のハンバーグや野菜しか入っていない餃子なんてヴィーガン向け料理でありながら肉好きにも愛されるレシピもある。

地球…特に日本は食事に関しては貪欲なのだ。


スケルトントリオに新入り達の部屋のインテリア設置を頼み、シルキーズと共に今日の夕飯作りをする。

夕飯作りの為にキッチンに入った時、フォレスがキッチンの方を伺ってきた。

やはりシルキーズは家政婦妖精だからか、妖精王であるフォレスの姿を見た瞬間、慌ててその場で跪いていた。

フォレスはシルキーズに何かを伝え、彼女たちに微笑んだ。

流石は妖精王。貫禄が凄い。


夕飯時を向かえて皆にベジタリアン料理を見せたら、その豪勢っぷりに驚いていた。

全部が野菜と分かっているイグニはかなり躊躇していたけれど、大豆ハンバーグを食べてから一変し、美味しそうに他の料理も食べていた。

フォレスにこれは全部野菜しか使っていないのかと尋ねられたのでそうだと頷いたら、シルキーが付け足すようにフォレスに料理の説明をしてくれた。

トン吉もマリアもスーラン(今回新しく来たスライムの名前)も大喜びで食事を取っていた。


「アイネス**、***************。」

「うん、何言ってるのか分からないですね。」


ベリアルがいつものように恍惚な笑みで何かを話していたのでそれを軽く受け流しておく。

多分なにか称賛されているのだろうけど、変に反応すると厄介そうだからね。


明日は新入りにここのダンジョンの仕事を見せる予定だ。あとイグニと一緒に私の使う言葉の勉強も教えなければいけない。

あれ、元の世界に帰るまでダンジョンの中でのんびりスローライフをするつもりがいつの間にか忙しくなっているな。

こうなれば、もっと仕事の分担が出来るように魔物を呼ばなければいけない。


今日もまた、ダンジョンの中は賑やかだ。



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