再現度高いな
「本当なんでもありですよね、スキル<おでかけ>。これが魔力無限大の異世界転移者とかなら、チートスキルの仲間入りですよ。そう思いませんか?」
『回答。このような使用用途を思いつく者は多くないかと』
どんな相手だろうとどんな戦いでも、情報収集というのは必要不可欠だ。
タケル青年とのダンジョン戦争でも行った事だけど、私は自分の持っている付属スキル<おでかけ>を使い、オークジェネラルがダンジョン戦争当日に用意するだろうダンジョンの各層を模した異空間の作成をし、<精霊結界>付属のネックレスを装備した状態で一人赴いていた。
流石に無理じゃないかなぁって思いつつも<お出かけ>の目的地に『ダンジョンマスター・ロッソが一週間後のダンジョン戦争で用意する予定のダンジョン』って思い浮かべたら本当にその異空間が出来てしまった。
何度も思うけど、このスキル凄いバグっている。
まあ、その分MP消費が激しいからそこら辺で帳尻を合わせているのだろうけど。
MP回復ポーションの匂いが目に染みる。
「第1階層は切り立った崖で、第2階層は迷路……ですか。タケルさんのと比べると結構構造がシンプルですね」
『告。多くのダンジョンはこのような構造になっています』
「まあ、確かにダンジョンマスターが全員頭良かったり凝り性だったりって感じじゃないでしょうからね。ミルフィーさんみたいに国を作ってしまう方や、ディオーソスさんみたいに賭博場を建てちゃうダンジョンマスターの方が珍しいのか」
<オペレーター>と会話をしつつ、私は迷路のスタート地点に設置された看板に目を向ける。
『迷宮探索中、及び各関門の挑戦を受けている間の味方同士の口論、喧嘩、同士討ちを禁ずる』
「完全仲良し協力プレイ縛りの迷路ですか……第一層で崖のエリアを設置したのはイグニさんとベリアルさんを攻略側に向けさせる為ですかね?」
看板に書かれた文を読んだ私はその内容にため息をついた。
イグニとベリアルはタケル青年とのダンジョン戦争の時も軽い言い合いをしていた、とフォレスから聞いている。
第1階層の崖のエリアには一応歩いて進む為の道もあるけどそれだとかなり時間が取られる。
だから手早く第1階層を突破させるのには攻略組にいれる最強クラスの魔物の中に空を飛ぶ事が出来るベリアルやイグニの組み込みはまず必要になる。
そしてそのまま日中何度も喧嘩するような仲の彼らを第2階層に進めさせれば、オークジェネラル側が何もしなくても勝手に2人が脱落する……という作戦なんだろう。
2人の喧嘩を未然に防げる存在がいれば解決する話だけど、フォレスでは未然に防ぐというのは難しいし、マリアは守備側に回ってもらう必要がある。
他の新入り最強クラス魔物達も二人の喧嘩を止めるどころか、私のチョイス次第ではその魔物も一緒になって喧嘩を始めるだろう。
どうにかこれの対策を考えないといけない。
「喧嘩防止対策は後で考えるとして、今はこの看板に書いてある『各関門の挑戦』というのがどういうものか見に行きますか。<隠蔽>」
罠対策として<隠蔽>を使ってから迷路の中を歩いていく。
迷わないように油性ペンで壁に道順を記しながら進んでいってみたが、迷路はかなり入り組んでいるようだった。
壁も天井も特に特徴がない殺風景なものだから油性ペンで来た道を書いておかないとすぐ迷ってしまうほど分かれ道が多いし、何度か行き止まりにも到着した。
途中で一本目の油性ペンのインクが切れて<ネットショッピング>で新たに油性ペンを購入したのだけど、その際床に油性ペンが落ちたらカツーンッという音が反響していた。
迷路は相当広いようだ。
地味に時間が掛かる上に迷ったらついイラッとするような迷路を用意するあたり、あちらの性格の悪さが見える。
これの対策も必要だ。
十数分後、やっとのことで部屋らしい場所に到着した。
ただ残念なことに、此処は看板で言う所の<関門>の一つらしい。
それを<オペレーター>から聞かされた時、少しうんざりとしてしまいため息をついてしまった。
「いくら迷宮って言っても、ここまで殺風景で何もないと面白みもないですし、無性に苛立って来ますね。早くゴールに行かせろって思いたくなります」
