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ツイッター、未だに垢の凍結が解除されません……(号泣)
――――『すみません、まだ部屋の準備で忙しい中呼び出してしまって。』
▶ 別に構わねぇべよ
何か用だべ?
――――『言いたくないなら別に黙秘で構わないんですけど、ちょっとスキルに関して質問がありまして……。あ、一応この部屋全体に<隠蔽>を掛けているので誰かに話が漏れることはないのでそこは安心してください』
▶ 質問?
黙秘って何の事だべ?
――――『いえ、先程全員の<契約>が終わったんで改めて全員のステータスを確認したんです。それでセダムさんの所有スキルも見てしまって。私も知らなかったんですけど、どうも<オペレーター>さんの話によるとダンジョンマスター権限でステータスを確認した際、スキルやステータスを偽装するスキルは通用しないそうなんですよ。外からスキルを介する<鑑定>系スキルと違って、そういった権限では内から直接情報システムにアクセスしているとかなんとかで』
▶ はえぇ、なんだかよぐ分からねぇげんどそうなんだべかぁ。
……。
――――『セダムさんのステータスを確認した際、その中に<スキル偽装>というスキルがあったので一応そういった経緯でセダムさんのスキルを全部確認してしまったという報告と、セダムさんのステータスに関して何処までベリアルさんとか他数名に話していいかの確認をしたかったんです。普段は別に隠してても問題ないでしょうけど、万が一の非常事態があった際のことを考えて指示出しでどう説明するべきだとか誰にならこの話を共有していいかとか事前に話しておくべきかと思いまして。そうした方が私の方も黙っておきやすいですし』
わぁ、そこまで考えてくれてるんだべか。
▶ え、みんなに話を共有すね“ぇんでええんだか?
―――――『個人情報は簡単に漏洩してはいけないものですから。SNSとかオンラインゲームとかだと特に』
▶ はい?
―――――『私のスキルにも外に晒されると厄介事になるものがありますし、スキルとかステータスなんて周囲には隠しておきたい情報の一つでしょう? セダムさんにもセダムさんの事情があるでしょうしね。正直使用用途とか色々と聞きたいところですけど』
アイ“ネス”は頭がええんだべなぁ。
▶ ……。
―――――『こうしてダンジョンマスターである私が既に把握したことですし、あとは誰に何処までこの情報を公開するかはセダムさんの自由かと。あ、ただもしかすると私の都合でセダムさんの力を頼ろうとするかもしれないですので、その時は助けてくれると有難いです』
何言ってんだべ。友達の友達を助けるのは当たりめぇだべよ
▶ ……もち”ろんだべ。オイラだぢはアイネスに借りがあっがらなぁ
―――――『あ、そうだ。もう一つ質問良いですか?』
何だべさ?
▶ どんな質問だべ?
―――――『特性的に向いてないスキルを取得するのってかなり大変だと思うんですけど、それを押し切る形で此処まで取得してスキルレベルを上げたのは何か理由でもあったんですか?』
理由なんて決まってるべ
▶ それは勿論――――
▷ 集落の皆のためだべさ
方向音痴でやだらぽんやりすてる、オイラのかげがえのねぇ大切な幼馴染のためだべさ
##### #####
「集落狙ぉうとすた不届ぎ者だぢがら聞いだごとがあるべ。オイラだぢミノタウロスの肉は美味ぇらすいんだべな? そったらに食いだぎゃ、オイラの肉食わせてやっぺ。」
