ぶっちゃけ、ただ近づきたくない人
「落ち着きました?」
『全然』
『落ち着いてなんか』
『ないね』
『むしろ、何故それを聞いて落ち着くと思ってる?』
「デスヨネ―」
イグニ達がカオス状態になって数分後、声が止んだ所で声を掛けてみると、4人からそんな言葉を返された。
その目は真剣そのものである。決してフザケている様子ではない。
美男美女の真顔こっわ。
しかし、あまり長い事国王様達の前でカオス空間を晒している訳にもいかない。
私は国王様の方を向く。
「今私が言ったのはあくまでオロフソン公爵から聞いた話や日記などを元に推測した事なので、間違いである可能性の方が高いです。しかし、紅茶缶の中に毒草が混じっているのは確かです。もしかすると……という可能性があります」
『アイネスは「あくまで自分が言った事はただの憶測でしかない可能性が高い、だけど紅茶缶の中身に毒が混じってたのは事実だから簡単に捨て切れる問題でもない」と言っている。だが、俺様としてはアイネスの推測は間違っていないと思うぞ。アイネスの推測は予知や千里眼とも言っていい程当たるからな』
私が国王にそう伝えれば、イグニが私の言葉を訳し、私の推測に賛同する。
いや、予知や千里眼と同等って過言過ぎるでしょう。
私の視力は人並みにしかないし、明日の天気を当てるとかも出来ないし。
テオドールさんは私がもみくちゃされている間に紅茶缶の<鑑定>を終えたのだろう。
国王様がテオドールさんに視線を向けると、テオドールさんは静かに頷いてみせた。
国王様は顎に手を添えて少し考えた後、私に尋ねてきた。
『少し、アイネスに尋ねたいことがある』
「はい、なんでしょうか?」
『オロフソン公爵夫人はその怒りを収め、無事にオロフソン公爵とその子供達と和解した。……そうなのだな?』
「私は彼らの姿も声も全く分からないので実際の所はどうなのかは分かりませんが、私がこうして屋敷の中から出てこれたのですからそうなんじゃないでしょうか?」
私がそう答えれば、すぐにイグニが一語一句間違えずに訳してくれた。
私の回答を聞いた国王様は静かに目を細め、そして小さく頷いた。
『そうか……。感謝しよう、アイネスよ。我々もあの屋敷の中がどうなっているのか分からず、手をこまねいていたのだ。あの屋敷の中に入った者は皆戻ってこなかったからな』
「そりゃあ、中入ったらほぼ死に確ですからね」
『あの屋敷の内部を調査した者には王宮から報酬を渡す事となっている。それでアイネスに報酬を渡そうと思うのだが、何を渡すべきだろうか?』
『俺様達が欲しい物は大体ダンジョンにあるからな』
『金貨とかを貰ってもそんな頻繁にケネーシア王国に行く訳じゃないからね』
お金はあればあるだけいいのだろうけど、ダンジョン住まいである私達にはあまり必要がないものだ。
かといって料理とかは……うん、何も言うまい。
無償の行動は胡散臭過ぎる。
私は少し悩んだ後、国王様に一つ、頼み事をすることを決めた。
「だったら一つ、お願いがあるんですが」
『む、アイネスよ、何か思いついたのか?』
『何か望む物があるのか?』
「物じゃないです。私の代わりにやってほしい事があるんですよ」
『やってほしい事?』
首を傾げるイグニ達を横目に、私は再びマサムネの持つ袋に手を突っ込む。
そしてそこからサンタ帽を取り出した。
「年に一度、真冬の日にこれを付けてあの屋敷にプレゼントを置いていって欲しいんですよ」
『年に一度、真冬にこの帽子を付けてプレゼントを……って、まさかアイネス! それはまさか、『さんたくろーす』という者の真似事か!?』
『『さんたくろーす?』』
「ベレッタちゃんにサンタのことを教えてしまった以上、誰かが代わりをする人がいないと駄目ですからね」
イグニが必死に国王様達にサンタの説明をしている横で、私は小さくそう呟いた。
ベレッタちゃんの警戒心を解くために利用した存在。
あの子を悲しませない為にも誰かがサンタとしてプレゼントを渡しに行かなければならない。
私はいつ元の世界に戻るか分からないから、ケネーシア王国の人間の誰かがプレゼントを贈りに行って貰う方が都合良い。
私が実際に見た訳じゃないから、ベレッタちゃんたちが本当に成仏したのかは分からないし。
イグニの熱心な説明を聞き終えた国王様は、イグニの熱心な素振りに驚きを見せつつも私に問いかける。
『つ、つまり、年に一度の真冬の日、その帽子をかぶった者が何か贈り物を屋敷に運べば良いのか?』
