この、愚か者共め(イグニ視点)
遅れて申し訳ありません!最新話投稿です!
『グアーッ!! どうしても出来ん!』
『やはり、難しいか?』
『うむ、鉄剣にヒビが付くのはこれで20本目だ!』
『そうか……、どうもイグニレウス殿は力み過ぎている所があるな』
『これでも十分力は抜いている! だがどうしても力が入ってしまうのだ!』
『いや、力抜いているってこれ、もう折れる寸前でしょ…。もしこれがアイネスちゃんならアイネスちゃんの骨バキバキに折れるじゃないですか……』
あちこちが欠けボロボロに成り果てた鉄剣の山の一つを手に取り、引き攣った笑いを浮かべるアルベルトの部下の一人。
アイネスがマリア達と城下町の散策とやらに向かっている間、俺様は初日に引き続いて手加減の練習をしていた。
しかし結果は全て惨敗。
いや、試合と勝負には全て勝っている。勝ってはいるのだ。
本来の目的である『手加減』の習得が出来ていないだけであって!!
断じて俺様は負けてなどいないのだ!
……若干達成できぬゴールに心が負けかけてはいるが。
『こうなったら、ほぼ力づくで手加減を習得したらどうですか?』
『力づくで手加減を習得、だと?』
『何か妙案があるのか?』
『ほら、一時的に能力を低下させる弱体化魔法を掛けるんですよ。確か物語のダンジョンにはそういった魔法が得意な魔物もいたでしょ? それで特訓の時はその魔物に魔法を掛けてもらって手加減出来るだけの能力までに低下してもらうんですよ』
『確かにかなり無理矢理ではあるが、それなら……』
『いや、駄目だ! 弱体化魔法には絶対に頼らん!!』
アルベルトの部下とアルベルトの会話に割入るように、俺様は声を上げた。
確かに俺様も魔法を頼ることは考えた。
だが、それはすぐさまに却下した。
首を傾げるアルベルト達に対して、俺様は答える。
『貴様らも、魔法を掛ける者と掛けられる者の魔法抵抗力やレベルの差によって弱体化魔法の効果時間や効力が変わるのは知っているだろう?』
『あ、ああ、それくらいは知っている』
『確かレベルの差が高いと妨害魔法とかもかかりにくいんでしたっけ?』
『うむ。貴様らも分かっているように、俺様のレベルはかなりのものだ。そして、魔法に対する抵抗力も高い!』
『それが……どうしたんですか?』
『もしも、もしもだ! 俺様がアイネスに合わせて能力を低下させるとするなら、掛ける者もそれ相応の力を持つ者でないと長時間、それだけの効力をもたせることは出来ん。そして、それを可能としていて、なおかつ特訓時に時間が空いている者は、ただ一人、あの陰険蝙蝠だけだ……』
『『あー……』』
『アイネスの為だというのは分かる、だがあの蝙蝠に俺様が頭を下げて弱体化の魔法を掛けてもらうなど、屈辱以外の何でもない! だから俺様は絶対に弱体化魔法には頼らん!!』
『そういや、ベリアル殿とイグニレウス殿は……』
『すっごい仲が悪い、んでしたね……』
俺様がそう説明してやれば、アルベルト達はすぐに納得した表情を見せた。
アイネスの事を持ち出せばあのアイネス至高主義である陰険蝙蝠はその頼みを引き受けるだろうが、あの悪魔はそれ以後も何かとつけて俺様にマウントを掛けかねん!
フォレスやタンザにも頼ってはみたが、どちらも自身の仕事があるからと断る始末。
更には「それならベリアルさん(殿)に頼ればどうでしょうか(いいだけの話だろう)」と提案をするのだ!
そんなのは絶対にお断りだ! 俺様は絶対に自分の力のみで『手加減』とやらを身に着けてみせるのだ!
