改めて紹介する必要あるんですか?
えっと…まず前提としてこの三人は私が此処に来る前に通っていた学校で、たまたま同じクラスになった生徒の三人です。
名前は…さっきギャル子さん達に会って名乗ってたなら知ってるでしょうし、パスして良いですよね?
マリアさん達は知っているでしょうが、私が此処に来たのって本当無理矢理って感じでして。
この三人は此処にこさせられる際、その場にたまたま…本当に偶然いた人達の中の数名なんです。
それまでも性格も好みも全然違うので、基本私は関わらないようにしてました。
以上です。
……え?これじゃあ足りませんか?
もっと何か、ギャル子さん達についての説明が欲しい?
あと、もっと真剣に紹介してくれ、って?
えー…。知り合いと言っても、私が知ってる事なんて本当眉唾モノですよ?
それに、この世界の常識とは色々違いすぎるので、多分分からない可能性が高いです。
…それでも聞かせて欲しい、ですか。
はぁ…分かりましたよ。一通り説明すれば良いんですね。
学校名とか色々ハブるべき所はハブらせてもらいますよ。
単語の意味の説明に関してはマリアさんに聞いてください。
では、説明を始めますね。
私の通っていた私立K高等学校には、周囲から注目を浴びる5人の生徒がいました。
彼らは特定の分野、またはとある面で活躍、または目立った実績を築き上げており、生徒には尊敬と憧れの視線を向けられ、教師からは学校の名声を上げる生徒として一目置かれていました。
学校のアイドル、皆の注目の的、一軍生徒の集まり。
ま、所謂学校内で上位のカーストに存在している生徒たちってことですね。
何を隠そう、そんな学校の注目生徒5人中の三人が、今此処にいるギャル子さん達なのです。
桃住彩夏。此処で名乗るのであればアヤカ・モモスミ。私立K高等学校2年。
大物役者の父とニュースアナウンサーの母を持つ私達の住む国の芸能界のサラブレッド。
中学の頃から大手事務所のスカウトを受けて学業の傍らモデルをしており、高校になった今では雑誌の表紙を飾る程の人気ぶり。
学内ではチアリーディング部…身軽に踊ってスポーツを応援する人達の集まりに所属していて、その中でもエース的存在として扱われるほどに柔軟と踊りのセンスに長けています。
ただそんな環境下からか性格はかなり気が強くて我儘、しかも普段からイケメンとしかまともに話さないという面食いぶり。
それもまた、彼女の人気を上げるチャームポイントの一つになっているらしいですけどね。
早乙女爽真。ソーマ・サオトメ。私立K高等学校2年。
故郷における大手商会の社長の息子さんで、文武両道の学校の王子様。
あ、王子って言ってもあだ名ですからね?
テオドールさんみたいな本当の王子って訳じゃないです。
成績は常にトップクラス。運動神経抜群で剣道部のエースをしている生徒会長。
ルックスも芸能人並に良くて、更にはそれを自慢せず誰でも優しく接するという完璧な性格の持ち主。
女の子達にもモテモテで告白者は多数いるそうなんですが、全てやんわりと断っているそうです。
「部活に集中したいから」というのが理由らしいですけど…、能力もそうですけど、告白を断る理由も漫画に出てくるようなイケメンですよね。
東雲奏多。カナタ・シノノメ。私立K高等学校2年。
実家が200年程続いている元華族の名家。此方で言う所の、元貴族の息子さんですね。
…あ、そうには見えないですか?
まあそうですね。確かに元貴族って言っても、今の時代には結構廃れちゃってますし。
しかもチャラ男さんのご両親はその家柄からは想像できないようなヤンチャっぷりでして。
ご両親の遺伝子がチャラ男さんにも受け継がれた感じなんですよ。
彼に関して私が言えることは一つだけです。
ドン引くぐらい女遊びが激しいです。
サバトラさんとジャスパーさんには話したことがありますよね?