セダムの集落は森の最深部に存在していたため、他の魔物や冒険者たちに襲われる危険性は殆どない。
しかし、何の危険も存在しないという訳ではなかった。
ミノタウロスの美味な肉を狙う他の魔物や、依頼や下衆な目論見で最深部に訪れる冒険者。
ミノタウロスの集落に近づく者は確かにいたのだ。
しかし、そんな不届き者たちがミノタウロスの集落にたどり着く事はなかった。
何故なら、集落の付近に近づく不届き者たちを退ける守護者がいたから。
「ただす、その前さオメェの肉全叩ぎにすて、その曲がった根性叩ぎのしてオイラの幼馴染ら食うなんざふざけた口吐げねぇようにすてやるべ、こんクソ蛇!!」
温厚で穏やかな仮面を脱ぎ去り、セダムは未だ呆然とするルークスを鋭く睨みつけ口汚く宣戦布告を叩きつける。
見る者が見ればその気迫と、普段の姿とのギャップのあまり怖気づいてしまうだろう。
しかし、セダムに威圧的なオーラを浴びせられているルークスはそんな事気にも留めず、痣の出来た頬を擦りながらブツブツと呟いていた。
「そっかぁ……あの”忠告”はこのための……事前に忠告をすることで、飽きたおれが油断するように……牡牛くんの気配を感じられなかったのはニンゲンちゃんの<隠蔽>でギリギリまでずっと隠して……『飛び出し』ってそういう……こうなることは理解ってたけど、敢えて言わなかったわけかぁ……」
考えを一つ一つ組み立てるように呟くルークスの目に激怒するセダムの姿はなく、この場にいない何かを見ているようだった。
その異様な姿にセダムが眉を潜めていると、ルークスは突然反動を付けて起き上がると、何もない虚空を見据えながらケラケラと笑い声を上げながら口を開いた。
「繧ュ繝」繝上ャ! 繧ュ繝」繝上く繝」繝繧ュ繝」繝上く繝」繝!!! 閾ェ蛻髢「繧上i縺ェ縺�▲縺ヲ鬮倥∩縺ョ隕狗黄繧�豎コ繧∬セシ繧薙〒縺溽剿縺ォ縲弱>縺刈貂帙↓縺励m縲縺」縺ヲ縺願ェャ謨吶°!? 蜑オ騾�逾◆縺。縺ョ逅ァ」閠擇繧菫昴▽縺ョ繧�螟ァ螟峨□縺ュ縺�!?」
ルークスの口から放たれた言葉は明らかにセダムのいる世界の言語ではなかった。
にも関わらず、頭に直接響き渡るようにその言葉の意味を理解する事が出来る。
<オペレーター>を介した通訳とは違う、その言葉を聞いた者の頭の中で遠慮もなく掻き混ぜて相手の分かる言語に直しているような無茶苦茶な言語だ。
聞く者の精神を徐々に削っていく言語で喋り、笑っているようで怒り、怒っているようで笑いながら何もない場所に嘲笑混じりに語りかけるその姿は誰の目で見ても普通ではない。
そんな異様なルークスの姿に退くことなく、セダムはルークスに尋ねた。
「空間だぁなんだアイネ“ス”ば話してだがら薄々思ってはいだんだども、やっぱオメェ、この世界のモンじゃねぇんだべが。本性表すて早々逆切れだべが?」
「縺医∞? 縺ゅ=縲、蛻・縺ォ迚。迚帙¥繧薙↓諤偵▲縺ヲ繧玖ィウ縺倥c縺ェ縺h。縺溘□縺薙≧縺ェ繧九h縺�↓莉募髄縺代◆縲仙酔鬘槭代↓譁�唱險縺」縺ヲ縺溘□縺代∞」
「文句だぁ? よぐ分がらんがオメェ、神様ん使者って奴じゃねーのけ?」
「逾槭�菴ソ閠�ぃ? 驕輔≧繧茨ス槭!蜑オ騾逾槭↓縺ッ菴募コヲ縺倶シ壹▲縺溘%縺ィ縺�縺ゅk縺代←蛻・縺ォ莉イ濶ッ縺上�縺ェ縺�@��、繧縺励m縺ゅ▲縺。縺ッ縺翫l縺ョ縺薙→豸医@縺溘>縺舌i縺�雖後▲縺ヲ繧九s縺倥c縺ェ縺�°縺ェ��?」
「さよけっ!!」
先程までの激高ぶりはどこへ行ったのか、セダムの問いかけにケロッとした様子を豹変させて答えるルークスにセダムは突撃し棍棒を振り下ろす。
