【番外編】 それぞれのペアの会話 その2
2日開けてしまい申し訳ありません!再び番外編でございます!
時間はあべこべ、中身は何処かの先輩後輩ペアのとあるやり取りです!
今回のペアは、コイツラだ!
《初恋をした人形師と失恋をした人狼》
レジェンドウルブス達が使う音楽スタジオにて、二体の魔物がいた。
パペットアクターことテアトロの前で華麗なギターテクニックを見せるレジェンドウルブスのリーダー、タクト。
一曲弾き終わると、テアトロはパチパチと拍手をした。
「ウェ~イ!! ドゥーっすか、テアっぷ! オレのこのギター捌き!」
「いやはや、素晴らしいでぇすねぇ! ワタクシ、感動が止まりませぇん!」
「そうっしょ?! これブルーらも一緒にやったらマジパないことなっから! 明日のミュージックマジで聞いてほしいわ!」
「ええ、今からとても楽しみでぇすよ! 他の皆さんもグレーターワーウルフの皆さんの演奏に夢中になりまぁすね!」
タクトの演奏技術を絶賛するテアトロにご満悦のタクト。
2人はその人見知りしないフレンドリーな性格から、ペアになって一日ですぐに仲良くなっていた。
今もテアトロの用事に付き合い、アイネスが目的の物を収拾するまでの時間つぶしをしていた。
5曲目の演奏を終えたタクトは「ちょい休憩すっわ!」と言って床に置いていた飲み物を手に取り、休憩を始めた。
そんなタクトに対し、テアトロはある質問をした。
「そういえばタクトさん、少々小耳に挟んだのでぇすが」
「んー?」
「タクトさんがマリアさんに求愛してフラれたのは本当なんでぇすか?」
「ぶほっ!げっほ、げっほ……!」
唐突に過去の失恋に関する質問をされたタクトはその場で飲み物を吹き出し、噎せ込んだ。
ジュースで汚れた口元を手で拭い、タクトは苦笑を浮かべながらテアトロに問い詰めた。
「ちょっ、なんでまりりんにフラれた系になってるん!?」
「おやぁ? しかしタクトさんはリリスさんに恋心を抱いていた時期があるとケット・アドマーの皆さんが……」
「違う違う、それリリス違いだし!! つかなんで知ってんのケトアドさんら!!」
レジェンドウルブスの仲間たちしか知らないはずの秘密がまさかの所から変に歪んだ状態で漏れていた事を悟り、タクトは尻尾をブンブン振り赤い体毛で覆われた顔を更に赤くさせてテアトロの誤解を解いた。
何処か遠くでケット・アドマーの独特な笑い声が聞こえたような気がした。
「オレ、アイぴっぴのダンジョンに来る前は別のダンジョンの魔物だったんよ。で、オレが惚れてたのはそっちのダンジョンにいたリリスっつぅ訳よ!」
「なぁるほど、そういう事でぇしたか! てっきりワタクシはマリアさんの方かぁと……」
「つか、告ってフラれたっつぅか、告る前に本性知っちゃって一気に恋心が消失した系だし? もう今じゃ未練なんて欠片もねぇ感じ……すんません、嘘っすわ、振り切ってねぇっすわ、まだクッソ未練ありまくりんぐだわ」
「強がる所から正直になぁるまでの動きがとっても早かったでぇすね」
「いや、マジで忘れらんねぇよ初恋の胸キュンは………あ~、りりぴょ~ん……」
涙目でそう言いながらタクトが思い浮かべたのは、以前のダンジョン戦争以降全く会う事がなくなってしまった初恋相手のリリス、リリィ。
バリトン達のお陰で失恋の悲しみからは吹っ切れたものの、偶にリリィのことを思い出しては尻尾と耳を垂らし、項垂れては泣き始めるのだ。
その時の面倒臭さはアイネスに執着するベリアルと同等……とケット・アドマー達の中で密やかに語られているが、タクトは知らない。
「しかし、良いでぇすねぇ……初恋。それも上位種族と下位種族の恋だなんてロマンチックではあぁりませんか!」
