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口は禍いの元。楽が身に余る。

 オークジェネラルは苛立っていた。

 アイネスのダンジョンの奇想天外さに、苛立っていた。


 オークジェネラルのダンジョンはダンジョンでも良くあるような迷宮タイプのダンジョンである。

 迷宮タイプのダンジョンというのはカスタムにDPの消費量が少なく済み、安定して挑戦者を呼び込む事が出来る。

 自身の持つ有能な配下達がオークジェネラルのためにと製作した効果の高いポーションやアクセサリーをダンジョンアイテムとして宝箱に入れる事で挑戦者達の注目を引き、あちこちに狡猾なトラップを設置する事で難易度を上げるなどと工夫を入れているものの、定番のダンジョンから逸脱していることはない。

 今回のダンジョン戦争でも、いつも通り迷宮を主とした構造にしたのであった。


 しかし、一方でアイネスのダンジョンは……


「ルールは簡単! この机に置かれとる10種類の酒を試飲して、第二騎士団代表D.Dはんが勝手に選んだ酒ベスト10の順番に分けるんや! 挑戦も試飲も、何回やっても構わへん! ただ一本飲み干したら追加一本一種類大金貨10枚ぐらいは支払ってもらうで!」

「なんだその試練は!!」

「誰だ第二騎士団代表D.Dって!!」

「酒一本につき大金貨10枚とかぼったくってるだろ!!」

「うっさいわボケェ! 市場価値で計算しおったらガチで最低こんくらいはいくんや! むしろあんさんらみたいなんがこないな質ん良い高い酒を丸々一本はタダで飲めることを有り難く思わんかい!」


 ……あまりにも、奇想天外な所であった。


 鏡の大迷宮まではかのオークジェネラルが得た情報通りであった。

 しかし、その後に待っていたのはあまりに奇抜過ぎる試練の数々。

 迷宮を超えた先にあったのはシンプルな部屋と、扉を出たすぐ前に設置されたルールの記された看板とそれぞれの部屋の管理人となる魔物達。

 次に進む部屋とは隣り合わせになっている為、その部屋の条件を達成すればすぐに次の部屋へと入る事が出来るようになっている。

 部屋で待ち構えていた魔物と戦闘して撃退せよなどといった伝統的な試練などは一切なく、『水流に浮かぶ丸い球を、脆い紙を棒状にしたもので一人2つ釣り上げろ』や『板状の脆い菓子を木製の針でくり抜いて指定の形にしろ』といった、日本の夏祭りを知らないオークジェネラル一行からしたらあまりに訳が分からない試練内容のみであった。

 一見簡単そうに見えてかなりの集中力と時間を取る、イライラとするような試練を用意している辺り、彼の目の上のたんこぶのような存在になっている小娘の地味な嫌がらせを感じた。

 挙げ句には酒の格付けや泥で足を取られる道を進んでの重い荷物の運送や大量に用意された激辛料理の完食や入浴場に隠された次の部屋へ進む為の鍵を探すなど、まるでダンジョンとも物語とも関係なさそうな事をさせる。