ルークスは軽々とそれを避けた一方で、セダムは普段の温厚な姿からは全く想像も出来ないような鋭い睨みをきかせドスの効いた低い声でルークスに怒鳴る。
「それよげ、その変な言葉で喋るのはえ加減止めるべや!! 何喋っちゅうが分がんねぇのに無理やり分がらされでらようで腹立づべさ!」
「險闡峨縺薙→縺ァ迚。迚帙¥繧薙↓險繧上l縺溘¥縺ェ縺�s縺�縺代←縺会ス�……まあいいやぁ。これでい~い?」
ブーメランとなって戻ってきそうなセダムの言葉に肩を竦めたが、ルークスはその言葉に従い元の言語を話し始めた。
二度目の打撃が直撃したその頬には青紫の痣があり、口元からは血が僅かに滴っているが、まともに気にする様子もなく、ルークスはゆったりとした口調でセダムに声を掛けた。
「あのタイミングでおれに突進掛けてきたってことはぁ、どーせおれの語りとか独り言もぜーんぶ聞いてたんでしょ~? 独り言を隠れて盗み聞きなんていけないんだ~」
「ア“ァン?! そったもん、周りに聞がせるみでぇに勝手さ口開いぢゃるオメェがわりんだべが!! 語る口があったら聞がれだぐねぇ奴にも聞がれる覚悟ってもん持っとげやァッ!!!」
「語る口ならぬ、堅る口の牡牛くんが言うねぇ~。いや、ミノタウロスなのに猫被ってたから騙る口かなぁ? 本当は見た目だけ亜種で中身は普通のミノタウロスちゃんと同じな癖に見事に亜種の群れに溶け込んでさ~。そーんな愉快な性格なら教えてくれたって良いのに~」
「亜種だ普通だどが知らねぇべ! オイラが普通だど思ったもんがオイラの普通だべ! 人食ったような奴が、人食ったような言葉抜がすて“普通”語ってんじゃねぇぞゴラァッ!!」
ケラケラと嘲笑いながら煽ってきたルークスの言葉を軽く撥ね退け、セダムは再びルークスに突進し棍棒を振り下ろした。
ミノタウロスのセダムの全力の攻撃。上位種といえどまともに直撃すれば無傷では済まない。
しかしルークスはその攻撃に対し佇んだまま避けることなく、そのまま顔で棍棒を受け止めた。
いや、受け止めたように見えた。
セダムが棍棒を通して感じたのが肉の潰れるような感触でも、骨が折れるような感触でもなく、何か、硬い物に挟まれたようなものだった。
その違和感に気付いたセダムがルークスの顔を見て、目を見開いた。
元々大きかったその口を更に大きく開き、ルークスは文字通り棍棒の先に齧り付き喰らっていた。
ボリッと音を立てた後更に口を大きく開いたルークスに危険を感じ、咄嗟にセダムは棍棒を離して距離を取った。
次の瞬間、セダムの持っていた棍棒はルークスに丸齧りにされ、バラバラに噛み砕かれてしまった。
齧り付いた棍棒の残骸をそのままパクリと口の中に含め、ルークスはそれを咀嚼し始める。
「はっひは【ほーふい】ほへひではふへあはひひひゃっはへほ~」
ゴリッ、バキッと数回の咀嚼音を鳴らした後、ゴクリという音と共にルークスは口の中の物を胃の中に収めてしまう。
「三度目は、当たってあげる気ないよ~?」
そう言って、ルークスは大きな口を開けてセダムに向かって笑って見せた。
木製の棍棒をぺろりと食べてしまったルークスを睨みつけながらセダムは呟いた。
「ケッ、何食っても腹壊さねぇスキル……ってとこだべか?」
「効果としては大体そんな感じ~。<暴食>って言うんだ~」
「なるほどな、底の見えねぇそん食欲はスキルのせいだべが」
「本当は牝牛ちゃんにしようと思ったけど~、牡牛くんが自分からご飯になってくれるって言うならおれは別にいいよ~? 食事のついでにちょっと遊んであげる~♪」
