[*@]ポラリス
――――男の子って、何で出来ているの?
――――カエルとカタツムリ、それと子犬の尻尾
――――女の子って、何で出来ているの?
――――砂糖とスパイス、それと素敵な何か。
――――そういうもので出来ているのよ
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顔を手で覆い泣いていたポラリスに突拍子もなくそんな疑問をぶつけたタクトに対し、周囲の視線が一斉に集まった。
一方、視線を集める原因となる発言をしたタクトはというと、そんな事を言ったにも関わらず本人でもなんともいえないような表情でポラリスを見つめている。
そんなタクトに対し、横にいたイグニレウスが訝しげな表情で問いかけた。
「おい、そこの娘が隠しているとはどういう事だ? なんの根拠で言っている?」
「や、オレの勘違い……、っちゅーよりオレのフィーリング違い? かもしんないんすけど、ちょい今トン子ちゃんから変わった色と形が混ざって見えたんすわ。それがみょーにこの場の空気にマッチングしてないように見えた的な感じなんすわ!」
「色と形……じゃと?」
「何を言うと思えば……、この空間には白以外の色はないはずだろう?」
タクトの言葉にアイネス達が周囲を見渡すが、その空間に見えるのはオークジェネラルとアイネスのダンジョン、そして地平線の彼方まで続く白一色のみ。
タクトの言うような変わった色も形も見当たらない。
バイフー達に口々に言われ一瞬首を傾げたタクトだったが、すぐにハッと何かに気が付いた様子で声を上げた。
「あ! そういやオレ、ハイパーエキセントリックセンスの事アイぴっぴらにまだ話してねぇじゃん!」
「ハイ……なんて?」
タクトの口から出てきた謎の単語に首を傾げる一同。
それを口にしたタクト自身も疑問を口に出したはいいものの、自分の考えをどうやって説明すれば理解してもらえれば良いのか分からないようで、頭を抱えてうんうんとその場で悩み始めてしまった。
「あー、どう説明したら?!」
「ひとまぁず、そのなんとかセンスという物の説明から始めてはどうでぇしょうか?」
「あ、それもそっすわ!」
「た、立ち直りが早いですわね……」
頭を抱えるタクトにテアトロが助け舟を出すと、タクトはすぐに立ち直りその提案を飲んだ。
タクトの立ち直りの早さにレジェンドウルブスのノリにまだ慣れていないラファエレが引き気味に呟く横で、タクトは自身の持つ能力について説明を始めた。
「これ、上手く説明出来なくてブルーらにしか言ってなかったんすけど、オレって他の奴らと違った感覚を持ってる系なんすわ。匂いが音に聞こえたり、音が色や形に見えたりって感じ? ピンキーみたく嘘を見破るのが上手いとかそういう訳じゃないんすけど、ちょっとしたスキルの使用とか自分の身に起きそうなヤバめな予感とか、普通の感覚じゃ分かんねぇ事がなんとなく分かっちゃう時があるんすよ」
「ふむふむなるほど! 要は第三の目や感知のような超感覚系のスキルのようなものだな!」
「超感覚系スキルなんてそんな珍しいスキルをなんでグレーターワーウルフ如きが持っているの!?」
「スキルじゃなくてハイパーエキセントリックセンスな! つかそもそもスキルじゃねぇし! オレのステータスにそれっぽいスキルは見つかんなかったわ!」
「……テナーの記憶能力やバリトンの怪力と同じくステータスには反映されない才能の類ですか。本当に、型破りな人狼達ですね」
「才能っつーか、文字通りセンス的な? スキルの使用だとか云々はそん時リアルで見てた場の流れを見てのオレの直感もあるんで分かってもかなりアバウトなんすわ。なんで第三の目とか感知とか大層なもんじゃね―っす。精々作曲のアイディアに利用するだけって感じ」
詳細ではなくとも自分の身に迫る危険や他者の感情、更にはスキルが使用された事までもを知覚として察知することが出来る能力。
それが如何に有用な才能かを知らずにいつものように軽薄なノリで笑っているタクトに、ベリアルを筆頭とした強者達は苦笑を浮かべる。
少し呆れた様子でため息をついたラファエレは話を戻す為にタクトに問いかけた。
「それで先程のやり取りで貴方様の言うハイパー……なんとかセンスというものが何かを感じ取ったと?」
「いやなんつーの? トン子ちゃんのパッパさんが大怪我食らった辺りから急にトン子ちゃんの糸の動きの方向が変わって、他の奴らに繋がった糸もそれに合わせて代わり始めたんだわ。言うなりゃパーペキなオーケストラの途中に一人がアドリブ振り出してそれに他の奴らも合わせる感じ?」
「いや意味が分からん。もっと分かりやすい例えにしろ」