 その癖次に進む為の条件はかなり甘く設定されており、更には戦闘行為の禁止以外にはルールの設定はないお陰か、此処まで脱落者は一匹も出ていない。

 それらの試練に一体何の意味があるのか、アイネスが一体何を企んでいるかも分からず、オークジェネラル一行は先へ進んでいく。


 酒の格付けでアルコール度数が高い酒を結構な量飲んだせいか、オークジェネラル自身を含めたオークジェネラル側の魔物達は酔っていた。

 幸いオークジェネラルは種族柄酒には強かったのでそこまで酔いは回ってなかったものの、配下達はそうではない者もいるため、数匹はかなり酔っ払っている。

 まさか酒で酔っ払った所に戦闘を挑もうとしているのではないかと疑ったものの、先の部屋でそういった内容の試練は見られない。

 アイネス側の考えが、全く読めない。

 そんな不安を抱きながら、オークジェネラルは警戒を怠らずに先へ進む。


 風呂の中に隠されていた鍵を見つけたオークジェネラル一行が次に入った部屋は今までの部屋と違った内装の部屋だった。

 部屋の中心に設置された、横に広い机と人数分の椅子。

 机の向かい側の壁には大きな鏡が埋め込められており、その横には『スタッフオンリー』と書かれた看板が掛けられた貧相な扉が存在する。

 そしてその斜め上には液晶ディスプレイが設置されている。

 液晶ディスプレイの存在を知らないオークジェネラル一行はその存在の異質さに一瞬顔を顰めたものの、アイネス側の魔法道具だからという理由でただその存在を心に留めておくだけだった。

 そして当然のように、扉を入ってすぐの場所には看板が置かれている。


『当部屋の中での味方同士の口論、罵倒、喧嘩、戦闘、仲違い、また敵との戦闘行為を全面禁止。この部屋の説明役の説明を大人しく聞くこと』


 看板に書かれているルールはその前の部屋と殆ど同じようなものであった。

 強いて違う点といえば、味方同士の喧騒禁止のルールが少し細かいというぐらいである。

 説明役は何処にいるのか、と部屋の中を見渡してみるが、それらしい魔物の姿がみられない。


「説明役は何処にいるのだ?」

「此処でございますよ!」

「なんだ? 甲高い声がどっかから聞こえるぞ」

「下! もう少し下でございます!!」

「下?」


 声の言う通りに視線を下にズラしてみれば、そこにはオークジェネラル一行と比べればかなり小柄なコボルト、トレニアがオークジェネラルの前に立っていた。

 オークジェネラル一行がトレニアの存在に気が付いたのを確認すると、料理人服を身に纏ったトレニアはハキハキとした声で喋り始める。


「お待ちしておりました、挑戦者御一行殿! どうぞお席の方へと座って欲しいございます!」


 トレニアに促されるままオークジェネラル一行は部屋の中心に設置された席へと座っていく。

 全員が席に座ると、トレニアは大きな鏡の前に立って説明を始めた。


「此処は我らが物語の管理人殿、アイネス殿が一人食を楽しむ為の場所でございます。物語の中にしか存在せぬであろう食事を口にし、評価し、最終的には我々配下に振る舞うか否かを決断する場所でございます! 挑戦者御一行殿にはこれより振る舞われる料理の試食と評定をしてもらうのでございます!」

「評定、だと……?」

「今から振る舞われる料理の数々は全て、今までの苦難を乗り越え疲労しているであろう挑戦者殿御一行殿の為に用意された料理でございます! その心遣いに感謝を示す為、振る舞われた料理を出来るだけ完食するよう心掛けて欲しいでございます! 料理を食べ終わった後はその料理の感想を各々に述べて貰うのでございます故、良く味わって食べて欲しいでございます! 全ての料理を食べ終わった後は料理人との対話。それらが無事終われば見事、達成でございます!」

「なに? それだけか?」

「はい! 勿論振る舞われる料理達に使われた食材は全て毒のない食材。毒や食べれない食材は一切入っておりません!」


 トレニアが説明した内容に、オークジェネラルは眉を顰めた。

 いよいよもって変わっている。

 ただ出される料理を食べて評価を付け、そして作った本人と会話するだけで次の部屋に進める試練など、奇想天外にも程がある。

 何か、裏があるんじゃないだろうかとオークジェネラルが疑念を抱きトレニアを睨み付けていたその時、何処からともなく<あーっ!!!!>と驚愕する実況席のエルフの声が上がった。

 オークジェネラルが何事かとフェスタンの実況に耳を傾けると、彼にとって衝撃の内容が実況される。


<今、今気が付きました! 此方がロッソ様の実況を行っている間に、クールガールアイネス様が配下を1名連れて第5階層の中間地点まで到達しているではありませんか! 速い、とてもスピーディーです! 構造も罠もグレードアップしていそうな第5階層を一度も罠や行き止まりに当たることなく突き進んでいます! こんなに驚きの急展開があったのに今の今まで気づけなかったとは、不覚! 実況者としてとても不覚です!>

<奴隷の自爆特攻でレベル100超えの魔物2名が重傷を負った時は少し足が止まったけど~、順調っぽい~。というかアイネス様、その前の階層の時より進行速度が速くな~い?>

<このまま行けば、ロッソ様よりも早く最深部に到達することが出来そうですね! アイネス様の快進撃に、ロッソ様側の魔物達も止められなーい!!!>


 アイネスが、第5階層を進んでいる?