「プレゼントの中身は7歳ぐらいの女の子が好みそうな玩具や服、本とかを一つ二つで良いんです。あくまでベレッタちゃんが寂しい想いをしないようにする物なので。あと屋敷の中に入ったら出れないようになるようなので、屋敷の玄関扉を開けてすぐの場所に置いとけば閉じ込められる事はないと思います」
『プレゼントの内容は玩具や服や本など、子供が喜ぶ物なら何でもいいそうだ』
『アイネス嬢が今外に出られた以上、別にその慣習を付けなくても良いのではないかい?』
「あの、お言葉ですがそれは止めといた方が良いと思います。多分、凄い悲しんでしまう可能性が……」
「朝起きて、サンタのプレゼントが置かれてなかった時の悲壮感は途轍もないわよ。それこそその女の子が悪霊になりかねないわ」
「あと、正体とか分かっちった時のショックも鬼ヤベェよね」
『そ、そうなのか……』
テオドールの言葉にすぐ反対の言葉を述べたのは、ソーマ達3人だった。
やはり元の世界でクリスマスという文化を知っている分、サンタからのプレゼントがなかった時の悲しみやサンタの正体を察したときのショックを理解できるのだろう。
サンタショックってかなり精神的に来るからね。
『サンタなんていないんだよ』の台詞で一体どれだけの子供達が嘆き悲しんだ事か……。
『なるほど、話は分かった。生贄を捧げるなどならともかく、玩具や服を供えるぐらいだったら全然構わない。そなたの言う通りにしよう』
「ありがとうございます」
『さて、問題はそこの二人だな?』
ひとまずオロフソン公爵家の話が終わり、国王様が今まで青い顔で黙り込んでいたデーヴェ夫妻の方を見る。
国王様に睨まれ、デーヴェ夫妻はビクッと身体を跳ねらせた。
『デーヴェ夫人よ、先程そなたは言っていたな? 『自分は夫が犯罪組織と関係を持っていた事を知らなかった』と』
『ひっ……!』
『しかし、30年前の事件の真実がアイネスの推測通りであるなら、そなたは知っていたはずだ。私の前で虚偽を述べるとは、良い度胸をしているな』
『こ、これは、その……!』
『もし、本当にそなたがその事を知らなかったとしても! 30年前の事件もそなたが引き起こした可能性が高いというではないか。その紅茶缶が何よりの証拠だ。30年も昔の事とはいえ王族と血縁関係にあったオロフソン公爵家を、自身の家族を己の私欲で惨殺したのだ。今回の事を抜きにしても、そう容易く許せるものではないぞ?』
『あ、あ……』
30年前の罪が暴かれ、国王様にその言葉を言われた事で己の未来がどうなるかが分かってしまったのだろう。
デーヴェ夫人は青を通り越して顔を真っ白にさせてヘナヘナとその場に座り尽くした。
一方、デーヴェ大臣はまだ諦めきれてないのだろう。
目を血走らせて声を上げる。
『こ、こんなの、でっち上げだ! この、この下劣な魔物達と小娘がワタクシを陥れるために作った嘘だ!』
『貴様、まだ吠えるか……!』
『こんな魔物たちが持ってきた証拠や、どこの馬の骨とも知れぬ冒険者共の証言など信用出来ぬ! 全てでまかせだ!』
「はぁ?!」
本性を曝け出し、今までの証拠は全て捏造だと訴えるデーヴェ大臣にイグニ達は青筋を立てた。
当然だ。
追い詰めたと思っていた者が、今もなお抵抗を止めないのだから。
デーヴェ大臣に対してテオドールが冷静に告げる。
『デーヴェ大臣。貴方の屋敷から既に幾つか証拠の品は見つかっている。僕自らが』
『フンッ、それも皆でっち上げであろう! そこのリリスであれば捜査に入った騎士達を操って捏造した証拠を置かせる事も容易いだろう!』
「じゃあ、こもり子ちゃんの魔物が見ていない所で執務室や犯罪組織の隠れ家をもう一度調べれば良いじゃない! 見た限りまだ悪事の証拠は置いてあったし……」
『既に魔物が足を踏み入れた場所なら、でっちあげた証拠を置かれていても可笑しくないだろう! そもそも役に立たぬ冒険者の言葉など聞き入れてたまるもんか!』
「はぁ!? なんですってこのデブ大臣!」
『デーヴェ大臣だ! このじゃじゃ馬貧乳娘め!』
「あ“ぁ!?」
「あ、アヤカ、国王様の前だから! 落ち着いて!」
テオドールさん達が何を言ってもデーヴェ大臣は聞く耳を持たず、全てイグニ達が捏造したと反論する。
更にはアヤカと小学生の子供のような悪口合戦をする始末だ。
これでは自供を促す事は難しいだろう。
確かにマリアの力を使えば調査に向かった騎士達を操る事は容易いだろうし、捏造した証拠を置いていないという証拠も出せない。
悪人って、どうしてこう追い詰められると頭が働くんだろう。
火事場の馬鹿力ならぬ追い詰められ時の姑息力というものか?