「もしくはイケイケなちゃんねーサキュバス3体がダンスでパーリーナイトしてる最中に1体だけヘビメタ歌いだして2体が慌ててそれに合わせ始めるような感じ?」
「もっと意味が分からなくなってるではないか!!」
レジェンドウルブス特有のチャラウルフ言葉による例えにバイフーが鋭いツッコミを入れる。
一方でミルフィオーネやディオーソスはタクトの例えでどういう事かを理解したらしく、確認するようにタクトに尋ねた。
「……つまり、元々存在していた全体の場の流れがそこな娘が先導する形で別の方向へと変わった、そう言いたいのかぇ?」
「そそ! マジそういうイメージっすわ! ディオさんとかミルフィオーネパイセンとかアイぴっぴみてぇに指示出すリーダーさんら相手に結構視れる奴なんすけど、トン子ちゃんはそういうタイプじゃねぇし、それにしちゃなんか自然過ぎっつーか、なんかコソコソ隠れてるっぽいっつーか、変に巧みなんすわ。まるで……」
「……今回、アイネス様が紫の迷宮に導入した『まじしゃんずせれくと』みたいなもの、だったと?」
「あ、マジそんな感じっすわ!!! さっすがベルっさん!」
ラファエレにより重傷を大方回復したベリアルが真剣な表情を浮かべそう問いかけると、タクトは大きく手を叩いて肯定した。
タクトの肯定の言葉を聞いた、ミルフィオーネ達は厳しい目つきをする。
そんな中、イグニレウスはタクトの言葉の意味が分からない様子で首を傾げながら言葉を零した。
「なんだそれは? それは先導と言うよりも……」
「“誘導”。つまり、Mr.テクニシャンの娘は我々に対し何かしらの誘導を試みた、という訳であるな!」
「ゆ、誘導!? この失敗やドジばっかのこいつが!?」
「あ、有り得ませんわ! そこのグレーターワーウルフさんの気の所為では?」
「んなこと言われても視えたもんは視えたし、そう感じたもんはそう感じたんだって! オレだってマジさっぱりんぐよ?!」
ディオーソスの言葉を聞くとオークジェネラルの元配下達が真っ先にタクトの言葉を気の所為だろうと否定した。
元配下達はオークジェネラルの次に長い間ポラリスと生活し、ポラリスがオークジェネラルに叱咤される姿を見てきているのだ。
そんな彼女達にとって、ポラリスが誘導を試みたという事実は信じ難いものなのだろう。
しかしタクトも自分が持つ特殊な感覚で掴み取ったものが嘘ではないと信じているからか、頑として自分の掴み取った事実が気の所為であると撤回する事はない。
何かの間違いだ、いや間違いじゃない、そんな口論の堂々巡りが続く。
「ワタシもMr.テクニシャンの娘の事は何度かパーティーで見たことがある故、性格的にそういった事を企んだとはあまりにも信じ難いのは分かる。だが、レジェンドウルブスの才能は他にはないものがある。スキルでないにしても、超感覚スキルと同等の感覚を持つ彼の言葉も捨て置く訳にはいかないだろう!」
「しかし、仮にそれが本当だとしても一体どのような誘導を? そもそもわたくしどもをどういった方向へ誘導させようとしたのでしょう?」
「それはワタシにも、さーっぱり見当もつかない!!!」
「いや、分からぬのかい!!」
「マスターディオーソスは超感覚スキル取得してないですからね~」
「ね~」
「ハーッハッハッハッハ!」
「笑ってる場合か!!」
ディオーソスやミルフィオーネ達もタクトの言う違和感について話し合うものの、タクトの言葉が曖昧過ぎて違和感の正体に辿り着けない。
そんなやり取りが続く中、途中から静かにタクト達の議論を傍観していたアイネスに対し、トン吉が口を開いた。
「……アイネス様は、何か分かっておられるのではないですか?」
『!』
トン吉に声を掛けられたアイネスは僅かに目を見開いた。
その言葉を聞いたミルフィオーネ達は議論を止め、アイネスの方に向く。
トン吉は固い表情を浮かべつつも、そのまま言葉を続ける。
「アイネス様はおで達の誰よりも観察眼に長けていて、そしてとても警戒心が強いお方です、ブヒッ。今回のダンジョン戦争の間、アイネス様は黒幕の存在や敵の魔物達、ダンジョンマスターではなく、もっと別な何かを警戒しているようでした」
『……そうですか?』
「それにアイネス様はダンジョンが始まる前、ポラリスさんは手遅れだと仰ってました……。ブヒッ、もしもタクトさんが感じたポラリスさんに対する違和感が確かなら、アイネス様が警戒していた正体がそれだったのなら、ポラリスさんを迎え入れた事を決めたおではそれを聞く責任があると思うんです」
『……』
「アイネス様、お願いします……ブヒッ」
トン吉はそう言うと、ベリアル達の前でアイネスに深々と頭を下げた。
議論の対象になっていたポラリスは目に涙を浮かべトン吉を見るだけだ。
