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ええい鬱陶しい!!!

「なんか凄い馴染んでますね、東雲さん」

「奏多は初対面相手でも仲良くなれるからね。ちょっと女遊びが尋常じゃないけど…」

「アイツの性欲の強さはちょっと尋常ってどころじゃないっしょ……」

「あと、これってちゃんと防音されてるんですか? 私の方は通訳を切っているから大丈夫だとしても、二人の言葉はスキルで通じるはずでしょう?」

「それに関しても大丈夫。アスペル王国の貴族から貰ったこの“サイレント・ベル”の効果で僕達以外の人は言葉が聞こえないようになっているはずだからね」

「本当、便利すぎでしょう魔法道具……」


 チャラ男はそのまま正座させた状態で放置し、私はギャル子とイケ男と共に情報共有をすることとなった。

 どうも、彼らは私の考えていた以上に私のことを心配していたようだったし、私が無理矢理異世界転移させられた後どうなったかを聞いておきたかったのだ。

 そして二人と情報共有を行ったのだけど、あまりの格差にため息を禁じ得なかった。


 私が一足先に異世界転移させられた後、5人はアスペル王国の王宮に召喚されたらしい。

 アスペル王国という国の名前は聞き覚えがある。確か、タケル青年が異世界転移させられた先もそこだったはずだ。

 タケル青年の話だと、アスペル王国は以前にも異世界転移者を召喚していて、タケル青年はステータスが低かったがために国から追放されたのだと言っていた。

 幸いにも5人は彼らが望むライン以上の力があったようで、普通に全員歓迎されたようだ。

 にしても、タケル青年に加えてギャル子さん達もアスペル王国に召喚されたのか。

 タケル青年より前の異世界転移者の転移先もそのアスペル王国だったようだし、そのアスペル王国自体きな臭い感じがする。

 それに、可笑しい点は他にもある。

 タケル青年が異世界転移した時は他にも一緒に異世界転移させられた人物がいたと言っていた。

 国を追放されたタケル青年は兎も角、何故アスペル王国に残っているであろうその人達とギャル子さん達は遭遇していないのだろうか?

 女神自身が転移先としてその国を指定していたのだとすると、もしかするとアスペル王国とあの女神は何かしらの繋がりがあるのかもしれない。

 何かこう…相互利益が生まれるようなつながりが。


 ……色々推測を立てたい所だけど、今は止めておこう。

<オペレーター>曰く、あの女神は50年周期の定期報告以外はこの世界のことをよく見ていないそうだけど、異世界転移を成し遂げた直後ならギャル子さん達周辺の様子を伺っていたとしても可笑しくはない。

 下手に推測を立てて、あの性格の悪い女神の機嫌を損ねるような事をすれば空から雷が降りかねない。

「勘の良いガキは嫌いだよ!」ってやつ。

 もう少し確信出来る情報があってからでないと、情報をまとめて推測を出すのは危険だろう。

 アスペル王国も、ギャル子さん達相手になら優しいようだしね。


 そうしてアスペル王国に転移した5人だったけれど、ギャル子、イケ男、チャラ男の3人は一人先に異世界転移させられた私を心配し、すぐに探しに出ようとしたらしい。

 そりゃあ、知っている人間が異世界転移を断っていたにも関わらずほぼ無理矢理という形で、しかもあんな異様な雰囲気と意味深な言葉で女神が転移させたとなれば、誰だって不審に思うだろうし、誰だって探しに行かないとという気持ちになるだろう。

