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【番外編】 それぞれのペアの会話録 その6

再び番外編でございます!

時間はあべこべ、中身は何処かの先輩後輩ペアのとあるやり取りです!

今回のペアは、コイツラだ!

《勘が鋭い毒妃鳥と勘が鈍い牝牛》


 魔物達の中には、芸術や美に興味が高い者もいる。

 そういう魔物は大抵、就業時間外で作業部屋や私室で趣味に奔放していることが多い。

 彼らの作った芸術品はダンジョン内に飾られるか、ダンジョンアイテムとして宝箱に入れられる。

 それら全て、挑戦者達や冒険者達から芸術品を購入する貴族達にも好評だった。

 芸術派の彼らが使用する材料の収集方法は2種類。

 アラクネ三姉妹のように自分の糸を使って作るタイプと、アイネスが<ネットショッピング>で注文した物を使用するタイプだ。

 基本、この2種類のみである。

 だが稀に、その美意識の高さからアイネスの用意する物では満足出来ないという魔物がいる。

 そういう魔物に対してアイネスがどうするのかというと……。


「トップスをこれにするなら、ボトムは女らしさを出す為にこのロングスカートが良いわネ。アイネス、これとこれを着てみなさい」

「……はい」

「この店、センスは良いけどミノタウロスに合うサイズの服がないのは惜しいわネ……。いいデザインの服はアラクネの子達にサイズアップしてもらおうかしら……」


 アイネスとオリーブとカザリがいる場所はアイネスの実家の近くにあったショッピングモール……に良く似た異空間だ。

 アイネスがポーションを片手にコツコツと広げていたその空間には画材や手芸道具から服まで、様々な物が存在する。

 そんな異空間に毒妃鳥と名高いゼンのカザリとミノタウロスの代表の一人であるオリーブがいるというのは、かなり印象的な光景だろう。


 召喚されて間もない頃、カザリは芸術に興味を示した。

 切っ掛けはダンジョン内の施設の案内中、作業部屋に案内された時だ。

 そこでカザリは、スケルトンの一体が描いていた油絵に興味を示した。

 元々美意識が高かったカザリはあっという間に絵画を主にした美術にハマり、ただ絵画を見るだけでなく自分で描くようにもなった。

 ハマったらとことん突き詰めるカザリは、「自分が使う画材は自分で吟味して選びたいワ」とアイネスに訴え、アイネスはその頼みを叶える為にこのショッピングモールへと連れてきたのだ。