頭を下げて懇願するトン吉を、アイネスは何も言わずに見つめる。
トン吉の言う通り、アイネスはベリアル達が気付いていないであろう事に気が付いていた。
最初にアイネスが抱いていたのは推測でも憶測でも、机上の空論でもなく、ほんの少しの違和感だった。
時間が進むにつれ、その違和感は大きくなり、違和感から僅かな憶測へと進化した。
だがアイネスが編み出したその憶測は、一部の者達には受け入れ難いものだと推測した。
故にアイネスはトン吉か誰かがその違和感に気がつくまでは自分で口にしないことに決めた。
しかし、違和感は益々強まってさらなる憶測を生み出し推測になり、そしてつい先程、確信へと変わってしまった。
違和感が憶測へと変わり、憶測が推測へ、最後に確信へと変わった時、アイネスは考えた。
“この事は、自分一人で内密に解決しなければいけない”と。
自分が気付いたその確信は今までの全貌を覆し、更にはこの場にいる者の誰かが傷つきかねない。
そう考えたアイネスは自身の確信を口に出さないことを決め、タクト達の口論にも参加しないでいた。
この場でアイネスが自身の“確信”を口にすれば、本当に後戻りが出来ない状況に陥ってしまうから。
トン吉はオークジェネラルのように頭が良い個体ではないが、アイネスの推測能力が尋常ではない事は知っている。
アイネスがコミュ障でありつつも、物事をはっきりと言うという事も知っている。
そのアイネスが何かに気がついたにも関わらず、口を噤んでいる。
トン吉がポラリスについて相談した際も詳細は説明せず、ちょっとしたアドバイスを告げただけ。
口論になった今でもアイネスは黙秘を続けている。
つまりアイネスが推測した“何か”は、それ程までに衝撃的な事なのだとトン吉は直感した。
……誰かを傷つけかねない程に。
しかしトン吉はアイネスにその“確信”を話すよう懇願した。
もしかしたらポラリスを受け入れた自分の判断が間違っていた事を知り、後悔するかもしれないという事を、そんな決断をしたトン吉が傷つかないように黙秘を決意したアイネスの考えを薄々理解した上で、だ。
どんな事実であろうと受け入れる決心をしたトン吉の懇願は、事実を隠し通そうとしたアイネスの心を動かした。
アイネスは一度トン吉とポラリスの方を見た後、静かに目を伏せ、ゆっくりと話し始める。
『……今回の騒動の事を調べるにあたり、私が抱いたのは直感とも推測とも言えない、ほんの違和感でした。最初は気の所為ではないかと思いましたが、ミルフィーさん達とのやり取りでその違和感は疑問へと変わりました』
「疑問?」
『どうして私達がこの騒動を知ることになったか? ですよ』
アイネスの告げたその言葉にミルフィオーネ達は顔を見合わせる。
詐欺騒動の黒幕の存在についてや詐欺に関してならともかく、その疑問はアイネスが抱くにはあまりに単純明快過ぎる疑問だった。
一番に口を開いたイグニレウスを筆頭に、魔物達は口々に話し始める。
「何を言う、アイネスよ? そんなもの、疑問にすらならんだろう?」
「確か、アイネスさんのダンジョンにミノタウロス達を引き入れる際、ミノタウロス達とのやり取りでこの事が分かったと聞いておりまぁすよ?」
「そうですね。アイネス様もミノタウロス達の持ってきた契約書をご覧になられたでしょう」
『はい、そして最初の違和感はそこでした。あの時は気が付きませんでしたけど、後々になって考えるとおかしいんですよ。ロッソさん達がミノタウロスの村に契約書を置いて契約を結ぶかを考える時間を与えた事が』
「おかしい、ですか?」
「一体どこがおかしいというのだ?」
『わかりませんか?』
首を傾げるイグニレウスとラファエレに、アイネスは問い返す。
ミノタウロス達より後に召喚されたラファエレ達やアイネスとミノタウロスが対面した経緯をあまり知らないダンジョンマスター達に説明するように、アイネスはイグニレウスに言った。
『イグニさん、ミノタウロスさん達に研修を受けさせていた時の事をよく思い出してみてください。ミノタウロスさん達は皆文字の読み書きが出来なくて、研修の際に文字の読み書きを教えたんですよ? その場で説明して契約を結ばせるならまだしも、契約書だけ差し出されて数日時間を与えるのでどうするか決めてくださいって言っても無理に決まっているじゃないですか。ミノタウロスさん達は内容を知る事はおろか、同意の署名すら書けないのに』
「「「「あっ!」」」」
アイネスのその言葉を聞いたベリアル達は、初めてその違和感に気が付いた。
そう、ミノタウロス達が初めてアイネスのダンジョンに訪れ面談を行った際、セダムとオリーブ達はアイネスにこう告げていた。