「今の所、ライアンさん達が出した証拠が捏造をしたという証拠もないですよね? 第一貴方を陥れるメリットがこちらにはありませんし」
『アイネスの言うとおりだにゃ。捏造したって示す証拠がにゃいにゃらおみゃーがどんだけ捏造だ云々言っても意味にゃいにゃ』
『ええい、煩い煩い! そんなに言うのだったら、今この場に出してみろ! このワタクシとその犯罪組織が繋がっていたという確固たる証拠を! ワタクシと内通していた組織の者を出してみるとかなぁ!!』
『なら、隠れ家にいた者達を連れてくれば良いだろう。尋問すればすぐに分かるはずだ』
『それじゃあ駄目だ! 今だ! 今すぐソイツを出すんだ! 後になって出されても信用ならんからな!』
『そんな無茶苦茶な……!』
その場でデーヴェ大臣と犯罪組織が繋がっていたという確固たる証拠か、犯罪組織の者を出さないと意味がないとは、これまた無茶な事を言う。
多分、マリアやライアン、ジャスパーが提出したとしても意味がない。
さっきと同じように捏造だと言われて終わるだろう。
あまりにも酷すぎる反論に、イグニ達は怒りを越えて最早呆れを見せている。
だが、デーヴェ大臣に罪を認めさせるにはこれしかない。
国王様もデーヴェ大臣が自供するか、全く別の方向から証拠が出されないとデーヴェ大臣の罪への対応が出せないようだ。
イグニ達は手出しが出来ない。
そんな中、私はイグニ達とは全く違う事を考えていた。
(その言葉を、待っていた)
そう、思った。
『……!!』
謁見の間にいる皆が全員息を飲んだ。
その瞳に映るのは顔を赤くして発狂したように叫ぶデーヴェ大臣ではない。
私の方だ。
確認しなくても分かる。
今の私は、きっと笑っているのだろう。
胸に押し込めていた怒りを溢れさせ、予測通りの言葉を放たれたことへの喜びで。
(<オペレーター>)
『了。通訳対象を切り替えます』
私が<オペレーター>を呼びかければ、<オペレーター>はすぐに通訳を切り替えてくれる。
これで、私の言葉は彼らに聞こえるようになった。
私はデーヴェ大臣に向かって口を開く。
「ええ、良いですよ?」
「! アイネス、**(言葉)*……!」
「今ここで出してやりましょうか。貴方が絶対に納得せざるをえない、誰の目から見ても貴方がその組織と繋がっていたと分かる確固たる証拠……いやその人を。」
「*、****!?!」
突然私の言葉がこちらの世界の言葉になった事で驚きを隠せないのだろう。
国王様や騎士達が目を丸くして騒然としている。
その中で一人、デーヴェ大臣だけは私の言葉の内容に驚愕を見せている。
「だけど、覚悟してください。私が今出すのは確実に貴方の罪を確定させるトドメであり、私が貴方を確実に破綻させる最初の1手になります。これ以降、貴方が許しを乞うてきても絶対に破滅することになる。死ぬよりも辛い事をします」
「*、*……!?」
「今此処で罪を認めてくれるのであれば、ケネーシア王国側に貴方の罪状に対する罰を任せましょう。ですが此処で認めないのでしたら今回の件に関する罪への罰は、私側が行います。私、これでも貴方自身にはそこまで怒ってないんですよ。いや、確かに怒ってはいるんですが、今回の実害ってお茶会の件を除いたら私にしか被害が来ていない訳ですからね。私の中ではまあまあ許せる範囲なんですよ」
「ちょ、こもり子ちゃん?! アンタ、あれだけされてまだ許せるっていうの!?」
「だって私、この人に興味ないですから」
アヤカの言葉にそう返した瞬間、場の空気が凍りついた。
今まで発狂した様子のデーヴェ大臣も国王様も口を閉ざして硬直している。
私は静かに言う。
「私の大事な物を壊されたとか、イグニさん達を何度も馬鹿にされたとかなら怒りも出来るでしょうけれど、この人自身がやったのって謁見の間で自分の都合が良いようにするために軽く見下した発言をしたこと、犯罪組織に私の拉致を頼んだこと、あとマリアさん達の討伐を依頼しようとしたこと。つまり全部未遂で済んでしまった事なんですよ。そりゃあ流石に拉致とか監禁未遂されたから印象的には悪いんですけど、精々近づかないで置こうと思うぐらいしかないです」
「こもりん、超絶ドライじゃね? 逆にウケるわ」