そんな会話を続けていると、アルベルトが率いる騎士団の副団長がやって来た。
『アルベルト隊長、少しよろしいですか?』
『シャロディ、新しい模擬剣は補充できそうか?』
『はい。今第二騎士団の数名に予備の模擬剣を取りに行かせている所です。あとはこの破壊寸前の鉄剣ですけど……』
『それなら問題はないぞ! 場所さえ貰えるのであればマサムネが全て修復すると言っているからな!』
『そこ、胸を張って言うことっすか?』
高笑いを上げなら告げる俺様に対し、アルベルトの部下が冷静にそう呟いた。
マサムネがそうすると言っているから良いのだ!
アイネスも(ため息混じりとはいえ)そうすると言っているしな!
『しかし、弱体化魔法を頼れないとなるとかなりキツいぞ』
『一回だけ弱体化魔法かけてもらうように頼んで、力をどれだけ弱くするかを覚えてみたらどうです?』
『断る! 彼奴は一度頭を下げるだけでも調子に乗るはずだ! 俺様は絶対に奴には頼らない!』
『まだイグニレウス殿の『手加減』の練習をしているのか?』
『そうそう。結果は見ての通り。それで今は弱体化魔法でどうにか解決できないかって話てるってわけ。このままだと、アイネスちゃんとの実戦練習でアイネスちゃんに大怪我させちゃうからなー』
『シャロディ、何か良い案は思いつかないか?』
『良い案、ですか……。というより、アルベルト隊長――――』
副団長の女はその話を聞くと、少し考える素振りをした後、キョトンとした様子で俺様達に言ったのだ。
##### #####
そんなやり取りをした翌日。
たった一日経過しただけというのに、俺様の心情は全く違っていた。
「ちょっと、イグニさん。殺気が漏れてるよ」
「分かっている。しかし、抑えようがないのだ……!」
「抑えて抑えて! どうか抑えて! ほら、食べ物の事でも考えて!」
「むぅ……」
マリアに小声でそう囁かれ、俺様はどうにか殺気を抑え込む事を試みる。
しかし、いくら抑え込もうとしても心の奥底から湧き上がる怒りが収まりそうにない。
当然だろう。
アイネスが良からぬ人間に攫われたにも関わらず、俺様は何もすることが出来ないのだから。
俺様とマリアは、パーティーに戻って引き続き参加する事となった。
理由は単純だ。
俺様達の力が、強大すぎたからだ。
自身の主であるアイネスを攫われた怒りに満ちた俺様達が感情のままにアイネスの救助に迎えば、街を半壊させるどころかアイネスを巻き込んでしまう可能性が高い。
しかも俺様達は上位種族故か、アイネスの次に周囲に目立っているらしい。
下手に事がバレてしまえば、俺様達の護衛には隙があると周囲に認められて今後余計にアイネスが狙われかねない。
だから俺様達は、このパーティー会場に残って誘拐について発覚されないようにしなければならない。
俺様と共にパーティー会場に残ったのは俺様の次に力を持つマリアと、アイネスの同郷だというカナタという男、そして……
「それにしても、本当に凄いねサバトラさん。見た目も振る舞い方も、踊り方も本当にアイネスちゃんそっくり」
「奴の種族の特性は知っていたが、まさか知っている人間に化ける事も出来たとはな」
俺様達の視線の先にあるのは、名前の知らぬ貴族の息子と優雅に踊っているアイネスの姿。
見た目もその振る舞いもアイネスそのものだが、あれは本物のアイネスではなかった。
パーティーに引き続き参加し、事の発覚を遅らせるための最も重要な仕事を任された者。
ケット・アドマーのサバトラだ。
『サバトラさんには、ケット・アドマーの十八番芸である変化を使って私に化けてもらいたいです』
俺様達待機組に対して宛てられた役割には、そんな言葉が始めに言われた。
最初は驚いた。
ケット・アドマーが人間や獣人に化けるという話は聞いているが、すでに存在する人間に化けるという話は聞いたことがない。
しかしアイネスは当然のようなメッセージを送り続けた。
『私がサバトラさんから聞いた説明ではケット・アドマーは<変化>を使って他の魔物や亜人、人間に化けて生活をすると聞きました。その際に、見たことのある人間や魔物には化けられないという話は聞いていません』