『村を領地化する話す合いに関しての詳すい事はこの『けーやくしょ』って奴に乗ってるそうだべ。オイラ達は全員字が読めないから分かんねんだけんどなぁ』
字が読めないミノタウロス達には当然契約書の内容を読む事が出来ない。
だからこそオークジェネラル達は契約書に詐欺めいた内容を記したとしてもミノタウロス達は気づく事が出来ず、すんなりと詐欺に引っ掛ける事が出来る。
しかし、それはその場で契約を結ばせることで成立することだ。
オークジェネラル側がミノタウロス達に嘘だらけの説明をして全く別の内容の契約書にその場でサインをさせるならまだしも、詳しい説明もなくミノタウロス達が読めない契約書をそのまま置いて回答を待つ時間を与えても意味がない。
ただ時間を浪費するだけに終わる。
何故ならミノタウロス達は、その内容を読む事も理解する事も出来ないのだから。
その違和感を認識したベリアル達は、訝しげに顔を見合わせ、各々口を開いた。
「言われてみれば、確かにおかしいですね……」
「そうだな……」
『2つ目の違和感、それはミチュさんが今回の詐欺騒動の被害者になった事です』
「あ、アタシ?!」
突然アイネスに名指しされたミチュは目を丸くさせる。
その横に立つミルフィオーネとディオーソスはアイネスの言葉を聞き、思考を巡らせる。
「言われてみればその通りじゃな。このペテン師らは自分の悪事を悟られぬよう、騙す相手を精査し足取りが掴みにくいようにしておった。ディオーソスと友好関係のあるミチュを騙せば一気に事が発覚されかねん。それは小賢しい此奴が少し考えれば分かる事じゃろうに……」
「ハーッハッハッハッ! ミチュとワタシの友好関係の深さはダンジョンマスター達の中では周知の事実だからな! 単なる人選ミスとは考えにくいだろうな! それこそ、それを考慮した上での行動でもない限りインポッシブル!!」
「ディオさんとミチュネエさんの関係性を考慮した上での行動……ってどゆこと?」
「ミッチェル様を詐欺のターゲットにしたのは御二方の関係性を知っていて尚、逆にそれを利用するように取った行動……つまり、今回の出来事についてミッチェル様を介してディオーソス様の耳に届くように仕向けた事である……という事でしょうか?」
『恐らく、そう言うことでしょう』
ラファエレの出した推測にアイネスが首を振って同意を示した。
オークジェネラルは今回の詐欺騒動がミルフィオーネやディオーソス達に露見する事を恐れてネズミ講という詐欺で被害者を精査し、騒動の大本が分かりにくいようにしていた。
しかし今回の詐欺騒動の被害者の中にミチュが含まれるのはおかしい事だ。
何故ならミチュがディオーソスと親しい間柄だというのはダンジョンマスター達の間でも有名だからだ。
ミチュを詐欺騒動に巻き込めば必然的に彼と親しいディオーソスも事を知る事になる。
それを慎重な性格であるオークジェネラルが気付かないはずがない。
仮に騙すとしても、オークジェネラルとの繋がりを掴ませないようミチュの知らない魔物を使いとしてよこすはずだ。
しかし現実ではミチュはオークジェネラル達の詐欺騒動の被害者に選ばれた。
パーティーで面識のあるポラリスに美容品を持ってこさせ、まんまと詐欺に引っかからせた。
まるで、わざと今回の詐欺騒動の犯人がオークジェネラルである事を知らしめるように。
「仮にその推測が確かだとするならば、字の読めないミノタウロス達に対し一時的な猶予と堕天使の契約書を与えたのもアイネス様にこの騒動を知らせる為と考えられますね。ミノタウロス達の村はアイネス様のダンジョンとそう遠くない距離にありますし、素直なミノタウロス達がアイネス様の元に字の解読を依頼する可能性もなくはないですから」
「そうなると、そちらのダンジョンマスター様に契約を持ち込んだのも、アイネスさんに騒動を知らせる為ではないでぇしょうか?」
「なに?どういう事だ?」
「ワタクシは詳しい事は知らないのでぇすが、ダンジョンマスター様方は今回の件の助言役であると思われていた人間に心当たりがあり、実際アイネスさんもその人間の仕業であるならばと今回の件の解決に手を貸した訳でぇすからね。アイネスさんが調査を頼まずとも、ダンジョンマスター様方の方からアイネス様に今回の話を持ち掛ける可能性は高かったでぇは?」
「なるほど、仮にミノタウロス達がアイネス様のダンジョンに赴かなかった場合の保険……、いえもしくは、ミノタウロスとの契約こそが保険で、ミッチェル様を介してアイネス様に騒動を知らせる事こそが本命の手段だったということですね」
「ちょ、それなんか変じゃねっすか? それじゃまるでアイぴっぴに関わりたかったから今回の事暴露ったっぽくね? つか、そんな大掛かりな真似を誰にもバレずに出来る訳?」