単独で迷路に進んでもこれだけ精神的に苛立ちが募るのだ。
これを相性悪い者と一緒に攻略しないと行けないと分かると、ベリアル達ならほぼ確実に関門に着く前に喧嘩して脱落するだろう。
「さてと。第一関門がどういうものか、確かめてみないといけませんね。どうせ協力系の物でしょうけど」
独り言を呟きつつ、私は最初の関門の部屋に入る為の扉を開ける。
部屋の中は暗かったので持ってきた懐中電灯が中を照らしながら周囲を見渡す。
そして、その部屋にあった物を見た私は思わず目を丸くしてしまった。
「これってもしかして……」
***** *****
イグニとラファエレに堕天使たちの相手を任せて地下へと続く階段を降りていくと、私達は第2階層へと到着した。
第1階層の切り立った崖のエリアとは違い、第2階層は殺風景な迷路の道が広がっている。
そして迷路のスタート地点であろう私達のいる所にはご丁寧に異空間で私が見た物と同じ内容が書かれた看板が立てられていた。
「事前に<おでかけ>スキルで把握していたので分かってはいましたけど、この看板って中々に性格悪いですよね。ベリアルさん達の弱点を確実に突いてきてます」
「ホカノ、フタリト、イタラ、アイネス**ガ、ヨソクシテタ、トオリ、ダツラクシテタ」
「ソレデ、コノアト、ドウスル? アイネス*」
事前調査で分かったけど、この迷路はあまりに中が複雑過ぎて最短ルートを覚えるのは無理だった。
一つでも間違えると最初からやり直しだから、中の構造を暗記して挑戦するのは止めた方が良いだろう。
であれば、どうするべきか。
迷路の最短ルートを見つけ出せば良い。
『そんな事が出来るならこうも悩まない』
『馬鹿じゃないか』
と、自分も考えたよ。
普通であれば有り得ない事だ。
そう、普通だったら。
「タクトさん、アルファさん、早速『アレ』の方をお願いします」
「オケ! アルアル、メッチャ、レンシュー、シタ、ヤツ、ッショ?」
「そうそう、それです」
『御意。マイマスター』
タクトとアルファの名前を呼べば、2人は一歩前に出てウォーミングアップと準備を始めた。
その隙に私はベリアルさん達に指示を出す。
「ベリアルさん、今からとんでもないのが来るんで私とベリアルさんとタンザさんとトン吉さんの周囲に防音魔法みたいなの掛ける事って出来ませんか?」
「? ハイ、ワカッタ」
「あと、念の為これ付けてください」
「? 『みみせん』? ナゼ、ツケル、ノダ?」
「ちょっとこれから、とある漫画の再現がありますので」
「***、サイゲン?」
ポケットに入れていた高性能耳栓をベリアル達に手渡し耳栓を装着させる。
そして<アイテムボックス>からタクトが愛用しているギターとマイク、あと耳栓をタクトに手渡し、高性能スピーカーと接続してもらった。
試しにタクトがギターを少し鳴らしてみると、ギターの音色がスピーカーを通して鳴り、迷路の向こうへと反響し響いていくのが聞こえた。
『受信準備完了。いつでも感知可能』
「じゃあ、一発良い演奏とシャウトをお願いしますね」
「モチ! オレ、マカセテ!」
私がタクトとアルファに親指を立てれば、タクトはいい笑顔と共に親指を立てて返してくれた。
トランシーバーを使い、第1階層で堕天使たちと戦っているだろうラファエレさんとイグニに少しの間で良いから耳を塞いで身構えるように指示を出した所でふと観客席にいるであろうミルフィーさん達の存在を思い出した。
私は天井の方に顔を向け、ミルフィーさん達に対して手を振り、ジェスチャーで耳を塞ぐように伝えた。
すると実況をしている2人には私のメッセージがちゃんと届いたようだ。
〈***、アイネス****(から)******(観客席サイド)***(連絡)*!〉
〈***……*(耳)?〉
「はい、それで合ってます」
バンチェットの言葉に大きく頷いて丸を作った後、私自身も高性能耳栓を付けてベリアルが張った防音結界の中に入ればタクト達の声も含め結界の外の音が全く聞こえなくなる。
いつでもどうぞというサインを送れば、タクトはギターを叩いてカウントを取り始める。
私は耳を抑え、さっとうずくまって身構える。
それを見たトン吉が、私に話しかけてきた。
「? アイネス**、ナニヲ……?」