「私、第一印象が最悪だからって好き嫌いを区別する程の感情は抱けないんですよ。正直今の私の怒りの矛先はデーヴェ大臣3割、犯罪組織7割って感じなんですよね。国王様にデーヴェ大臣の始末を任せられるなら任せたいぐらいです。今更デーヴェ大臣が捏造だなんだ訴えた所でそれをまともに相手にする必要もないですし、正直今こうしてデーヴェ大臣の言葉に付き合っているのが面倒です」
「****(嬢ちゃん)……」
「******(ない)**」
「****(ある意味)、**(そこ)***(魅力)******」
思っていた事を吐き出していくと、イグニ達の硬直が解けて段々と苦笑と浮かべ始める。
身も蓋もない事を言っているというのは理解している。
だけど実際、デーヴェ大臣に対してはその程度の感情しか抱いていないのだ。
やられた事に対しては怒っているが、デーヴェ大臣自身には興味も憎悪もない。
さっさと退散してくれって気持ちしかない。
だけど自尊心の高いデーヴェ大臣は私の言葉がどうも気に食わなかったらしい。
硬直から直るとそのままわなわなと身体を震わせ、ブルンブルンと脂肪を揺らしながら私に言った。
「****、*******(見せて)**!! **(貴様)***(言う)**(証拠)****!!」
「あ、良いんですか? じゃあ遠慮なく出しますけれど」
「デブ大臣―、今すぐ自供した方が良いわよ~」
「そうだよ。瞳子さ……アイネスさんがするって言ったら本当にするからねー」
「デブちん、土下座でペコッとけー」
「デーヴェ*******(言って)******!! **(最後)*****(至っては)*****(罵倒)*****!!」
アヤカ達がデーヴェ大臣に今すぐ謝罪と自供をするように促すが、デーヴェ大臣は退くつもりはないらしい。
罪を認めるつもりがないなら仕方ない。
犯罪組織のついでに、彼も破滅してもらおうか。
「では、その証拠とやらをお出しするその前に国王様、2つほど許可して欲しい事があります」
「…***(なんだ)***?」
事を起こす前に、私は国王様に声を掛けた。
国王様は少し驚きつつも、私の言葉に反応を見せる。
「一つは今ここで私が行う言動の全てを。もう一つは犯罪組織の後始末についてです」
「**、***(後始末)*」
「1つ目の許可を頂く理由として、後になって皆さんに「あれはひどすぎじゃないか?」とか言われたり、妙に距離を取られたり、逆に英雄視されるのをあまり好まないからです。これから私がする事、言う事に関しては目を伏せていただきたいのです」
「****(分かった)。*****(もう一つ)***(理由)*?」
「先程も言った通り、私の怒りの矛先の半分以上は今回私を誘拐しようとした犯罪組織に向いているんです。今騎士さん達が捕まえた方々に関してはそちらの法に則って後処理をしてもらっても良いのですが、それ以外の方々に関しては此方に任せて欲しいのです」
「****(それ以外)?」
「犯罪を起こす組織が、デーヴェ大臣の権力を盾にしていただけでこうも存在が維持されているはずがないですよ。きっと他の国にも拠点があるか、本拠地は街から離れた何処かにあるはずです。そこの処理を私……というかイグニさん達に任せてほしいんですよね」
「*?」
「*****?」
突然名前を出されて、目を丸くしながら自分たちを指差すイグニ達。
全員同じ反応をしていてちょっと笑ってしまう。あ、もう笑ってた。
「だって、私はともかく皆さんは今回の事でかなり憤っているはずでしょう? 街や村から離れた場所であればケネーシア王国の方々が被害を受けにくいでしょうし、今までの怒りを発散するには丁度良いかと思いまして」
「**……」
「国の大臣さん相手に好き勝手にしていい、とは言えませんけど、それだけの犯罪者だったら私や国がするよりもイグニさん達がした方が早いと思いまして。あ、もしかして余計なお世話でしたか? だったらこの頼みは取り下げますが」
私がイグニ達にそう告げると、彼らは一瞬キョトンとした表情を浮かべる。
しかし、すぐに全員が目を弧にして、ニヤリと笑みを浮かべる。
瞳をギラギラと輝かせ、まるで大きな骨付き肉を差し出された猛獣だ。