『暴露した理由は分かりませんが、行動自体なら簡単に実行出来たはずですよ。それもたった一人で』
『ロッソさん、もしかしてケムエさんの契約書は事前に複数枚同じ内容の物を作成されてたのでは?』
「な、なんで、それを……!」
『ただの推測です。その上で聞きたいんですけど、その予備の契約書は自分の部屋に置いていたか、実行犯となるポラリスさんに渡してたかしてませんでした?』
「……予備の契約書は、執務室の金庫に置いていた」
『詐欺を働く際はどうやってポラリスさんに契約書を渡してたんですか?ロッソさんかケムエさんが必要枚数をポラリスさんに渡してました?』
「い、いや、最初は確かにそうしていたが、少しするとわざわざ契約書を渡すのが面倒になって、予備の契約書の入った金庫の鍵をポラリスに渡していた……。それで、実行させる時はポラリスに命令をして……」
『「その時騙す被害者分の契約書を取らせに行って、そのままポラリスに赴かせていた」ですか?』
「……」
アイネスの言う通りだったのか、オークジェネラルは痛みに震えながらも口を噤んだ。
オークジェネラルが口を閉ざしたのを見て自身の推測が肯定と解釈したアイネスは溜息を付きながら独り言を呟くように話し始める。
『命令や頼み事って難しいですよね。誰かに何かを頼む時、必要事項を詳細に説明しておかないと聞く側とする側で解釈違いが起きるかもしれませんからね。例えば学園さ……もといパーティーで使う服にピンクの服持ってくるように言ったら何故かピンクのヒョウ柄パジャマを持ってこられたりとか、倉庫にある椅子をあるだけ欲しいって言ったら何故か職員室横の倉庫から立派な玉座を持ってこられたりとか……あれはカナタさんのジョークだったけれども』
「どんな解釈違いだ」
「普通そういう勘違いはせんだろ」
『流石にこれらはあくまで分かりやすい例えですけど、命令する側とは想像がつかない行動を取る人は少なからずいますよ。大なり小なり、そして確信犯にしろないにしろ、ね』
「! アイネス殿、まさか……」
『もしも事前に金庫の鍵を渡されていて、更に「契約書を持っていって指定の場所に行って言われた通りの行動をしろ」と命令されていたのだとしたら、今回の誘導はとっても容易だったでしょうね。
だって持っていく契約書を2,3枚『余計に』持っていこうが、その道中指定外の場所に『寄り道して』赴こうが、ロッソさんが指定した人物ではない人『にも』言われた通りの行動をしようが、ロッソさんが出した命令に反してませんしね』
アイネスのその言葉に、ベリアル達は一斉にポラリスを見た。
ポラリスは、何も応えずただ俯いて泣いているばかりだ。
そう、少し考えれば分かる事だった。
確かにオークジェネラルはポラリスに隷従契約を使って『これをしろ』と命令はしたが『これをしてはいけない』といった命令はしていない。
契約書の数を指定された訳じゃないのだから何枚取っていくのかは取る側の自由で、指定の場所に向かうルートも命令外の人物にどういった行動をするかも命令を解釈する側の自由。
つまり、ポラリスの自由なのだ。
ならば、その後の展開を操る事も十分に出来る。
アイネスは表情を変えず、淡々とオークジェネラル達に告げた。
『そもそも、ポラリスさんぐらいしかいないんですよ。詐欺騒動の中心部にいた人物で、契約書に触ることが出来て、展開を誘導出来るだけの力を持っていて、尚且ロッソさんのダンジョンにいる魔物の中で誰からもその言動や存在を気にされない人物は』
『詐欺騒動の実行犯として働かされステータスにもハッキリ『所有物』と記載されてしまっているほど立場が弱くて普段からロッソさんからも他の魔物達からも面倒事を押し付けられるぐらい侮られていて、そしてロッソさんのダンジョン内でヒエラルキー最下層にいたポラリスさんにしか、誰からも警戒されずに誘導するなんて真似は出来ないんです』
『考える前に行動しろ』
『何かをやる時は誰かに聞け』
『お前の考えは殆ど間違っている』
そう口癖のようにポラリスに言ってきたオークジェネラルだが、正確に行動を制限するような命令は全くしていなかった。
何故ならオークジェネラルを含め、オークジェネラルのダンジョンの者達は「これがそんな事をするはずがない」と無意識に思いこんでいたのだから。
否、思い込まされていた。
彼女が普段から失敗してばかりだった故に。
彼女がダンジョンマスターの娘であるにも関わらず劣悪な環境に置かれていたが故に。
彼女がオークという魔物の世界において種族的弱者という肩書だったが故に。
彼女が隷従契約によって所有物という烙印を押されていたが故に。
彼女が悪巧みの一つも考えられなさそうな程、『馬鹿』な『愚か者』だったが故に。