「おっ、テアっぷもそういうの分かる系? 案外恋バナウェルカムしちゃう感じ?」
「ええ、それはもう! 素敵ではあぁりませんか、恋愛話! 普通上位種族は下位種族に恐れられるか崇められるかのどちらかでぇすからねぇ。タクトさんのような良い御方に恋慕の心を抱かれていたのに相手にしなかったとは、そのリリスさんは本当に勿体ない事をしまぁしたね」
テアトロが初めて図書室に赴いた際、中でも興味を抱いたのはアイネスの世界では良くあるような恋愛ものの少女漫画だった。
同じ学園に通うクラスメイト同士が、昔からの幼馴染が、あるいは身分の違うもの達が恋心を抱き、様々な出来事を経て恋人同士になる様子はテアトロの感情を大いに揺るがした。
その強さから普通の人間や魔物は近寄りたがらず、自身の周りにあるのは蛮勇と無知を振るい襲いかかり、そのまま死体人形となった者達だけの、一際孤独感を感じてしまう種族であるパペットアクターのテアトロには、恋愛話はとても美しい物に見えたのだ。
「いつかワタクシも、そんな恋が出来るとイイでぇすねぇ」
「いやいや、テアっぷなら出来るっしょ!」
「本当でぇすか?」
「マジマジ! テアっぷって上位種族の割にはめっちゃフレンドリーだし、女子にめっさ紳士的だし、女子達的にはかなり好印象的な? 顔は見えないけど!」
親指を立ててテアトロの背中をバンバンと叩き、テアトロの良い所を上げるタクト。
これをテアトロと同じ最強魔物であるバイフーにしていたら即ブチ切れられていただろうが、テアトロはそれよりもタクトの言葉を余程嬉しく思ったのか、「そう、でぇしょうか……!」と喜びの声を漏らしていた。
「アイぴっぴのダンジョンはマブい女子がよりどりみどりな訳だし? なんなら、今すぐにでも初恋経験出来ちゃうんじゃね?」
「ホッホー! なんだかワタクシもそういう気持ちになってきまぁした! ぜひぜひ、ワタクシも恋してみたいでぇすねぇ!」
「出来る出来る! テアっぷがフォーリンラブしたらオレにも話聞かせろって!」
「ええ、その時はよろしくお願いしまぁすねぇ」
「楽し#会話中###ない####、どっちか手伝って#######……?」
2人が楽しく談笑していると、彼らの前方から声が掛かった。
顔を上げてみれば、そこに立っていたのは<ホーム帰還>で召喚した扉をノックするアイネスだった。
テアトロ達がアイネスの帰還に気が付くと、アイネスは一度マイホームの中へと入り、おもちゃが山のように積まれたカートを押して出てきた。
「うわっ、アイぴっぴめっちゃ集めてきたんじゃん!!」
「おもちゃ##色々ある##適当#それ###物#選んで来###。この###あれば十分####?」
「わざわざありがとうございまぁす、アイネスさん」
テアトロはアイネスに礼を言いつつ、前からカートを引っ張ってマイホームの外へ出すのを手伝う。
カートの中にはぬいぐるみからフィギュア、車のおもちゃや女児に人気のお人形まで様々な物が積まれていた。
その中には日本人形や藁人形なんて物騒な物もあるが、タクト達は敢えて問い詰める事はしなかった。
「そういや、テアっぷって何故にオモチャなんて必要なん? 童心戻って遊んじゃう的な?」
「ホッホー! それはそれで楽しいでぇしょうが、今回の目的はそうではないのでぇすよ。これは、ワタクシの武器作りなんでぇすよねぇ」
「武器作り?」
「##、テアトロ###人形#操っ##人間#人形####出来る#####?」
テアトロの能力は人や魔物を人形へと変え、それらを操る傀儡の力。
本来ならダンジョンにやって来た者達を自分の傀儡人形にして戦うのだけど、『9割ノーキル』をモットーとしているアイネスのダンジョンでは人を人形化させるのはあまりよしとされなかった。