特にイケ男くんは誰に対しても優しい好青年キャラだし、ギャル子さんも気が強くて我儘な所はあるが意外と面倒見が良い所はある。

二人が私のようなただの同級生に心配を掛けたとしても可笑しくはない。


 しかし、この3人が早々に王宮を飛び出すのをアスペル王国の人間たちが良しとしなかった。

 召喚された直後に異世界転移者が国を出ていくのは避けたかったようだ。

 更に、アスペル王国の第一王女に言われるままステータスを確認すれば、3人共ステータスが高い上にかなり珍しいスキルを持っていたのだ。

 当然、アスペル王国の人間たちは彼らを手放したがらなかった。

 力ずくで王宮を出て私を探しに行こうとするギャル子さん達に対し、アスペル王国の第一王女はある提案をしたのだ。


「アスペル王国もその御方を捜索するのを手伝うので、此処を去ってしまうのは止めてください」


 そう、涙目で頭を下げられたらしい。とても綺麗な直角だったそうだ。

 イケ男達はそちらの方が私を探しやすいだろうと考え、その提案を承諾した。

 ただし冒険者登録だとか他国への入国許可証なども条件につけてもらったようだ。

 王族相手に容赦がないな。

 ギャル子さん達が今回のパーティーへの同行も私を捜索する範囲を広げるため。

 お偉いさんのきな臭い依頼を承諾したのも、ケネーシア王国とコネを作れば私捜索がしやすいと考えたからなのだという。

 事実確認を怠ったのは、2ヶ月経っても未だに見つからない私の安否がかなり心配だったからだそうだ。

 全く、人一人を探す為に一つの国を振り回すとは殊勝なことである。


「本当、飽きないものですね。私みたいなただの腐れ縁でしかない知人一人を探す為にそんな――」

「友人」


 私がため息混じりにその善人っぷりに対して言葉を紡ごうとしたが、言い切らない内に別の声が私の言葉を遮った。

 顔を上げて二人の方を見てみると、二人は何故かニコニコと綺麗な笑みを浮かべている。

 気のせいだろうか。今イケ男くんが私の言葉を上書きするように口を挟んだ気がする。

 私は再度口を開く。


「私程度のただの知人に――」

「友人」


…………。


「知人」

「友人」

「知人」

「友人」

「知人」

「友人」

「知人」

「友人」


 う、鬱陶しい…………!!!!

 とてつもなく鬱陶しい!! どんだけ知人呼びが嫌なんだ!

 プライドか? 一軍としてのプライドで知り合い全員に友人って呼ばれないと許せないのか?

 RPGゲームの最初の村の入り口にいるNPCか?!