オークジェネラル達は、自然とその存在を侮って油断しまくってしまったのだった。
その油断しきった背中に敗北という名の烙印を押されるまで。
アイネスがその事実を突きつけるまで、ずっと。
その事実を漸く知ったオークジェネラルの元配下達は顔を真っ青にして震えた。
ミルフィオーネは苦虫を噛み潰したような笑いを浮かべながら言う。
「……聞いていて悪寒が立ってしまったわい。まさか、己が思い通り操っていたと思いこんでいた駒に、逆に己が手中に転がされていたとはのう」
「で、でも、それは全部推測でしょ!? 決定的な証拠なんてないじゃない!」
『残念ながら見つけてしまったんですよ、その決定的な証拠を。そうじゃなければこんな推測、口に出せません』
「何を見つけてしまったというのだね、クールガール?」
何処か嫌そうにラミアの質問に答えるアイネスに対し、ディオーソスは更に問いかけた。
アイネスはディオーソスの質問には答えず、オークジェネラルに寄り添っている女性魔物の一体に向かって尋ねた。
『貴方にお聞きします。ミチュさんや他の皆さんを騙す時に使用したあの美容品、あれはポラリスさんが作った物ですよね?』
「なにっ!?」
「きゅ、急に何を言い出すのかしら! そ、そんな訳が……」
『あー、そういうのは結構です。タクトさんからポラリスさん作の痛み止めの話を聞きましたし、そもそも<鑑定>を行えば本当の作成者が誰か分かる事ですから』
「正直に答えよ。アイネスの言う通りかぇ?」
アイネスの言葉に反論を述べようとした女エルフをアイネスがあっさりと切り捨て、ミルフィオーネが更に畳み掛ける。
嘘や誤魔化しは許されないと悟ったのか、女性魔物達は口々に喋り始めた。
「そ、その通りですわ。本来は魔法薬やポーションなどの調合を得意とするわたくしやウィッチ達に任された仕事だったのですけど、貴重な素材なしでロッソ様が望む程の効果の薬を作るのは難しいですし、大量に作成するとなるとロッソ様との時間が減ってしまうので……」
「なるほど、それで薬の調合の出来る彼女に仕事を押し付け、自分の手柄にしたという訳か」
「し、仕方ないじゃない! 調合に長けていると言っても他のどんな薬よりも、って訳じゃないし、そもそも美容品の調合に関してはアレが自ら提案した事だもの!」
「仮にそうだとしても、仕事を全て丸投げして手柄だけ横取りするのはいただけませんわね……」
ラファエレの鋭い一言に、言い訳を並べていた女性魔物達は口を閉ざした。
そんな中、オークジェネラルは赤い体色の顔を青くさせ、絞り出すように口を開いた。
「あ、有り得ない、そんな事、あるわけがない」
「ろ、ロッソ様?」
「ど、どういう事ですの?」
「コレが薬を作っていたなんて、そんな事が有り得るはずがないのだ」
「なんだ? 貴様が散々見下していた者が実は有能であった事実が認められぬというのか?」
「ち、違う! そうじゃない!」
バイフーの嘲笑を混じえた言葉にオークジェネラルは強く否定する。
様子の変わったオークジェネラルにバイフーもミルフィオーネ達も訝しげに首を傾げた。
焦りや動揺とは違う、ただ驚愕の感情を顔に浮かばせてオークジェネラルは震えた声で呟く。
「そもそも、出来るはずがないのだ。何故なら『これ』は……、俺の、娘は……!」
『自分の娘、もといポラリスさんは、<薬物生成>スキルを所有していないから。ですよね?』
「「「「何!?」」」」
アイネスの言葉に、オークジェネラルの元配下達やベリアル達が驚愕の声を上げた。
この世界において、製作にしろ魔法にしろ技にしろ、自分の能力を発揮するにはスキルを持っている事が前提条件だ。
中には例外としてステータスに表示されないスキルも存在するが、調合スキルや製作系スキルはその例外じゃない。
つまり、薬を生成する者のステータスには必ず<薬物生成>スキルが表示されていなければおかしいのだ。
スキルはないが薬は作れるなんて事は、絶対に有り得ない。
その常識を知っているベリアル達にとって、アイネスの告げた事実は“矛盾”でしかない。
彼らは動揺を隠しきれない様子でアイネスに問い詰めた。
「ちょ、ちょいちょいちょい! アイぴっぴ、それマジ!?」
『ええ、先程のダンジョン戦争でポラリスさんに<鑑定>を行ってステータスを確認しましたが、<薬物生成>系のスキルはありませんでした。錬金術も魔法薬生成も、薬の調合に必要そうなスキルは何一つとして』
「ですがアイネス様、彼女は私とタンザに痛み止めを渡す際、自分が作った物のように述べていました。痛み止めも薬ですから、<薬物生成>スキル……それも質の高い物を生成する為にも高いスキルレベルがなければ作成することは出来ません」