 その事実を知ったオークジェネラルは、愕然とする。

 その後すぐに歯を食いしばり、自身の娘に対しての怒りを燃え上がらせた。


(アイツめ、しくじったか!!!!)


 ルールの裏を掻き、小生意気なアイネスを今後対抗出来なくなるようにするだけでなく、スケープゴートである自身の娘を全ての罪を押し付けたまま消す事が出来る作戦。

 それが自身の娘の不出来によって失敗した事を知ったオークジェネラルは激怒した。

 しかも無傷のアイネスはそのまま第5階層の中間地点まで先へ進んでいるというではないか。

 絶対に成功すると思っていた作戦が失敗し、絶対に此方が最深部に到達するまでには攻略出来ないと考えていた第5階層が既に半分も攻略されている。

 それらの事実は、オークジェネラルの心を乱すのに十分過ぎたのであった。


(なんとしてでも、あの小娘がダンジョンコアに触れるよりも先にダンジョンコアの元まで到達しなければ……!)

「挑戦者殿? 最初の料理をお出してもよろしいでございますかな?」

「構わん。早く出せ!」

「了解でございます! ではまずは、一番の料理から!」


 オークジェネラルが急かせば、トレニアは『スタッフオンリー』と書かれた扉の前へ立ち、扉をノックする。

 すると扉の向こうからウエイトレス服に身を纏った女コボルト、チーリンがカートを動かしながら入ってきた。

 チーリンが運ぶカートの上に置かれているのは、珍妙で怪しい見た目をした料理だった。


 チーリンは何も言わずにオークジェネラル一行の机に置き、平等に料理を小皿に盛り付けていく。

 小皿に盛り付けられた料理の見た目は控えめに言ってもかなり酷いもので、あまり食欲をそそられない。

 しかしこの部屋を抜けるには目の前の料理を食さないといけない。

 オークジェネラルは意を決し、目の前の料理を口にした。


「うっ……!」


 不味い。

 思わず吐き出したくなるほど酷い味の料理だ、と彼は思った。

 グチュグチュと腐った死体でも口に入れているような食感に、辛いのか酸っぱいのか甘いのか分からないのにとにかく濃い味付け。

 それが本当に料理なのかを疑うほどの酷さであった。

 一瞬、有毒な食材を使っていないのか疑ったくらいである。


「うっげ、何だこの不味さは!」

「まるでゾンビの肉でも食ってるような酷さだ……」

「おげぇ、吐きそう……」

「こんなの、料理じゃねぇよ!」


 オークジェネラルの配下達もオークジェネラルと同じ感想を抱いたようで、前の部屋で酒を飲んで酔いも回っていた事もあってか、口々に出された料理の酷評を並べる。

 オークジェネラル自身もその酷評に同意したかったけれど、仮にも敵とはいえ女性がすぐ前にいた為、口から出そうになった本音をぐっと抑えた。

 黙々と盛り付けられた料理を完食し、ナプキンで口を拭きながら評定を並べた。


「……酷く、独特な見た目と味付けだった」


 普通ならもう少し称賛などを並べるところだったが、振る舞われた料理があまりにも酷すぎた為、そんな感想しか述べる事が出来なかった。

 その後も様々な料理が出されたが、そのどれもが壊滅的な出来の料理だった。

 異常に脂っこかったり、殆ど炭のようになっていたり、かと思えば殆ど生の状態だったり、殆ど味がなかったりと、それはもう酷すぎる味付けばかりである。

 更に出される料理は全てがメインディッシュに類する料理。

 いくら全員で小分けにされているとはいえ、胃が重たくなっていく。


 それにオークジェネラルは味に煩く好みが激しい方であった。

 普段オークジェネラルに用意されている料理は全て料理の出来る配下が彼の好みに合わせて作らせた美味な料理だった為、その不味さにかなり苦しめられる事となった。

 オークジェネラルはそれらの料理の不味さに内心文句たらたらで今にも怒り散らしてしまいそうなほど怒っていたが、それでも人前だからと何重にもオブラートに包んだ評定を並べ、完食した。