『また、サバトラさんはあの時亜人に『成りすます』っていう表現をしました。もしもケット・アドマーがただ他の生物に変身することができるだけなら、そんな表現はせず、単純に『なる』とか『化ける』とか、もしくは『変身する』って言うはずです。サバトラさんは、私にもそっくり化けられて成りすます事も出来るんじゃないですか?』
そんな言葉の羅列を見ていたサバトラが、独特な笑い声を上げて「流石だにゃあ。みゃーらの応用芸も気づいていたとはにゃー」と呟いたのだ。
俺様達が尋ねてみれば、サバトラは何でもない様子で答えたのだ。
「確かにアイネスの言う通り、みゃーらケット・アドマーは知っている人間や生物そっくりに化けることも出来るにゃあ。それも見た目だけじゃにゃい。振る舞いも口調も、声も丸々そっくりに、にゃあ」
「なにそれ、そんなの影武者とかにぴったりじゃん!」
「そうでもにゃいにゃあ。姿と振る舞いは成りすませても、強さ自体は化けられにゃいからイグニやマリアみたいなあんま強すぎる種族にゃあ成りすませにゃいのにゃ。だから他のダンジョンマスターとかなら難しかったかもしれにゃいにゃあ。でも、人間のアイネスに余裕で化けることなら出来るにゃあ」
「そんな事が出来るって、どうして教えてくれなかったの?」
「そんにゃもん、バレたら意味がにゃいからにゃあ。ちょいと情報を漏らせば影武者の可能性を疑われやすくにゃって対策されかねにゃいし、あまり影武者頼りにされるのも面倒だからにゃー。みゃあ、アイネスにはバレてたみたいだけどにゃあ」
そうして、サバトラはパーティー時のアイネスの姿へと<変化>し、アイネスの振りをしてパーティー会場へと戻る事となった。
そうして少し時間が経過しているが、サバトラの成りすましがバレている様子は全くない。
パーティーの参加者は皆、目の前のアイネスが本物のアイネスと同じだと思いこんでいる。
俺様達は気配の違いでアイネスではないというのが丸わかりだが、人間相手を騙すにはぴったりなのだろう。
にしても、だ。
「お、この唐揚げ激ウマ~♪此方の卵焼きもマジイケるわ!映えそ~」
この男だけはどうしても解せない。
カナタという男に対する俺様の印象は、未知の生物だった。
アイネスとは違って言葉は通じているはずなのに、色々と意味の分からない単語を並べて会話する。
茶会に立ち会わせたジャスパー曰く、女も男も選ばずに肉体関係を結ぼうとする淫魔並の性欲の持ち主。
本来なら人間達の畏怖の対象であるエンシェントサラマンダードラゴンの俺様相手にも……
『チーッス! オニイサンがこもりんの配下の一人ってドラゴンの人? マジパネェわ! とりまオニイサン同性同士であっちとかイケる方?』
この発言だ。
初対面で。しかもアイネスもいる前で。パーティー中に、だ。
流石に周囲に聞こえない程度の声ではあったが、堂々と言い切った。
そんな事を始めに言われるなど初めてで、アイネスが彼奴に「パーティー*に誘う*」と冷静にツッコミを入れるまで呆然とするぐらいには衝撃的だった。
しかも聞いた話だと、マリアが男の精力を搾り取るリリスだと分かっている上で肉体関係を築こうとしたらしい。
性に正直過ぎて、本当にアイネスと同じ人間なのか疑ってしまう。
「あのカナタという男、本当に大丈夫なのか? どこをどう見てもただパーティーを楽しんでいるように見えるぞ!」
「アイネスちゃん直々にサポート役を頼まれていたけど、本当に大丈夫なのかな……?」
「そもそも、“アレ”は事の重大さが分かっているのか?」
「それは……、微妙な所だよね」
楽しげにダンスを踊り、この国の料理を摘んで食べ、他の貴族達と会話をする姿からはアイネスが誘拐された事を理解しているようには見えない。
かといって声を掛ければ「もちもち! イケるイケる!」と親指を立てて肯定を返してくる。
グレーターワーウルフ達と似たような喋り方をしているが……コイツ本当に分かっているのか?