『ええ、ですからこういった矛盾が起きた場合、有り得る理由としてはポラリスさんが薬を作ったという事実の方が間違っているか私やロッソさんが見たステータスの方が間違っているかのどちらかです。前者は詐欺騒動で用意された美容品やベリアル達に使われた痛み止めで違う事は判明していますから、考えられるのは後者のみでしょう』
「しかし、仮に後者が真実だとするならば次は『如何なるスキルを使用してステータスを捏造したか』、『何故そこな娘が実の父親に己のスキルを隠す必要があったか』という疑問が発生する訳じゃな」
「そしてその疑問を解消すれば更に疑問が生まれる、そういうことであるな!」
此処まで議論が進み自身に疑いの念が向けられているにも関わらず、ポラリスは何も答えない。
既に悲しみの嗚咽を漏らす声は聞こえない。
ただ先程までのように顔を俯けて座り込んでいる。
まるで、この議論の答えを誰かが告げるのを待っているかのように。
『決定的な証拠、と言いましたがステータスの隠蔽自体は貴方が今回の騒動の発覚からここまでの結末を誘導したという事実を裏付ける証拠にはなりません。でも、貴方が本当に私達の思っていたような人物だったのかを疑うには十分でしょう。というより、この事実に証拠も証言も必要ないんですよね。』
「証拠も要らぬとは、どういう事かぇ?」
『だって事実、そうなんですから。他意によるものか自分の意思によるものかはどうあれ、彼女はいつ如何なる時も重要な場面の実行犯でしたから』
実行犯。
今回の騒動において、実行犯という肩書に最も相応しい魔物はポラリスのみだ。
オークジェネラルや他の魔物達、そしてその彼らを操っていた黒幕は首謀者なのだ。
『ミチュさんのダンジョンに赴いて美容品のサンプルを持ってきて契約を結んだのもポラリスさんだったし、ミノタウロスさん達に交渉を持ちかけて契約書を渡したのもポラリスさんだった。ロッソさんの配下達に美容品の生成を持ちかけてきたのもポラリスさんが自ら言い出した事らしいですし、私に自爆特攻を掛けてベリアル達を重傷に追い込んだのもポラリスさんだった。そしてつい先程、ロッソさんに劇薬を掛けたのもポラリスさんだ。ロッソさんやケムエさん、それに私を含めた全員、何らかの場面に立ち会うか関与をしていますが、それら全ての場面に実際に立ち会い、更に深く関与していたのはポラリスさんだけです。此処まで重要なポイントに関与しておいて、「自分は全く無関係です」なんて言えないでしょう?』
『こんなに貴方が怪しい事は明白だったのに、誰一人として貴方を疑う人は存在していなかった。皆、貴方の振る舞いや立場によって貴方がロッソさんや黒幕に操られた可哀想な被害者だと疑わなかった。……私も含めて』
『こう考えると、ロッソさんよりもよほど腕の立つ詐欺師ですよね。最後の最後までどころか、最後の最後を越えてもなお騙されている事に気が付かせないんですから。正直今の状況だって、ポラリスさんの筋書き通りに動いているように思えます』
『一つ言わせていただくのでしたら、洗脳された振りをしてロッソさんに攻撃したのは流石に出来すぎだ、って事ぐらいですかね?』
『それで、真実をお答えしてくれませんか? 一流ペテン師さん』
「あー、確かに実の娘が洗脳されて父親を口封じ……というのは少し出来すぎましたよね。即興だったとはいえ、わたしもまだまだですね」
不意に、クスクスとあどけなく笑う声と悲痛さも悔しさも感じない喜色の声がアイネス達の耳に入ってきた。
その異様な雰囲気にその場にいた全員が顔を強張らせ、笑い声を上げた本人……ポラリスを見る。
ポラリスはゆっくりと立ち上がると、異常な程に著しい変化に目を見開いた。
自分を小さく見せるために丸めていた背筋をピンと伸ばし、
両親の遺伝を受け継ぎ特徴的だった瞳を隠す眼鏡を取り外し、
俯いてばかりだったその顔をゆっくりと上げ、
上唇を噛み締め何かを堪える表情か泣きそうな顔しかしなかったその顔に、不気味な程綺麗な笑顔を浮かべた。
まるで別人のように変わってしまったポラリスは、全員の注目を浴びる中パチパチと拍手を叩いた。
「噂には聞いてましたけど本当に凄いですね、アイネスさん。全部、見透かされちゃいましたっ」
『……その割には、悔しがったり言い訳したりは全くしないんですね。むしろ嬉しそう、って感じがします』
「だってわたし、アイネスさんのダンジョンの話を聞いてずっとアイネスさんを尊敬してたんですもの! 何処まで推理してくれるのかなーって思っていたぐらいなんですよ。あ、もしかしてそう振る舞った方が良かったですか? 『どうしてわたしが犯人だってわかったの!』とか、『そうよ、わたしがやったのよ!』という感じで。あ、黒幕っぽく振る舞うならこういうのも良いですね。『フフ、そこまで分かっているなら仕方ないわね、そう、わたしが今回の騒動を裏から誘導していた張本人よ』……とか」