「ハッ、なぁにが遊んであげるだべ! 仮にも同ず釜ん飯食った仲のもんを食材扱いすてやがった糞蛇が上から物言ってんでねぇべ! オメェがオリーブや他のもんを食わねぇって宣言するまでどづいで……」
ルークスの放った見下した言葉に対しセダムは吐き捨てるように嘲笑し、再び突進を掛けて――――
「あ~~ん♪」
「って、オイラの棍棒そのまま平らげるよっど破片拾い食いすてんじゃねーぞ!!」
噛み砕いたことによって床に散らばったセダムの棍棒の残骸をルークスが拾い上げてクッキーか何かのように食べ始めたのを見て、怒号を上げながら殴りかかった。
ルークスはセダムの猛攻を避けつつ、器用に棍棒の残骸を食べつつ、セダムに言う。
「むぐむぐ……いや~、出された物は全部食べないと~」
「ふっざけんなべ! それ一本作るだめに丸太選びがら木彫りまで何時間も掛げでんだぞ!」
「わざわざ材料から厳選したのぉ? 道理で身がしっかり詰まってると思った~! でもちょっと削り過ぎて外側のコリコリとした表皮まで削っちゃってるのもったいないかな~」
「美食家面すて評論決めでんじゃね―べよヴォケ“!! あ“あクソッ、壊れだら壊れだで焼いで畑の土さに撒ぐべど思ってあったのに……!!」
「性格は普通のミノタウロスと同じなのに、畑を耕すのは変わらないんだ~。笑える~」
「笑うじゃねぇべ!!」
口汚く怒声を上げるセダムとセダムの言動をケラケラ笑って更に怒りを煽るような発言をするルークス。
二体の口論は軽口混じりだが、その間に繰り広げられる戦闘は激しいもの。
セダムはミノタウロスの身体能力の高さのみ利用し、アイネスが見れば「プロの喧嘩屋か本職の方じゃないですか」と述べそうな程荒々しく、だけど的確にルークスの急所を狙って素手やその体躯で攻撃し、
ルークスは涼しい顔でその猛攻を躱しながらも、無数の魔法やスキルを利用し目眩ましや足止めを行い、隙あらばセダムの腕や肩を噛みつき食い千切ろうと口を大きく開いて襲いかかってくる。
ルークスの攻撃をセダムが紙一重で避け、セダムの突撃をルークスが意気揚々と躱す。
ふとルークスがセダムの頭突きを避けその首筋に歯を立てようとしたその時、セダムが背中から何かを取り出しそれをルークス目掛けて振り回したのを見て、ルークスは上体を仰け反らせて回避した。
「誰にも言わず倉庫がら拝借しだもんだがら、本当は使いだぐはねがったげんど……」
セダムの手に握られていたのは<ネットショッピング>で購入されたと思われる、鉄製のトレーニングバット。
棍棒が壊れた時の予備の武器として、大きな隙があったら不意打ちで取り出して攻撃するために背中に隠し持っていたのだ。
怪力な魔物用に用意されていた重いバットを振り回すセダムの姿に、ルークスは呟いた。
「うわぁ、牡牛くんのヤンキーっぽさが増した~」
「だぁれがヤンキーだべゴラ”ァ!?」
「キャハキャハッ♪」
<ネットショッピング>によって取り寄せられた鉄バットには攻撃力を上昇させる付与が付いていたのだろう。
セダムの攻撃に鋭さと重さが増し、ルークスの服や髪の端にバットの先が掠り始める。
しかしルークスの余裕がなくなることはない。
「牡牛くんさぁ、おれがどうやって<アイテムボックス>に入ったか知らないの~? そういう所は本当、バカだよね~♪」
ルークスは口を大きく開き、再び閉じる動作をすると、ルークスの姿が消える。
そしてその次の瞬間、ルークスはセダムの背後に姿を現した。
やっとメインの時間だ。
そう思いルークスは食事にありつこうとセダムに歯を立てようとした。
しかし、
ビュゥンッ!
