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皆様お久しぶりでございます。
遅くなりましたが、とあるお知らせとともに最新話投稿でございます。
<暴食>。罪の根源の一つとされるそのスキルの特性は『食欲』。
形ある物を喰らい、自らの一部にしてしまう<暴食>は枠を外れたことで形なきものさえも喰らい自らの一部にしてその空腹を満たそうとするスキルになった。
しかし、食事の枠が存在しないということは受け止めるための底も存在しないということ。
穴が空いたバケツが蛇口から垂れ流される水を満たすことがないように、欲のままに口にした物はルークスの腹を満たされず、常に飢えと渇望を感じ続けることとなる。
<暴食>を手にした瞬間から、ルークスは空腹から一番遠く、そして一番近い存在となった。
一方、ルークスの所有するもう一つの異常である<調理>の特性は『探究心』だ。
ただ調理をするためだけのスキルだった<調理>は底がなくなった事で【調理】の本質へと至り、恐れ、常識、先入観全てを置き去りにして『食の限界』を突き詰めようとするその心に従い、あらゆる物を自分の望む通りに調理してしまうスキルとなった。
しかし性質の定義という底がないということは、選択肢の幅を悟るための枠も存在しないということ。
探究心のままに突き詰めるその本質により、果実や野菜、獣肉など世間一般で常識とされる食材だけでなく、毒や鉱石、更には親しい同種達の血肉でさえも包丁を振って皿の上に盛り付けてしまう。
知性と理性の象徴ともいうべき料理の力は所有者の本性の化け物を引きずり出すものとなった。
『調理者』と『暴食者』、作る者と食らう者、欲と欲。
その2つのスキルの相性は誰が想像しても明確なほど、いや、誰が想像するよりも異常なほど相性が良い。
故に、2つのスキルは同居してはいけない。
相乗される力と引き換えに欲を増長させ、欲が欲を呼び、理性を失わせ、最終的には災いを呼ぶ。
元より身に余る欲は災いを呼び寄せるもの。留まるための枠も底もなければ尚更だ。
現にルークスは一度、この欲の無限相乗効果により我を失い、とある世界の一部を文字通りの無にした。
容易く何度も同時使用をしていい組み合わせではないのだ。
「まあ、そういう気分じゃなければ別に何にもならないんだけどね~。こうして普通に使ってるけど世界レベルでぱっくりとかもないし~。ただ今回はちょっと、牡牛くんに感化されてちょっぴり熱中しちゃった感はあるよね~」
未だにギラつく輝きの残る目で持ち上げたソレを見据えながら、ルークスは頬についた返り血をペロリと舐め取る。
背中から伸びる触手の先には虫の息となったセダムがいた。
セダムの身体のあちこちは食い千切られ、切り落とされ、剥ぎ取られ、見るも無惨な有様だ。
両足は既に自身で立ち上がる事も出来ない状態に破壊され、それでも敢えて残された片手にはバットが尚も握られており、ルークスに振ろうと弱々しい力を込めようとしている。
生きているのが不思議なほどだというのに、未だにルークスに立ち向かおうとしている。
「牡牛くんも結構頑固だよね~。そんな状態になってもおれと戦おうとしてるとかさ~。本当、カッコイイけどすっごい馬鹿だよね~。ちょっぴりだけど感心して感服して感動して、見ててすっごく嗤える~」
セダムが握りしめているバットを難なく触手で奪い取ると、不壊属性が付与されているはずのバットは蝕まれるように損傷し、触手に飲み込まれるように姿を消した。
ルークスの<暴食>は常識も制限も一切関係なく対象を喰らうスキル。
食す対象にどんな付与がされていようとただの食べ物として喰らい、対象を認識さえしていればわざわざ口元まで持っていかずとも対象を食すことが可能なのだ。
その気になれば戦闘が始まってすぐに瞬殺することが出来た。
ただ、そういう気分だったからセダムの常識に合わせてあげていただけのこと。
ルークスにとって、今までの流れは言葉の通り『チャンバラごっこ』。
食事前の茶番に過ぎなかった。