 

 その一方で、オークジェネラルと共に部屋を進んでいた配下達はその感情に任せたまま酷評を並べた。

 その前まで散々地味で細かい作業や重労働をやらされてストレスを溜めていた配下達は、酔いに身を任せて罵倒に近い感想を述べる。

 中にはその味の酷さに耐えきれず、一口食べたら殆ど残してしまう魔物もいるぐらいだ。


「誰だよこんなクソみたいな料理を作った奴!」

「こんな料理強制でもされなきゃ食わねぇよ」


 そんな言葉を並べる彼らに対しトレニアやチーリンは何も言わない。

 ただ淡々とオークジェネラル一行の前に食事を運ぶだけ。

 それがあまりにも異様で、オークジェネラルは少し不気味に思った。



「さぁさぁ、皆様! 今の料理で全てでございます! 如何でしたか! 料理人達が精魂と愛情を込めて作った料理達は!」

「最悪の一言しかねぇよ……うっぷ」

「おえぇ、気持ち悪い……」

「此処じゃゴミが料理として振る舞われるのか……?」

「堪能されたようでございますね! 何よりでございます!」


 オークジェネラルの配下達の言葉をサラッと流し、トレニアは司会を続ける。

 その様子に、オークジェネラルは更に疑念を抱く。


(自分の仲間が此処まで罵られているというのに、何故此処まで冷静なのだ?)

「それでは次の部屋へと向かう前に、皆様が評定した料理の作成者との対面をして貰います! 自分達は仕事が終わればこの部屋を出ますので、後はご自由にどうぞでございます!」


 オークジェネラルが頭を働かせている横で、トレニアは言葉を続けながら通信機を片手に持つ。

 そして通信機に向かって1つ指示を出した。


「では、ご対面でございます!」


 トレニアの言葉と共に、大きな鏡の向こう側(・・・・)が明るくなる。

 オークジェネラル一行が鏡だと勘違いしていたそれに、自分たち以外の姿がうっすらと見えるようになった。

 最初それが何か分からなかったオークジェネラルだったが、じっと目を凝らしている内にそれが……いや、彼女達が誰か分かった。



 それは、十数匹もの女性魔物達の姿だ。

 ただの女性魔物ではない。この世の怒りを凝縮させたような顔の女性魔物である。

 怨念に縛られるゴーストのような恐ろしい顔をした女性達は鏡の向こうで鏡に爪を立て、オークジェネラル一行……というより、オークジェネラルの配下達を殺さんばかりに睨み付けていた。

 そんな彼女達の姿を見たオークジェネラル一行は、サァッと顔を青くさせた。

 何故なら、オークジェネラル一行はその姿に見覚えがあるどころか、良く知っていたからだ。

 一体誰が思うであろうか?


 自分達のすぐ目の前に、鏡の大迷宮にて離れ離れとなっていた、オークジェネラル側(味方)の女性魔物達がいただなんて。


「ひぃっ!!!」

「なんで、女達が此処に!?」

「この部屋は元々居住スペースの一部でございます故! あちらでは、『第二回女の魅力対決バージョンロッソ』が開催されていたのでございますよ!」

「お、女の魅力対決?」

「向こう側にいる女性陣殿が各々料理を作り、挑戦者御一行殿に評価してもらい、誰が一番挑戦者殿の本妻として相応しいかを決める勝負でございます! 元々はただシルキーズ殿の監修の下料理を作ってもらい、挑戦者御一行殿に振る舞うという内容だったのでございますが……自分達の上司であるマリア殿が此方の方がより達成しやすいだろうとこの内容への変更を要請された故、此方側も万全な配慮をしようとそうしたのでございます!」