「ベリアルさん、しっかり防音結界を掛けておいてくださいね。並大抵の防音じゃ多分抑えられないと思うんで」
「「「「エ?」」」」
4人が首を傾げたのとほぼ同時に、タクトがピックを愛用のギターに振り下ろし、口を大きく開いた。
そして次の瞬間、第2階層全体にとんでもない音量の演奏と、超音波のような衝撃波が響き渡った。
防音結界越しにもビリビリと響くその衝撃波に、ベリアル達はギョッと驚きながら身を庇った。
「**!?!」
「***……**……!!」
「アイネス**、コレ、イッタイ……」
「うわぁ、防音結界越しにも衝撃波が来てる……。流石は高性能スピーカーとマイク」
間近でまともに聞けば鼓膜が破れてしまいそうなほどの大音量の演奏と、<咆哮>とマイクを使用した状態でのタクトのシャウト。
ベリアルがすぐ防音結界を厚くしたが、それでも少しビリビリと震えが伝わってくる。
そんな音の渦のほぼど真ん中で、アルファは唯一動じずにその場に立っていた。
時間にしてわずか10秒間の演奏と歌だったが、それでも5分の曲を聞いたかのような体感だった。
タクトがハァッと息をついてギターを降ろし、此方に親指を立てた所で、ベリアルは防音結界を解除した。
ベリアル達は耳栓を外すと、すぐに私に問い詰めてきた。
「アイネス**、イマノハ、イッタイ?」
「スキルとマイクとスピーカーと、タクトさんの肺活量の四段構えによって発生した音波ですね」
「アイ***、アルアル、メチャ、レンシュー、シタ!」
「**(それ)**(今)***(良い)。アイネス*、コレ、ナンノ、イミ、ガ、アル、ノダ?」
「まあ、見ててください」
質問攻めしようとするベリアルとタンザを宥め、私はアルファの方を向いた。
アルファは暫くフル稼働で計算を行った後、私に顔を向け、そして言った。
『第2階層の構造を掌握完了。最短ルートへの案内が可能』
「ナイス、アルアル!」
「分かりました。では早速案内の方をお願いします」
『御意』
「「「「!?」」」」
私とタクトとアルファのやり取りに、ベリアル達は目を丸くした。
普段冷静沈着なベリアル達がタクトとアルファを交互に見て困惑している姿は、かなり珍しい。
私はスピーカーとタクトのギターとマイクを<アイテムボックス>に仕舞い、ベリアル達に言った。
「どういう仕組みかは第一関門に向かいながら説明しましょうか。タンザさん、抱えてもらってもいいですか?」
「ア、アア、ワカッタ」
「トン吉さん、遅れないように気を付けて」
「ハ、ハイ」
私は体力節約の為にタンザに子供のように抱えてもらい、アルファに先導してもらって迷路の中を進んでいく。
分かれ道にも迷うことなく、第一関門への最短ルートの為の道を選んで進んでいくアルファの姿に、ベリアル達は首を傾げている。
私はタンザに抱えてもらった状態で、ベリアルとタンザとトン吉に説明する。
「タンザさんなら多分ご存知だと思いますけど、タクトさんとアルファさんがやったのはソナーの原理の応用です」
「そなぁ?」
「音が障害物とぶつかって反射して戻るまでの時間から計算して、物の位置や距離を測定する装置のことです。私の故郷の水中を潜る為の乗り物に使用されています」
「オレ、シャウト、ダス、デ、アルアル、ハンキョウ、ウケトル。ソレ、デ、ナカ、コウズ、ワカル、ラシイ!」
「ナルホド、オートマトンノ、ケイサン、ノウリョク、ヲ、ツカッタ、ノカ」
「元々は<マップ>スキル持ってるシガラキさんにも同行してもらおうか考えてたんですけどタクトさんとアルファさんがこれの元になった漫画を持って提案してきたんですよ。「コレ、再現したら格好良くね?」って」
そう、切っ掛けはタクトが読み進めていた某異常生徒会長の漫画だった。
元よりタクトとアルファは攻略組への参加は決まっていたけれど、任せられた役割以外に何か出来ることはないだろうかとタクトは考えてた。
その時、たまたま読み進めていた漫画に、主人公と肺活量化け物級会計の最短ルート特定法の描写を見たタクトは「これ、オレらとアルアルでも出来んじゃね?」となった。
丁度その時は私が第2階層をどうやって最短ルートで突破するかを皆に相談しながら考えてたので、タクトはアルファを連れて私にこの方法の提案をしてきたのだ。