「牡牛くんもニンゲンちゃんも哀れだよね~。当事者としてその場のことを当事者なりに本気でしているんだろうけど~、そういうこと全部当事者じゃない強い奴らや見知らぬ外の誰かに勝手に玩具にされたり犠牲になったり、見世物にされてて~。まあ、こうして牡牛くんを散々遊んだ挙げ句喰らおうとしているおれが言うことでもない話なんだけどさ~」
何もない上空をチラリと見上げ、ルークスは他人事のようにセダムに同情の言葉を掛ける。
眉を下げ、心底哀れんでいる様子で優しい笑みを浮かべてみせるが、少し空いた口から垂れそうになる。
「でも~、少しは牡牛くんが悪いんだよ~? おれはそれとな~く牡牛くんに引き下がらせようとしたのに、牡牛くんがおれをその気にしちゃうんだも~ん。ただ黙って俺の好きなようにしとけば~、おれの気が済んだ後~、おれが責任持って周囲の記憶も痕跡も喰らった部分も元通りにしてはい終わりで済んだのにさ~。牡牛くんがおれを煽るもんだから、食欲がちょっと抑えられなくなったじゃ~ん。おれはずっとお腹ペコペコで、ずっとずっとなんでも食べたい気分で、けど周りに気を遣って、気分じゃないのに食べない気分にしてるのに~。だからさ~……
ちょっとぐらい丸齧りにしたって、別に良いよね~?」
セダムに問いかける口調で話しかけているものの、食欲に飲み込まれたその瞳にセダムの答えを聞く素振りは一切見られない。
セダムが肯定しようと否定しようと、答えられなかろうと、ルークスにセダムを喰らう以外の選択肢は存在しない。
食欲を抑えるための理性は、先程ルークスが自分で飲み込んでしまったのだから。
「良いよねぇ? バックリ食べて良いよねぇ? チャンバラごっこして、本気の欠片も知れて、愉しませられたんだから、もう我慢しなくて良いでしょぉ?」
「食べるのはほんの少し、大事じゃない部分のほんの少しだけだからさぁ。ちゃんと食べてタベて喰べたら、忘れずに後で元通りに調理しておくからねぇ」
「もしかしたら性格とか魂の性質とか前と味変わっちゃうかもだけどぉ、ちょっとぐらいなら別に良いよねぇ? このダンジョンだったら牡牛くんが変わってもきっと受け入れてくれるだろうからさぁ」
「だから良いよねぇ? 食べていいよねぇ? 牡牛くんの一番美味しそうな部分、齧って良いよねぇ? というか食べるぅ。今すぐタベるぅ。食べて喰べた後、他の美味しそうなのも調理して食べるぅ」
ブツブツと独り言呟いた後、ルークスは大きな口を開け、セダムを自身の頭上へと持ち上げる。
セダムは今も抵抗しようとしているが、虫の息の彼に抗うだけの力はもう残っていない。
ルークスは垂れた涎を拭うことなく、最後の理性とばかりに食事における最初の礼儀の言葉を呟いた。
「それじゃあ、メインディッシュ、いただきま――――」
『起動。<オペレーター>』
その時、何処からともなく無機質な声が響いた。
機械的で、気配も姿も存在しない、直接頭に響く音なき声。
ただしその声の発する言語はルークスがセダムの対峙時に最初に発していた一方的なものではない。
全世界全種族全住民、例外なく通じる共通の言語。
その声をルークスが聞いたその瞬間、ルークスが食らいつこうとしたセダムの姿が消えた。
否、正確にはセダムとルークスを切り離すように一瞬虹色のベールがセダムを覆い、それが消えた瞬間宙に浮いたセダムの身体が本来あり得ない方向へ引き寄せられるように飛んだのだ。
そしてセダムが飛んで行った先で、ダンジョン戦争中に無惨に破壊されたはずの蛇の玩具の上部分――――今もベリアル達と共にいるはずのテアトロが、虫の息のセダムを受け止めてセダムに言った。
「セダムさん、遅くなってしまいすみませんでぇした。少々、説得に時間が掛かったようでぇして」
「――――――――……」
「ええ、ええ。貴方の雄姿、本当に尊敬しまぁす。貴方が動いてくれたおかぁげで、ワタクシ達は手遅れになる前に、こうして動けるのでぇすから」
空を喰らい、獲物にありつく事が出来なかったルークスが2体のいる方向へゆっくりと視線を向ける。
そして間髪入れず、ルークスは距離を喰らいながら触手をテアトロに仕向ける。
しかしルークスの触手はテアトロ達に当たることなく、なぜか全く違う方向へと触手が当たった。
「随分とやんちゃなお手々ですこと。ダンジョン戦争前にアイネスが『行動は常にペアで行うこと。何かして良いのはコボルトの子供達かもう片方の許可が降りてから』と言っていたのをお忘れですの? わたしはあなたに、『良し』と言った覚えはなくってよ?」