「!」
セダムに歯を立てる直前、セダムは背後にいるルークスの腹に向かって後ろ蹴りを仕掛けてきたのだ。
ルークスはその反撃に目を見開きつつも、セダムの後ろ蹴りをひらりと躱し、再び空間を通って別の場所に移動する。
するとルークスが転移するのとほぼ同時にセダムが距離を詰めた。
目の前に迫るセダムの姿を見て、ここでルークスは首を傾げた。
「……あれぇ?」
空間移動。待ち伏せ突撃。
背後からの不意打ち。後ろ回し蹴りでのカウンター。
上方からの飛びつき。猫騙しによる妨害。
魔法による目潰し。方向転換で回避。
魔法や空間移動を使って確かにセダムの死角や隙をついているにも関わらず、ルークスの攻撃が尽くセダムに当たらない。
いや、当たらないのではなく届かないと言った方が正しい。
ルークスが攻撃をする先にルークスの攻撃や鉄バットが飛んでくるせいでセダムにルークスの攻撃をぶつけられぬまま後退や回避へ動かされてしまうのだ。
本気など一切出していない、お遊び感覚でとはいえ、上位種であるルークスが中位種族であるミノタウロスに後退を強いられている。
攻撃の姿勢に入れないでいる。
喰らいつけないでいる。
お陰で今になっても、セダムは無傷のままルークスの前に立ち塞がったままだ。
これは、弱肉強食の階級主義をモットーとする魔物たちにとって、大きな衝撃を与えるものだった。
驚くことはそれだけではない。
上手く攻撃が出来ないルークスの一方で、セダムはどんどんルークスに距離を詰め、攻撃してくるのだ。
髪先に掠っていたバットが髪に当たるようになり、
顔の真横を通り過ぎていた蹴りとルークスの顔の距離が近づいていく。
これはセダムが戦闘の中急激に成長しているわけでも、長時間の戦闘でルークスが疲労して鈍くなっているのでもない。
セダムの攻撃が、ルークスに届くように調整されてきているのだ。
ルークスは一旦、大きな口を開いて再び空間移動を始め、セダムの様子を伺う。
そして彼はこの事実に、この衝撃に、この動揺に、ルークスは気まぐれに思考し始める。
(牡牛くんは“同類”ではなさそうだしぃ、おかしなスキルを使ってそうな様子はない。むしろ、滑稽なくらい馬鹿で愚直で脳筋な攻撃の仕方だ。普通ならもう胃の中に収まっているはずなのに~……)
ルークスは様々な物を喰らい、その腹の中に収めてきた。
狩って、食らって、己の糧とした。
ルークスはミノタウロス程度の魔物であればあっという間に食らってしまえるぐらいには強い。
一方、セダムはそうじゃない。
セダムは“同類”ではない。策を講じるだけの脳もない。
一際武の才があるわけでもないし、都合の良い展開を引き寄せる運もない。
集落に寄ってきた不審者としか対峙したことのない魔物だ。
実力も戦歴も、ルークスの足元に及ばない。
にも関わらず、ルークス相手に攻撃の姿勢を崩さないでいられている。
何より、ルークスが首を傾げさせたのは、その戦いぶりが自分の知っている【同類】の内の一体に少し似ていたからだ。
(あ~でもでも~、この距離の詰め方は【同類】っぽいというよりはゲームで言う所のあの……えぇと……なんだっけ~? ……焼き鳥? いや、蒸し鶏? いや、確か――――)
「陣取ったべ」
考えながら移動先に地に足を着いた瞬間、ルークスの額に強い衝撃が襲う。
その目前には鋭く睨みつけるセダムの頭。
ミノタウロスらしく、闘う牛と書いて闘牛らしく、ルークスに頭突きを食らわせたのだ。
戦闘の途中で別のことを考えていたのだから、攻撃が当たるのは致し方ない。
ルークスにとってその程度の攻撃が直撃しようと衝撃を感じるだけで、痛くも痒くもない。
そんなことよりも、セダムの言葉の方が気になったのだ。
そしてルークスは思った。