正直、見ていると苛立ちを通りこして呆れて気が抜けてしまう。
「今の所問題は起きていないし、このまま進めばパーティーが終わるはず。ジャスパーくん達だってきっと大丈夫なはずだよ」
「ぐぬぬ……とは言うがな……」
「むしろあたし達が今騒いで何かやらかす方がヤバいよ。アイネスちゃんに面倒事を増やす事になるし」
「それも、そうだな。もしもそうなったらあの陰険蝙蝠に何を言われるか分かったものではない」
「そうそう、その意気だよ!」
マリアにフォローされ、俺様はなんとか殺気と怒りを抑え込む。
全く、ドラゴンに怒りを我慢しろとはアイネスはなんて無茶振りを振る。
無事に帰ってきた暁には、嫌という程料理を作ってもらおう。
今なら、サラダでも誰かに押し付けずに全て食べなくもないぞ!
「ほら、眉間の皺を伸ばしなよ。イケメンが台無しじゃない。ただでさえ、あたし達をあまり良く思っていない国もいるみたいだしさ―――」
「少々、勘違いされておりますな。我々は別に、あなた方に対して悪印象を抱いている訳ではございませぬぞ」
その時、マリアの言葉を遮るように白の祭服を身に纏った男が俺様達に話しかけてきた。
全身を白で身に包んだ男は二人の付き人のような者達を連れていて、全身から清浄で、かなり嫌な匂いが漂っている。
その男達の匂いに、マリアはかなり嫌そうな顔を見せた。
俺様は冷静を保ちつつ、その匂いが何なのかを調べる。
(この匂い、聖水か。どうりでマリアがあからさまに嫌悪感を見せる訳だ)
聖水程度、リリスであるマリアにダメージを与える程ではない。
しかし、悪魔にとって相性が最悪なアイテムであることには変わりないだろう
ダメージこそないにしろ、拒絶反応は凄まじいはずだ
俺様はマリアの前に立ちつつ、目の前の男達に向けて口を開く
「どういう意味か、と問いたい所だが、その前に言ってやろう。会話に割り込む前に名を名乗るべきではないのか?」
「貴様、大司教様になんて口を!」
「魔物風情が、頭が高いぞ!」
「止めなさい、コール、マーリ。失礼ですよ」
俺様の言葉にキッと此方を睨みつける付き人達を大司教と呼ばれた髪のない男が制止する。
そして奴は穏やかそうな笑みを浮かべ、そっと此方に頭を下げてから口を開いた。
「申し遅れました。我々はジュゼッペ聖教国の者です。某はフェルナンと申します。これでも大司教という役職についています。此方の二人は某の直属の部下で、コールとマーリという者です。」
「ほう、随分と若そうだが大司教か」
「お恥ずかしながら。あなた方のお名前をお尋ねしてもよろしいですか?」
「イグニレウスだ。此方はマリア。見ての通り、魔物だ」
「ええ、存じております」
名前を名乗れば、フェルナンという大司教は特に嫌悪感を見せる様子もなく此方に笑みを浮かべてみせる。
その人畜無害そうな様子に、内心不気味に感じた。
ジュゼッペ聖教国。
話は聞いている。
俺様達魔物は滅するべきと考えを持っていて、パーティーの料理に聖水を混入させた俺様達にとっては天敵と言っていい国。
パーティーで何かしら揉め事が起きるのではないかとは考えていたが、まさかあちらから声を掛けてくるとは思わなかった。
一体、どんな難癖を付けられるのやら。
「それで? 先程貴様は俺様達の会話に入って何か言っていたが、それはどういうことだ?」
「いえ、どうやらあなた方は我々が魔物を全て敵視していると勘違いされているようでしたので、その誤解を解こうと思いました。」
「誤解?」
「我々全員が、あなた方魔物が敵だと考えている訳ではないという事でございます」