攻撃が当たらなかったことにルークスが目を細めると、テアトロがいる付近の真上から1体の令嬢――――オメアがふわりと降りてくる。
オメア達のいる方向を見上げてみれば、今までルークス達を閉じ込めていたはずの天井がぽっかりと丸い一部分だけなくなっている。
断面も残骸もなく、まるでそういう風に作り変えられたようだ。
ルークスはその穴を見て、それが誰によるものかを悟った。
ダンジョン内に創造された天井や壁、床に穴を作ったり傷を残したりといった破壊行為は出来ない。
例え実行者がいたとしても、破壊された箇所は数秒も経たず自動に修復されてしまうからだ。
セダムが最初に破壊した出入り口は、ダンジョンが本格的に始動する前にアイネスが<ネットショッピング>で用意してはめ込んだ物だったから壊すことが出来ただけ。
青の扉ルートに存在する隠し扉はダンジョン戦争向けに事前に閉ざされているので、そこを使うことも出来ない。
ダンジョンを破壊する、あるいは作り直すことが出来るのはダンジョンマスター権限を行使出来る存在だけ。
そしてその権限を行使出来るのは【ダンジョンマスター】の称号を持つアイネスと、もう一つの存在。
アイネスが所有する付属スキルであり、ダンジョンのシステムそのものでもある<オペレーター>……、一人と一つの存在以外にしか出来ないのだ。
しかし<オペレーター>……もといオペレーターシステムは創造神の干渉を受けない独立したシステム。
ダンジョンマスターに合わせてサポート態勢を変え、必要とあればダンジョンマスター以外にその声を届けることも周りの声を聞くことが出来る。
ただし、あくまで聞くだけ。
ダンジョンマスター以外の存在に<オペレーター>が応答することは勿論、要求を飲むことはない。
いくら魔物たちが訴えかけようと、ダンジョンの改造行為をシステムのコアが許すはずがないのだ。
――――ダンジョンの崩壊に繋がる危険性がある状況下だったり、アイネスが「私が動けない状況で、ダンジョンの魔物の命が危険な際はよろしくお願いします」と事前に要求していたりなど、例外がなければ。
食事を邪魔されたルークスは苛立ちを隠すことなく、三日月のように口角を上げてオメア達に問いかける。
「どうやって気づいたのぉ? ニンゲンちゃんは今休憩中でしょぉ? 外に漏れる音は、ちゃんと食べてたのにぃ」
「ハーミットの皆さんが教えてくださったのでぇすよ。此処で異変が起きている、と」
「ん~、どういう意味ぃ?」
「あら、ご存知ないのかしら? 探知系スキルの中には一部の探知スキルの出処を逆探知するスキルも存在しているそうですのよ。探知系スキルは使用範囲に限定があるけれど、使い手によってはかなり強いスキル……『隠密活動を得意とする種族にとって自分を探られる可能性のあるスキルに対する対策や特定方法を持っているのは常識』、ですってよ」
「当然そういった妨害対策の隠蔽スキルや魔法道具もあぁるそうでぇすが、今回はそういった対策が一切使用されていない……それも、明らかに必要以上に広範囲を探知しようとする探知スキルだったそうでぇすよ。まるで『自分を探し出してくれ』と訴えているようでぇしたとのことでぇす」
その言葉を聞き、ルークスは目を更に細めた。
ミノタウロスであるセダムは頭こそ悪い部類に入るが、独学で多数の探知系スキルを獲得した猛者。
探知スキルを探知するためのスキルも、それらを隠すための隠蔽スキルも把握していないはずがない。
セダムがルークスの戦闘中、いくら意味がないと悟っていても探知スキルの同時使用を続けていたのはルークスの攻撃や移動を読んで最小限のダメージに収めるのと同時に、無限回廊の外にいるハーミット達に自分の状況を気づかせる為だったのだ。
ルークスの探知スキルに対する知識不足が弊害となってしまった。
散々馬鹿だ馬鹿だと嘲笑っていたセダムの隠していた悪足掻きとも言える策に、ルークスは心の内で小さく舌打ちした。
オメアは懐から回復ポーションを取り出し、重傷のセダムにそれを掛けた。
回復の速度が遅いものの、徐々に傷が治っていくセダムをテアトロが介抱するのを横目で見つつ、オメアはルークスに優雅に微笑みながら話しかける。