その凶悪な笑顔と一変変わった雰囲気に、そこにいる人間たちは身震いする。
どうやら余計なお世話ではなかったらしい。
イグニやマリアは兎も角として、人間寄りの姿をしたマサムネやライアンまで同じような表情をして喜びを見せるとは思わなかった。
やっぱり彼らもダンジョンマスターに召喚された魔物、ということなんだろう。
「ソーマさん達はどう思います? 犯罪組織をイグニさん達に任せるの」
「ウチは名案だと思うわ。騎士や冒険者に任せてたら逃げられちゃいそうだし、ウチら的にもスカっとするしね」
「オレも特に文句なーし!」
「これが何の罪もない人だったら反対してたけど、相手が犯罪者だからね。国王様が良いなら他国の冒険者でしかない僕からは特に何も言うつもりはないよ」
一応同じ転移者仲間であるソーマ達にも尋ねたけれど、彼らもこの案は賛成らしい。
彼らもそんな犯罪組織はいない方が良いと思うのだろう。
一応人の生死が関わる事だし誰か一人に反対されるかと思ったんだけどね。
「ということですので、国王様の判断にお任せします。断られたら断られたで、イグニさん達には臨時報酬を出して納得してもらうつもりなので、国王様が良しと思わなかったら断ってもらっても構いません。どうなさいますか?」
私が国王様にそう尋ねてみると、その場にいる者全員が国王様に視線を向ける。
テオドールさんも、国王様の方を伺うように国王を見つめる。
国王様は少し口を閉ざした後、独り言を呟くように言った。
「***(この地)**、****(何処でも)**(魔物)*****(潜んで)**。***(仮に街)*******(外れた場所)***********(隠れ家)*******(襲われても)、**(我々)******(預かり知らぬ)*****。*****(偶然)******(必然)****、****(関係ない)**」
言葉の一部一部を聞いているだけでも国王様が何を言いたいのかが分かった。
街や村から大きく外れた所で魔物が暴れたとしてそこに誰かの隠れ家があってもケネーシア王国は関与しない。
つまり、遠回しに許可を出された事だ。
イグニ達はその回答を聞いて、更に笑みを深めた。
どちらの許可も得たということで、私は今の空気を返るために柏手を一回叩く。
「では、尋ねる事も尋ねたので、早速デーヴェ大臣お望みの証拠とやらをお出ししましょう。シャロディさん、マサムネさんが持ってきた袋を皆に見えるように出してください」
「*、**(これ)*?」
「はい、それです」
シャロディさんに預かってもらい、そのままの状態で謁見の間に持ってきてもらった大きな革袋。
数人の騎士達が謁見の間にいる人全員に分かるように謁見の間の真ん中に革袋を置いた。
私はマサムネにアイコンタクトを取り、そのまま喋り始めた。
「ずっと思ってたんですよ。仮に私の誘拐が本当に成功したとして、デーヴェ大臣はどうやって知るのかな、って。帰ってきて成功したことを知りましたじゃあ、デーヴェ大臣も内心落ち着かないでしょう?」
デーヴェ大臣がゴクリと息を飲む音が聞こえる。
マサムネは足音を立てつつ、ゆっくりと革袋の元へ歩み寄る。
「電話みたいな通信系の魔法道具は価値が高そうですし、鳥に手紙を運ばせるというのも、少し恐ろしい。なのであるとするならば、誰か組織の人間が直接デーヴェ大臣に報告を出している可能性です」
マサムネが革袋の前まで辿り着いた。
大臣の顔色が赤から青に変わっていく。
「同時に、お城の中に偽の執事と複数人の不審者が現れたのですから誰かが手引きして城内に潜り込ませたはずです。そんなことをデーヴェ大臣自らする訳ない。下手したら誰かに目撃されかねませんから」
マサムネは革袋の口を掴み、そのまま革袋の口に結ばれた紐を解いていく。
「だからその方は、私が攫われた後もなおこの城にいると思ったんですよね。そしてその方こそが、デーヴェ大臣の罪を明らかにする証拠となる」
マサムネは紐を解くと、そのまま革袋の中身を取り出した。
その革袋から姿を現した人物に、一同は大きく目を見開いた。
「*、***(この者)*……!!」
「城に潜り込み、デーヴェ大臣に進捗の報告と仲間が侵入出来るように計らった犯罪組織の人間、それはこの人ですよ」