 オリーブはオリーブで手芸品を見てみたいと相談していたので、カザリと一緒にショッピングモールに連れてきてもらったのだった。

 カザリ達は既に気に入った画材や手芸道具を見つけて目的を達成したのだが、カザリの希望で何故か服屋に寄り道することになった。


 そして現在、アイネスとオリーブはカザリの選んだ服を次々と試着させられている。

 オリーブは困った笑いを浮かべながら、カザリに話しかけた。


「……あんの、カザリさん?」

「何かしら、牝牛?」

「オラ達、カザリさんの欲しい物を買う為にアイネス“ちゃんのスキルで『しょっぴんぐもぉる』ってとこに来たんだべさ?」

「ええ、そうネ」

「なでオラ達、今カザリさんに服を選ばれてんだべさぁ?」 

「本当#それ#」


 オリーブの問いに賛同するアイネス。

 オリーブと同じ事を思ってはいたものの、ゴブ郎は子コボルト達と遊んでいてその場におらずコミュ障MAXモードになっていた彼女はずっと言い出せていなかったのだ。

 カザリは服を選ぶ手は止めないまま、深いため息をついた。


「前々から思っていたけどアンタ達、服装が色々と残念なのヨ。ファッションに少しは興味を持ちなさい」

「##……」

「そんだこと言われてもさねぇ……」

「でもも何もないわヨ。いくら畑の管理があるっていっても一日中土汚れのついたオーバーオールだけっていうのは頂けないワ」

「カザリ###異世界ファッション#ほぼ初心者#####……」

「異世界ファッション初心者じゃないアンタが黒いズボンと白シャツかパーカーのコーデだけっていうのはどうなのヨ。毎日同じ服を着てるのかと思ったワ」

「服なんてある物#適当#着ていけば良い##ない###」

「論外の考え方ヨ」


 ポツリと呟いたアイネスの言葉を聞き逃さず反論を述べ、カザリはアイネスの非リア女子発言をバッサリと切り捨てた。

 ダンジョンマスター相手であろうと、自分の美学に触れる事は許されないようだ。


「大体、どっちも一日ずっと仕事とかじゃないでショウ? 仕事がない日くらいはおめかししなさいヨ」

「オラは休みん時も畑仕事してっからなぁ……。めんこい服で畑仕事しとったら土で汚れちまうべさぁ」

「私、休み#大抵マイホーム#篭もる##」

「少しは畑仕事と部屋から離れなさい。アンタ達顔もスタイルも悪くないんだから良い服着ないと勿体ないワ。はい、次はこれヨ」


 着せかえ人形の如くカザリの選んだ服を着せられるアイネスとオリーブ。

 口では色々言いつつも、カザリの選ぶ服が彼女たち好みだったため、大人しくカザリに渡される服を試着していく。

 試着した中でアイネスとオリーブが気に入った服を4,5着選ぶ様子を見て、カザリは満足そうに息をついた。


「次の休みにはどれか一着は着なさいヨ。もしいつものようなダサファッションをしてたら容赦なくアタシ好みの服を着せるワ」

「一体どんな服#着せられる####……」

「それはその時まで楽しみにしてなさい。とっても可愛い服を選んであげるワ」

「##……」

「オラはちょっと気になるべさぁ。カザリさん、とっても洒落(され)だかんなぁ」

「褒めても何もないわヨ。服は自分たちで持ちなさい」


 苦虫を潰したような声を出すアイネスとは正反対に、オリーブはのほほんとした笑みを返す。

 カザリはオリーブの称賛を当然といった様子であしらい、自分用の画材を両手に抱える。


「##、用事#済み####そろそろ帰り#####」


 アイネスはそう言いながら、隣にいたオリーブの手を握った。

 アイネスに手を握られたオリーブは思わずニコニコと笑いながら言った。


「アイネ“スちゃん、手握って帰りたいんだべさ? 子供っぽくてめんこいべなぁ」


 普段は大人びているアイネスの、子供のような行動にオリーブは自分に妹が出来たみたいだと微笑んだ。

 そんなオリーブに対し、カザリは真顔で言った。


「何か勘違いしているようだけど、多分違うわヨ。」

「んだべ?」

「アイネスが手を握ってるのは恐らく牝牛、アンタの迷子防止よ。アンタ、此処まで来るのに3回もはぐれたでショウ?」

「んだべさ!? そうなんだべか!?」

「流石#4回目#迷子#ちょっと#……」

「方向音痴が過ぎるわヨ、流石に」


 カザリの言葉に驚愕の声を上げるオリーブと、カザリの言葉にうんうんと頷いて同意するアイネス。

 ショッピングモール内に来て3分後、アイネス達が少し目を逸らした隙にオリーブが忽然と姿を消したのだ。

 慌ててアイネス達が探してみると、何故か入り口から離れた場所で彷徨っていたオリーブを発見した。

 カザリがオリーブを叱ったけれど、その後もオリーブは気になる物を見つけるとそっちの方へ向かい、右に向かおうと言っているのにも関わらず何故かエスカレーターに乗って上に行く。