「わたし、此処に召喚された日から少し貴方に違和感がありましたの。その違和感の正体がなんだか分からなかったのですけれど、先程『11体目』の話と貴方の戦いぶりを見てようやくそれが何か気が付いたわ。あなた……召喚当初わたしと同じく深海での姿から今の姿に化けたというのに、服の着方から陸の食べ物まで陸の知識にやけに詳しすぎましたもの。海底以外の場所も移動できるのであれば、知っててもおかしくありませんわよね」
「じゃあさ~、これは知ってる~? 食事を邪魔されるのって、とってもムカつくんだよ」
ルークスは張り付いた笑いを浮かべたまま、触手でオメアに0距離攻撃を振るう。
しかしオメアは余裕を崩さず、上品に微笑みながら片手を動かした。
すると目先まで迫っていたはずのルークスの触手はオメアの身体に当たることなく、オメアの横の壁に方向を変えて突撃した。
ルークスの殺意が強まるのを感じながら、オメアはクスクスと笑った。
「スキュラの二つ名をお忘れでして? 指揮はわたしの得意分野。わたしとの距離や防御を無視しようと、攻撃対象そのものを逸らしてしまえば問題ありませんわ。何故かあなたの触手からは同種の気配も感じますもの。自分の手足を動かすのなんて、容易いことですわ」
スキュラの種族限定スキル、<海流の指揮>。
相手の潜在意識や術式に干渉し、自意識の薄い魚や自分より低レベルの魔物の行動、攻撃スキルや魔法を操作するスキル。
攻撃でも防御でもない、一見すればあまり戦闘に向いていないと思われるそのスキルは、使い手であるスキュラによって自分に向かってくる攻撃からの防御にも味方の攻撃の強化にも転じる事ができる。
海も陸も空も問わずありとあらゆる種族を喰らいそれらの特性を取り込んできたとはいえ、ルークスは本来海中の魔物。
しかも、オメアの言う通りルークスは過去に何度もオメアの同種族の血肉を喰らい、身体の一部として取り込んでいる。
同じ上位種とはいえ、飢餓と探究心の暴走により理性を失いかけ抵抗力が低下しているルークスのスキルに干渉し攻撃対象をずらすことはそう難くなかった。
しかし、そう容易く倒せるほどルークスも喰らっていない。
「矛先を変えられるからってなぁに~? 矛先を合わせ直せばいいだけじゃ~ん。蛸娘ちゃん、甘すぎぃ」
過去の“食事”でスキュラから取り込んだのは触手だけではない。
<海流の指揮>を筆頭とした種族限定スキルやスキルレベルの高い<薬物生成>スキルも喰らい、取り込み、より強いスキルへと食べ合わせていた。
オメア一体の指揮と数十体分のスキュラの力を持つルークスの指揮、互いに同じスキルを持っている者同士が力比べをすれば勝つのは当然後者だ。
上品に笑うオメアに対しそう嗤い返すや否や、ルークスは触手を操りながらオメアと同じスキルを使って矛先を操作し、修正しようとした。
しかしルークスの対策は仕掛ける前に失敗した。
ルークスがオメアと同じスキルを使おうとした瞬間、ルークスの思考に逆らうようにスキルを動かす手が上がったのだ。
何らかの力によって挙手させられスキルを妨害されたことに、ルークスは思わず勝手に上がってしまった自分の腕を見た。
一見すればそこに見えるのは勝手に上がってしまった自分の腕だけ。
だが目を凝らしてみれば、自分の手首に濃い魔力によって構成された糸が巻き付いているのが確かにその目で見えた。
魔力糸の元を辿って見てみれば、半壊した胴体でセダムを抱えた蛇の玩具の口から出た魔力糸が出ている。
「遠隔操作でぇすので流石に完全に操ることは出来ませぇんが、何やら本調子ではないご様子……。同じ上位種であれど、多少手を狂わせてスキルや行動を妨害することぐらいでしたら種族柄、何十時間……いえ、何十日掛けたとしても負ける気はしませぇんよ?」
パペット・アクターは自身の縄張り内の生物や人形を傀儡にすることに長けた魔物。
その特徴からか非生物か自分より弱い者しか相手にせず、自身より同格以上の相手とやり合う手段がないなどという偏見を持たれることも少なくないが、それは事実ではない。
パペット・アクターが生成した魔力糸は通常の糸と違って物理的に見る事は出来ないが、実に執念深く、一度対象に捕まえればしつこく絡みついてくる。