「「そんな配慮は要らねぇよ!!!」」

「因みに、皆様の感想は全てマイクを通してあちら側に伝わっております故、ご安心を!」


 その言葉を聞いたオークジェネラルの配下達は更に顔を青褪めた。

 つまり、自分達が彼女達の作った料理に対して言った言葉や酷評の全てが彼女たちの耳に入っていたということ。

 プライドの高い彼女達が真剣に調理した料理を、ゴミだクソだと散々貶せば彼女達がどうなるか。

 当然、大激怒である。

 此処に壁がなければ、今にも殺しに掛かりそうな勢いである。


(地味な嫌がらせのような試練と、酒の格付けの試練は酒の酔いで俺達がより本音を吐くように促す為だったか……!)


 地味で苛立ちを促進させる内容の作業でオークジェネラル一行に苛立ちを募らせ、酒の格付けと称して大量の酒を飲ませる。

 これにより、オークジェネラル一行が思った事をつい口にしやすい状態に仕立て上げた。

 その上、オークジェネラル一行には重い荷物の運送や入浴場での鍵探し、激辛料理の大食いなど、酒の酔いがより回りやすくする為の試練が用意されていた。

 激しい運動に入浴、辛い食べ物の摂取によって、あっという間に酔いが回ってしまったのだ。


 ふと、オークジェネラルはある事に気が付いた。

 鏡の向こう側にいる女性魔物達が妙に綺麗なのだ。

 元々女性魔物達は皆綺麗なのだが、何故か離れる前よりも髪ツヤや肌が良くなっている。

 おまけに全員美しいドレスとアクセサリーを身に着け、まるでパーティーにて運命の人を待つ令嬢のようだ。

 美しい事は別に構わないのだが、何故こう短い間に急激に綺麗になったのだろうか?

 そんな疑問が思い浮かんだその時、オークジェネラル一行側に存在する液晶ディスプレイの電源が付いた。

 

 そこに映し出されたのは今オークジェネラル一行に殺意を剥き出しにしている女性魔物達が沢山の美青年達にもてなされている姿が映った映像だった。

 ある女は両隣に自分好みの見た目をした美青年を侍らせ酒を楽しみ、

 ある女はサテュロスの男性にマッサージを受け気持ちよさそうに寝っ転がり、

 ある女は敵側の魔物に爪の装飾をされ、美しいドレスや服を着る事を楽しみ、

 またある女はまるで美男子のような身なりをした麗人のウィッチを筆頭とした男装の女性陣の歌とダンスに歓声を上げている。

 

 映像の中の女性魔物は全員、此処が敵のダンジョンの中だというのを忘れているかのように相手側のもてなしを楽しんでいる。

 顔の良い男性にちやほやされ、マッサージやダンスのショーといった、王族しか味わえなさそうな高待遇を受け心の底から笑顔を浮かべる彼女達は実に美しかった。

 一方、オークジェネラル一行はそんな高待遇はなく、ただただ訳の分からない試練をやらされ、体力的にも精神的にも疲労が溜まっている状態で、壊滅的な料理を食べさせられた。

 エルフやラミアがマッサージを受けている映像がディスプレイに映っていたその時、トレニアは至って真面目な様子でオークジェネラル一行に告げた。


「あ、そういえば、女性陣殿が受けた試練の様子をあちら側の説明役であるライアン殿が撮影していたそうでございます故、よければご視聴をば! あちら側に用意された試練も相当大変な試練でございますから、よければその苦労を共有出来ればと此方で配慮したのでございます!」