物は試し、と2人にオークジェネラルの迷路を模した異空間を貸し、2人が何度か試行錯誤した結果、見事に漫画の再現をしてしまったのだ。
「あくまでストーリーでの出来事なんで私も実際に出来るとは思わなかったんですけど、何度か試行錯誤したら成功しちゃったんですよ。まあ、こんな大きな迷路全体を一度で掌握するとなるとそれだけ大きな音波を出さなきゃ駄目ってことで下手したら鼓膜破れそうな大音量になったんですけどね」
私達が通る道のあちこちに、迷路の中を徘徊していたんだろう魔物達が数人耳から血を流し、泡を吹いて地面に倒れている。
何の心構えも防音対策もなく防音結界越しでも衝撃が感じられる程の音波をぶつけられれば鼓膜が破れるのも気絶するのも当然だ。
実際私もタクトとアルファが再現に成功した際にこれは耳栓以外の対策も必要だって思ったもの。
「ベリアルさん達にも事前に話しておければ良かったんですけど、ちょっと説明が難しかったんですよ。本番でどうなるかも分かりませんでしたし」
「タシカニ、コレ、キカサレル、テモ、アマリ、リカイ、デキナカッタ、トオモウ」
「漫画とは違ってなんか色々と細かい部分が違うらしいですけどね」
『Yes。詳細説明が必要?』
「ソレ、ハ、アト、デ、キコウ。イマ、ハ、メノマエ、ノ、コトニ、シュウチュウ、スル」
タンザがそう言って立ち止まった先にあったのは、第一関門の部屋だ。
此処を突破しない限り、私達は先に進むことが出来ない。
私は事前調査により、第一関門の挑戦がどんなものかを既になんとなく把握している。
そしてそれは、恐らくベリアルとタンザには達成出来ないだろうというのも分かっている。
私はタンザに降ろしてもらうと、目の前にある扉をゆっくりと開けた。
その部屋には四方と真ん中に5色のパネルの設置されたタイルが2枚と、5色のランプ、それに小さな口の壺が2つ。
更にその壺の横には口から魂を出して気絶寸前の状態になっているウィッチがいた。
どうやら彼女もタクトの音波砲に直撃していたらしい。
地面に座り込んでクラクラと頭を抱えているそのウィッチに、ベリアルは笑顔で提案する。
「……**(具合)***(悪い)********(休んで)***************(構いません)*?」
「****(休まない)**!」
あ、どうやらまだ生きてたらしい。
ベリアルの言葉を聞いて一気に覚醒してベリアルに怒鳴っていた。
よく鼓膜破れなかったものだ。
赤毛のウィッチは帽子を被り直して気を取り直すと、少しさびしい胸を張って声を上げた。
「**、**(良く)**(来た)**! **(此処)******!」
「あー、アルファさん、通訳お願いしても良いですか?」
『御意』
アルファに通訳を頼みつつ、私は赤毛のウィッチの言葉に耳を傾ける。
赤毛のウィッチは私達にビシッと指差して説明を始めた。
「**********(これから)**(代表)***(2人)*****。*******(代表)**********(用意)****(挑戦)****(挑んで)***!」
『あなた達はこれから代表者2人を選んでください。そして代表の2人にはこの私が用意した挑戦を受けてもらいます』
「**(それ)***(一体)?」
「************(試練)*!」
『タン・クルタ・ドゥラの試練です』
「タン・クルタ・ドゥラの試練?」
「ウィッチ、ヤ、キジン、タチ、ニ、ツタワル、デンショウ、ノ、シレン、ダナ」
聞き慣れない単語に私が首を傾げると、タンザが代わりに説明してくれた。
タン・クルタ・ドゥラの試練は、2人の魔物が自分たちの連携力と間と呼吸を読む力を確かめる為のテストのようなものらしい。
赤毛のウィッチが指を慣らすと、5色のランプにそのランプと同じ色の火が灯り、ランプの中から火の玉が現れた。
更に彼女の横にあった壺からは白い煙が上がり始める。
「*(今)****(流す)**(伝承)***(音楽)****(始まる)*****(火)****(煙)***********! (火)******(煙)***(中に)****(入った)*、*(火)***(色)***(同じ)******(踏み)***! **(完璧)******(タイミング)****(踏んで)****(火)**********(光って)***(消える)」