糸の操作一つで相手の行動阻害も反撃も思いのままになる、汎用性の高さ。
魔力で生成した糸故に物理的に切ることは不可能、魔力で断ち切ってもすぐさま元通りになる。
おまけにパペット・アクターは死霊の上位種……元より死んだ存在のため、食事や睡眠の必要はなく、相手の精神が限界を迎えるまで追い詰め続けられる。
相手が強いほどしつこく、抵抗すればするほど深く追い詰め、ジワジワと自らの傀儡に仕立て上げる。それがパペット・アクターだ。
元々移り気な上、2つのスキルの同時使用によって理性が削がれているルークスには相性が悪い種族と言える。
「うざぁい、超うざぁい。ただでさえお腹減ってるのにやって来たのが喰い辛い2匹とかさ~」
ルークスは半笑いを浮かべながらも、声色に苛立ちを浮き出しながら本音を吐いた。
魔法やスキルの矛先を操るオメア。
相手を意のままに操作する魔力糸を生成し操るテアトロ。
この2体が扱うスキルはどちらも直接的にルークスを攻撃するものではなく、間接的にルークスのスキルや行動に干渉を加えるスキル。
妨害・誘導・隷属化・行動操作……本来ならば近接戦や仇討ちより、防衛戦や戦闘外での工作に適したそのスキル達はその性質故に形が掴みにくく、一度捕まればどこまでも追いかける粘着質。
ルークスの言葉で言えば、“食べづらい”スキル。
オメア達がそれらのスキルを攻撃やカウンター目的に使っていれば普通の魔法や物理攻撃と同じく食らいつく事ができる。
しかしどちらもルークスからの攻撃を妨害するためのほんの一瞬にしか仕掛けてこないせいで食らいつくことが難しい。
本調子のルークスならばそんな相性の悪い2体相手でも難なく対応出来ただろうが、それまでセダムに散々食欲を、好奇心を、飢えを煽られたルークスにその余裕がなかった。
ルークスはどうにかしてオメア達から獲物を奪い返そうと、全ての触手を駆使して猛攻を続ける。
(邪魔、邪魔、邪魔~。こっちの空気が読めないのかな~? いや、此方の食う気が読めないのかな~? いざ牡牛くんを食べようって所で干渉してくる? 本当タイミング悪いよね~――――)
タイミング。
そう、タイミングが悪い。
セダムがルークスの足止め出来た時間は僅か数分、されど数分。
その間セダムは全ての探知スキルをダンジョン全体に伝わるように同時展開し、その結果他の魔物たちに異変を知らせる事が出来たという。
だけど、都合が良すぎる程に優秀な魔物達が揃うこのダンジョンで、その異変に数分なんていう長い間気が付かないものだろうか?
そもそもダンジョンコアがダンジョンマスター以外からの命令をすぐに聞くものだろうか?
果たしてただの偶然によって、誰かの都合の良い幸運によるものだけで、ルークスと相性の悪い2体をすぐさま向かわせられるものか?
ルークスの中にある【調理者】としての探究心が次々と疑問を浮かび上がらせる。
ルークスの元に様々な興味が引き寄せられ、一つの結論を見出そうとする。
今のルークスに遭遇している状況はルークスにとって都合が悪いもの。
苛立ちを覚えるほど、思わず毒づいてしまうほどに間の悪い介入だ。
まるで、ルークスの調子が変わる様を虎視眈々と見張られ、ルークスの戦いぶりから相性の悪い2体が選ばれたような、そんな必然的なタイミングの悪さ。
完全にそれを察する前に、ルークスは反射的に行動を始める。
手足に絡みついた魔力糸を噛み千切り、行動を阻害される触手を自切する。
そして空間を喰らい、空間の穴に撤退しようとした。
空間の穴に潜り込もうとしたその瞬間、そこに現れるべきではない虹色の結界がルークスの逃走を妨害した。
想定外の妨害にルークスが目を見開いた瞬間、虹色の結界は消え、その隙を突くように何者かがルークスの後頭部に膝蹴りを食らわせた。
突然の衝撃に体勢を崩すルークスの上を軽やかに跳び、ルークスの前に着地する。
ルークスの前に対峙したリリスと、モニタールームから無限回廊の様子を見ている精霊王が青筋を立てながら口を開いた。
「あたしの仲間に……
『わたしの仲間に……
「『何してんのよ!!』」
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