「「「「ふざけんなーーーーーー!!!!!」」」」


 オークジェネラルを除いたオークジェネラル一行は激怒した。

 オークジェネラル一行は散々面倒でイラッとくる試練や酒を大量に飲むはめになる試練で泥まみれになったり酔い過ぎで体調を崩したりと結構散々な目に遭っていた。

 それなのに向こう側にいる女性魔物達は今の今まで敵側に高待遇でもてなされていたなんて。

 あまりの待遇の差を見せつけられたオークジェネラルの配下達はついにそのストレスが爆発してしまった。

 女性魔物も女性魔物で自分の作った料理を酷評された事でオークジェネラルと一緒にいた魔物たちに怒りと殺意を向けている。

 そんな中でも空気を読まず、トレニアはハキハキとした声を上げた。


「では、これにてこの試練は終了でございます! 次の部屋へ向かう際はそちらの扉から行くことが可能でございます! それと女性陣殿は鏡横の扉から挑戦者御一行殿と合流出来ます故、ご自由にどうぞでございます!」


 次の瞬間、女性魔物達が一斉にオークジェネラル一行がいた部屋へと押し入って来た。

 目的は自分たちが愛するオークジェネラルではない。

 自分達の料理をゴミだと散々言いたい放題言っていた他の魔物たちである。

 オークジェネラルと一緒にいた魔物達も向かってきた女性魔物達への怒りを向け、女性魔物達の方へと向かっていった。

 そして彼らは自分達の主の前であるにも関わらず、苛烈な口論と罵倒、大喧嘩を始めてしまった。

 自分達の部下が一斉に喧嘩を始めたのを見たオークジェネラルは慌ててそれを止めようと命令する。


「おい、止めろ! 喧嘩を止めなさい!!」


 しかし、彼の配下達はその命令を聞かない。

 爆発してしまった感情をぶつける為、双方喧嘩や口論に必死なようだった。

 そんな大喧嘩が始まっている間に、トレニアとチーリンはさっさとその場を後にした。


「居住スペースは魔物達がより過ごしやすい環境で生活するために用意された場所でございます。お酒も娯楽も料理も自由でございますが、3つ程制限されている事がございます」


 女性魔物達がいた部屋を通りながら、トレニアは誰かに話すように呟く。

 

「1つ目は出された食事は残さず完食すること。2つ目は調理人の前で出された料理の罵倒はしないこと。3つ目は喧嘩は時と場合を考えること。どれも、大事なルールでございます」


 その時、頭に直接響くように<オペレーター>の声が聞こえた。


『告。ダンジョンマスター・ロッソの配下32体、ダンジョン内のルール違反により脱落。速やかに退場させます』

「全部破った挑戦者殿達は、早急にご退出願うのでございます」


 トレニアとチーリンが部屋を出ていったのとほぼ同時に、オークジェネラル自身を除いたオークジェネラル側の魔物達が脱落した。

 十分にいた戦力が一瞬で無くなり、たった一匹取り残されたオークジェネラルは絶望の表情を浮かべた。

 暫く顔を俯け失意に明け暮れていたオークジェネラルだったが、すぐに顔を上げて次の部屋へと向かう為の扉へと手を掛けた。

 その顔は、自分の物を奪われ怒りに燃えていた。


 扉を開けた先に待っていた部屋は、畳が敷かれた横に広い和室であった。

 左右の壁は障子が置かれており、その向かいには鮮やかな日本画が描かれた障子が存在していた。

 部屋の中心にあるのは珍妙な機械が置かれた低いテーブルと、一匹のリリス。


「やっほー、いらっしゃい♡」


 可愛く手を振るリリスに対し、表情を緩めないオークジェネラル。

 そしてオークジェネラルの前にはまたも看板が設置されていた。

 そこに書かれていたのは、先程までと全く違う説明書きであった。


『この空間内での矛盾した発言を禁ずる。嘘を並べるにしても、その嘘を突き通さなければならぬ。決して己の言葉を違えてはならない』


 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです~楽しく読んでます! [気になる点] シガラキの台詞の「やっちゃ」について、用法がおかしいと思います。 例文:あいつはいいやつだ の「やつだ」が変化したものです。 ○ やつだ→…
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