『今から流す伝承に伝わる音楽が始まると火の玉が煙に向かって飛んでいきます。火の玉が煙の中へと入った時、火の玉と同じ色のパネルを踏んでください。完璧なタイミングでパネルを踏んでいた場合、その火の玉は虹色に輝いた後消えます』
「**(一つ)***(零す)******(一曲)***(踊り)******(出来)******! ***、**(失敗)*****(強い)**(魔物)*****(襲って)***!」
「一つの火の玉も零すことなく一曲を踊りきることが出来れば挑戦は達成です。ただし一つでも失敗すれば強い魔物が現れ襲ってきます」
「うわぁ、物騒」
『**(挑戦)**(何度)******(構わ)***! **(戦闘)*************? *******(勝てる)*****!』
「挑戦は何度行っても構いません。戦闘をして此処を抜けるのでも構いません。無数の魔物達に勝てるものならばの話ですが」
片割れと息を完璧に合わせ、さらには火の玉が煙に入った完璧なタイミングで正しいパネルを踏まなければならない。
2つの煙があるってことは、お互い違ったタイミングでパネルを踏まなければいけなかったり、逆に2人同時のタイミングでパネルを踏んだりしなければいけないようだ。
なるほど、確かにベリアルやイグニが苦手そうな試練だ。
その気になれば力でねじ伏せて突破することも出来るようだけど、彼女の自信の有りようからかなり強い魔物を用意しているんだろう。
そんな事を考えていると、タクトが真剣な表情を浮かべながら私に話しかけてきた。
「アイ***……、ヤッパ、コレ……」
「タクトさんも同じことを思いましたか。コレ、どう考えてもあれですよね……」
「アア……」
タクトの問いに対し、私は首を縦に振って頷いた。
そして顔を見合わせるとタクトは満面の笑顔で、私はいつもの無表情でお互いを指差し、言った。
「「DDR」」
ダイナミックダンシングレボリューション。
元の世界でどこのゲームセンターにでもあるぐらい有名だったリズムゲーム。
そしてそれは私がストレス発散のためにプレイする十八番ゲームであり、先日タクトとフォレスを連れてゲームセンターに行った際にタクトがハマったリズムゲームの一つでもある。
初めて一人でこの第2階層に来た際、私はこれを発見したのだ。
<オペレーター>に教わりながら起動してみれば今と同じように目の前に画面のようなものが表示され、曲が始まったのを確認した。
そしてタクトを攻略組に入れることを決めた後、タクトにもこの関門の仕掛けを見せ、2人でこっそり練習したのだ。
タクトはともかく、私にはコミュニケーション能力が欠けているため、連携プレイというのはあまり得意じゃない。
だけど、これに関しては話が別である。
音楽に関して抜群なセンスと才能を持つタクトと、暇潰しがてらダイナミックダンシングレボリューションを挑戦しては最高難易度の曲を何回もフルコンボを獲得した私。
どちらもフルコンボを達成出来れば、それも一種の連携プレイだよね?
私達にはクリア出来ないだろう、と胸を張って勝ち誇っている赤毛のウィッチを横目に見ながら、私はベリアル達に言った。
「ベリアルさんとタンザさんとトン吉さんとアルファさんは下がっててください。この挑戦は私とタクトさんがクリアしますので」
「ワカッタ」
「*?」
「**(確か)、*******(だいひょー2人)*********(全員)**(突破)***(出来ん)***?」
「*?」
自分の思っていた反応と違っていたのか、赤毛のウィッチは前に出てきたタクトと私を交互に見て首を傾げる。
私とタクトはそれぞれのタイルの上に立つと、赤毛のウィッチに向かって言った。
「こんなの、超ヨユーです」
「*******(舐めんな)*☆」
「*? **?」
私達の様子に困惑する赤毛のウィッチを置いて、部屋の中に独特な演奏が流れ始め、火の玉達がくるくると周り始める。
さて、この曲が終わる頃、目の前のウィッチはどんな顔するんでしょうね?