 ギャル子にヘルプをもらおうとしたが、何故か彼女も私とイケ男の押し問答を止めようとしない。

 一体何を考えているのかさっぱりだ。


「私“一人”を探す為にそんな必死になるなんて、3人共本当に良い人ですね」


 問題部分を削って私が言い直すと、イケ男くんは特に何かを言うことなく私に言った。


「別に良い人ってだからじゃないよ。君だから、動いていたのもあるんだ。異世界転移前は君に色々助けられていた訳だしね」

「そうね…、そこら辺は別に認めてあげても良いわ。アンタにはウチら色々借りがある訳だし」

「助けたっていうか、面倒事に巻き込まれた程度にしか感じませんがね。別に私自身は特にしたつもりはないですし。精々ちょっと口出ししたり勝手に動いたりしただけです」

「そんな事はないよ。君が解決に一人で動いてくれたり、良い話を教えてくれたりしたお陰で色々な事が助かったんだから」

「そうよ、そこらへんは認めなさいよね!」


 イケ男の言葉に続くように、ギャル子が机を乗り上げ、顔を近づけて私に言ってきた。


「ほら、小学生の時に給食費が盗まれて学級裁判が行われた事があったじゃない」

「ああ、そんなこともありましたよね。私が何故か議長に選ばれてた奴」

「ウチが皆から犯人扱いされてるってのに、アンタはさっさと真犯人のランドセル漁ってさっさとなくなった給食費を見つけてくれたりしたでしょ?」

「あー、そういえば疑われてましたね。教室に給食費が置かれていた際、中に入ったのが桃住さん以外いなかったということで」


 あれは本当に面倒だった。

 私は無くなった時間は丁度先生に雑用を頼まれていたという完璧なアリバイがあったので議長という仕事を押し付けられたのだ。

 そのままぼんやりと聞いていたら、いつの間にかただの糾弾会になってたのだ。

 見ていて胸くそ悪いし、早く家に帰って本が読みたかったのでさっさと給食費が隠れてそうな場所を探してなくなった給食費を見つけたのだ。

 あの時は漫画の新刊の続きが気になって気になって仕方がなかったので、真犯人だとかそういうのは全く興味がなかったけれど。


「あと、中学3年の文化祭で演劇をやることになった時にも助けられたね。本番中に機械が上手く動かせなくて劇が始まるのが遅れた時とヒロインが緊張しすぎて舞台を降りてしまって誰も動けなくなってしまった時に、観客が飽きないように時間をどうにか繋いでくれてさ」

「あれ、本当良い迷惑でしたよ。本番前に同級生の方から「どうにか時間を稼いで!」って言われて舞台に立たされるわ、私が出ている間にヒロインが勝手に舞台からいなくなるわ……。お陰で恥ずかしい目に遭いました。セリフも出番もほんの少ししかない脇役だったはずなのに」


 中3の文化祭は私にとって地獄だった。

 小道具係だったはずなのに脇役の子が急に劇に出るのを拒否してその代役を選ぶ為に多数決をした結果私が抜擢されてしまった。

 しかも劇の本番前には音響機器が不具合を起こして劇が始められず、他の同級生にその場の時間稼ぎを頼まれ舞台に立たされた。

 本番に至ってはヒロインが勝手に途中でいなくなる始末。

 大失敗しても可笑しくないトラブルの後処理の大体を任されたのだ。

 その後の打ち上げはさっさと帰らせてもらったが、これだけやっておいて別に文句は言われない。


「私自身は貴方達を助けたつもりはありません。私はただ自分の為に問題解決に動いただけでしかありません。周りにどんな影響があったかどうかなんて私は興味がありません」

「それでも、僕達が助けられたのは確かだよ。昔も、今もね」

「アンタが何を言おうと、ウチらがどう考えているかなんて関係ないし」


 きっぱりと私が告げても、二人は動じることなく美男美女の顔を見せつけながらそういった。

 おのれ一軍。鬱陶しいったらありゃしない。


「はぁ…。それはそうと、他の二人はどうしたんです?」

「二人って言うと、姫野と橘のこと?」

「そうそう、黒子さんと筋雄さん」

「いやどんなあだ名なのよ」


 結構的を射たあだ名だと思うのだけどなぁ。

 ギャル子にはあまり好評ではないようだ。

 イケ男はそんなやり取りをスルーして、私の質問に答えた。


「橘はアスペル王国の騎士団達と一緒に訓練を受けているよ。もう少しレベルが上がったら僕達のように冒険者登録もするらしい」

「はぁ、筋雄さんらしいですね」

「姫野さんは聖光属性の適正が強かったから、最初の一ヶ月以降はジュゼッペ聖教国という国に行ってしまったよ」

「聖教国ねぇ……」


 名前の感じ、テオドールさんが言っていた「魔物は全て討伐するべきという考えを持つ宗教国」というのはそのジュゼッペ聖教国だろう。

 むしろそれしかない。

 今回のパーティーにも来ているらしいし、その国の人には気をつけるようイグニ達に言っておかないといけまい。


「それで小森さん。君に聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」

「なんです、早乙女さん?」


 突然イケ男が改まった様子で私に尋ねる。私は紅茶を飲みながら了承する。


「君は、僕達と一緒にアスペル王国に来る気はあるかい?」

「ないですね」

「ウチらと同じ扱いをアッチに頼み込む事が出来ると言っても?」

「興味ないです。その国がどんな所かなんて分かりませんが、この世界での高待遇なんてたかが知れてます」


 イケ男とギャル子の問いに、私はズバッと即答で蹴った。

 タケル青年にも似たような質問されたな。

 しかし、この二人はタケル青年とは違い怒ったり問い詰めたりすることなく、むしろ私がこう答えることを分かっていた様子ですぐに引き下がった。


「分かったよ。じゃあせめて、橘や姫野さんにも君が無事だったことを報告してもいいかい? 彼らも君の安否は気になっていたようだからね」

「それに関しては別に良いですけど、必死に探していた割に案外すぐ引き下がるんですね」

「小森さんがダンジョンマスターになっているのはさっき聞いてるからね。今から突然ダンジョンマスターを止めて僕達のいる国に行かないか、って聞いても小森さんが困るだけだろう? 流石にそれくらいは分かるさ。」