(ああそうだ、陣取りだ~!) と。
相手の懐に入るのではなく相手の領域を侵す。
拳を振るうのではなく拳を置く。
相手の心を読むのではなく、相手の間合いを読む。
相手の一手先の先に1手を踏む。
知的ゲームの一つであり、戦いの用語としても使われる単語だ。
(牡牛くんの戦い方に【同類】っぽさを覚えて当然か~。【同類】は玩具やゲームを作ってたし、【同類】はよく戦い方関係の話をしていたもん)
次にルークスが思ったのは、どうやってセダムがルークスの先の先に陣を取るように動く事が出来るのだろうかという疑問。
そもそも相手の先を読むというのは容易く言えるほど簡単な事じゃない。
ボードゲームなどのお遊びと違って、戦いでは相手の取る選択肢は無数にあるのだ。
考える時間も、動ける範囲も限りがある中で、相手の先を推測するのは並大抵の者に出来ることじゃないのだ。
それが出来るのは、余程知性が高いか純粋な強者であるか、あるいは考察や戦術に長けているか。
それか、相手の場所や動きを察知することに長けている者のみ。
(うん、察知?)
そこでルークスは何処からともなく解を得て、思い出した。
相手の動きや場所を事前に知る事が出来るスキルがあることを思い出した。
探知系スキルは自分の周囲にある物や人、もしくは魔法や危険などを事前に感じ取り、その位置やタイミングを正確に特定するスキル。
セダムがそのスキルを持っていればルークスの移動先に向かって突進を掛けたり攻撃に合わせて動いたりしていたのも当然の話と言える。
セダムはただ、スキルで察知した結果に合わせて行動すればいい。
性に合わず、碌に使おうともしないスキルの類だった為ルークスはそれだと気が付くのが遅れてしまった。
しかし、探知系スキルには大きな欠点がある。
それは効果対象とその範囲の制限の狭さだ。
効果範囲は使用者のスキルレベルに比例して広がるのだが、探知対象については変える事が出来ない。
<気配察知>であれば周囲の生物の気配は読み取る事は出来ても、物や魔法の察知は出来ないし、<魔力探知>であれば魔力を持つ者の位置は特定出来ても、魔力のないもの位置は読み取れないし、魔力の持ち主が誰かまでは特定することが出来ない。
効果範囲も対象も無制限という、他の探知系スキルを馬鹿にしたような探知スキルも確かに存在するが、それを所有するのは探知に長けた種族か、スキルの取得が容易い異世界人ぐらいだ。
ところがルークスの目には、セダムが魔法もルークスの位置も何もかもを探知出来ているように写っている。
そこまで考えて、ルークスは考えることを止めた。
考え込むことに飽きた。
激しい戦闘を続けたまま、ルークスはセダムに問いかける。
「ね~、牡牛くんさぁ~。ちょっと質問なんだけど~」
「何だべ」
「牡牛くんって~、一体探知とか察知系のスキルをいくつ持っているの~?」
セダムがルークスの魔法を鉄バットで弾き、双方が距離を取る。
セダムはルークスを睨みつけたまま、言った。
「生憎オイラは頭良ぐねぇべ。このダンジョンさ来てすぐ教わったんは、文字の読み書ぎだったべ。」
「物の数え方はまだ、両手の指の数まですか数えらんねぇ」
その答えで、ルークスは漸く全てに納得がついた。
そしてその回答の愚直さに、思わず爆笑しそうになった。
探知系スキルで探知出来るのはそのスキルの探知対象だけ。
制限のない探知スキルの取得はほぼ不可能に近い。
だが、複数の探知系スキルを同時展開することは可能だ。
対象に制限がある探知系スキルも、別の探知系スキルを同時に展開すれば探知出来る対象は増える。
セダムは自分の持つ全ての探知系スキルを常時同時展開してルークスの動きや位置を察知しているのだ。