人形化させた人や魔物の代用として用意することになったのが異世界産の人形や玩具達だった。
少々魔力を馴染ませる時間は必要ではあるけれど、別に人形化させた人や魔物でなくてもテアトロはそれらを武器にすることが出来る。
むしろそっちの方が長期間使うことは出来る上、破損しても簡単に補充が効く。
今回テアトロが操る事が出来る玩具の範囲とどれが戦闘に使う事が出来るかを確認する為、アイネスが<お出かけ>で作った某大型玩具屋や<ネットショッピング>を駆使して集めてきたのだ。
「つか、めっちゃ種類あるくね? アイぴっぴのとこオモチャにめっさ力入れてんじゃん」
「これでもまだ一部###。人形#出来###物以外#含め##もっとあり##」
「いやはや、アイネスさんの世界の技術力には毎度のように驚かされまぁすねぇ。どれも質が大変良い! これなら幾らでも強化や操作が容易そうでぇすよ……っ!!」
アイネスと一緒にタクトとテアトロがオモチャの箱を開けながら会話をしていると、テアトロがカートの中に入っていたオモチャの一つを見てピタリと喋るのを止めた。
そしてテアトロがプルプルと身体を震わせながらアイネスに問いかけてきた。
「あ、アイネスさん!!」
「#?何####?」
「こ、此方のご令嬢は……?」
「ゴレージョー?」
開封作業を止めてタクトとアイネスがテアトロの指した先を不思議そうに見てみれば、そこにあるのはピンクや白、水色といった可愛らしい装飾のなされた箱に入った女児向けの人形だった。
アイネスはその人形を取り出し、テアトロに尋ねた。
「……もしかして、この人形#こと#言って##?」
「ええ、ええ! その方です! 彼女のお名前は何というのでしょうか?」
「###……、ゆみ######。ミカ###人形シリーズ#一つ##」
「ユミちゃん、ってゆーらしいよ、テアっぷ」
「ワタクシ、彼女に一目惚れしました!! どうか彼女と結婚を前提に恋人になる許可をください!!」
「「はぁ(###)!?」」
突然の人形に対する告白にタクトとアイネスは驚愕のあまり声を出した。
テアトロは手に持っていたハサミをスキルで操りゆみちゃん人形の入った箱を開封してゆみちゃん人形を宙に浮かべると、その人形の小さな手に手を差し伸べた。
「美しい金色の髪にスラッとした手足、そしてクリクリとした愛らしく優しげなその瞳! ひと目見てアナタのその美しさに惚れてしまいまぁした!」
「……テアトロ##、ゆみ###人形#実#量産ひ――むごっ」
「アイぴっぴ、それ以上はガチストップ。テアっぷ混乱するから」
現実を突きつけようとしたアイネスの口元を咄嗟に抑え、タクトはテアトロが女児向けの人形に愛の言葉を囁いている姿を見守る。
5分程ゆみちゃん人形にテアトロの愛の言葉が囁かれた後、テアトロは再びアイネスに問いかけた。
「アイネスさん、この方をワタクシが貰い受けても……」
「……##、全然良い###。元々テアトロ##に渡す予定####」
「アイぴっぴ、良いってよ! やったじゃん、テアっぷ!」
「ありがとうございまぁす、アイネスさん、タクトさん! ワタクシ、彼女に相応しい相手になれるよう頑張りまぁす!」
「……うん、#幸せに」
純粋に後輩であるテアトロの幸せを願い祝いの言葉を向けるタクトと、女の子向けの人形を抱え大喜びするテアトロの姿に色々な事を考えつつも取り敢えず祝いの言葉を告げる事にしたアイネスは人形使いの魔物と異世界産の人形というある意味異質なカップルの誕生に拍手でお祝いした。
テアトロはダンジョンマスターと自分の先輩である2人からお祝いの言葉を向けられ、ゆみちゃん人形を抱えて楽しげに笑ったのだった。