 そして迷子になったのが計3回。

 帰り道だけは迷子にさせまいと手を掴んでいるのも無理はない。


「いやぁ、すまねぇべ~。オラ、生まれつき道に迷う事が多いんだべさぁ」

「道に迷う事が多い以前の問題だったわヨ。そんなんで元いた場所では迷惑掛けなかったノ?」

「村んいた時はセダムがオラを見つけてくれとったべさぁ。セダム、捜し物とか誰か探すんとか、とっても上手いんだべさぁ」

「そりゃそう####。セダム##############」

「アンタがそんな感じだと、あの牡牛も相当アンタに苦労掛けられたでしょうネ」

「そんな事ねぇべさぁ! オラとセダムが子供ん時は、むしろオラが面倒見とったんだべさぁよ」


 オリーブはカザリの言葉に頬を膨らませ、プリプリと修正の言葉をぶつける。


「そもそもオラとセダムは、同じ生まれだけんど、オラの方が2日早く生まれてんだべさぁよ! オラの方がお姉さんだべさぁ」

「1日2日なんてそんな大きい違いはないわヨ。アタシとアイネスの年齢差どれだけあると思ってるのヨ」

「というか、お二人##そんな#仲#良い####?」

「オラとセダムの家は隣同士だったかんなぁ。ご飯食べる時も寝る時もいつも一緒だったべさぁよ」

「あら、幼馴染っていう奴ネ」

「セダムは結構やんちゃな悪戯っ子だったべさぁ。良く畑仕事サボってたから、オラがセダムを連れ戻して仕事させてたんだべさぁよ。まあ、今じゃまぁるくなったけんどなぁ」

「あのセダム###やんちゃ#悪戯っ子……意外###」


 セダムとオリーブの思い出話に、カザリとアイネスは興味深しげに聞く。

 生まれが近く、住む家も近かった2人は必然的に2人で生活する事が多かった。

 面倒見の良いお姉さんっ子のオリーブは、当時やんちゃだったセダム相手とも相性が良かったんだろう、とアイネスは心の中で推測を立てていた。

 セダムのいない所でセダムのやんちゃ話を話すオリーブ。

 カザリは面白そうに笑みを浮かべながらオリーブに尋ねる。


「それにしてもそんなやんちゃ坊主が今じゃあんなのほほんとした性格で村の代表なんて本当に意外ネ。何か今の性格になる切っ掛けでもあったのかしら?」

「うーん、オラもそれはわかねぇけんど、ある日急に真面目に畑仕事するようになった日なら覚えてるべさぁ」

「#、それ##いつ#####?」

「子供ん時、セダムが迷子になったことがあったんべさぁ。そん時にセダム、村ん外でレッドグリズリィに会っちまって、大変だったんだべさぁよ」

「レッドグリズリー? 子供のミノタウロスじゃかなり手強い相手でショウ? 大丈夫だったノ?」

「セダムがいねぇなぁって思って、オラが闇雲に村ん外走り回ってたら丁度レッドグリズリィとセダムが対面してる所見かけたもんで、慌てて血塗れのセダム連れて逃げたべさぁ。その後オラもセダムも道に迷って、大変だったべさぁ」

「###……」


 思わぬ過去にアイネスとカザリは目を丸くする。

 オリーブは懐かしむように目を細めながら語る。


「あん時はオラがかなり遠くまで逃げたせいで、2人で一緒に迷ってしまったべさぁ。オラがそこらの木から果物(くだもん)取って2人で分け合って、セダムがオラの手を取って前に進んで、2人で協力しながら村へ戻ったんだべさぁ。そん時に、色々沢山の事を話したと思うべさぁ」

「へぇ……」

「命からがら村に帰ったら、子供2人で何処ほっつき歩いてんだって大人達に心配されて、こってり怒られたべさぁよ。あん時はオラもセダムも、すげぇ泣いた気がすんべさぁ。で、そのまま2人で一緒に寝て、次の日になったらセダムは真面目に畑仕事にするようになったんだべさぁよ。大人の言うことをしっかり聞くようになったんだべさ」

「##……」


 子供達だけで危機を逃れ、二人っきりで森の中を歩き回る。

 そんな青春的な思い出話に、アイネスとカザリは思わず感動していた。

 そこでオリーブは突如、衝撃的な発言を落とした。


「オラにも「おめぇの事は一生側で守る。だからおめぇもずっと一緒にいてくれ」って言ってきたんだべさぁ。あん時のセダムはかなりキリッとしてたさぁ」

「え?」

「##、それ……」


『おめぇの事は一生側で守る。だからおめぇもずっと一緒にいてくれ』

 それがなければ、ただ悪戯っ子だったセダムが真面目になった良くある良い話で終わっていただろう。

 しかし、 男のミノタウロスであるセダムが、女のミノタウロスであるオリーブに告げたその発言があるのであれば、この話はもう一つの真実を持ってくる。

 そしてカザリとアイネスは、ある事を察してしまった。

 そんな2人の様子にも気づかず、オリーブは話を続ける。


「きっと、レッドグリズリィに対面してびびってやんちゃを止めたんだべさぁ。そもそも、あん時レッドグリズリィ襲われてたんはセダムで、オラに逆に助けられとったんに何言ってんだべさぁって笑っちまったさぁよ。あ、でも、そん以来なでかオラと一緒に寝てくれんくなったさぁね。前は水浴びも一緒だったんに「オイラは一人で水浴びすっから良い!」って言って……。年頃の雄の気持ちはよく分かんねぇべさぁ。アッハッハッハ!」

「「……」」


 大きな笑いを上げながら、呑気にそんな事を呟くオリーブ。

 カザリはオリーブの鈍感さに眉間を押さえ、アイネスはセダムの気持ちが一ミリも伝わっていないというその哀れさに天を仰いだ。

 数分後、カザリはそっとオリーブの肩を叩き、真剣な表情で言った。


「牝牛、いえ、オリーブ。アンタ、次の休みは牡牛と一緒に過ごしなさい。綺麗な服を着て髪を整えるのヨ。一緒に畑仕事するんじゃなくて、運動場で遊ぶなり図書室で本を読むなりしなさい。良いわネ?」

「んだべ? なでだっぺさぁ?」

「長年苦労してきただろう牡牛への労いヨ」

「ある##……。こんな漫画#歌####幼馴染コンビある##……」

「だべさ????」


 頭に疑問符を浮かべ首を傾げるオリーブの姿を見て、カザリとアイネスは大きなため息をついた。

 セダムがずっと抱いている感情は、まだまだオリーブに届く事は難しそうだと悟る2人だった。


おまけ


「牡牛」

「ん? どうしたんだべ、カザリさん?」

「アンタ、頑張りなさいヨ」

「んだべ? いってぇどういう事だべさ?」

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[一言]  うわぁ…頑張れ、セダム(笑)
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