それ自体は他の探知スキル持ちでさえやっていることだ。
ただ違うのは、セダムの所有する探知スキルの数が他者と比べて異常に多いということだけ。
【名前】セダム
【種族】ミノタウロス
【称号】なし
【スキル】
人物探知 LV10
空間探知 LV8
気配察知 LV8
魔力探知 LV6
危険察知 LV7
魔法察知 LV5
攻撃察知 LV9
etc……。
普通ならば1つか2つしか取らないはずの探知系スキル。
探知対象の種類の数だけ存在する数多の探知系スキルを、セダムは取得出来るだけ取得していたのだ。
2桁を越える探知スキルを全て同時展開していれば、殆ど隙間なく探知することが出来るのはある意味当然だ。
更に言えば、それらの探知スキル全てが高いスキルレベルを有していることとなる。
そうでなければ、広いダンジョンの中で特定の人物の居場所を正確に特定したり、空間移動中であるはずのルークスの動きを察知したりなんて真似は到底不可能だろう。
ルークスは思わず吹き出しそうになるのを堪えつつ、再び空間移動を行おうと口を開いた。
が、ルークスが口を閉じる動作を行うよりも早くセダムが鉄バットを突き出してそれを妨害した。
驚くルークスに向かって、セダムが尋ねた。
「オイラの前がら消えで別の場所さ行ぐ時、必ずその歯ぁ立でるような動作すてるべな? もすかすって、それをしねぇど、宙を食わねぇと、転移出来ねぇのけ?」
「牡牛くん、頭悪いのにそういうヤンキーの勘働かせるのは出来るんだぁ?」
「うるっせぇべ。ただ、オイラん横さにはいっつもフラッどいきなり姿消して迷子になる姉ぢゃん気取りの幼馴染がいるがら、常に目ぇ配ってるだげだべ。」
セダムの反応を面白がるようにニヤニヤとした笑みを浮かべながら軽口を叩くルークスだが、その状況は笑えるものではない。
気まぐれに不意打ちや騙し討ちを行うルークスの攻撃はセダムの探知系スキルによって真正面から封じられてしまう。
空間移動をしようにも移動先を誤魔化す事は出来ない上、空間移動の条件を悟られている今移動しようとすれば即妨害されることは見えている。
何より戦っている場所が悪い。
今セダムとルークスがいるのは無限回廊と名は付いているが、実際は入った者がぐるぐると歩き回るように設計されているだけのさほど広くない廊下。
本来の姿を出そうにも廊下が狭すぎる。
そもそもシーサーペント・リヴァイアは本来深い海中に棲む魔物。
全身が浸かるだけの水がない、遊泳するだけの広さもない陸の上での戦闘行為自体かの種族にとってハンデのようなものなのだ。
それが偶然の産物によって起きた都合の良い展開だろうと、2体の戦闘の場としてシーサーペント・リヴァイアが本領を発揮しにくい無限回廊が選ばれたことやルークスと相性の悪い探知スキルに特化し対峙出来るだけの力を持ったセダムと戦う事になったことはかなり不運なことだった。
そう、普通であればそうだっただろう。
「異世界人でもない、珍しいスキルを持ってるわけでもない、ただ見た目が違うだけの中位魔物がこ~んなに生きが良さそうに抵抗するなんてな~」
全体的に筋肉質で程よく脂がのった部位。
硬く歯ごたえがありそうな程骨太で大きな骨格。
今まで貫いた者たちの血肉の出汁がしっかりと染み込んでいそうな硬い角。
若すぎず古すぎず、劣化もなく十分に熟された肉。
目の前の敵に対し一切の澱みなくカッと熱くなりそうなほど純粋な怒りの感情を抱き、そして長年に渡って幼馴染への恋心を燻ぶらせているその心。
今、彼が思っている事はただ一つ。
「牡牛くん、食べがいがありそうじゃ~ん♪」
そう呟くと、彼はにんまりと口角を上げて素晴らしいご馳走を目の前にしているように舌舐めずりをした。