「ほう……? 面白い、詳しく話してみろ」
俺様が話を促してみれば、フェルナン大司教は静かに礼をして話し始めた。
「まず前提として、我々ジュゼッペ聖教国の教えでは、魔物は『穢れた血の者』という捉え方なのです」
「それ、魔物は敵って思っているのとどう違うの? 聞いてる感じ、どっちも同じように聞こえるんだけど」
「ジュゼッペ聖教国の中の半数は、穢れた血を持つ者は全て排除、つまりは滅するすべきと考えています。しかし某を含めたもう半数の者は、穢れた血の者は『救済』すべきという考えているのですよ」
「救済、だと?」
「はい、その通りです。如何なる生物も見た目こそ違えどその本性は皆同じ心優しき生物。魔物と呼ばれる者達も同じ。ただ、魔物という穢れた血の元に生まれてしまったに過ぎない。その穢れを取り払えば、手を取り合えるはずなのです。そう考え、魔物達の穢れを浄化し、そして救済するのが神に仕える我々の使命だと考えているのです。皆、誰しもがお互いを助け合えるはずなのですから」
救済。
まるで俺様達という存在が、哀れであると言っているような言葉だ。
綺麗事を並べてはいるが、要は俺様達を見下している事には変わりない。
マリアも俺様と同じ事を考えたようで、その瞳には怒りの炎が見える。
しかし奴や奴の部下は俺様達の気持ちなど分かっていないようだ。
奴はペラペラと綺麗事を並べ、部下の二人は心酔した様子で奴を崇めている。
まるで、三流役者の一人舞台でも見ているような気分だ。
俺様達のことなぞ何も知らん癖に、反吐が出る。
気分が悪い。
「なるほど、貴様らの言いたい事は分かった。つまりは、ジュゼッペ聖教国の者が全員魔物を見たらすぐさま攻撃するという訳ではないということか」
「はい。むしろ某達は、あなた方が救われるために協力したいと考えているのです。それに、あなた方の主である少女も」
「何ですって?」
アイネスの話題を振られ、マリアが苛立った様子で声を上げた。
この男たちが、アイネスを救うことを協力したい、だと?
一体何を言っているのだと訝しげに奴を見ていると、奴は許せない事を口にしたのだ。
「どんな経緯があったかまでは存じませんが、人間の少女がダンジョンの主として祀り上げられたのには深い事情があるのでしょう。しかも、言葉も生まれ育った土地も違う、幼い少女。本来ならまだ親の保護下にいるべき存在だ。彼女が希望するならば、我々が彼女の身柄を引き取りましょう」
身柄を、引き取る?
この男、誰の身柄を引き取ると言った?
まさかこの人間、アイネスのことを言っているのか?
「ダンジョンに長いこと棲んでいるのであれば、ダンジョンに漂う穢れた空気によって彼女の身体にも穢れが入り込んでいるでしょう。此方が彼女の身柄を引き受けた暁には、彼女の身体の穢れを全て浄化し、わが国の孤児院にて保護致しましょう。食事や寝床まで、全て用意するとお約束します。どうか、某達に彼女を任せてはくださりませんか?」
此方の様子を伺うように俺様達を伺うジュゼッペ聖教国の者達。
だがすでに、俺様達の耳に此奴らの言葉は入ってはいなかった。
何故なら、その前に奴らへの怒りが湧き上がっていたからだ。
この愚か者共はなんと言った?
俺様達からアイネスを奪い、奴らの国の手中に入れると言ったぞ。
愚かだ。あまりに愚か過ぎる。
この俺様たちから主を、宝とも言えるアイネスを、横から掠め取ろうと考えるとはな。
しかもそれを俺様達の前で宣言するとは、愚かとしか言いようがない。
余程、その命が惜しくないようだ。