「それに、あのアスペル王国の奴らだって別に良い国って感じじゃないってのはウチらも分かってるしね。あそこの王女、なんか頭オカシイし」

「おかしいというと、恋愛系ですか? それともリアルな方ですか?」

「リアル4割、恋愛6割って感じ。頭お花畑って感じで、ちょーつっかかりにくい。」


 その第一王女の事を思い出したようで、ギャル子さんが嫌そうな顔を浮かべた。

 ギャル子さんがそこまで言うって事は、相当頭のおかしい王女なんだろう。

 一体どんな王女様なのか気になる所だ。


「ただ、君が良いのであれば僕達の方から一つ提案があるんだ」

「提案? なんですか、それは?」


 イケ男さんからの提案に、私は首を傾げる。

 すると、二人はやたらと目を輝かせて言った。


「僕達が、君のダンジョンに住まわせてもらうっていうのはどうかな?」

「お断りします」


 即答した。

 テオドールさんから最初にパーティーのお誘いをしてもらった時とおなじぐらいのスピードで言った。

 しかし彼らは何故か諦めない。


「どうにか頼むよ、この通りだ」

「お断りします。というかなんで私が承諾すると思ったんですか」

「そこをなんとか、お願い! アルバイトでもパートでもなんでもするから!」

「いや間に合ってますから。住まわせる以前に私のダンジョンにアルバイト制度はありません」

「この際雑用でも、地味な仕事でもなんだって構わない。なんなら椅子役でもいい!」

「早乙女さんがそのセリフ言うとなんか此方が危ない取引持ちかけてるように聞こえるんで止めてもらえます?」


 あまりの必死ぶりに冷たい視線を向けてしまうが、彼らは退かない。

 私がアスペル王国行くのを誘った時は引き下がった癖に私のダンジョンに住もうとするのは退かないってなんでだよ。


「一応、アスペル王国では結構良いようにしてもらっている訳でしょう? なんでそんな私のダンジョンに住みたがるんですか」

「確かにアッチは良くしてくれているよ! お風呂も付いてるし、執事さんとか侍女さんとか付いてるし、冒険者活動も楽しいし!」

「でも、これ以上は耐えられないんだよ……。あれは、流石に限界だ」

「桃住さんはともかくとして、早乙女さんがそう言うってことは相当ですね」


 私の印象的に、イケ男は物事にあまり直接的な批判はしない人だ。

 やんわりと、優しく、人が聞き惚れるように、白馬の王子が姫を抱くかの如くふんわりとオブラートを包んで注意するのだ。

 そんな彼が「限界」というということは、結構な重大な問題なのだろう。

 私にも火の粉が掛かるかもしれないし、これは結構真面目に聞いた方が良い。


「何があったんですか?」

「実は……」


 私が尋ねてみると、二人は思い詰めた表情を浮かべて、意を決したように言ったのだ。


「「料理が、(くそ)不味すぎるんだ(のよ)!!!」」

「心配して損しました」


 やっぱり一軍の生徒たちとは反りが合わない。



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― 新着の感想 ―
[良い点]  ちょっと辛い記憶を刺激されてお腹が重苦しくなりましたが、こちらは悲壮感無くていいですね。お風呂と美味しい食べ物は、日本人の基本的生活に含まれますよ、小森さん!
[一言] オレ、コイツラ、キライ、 早めに退場して、あっそう言えばこんな奴らいたな的な立ち位置になってくんないかなー
[一言]  食事は大事だよ、アイネス様!
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