セリフに合わせてくるくると表情や雰囲気を変え、ポラリスは笑顔を浮かべる。
その笑顔は不気味さも嘲りも一切感じさせない、屈託のない純真で明るい笑顔だ。
そんな完璧過ぎる程に完璧な笑顔が、その場にいる魔物達の恐怖と警戒心を駆り立てる。
その中で、信じられない物でも見るかのような顔でタクトが声を上げた。
「ちょ、え……、マジで、トン子ちゃん? その、なんつーか、それ、どうやってる訳?」
「ああ! タクトさん、普通じゃ分からない事も分かるんでしたっけ? 本当凄いですよね。わたし、生きている中で一度も気が付かれるなんてなかったのにっ!」
「いやこれ、マジ有り得ねーっしょ! こんなんクレイジー過ぎだわ!」
「タクト、貴方には何が視えているのですか?」
慄く声を上げるタクトに対し、ベリアルが冷静に問いかける。
するとタクトは、肩を震わせながらもベリアルの質問に答えた。
「トン子ちゃんの音が……いや、アイデンティティがさっきからゴチャゴチャとずっと形や色に変わってんすわ! ルールもテーマも脈略もなんもなくて、しっちゃかめっちゃかで! オレ、こんなん見たことも聞いたこともねぇよ!! どうやったら、こんなイカれられんわけ?!」
タクトの目から見て、豹変したポラリスの持つ音と形は明らかに異常だった。
本来生き物が持つ音はその時抱いている感情によって色や形が変わるものだったが、ポラリスのそれは変わる云々の話ではなかった。
赤の四角になる直前に緑の丸へ、緑の丸になったと思ったらすぐに黒の三角へ変わり、黒の三角になるとみせかけピンクの星になるなど、形も色も一切定まっていないのだ。
不定形よりも不安定で、混沌よりも混沌とした、普通の常識とは大きく外れてしまっている。
言葉の通り、“イカれていた”。
一方、タクトにそんな言葉をぶつけられたにも関わらず、ポラリスは怒りを見せるどころか何故か更に口角を上げてクスクスと笑った。
「イかれてる、ですか……。それは良いですね! とても素敵な事じゃないですか! ええ、とてもとても素敵な事ですよ!」
「……イかれている事が素敵だとは、随分とユニークな趣味をされていらっしゃるのね」
「狂っていると言われ喜ぶ者なぞ、普通の感覚とは思えんな」
「だってそうじゃないですか!」
ラファエレの皮肉たっぷりの言葉とバイフーの引き気味の言葉に、ポラリスはそちらの方向に凄い勢いで向いて、ギラギラと異常なまでに瞳を輝かせながら言う。
その異様な様子にラファエレ達が一瞬口を閉ざしたと同時に、ポラリスは早口で話し始めた。
「そもそも英雄譚や伝説だって、何もかもが平和じゃ始まりません。おとぎ話の王子様もお姫様も、困難や試練、悲劇を乗り越えて結ばれるから盛り上がるでしょう? 悲劇や災難があるからこそ物語は始まるんですよ。混沌としてて、しっちゃかめっちゃかで、悲しいも苦しいも辛いも痛いも嬉しいも楽しいも良いも悪いもぜーんぶぐちゃぐちゃにしてドロドロにしてメチャクチャにした場所に素敵で楽しくて刺激的で美しくて快楽的で愉快な物や話が生まれるんです!殺して潰して裏切って捨てて見捨てて狂って絶望させて騙して騙して騙して騙して欺いて欺いて欺いて欺いて……そうした積み重ねで発生した物語は、とっっっっっっっても素敵なんですよぉっ! それに一つのストーリーに一人の登場人物として演じられるのって、凄い幸せな気持ちになれるんですよ! 痛いのも苦しいのも寂しいのも辛いのも悲しいのも悔しいのも、何もかもが幸せで素敵! ああ、この気持ちを世界中に伝えられたら、どれだけ素敵で楽しくて愉快で、快感なんでしょう………っ!! ウフフフフフ……」
「……狂っていますわね」
「種族によっては一部の常識が食い違う時があるが、ポラリス殿のそれは明らかにその範疇を超えている。明らかに、異常だ」
「……言葉の通り“手遅れ”、というわけじゃな」
『…………』
悦に入ったように笑い声を上げ独り言を呟くポラリスの様子に、その場にいる魔物達は若干恐怖を抱きながら、化け物を見るようにポラリスを見続ける。
ポラリスはそんな視線なんて物ともせずに、楽しそうに笑った。
「アハハ、アハハハハッ」
「アハハハハハハハハハハハハッ」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ」
――――『じゃあ、幸せな人って何で出来ているの?』
――――純真さと良い子であろうという心、
――――それと、全てを欺かんとする美しい欺瞞
213話 [演者]ポラリス