女であれば同級生も先輩後輩も果てには教師とも関係を持つ男子生徒の話。
それがこのチャラ男さんです。
チャラ男さんはそこそこ顔が良いのと、口が上手いのもあって、女性を口説くのが上手いんですよ。
学校内どころか学校外の女性とも関係を持っていたらしいです。
しかも遊んでいる女の子たちとは全員遊び…つまりは婚約者でも恋人でもないと公言している方です。
一周回って最早清々しい。
これでまだ女性関係で修羅場に発展してないから凄いですよね。
あと、なんか情報力がとんでもなくて、インフルエンサー…世間に大きな影響力を与える人でもあった気がします。
基本彼が食べた物とか使った物は一気に大流行してましたね。
色々交友関係が広いから、伝染しやすいんですよ。
あと二人ほど一軍生徒はいるんですけど、今は不在なので此処での紹介はしません。
それで、この一軍生徒三人組と私との関係性ですが、先程も言っていたようにただの知り合いで、偶々クラスが同じになっただけの同級生です。
それ以上でもそれ以下でもありません。
強いて上げるとするなら、彼らとの付き合いは結構長いぐらいですよ。
彼らとは住んでいる学区が同じだったのもあって、初等部の学校の頃から同じ学校の生徒だったんですよね。
といっても、私と彼らとは殆ど性格や好みが違うのでほんの少し会話をする程度。
中学もたまたま同じ学校に入学して、そこが中高一貫校だったのでズルズルと縁が切れずにいるだけなんですよ。
ハッキリ言いましょう。私は彼らには好意も悪感情もない。
興味がないんです。
ていうか鬱陶しいです。
ギャル子さん達、同じ小学校に通っていたからとやたらちょっかい掛けてくるんですよ。
私に外出するようにしつこく言ってきたり、面倒な相談持ちかけてきたり、放課後無理矢理連行して街を歩かされたり…。
彼らなりの交流……といえば聞こえは良いのでしょうけど、完全インドア派の私には良い迷惑です。
だからこそ、彼らの顔も名前も殆ど忘れてたんですけどね。
まさか、この王国で出会うとは思いませんでした。
しかもエルミーヌさん達に迷惑を掛けるとは…同郷の者として謝罪させていただきます。
彼ら、一応金持ちの娘息子なので、テーブルマナーとか出来ているはずなんですけどね。
まあ、先程も言ったように、私との関係性というのはあってないようなものです。
なので、彼らのことは煮るなり焼くなり、剥いて食うなりなんでも好きにしてください。
「*******!!」
エルミーヌさんの声が広間の中に響き渡る。
恐らく、「食べないですわよ!」的な事を言ったんだと思う。
カナタ…もといチャラ男に対するお仕置きを行った後、私はマリア達に凄い勢いで詰め寄られたのだ。
「この三人と同級生というのはどういう事か」
「そもそもこの三人は一体誰なのか」
「何故アイネス様の作品を見た瞬間に様子が急変したのか」
などといった質問を、四方八方からされたのだ。
最初の二つはともかく、最後の質問は私にも答えようがないのではないだろうか?
私も二ヶ月弱彼らとは別行動していた訳だし、彼らがこの世界で一体どんな事があったのかも知らなければ、彼らがどうしてこの王宮にいるかさえも知らない。
そもそも彼らの性格がどういったものかさえも私はあまり知らないのだ。
今までただただ鬱陶しい一軍リア充生徒としか見ていなかった訳だし。
ひとまず、最初の二つを答えるためにこうやってラノベのモノローグ風に三人の紹介をしてみた。
ついでに私と彼らはあまり関係性が濃い訳ではないこともアピールしてみたわけだけど、納得されなかったようだ。解せぬ。
「アイネス、チョット、イイ、ニャ?」
「はい、なんでしょうサバトラさん。」
「コノ、3ニン、ニャゼ、ユカニ、アタマ、スリツケテル、ニャ?」
「ああ、これは土下座って言って、私の住んでいた場所の最大の謝罪方法ですよ。頭を下げられる限界まで下げることで謝罪すべき相手に謝罪の意を見せるんです。」
「ニャルホド、ニャー。」
「**、**************!?」
サバトラの質問に答え、サバトラがうんうんと納得していた様子に今度はキャシーさんがツッコミを入れた。
令嬢子息達の視線の先にあるのは、私の前で服が汚れるのも気にせず土下座をしているチャラ男達の姿があった。
どうもこの三人、何かしらの勘違いをして貴族達の前であんな無礼な真似を行っていたらしい。
なんでも、人間を傀儡のように操る凶悪な魔物がいるという話をとある人から聞いて、「今王宮には人を操る凶悪な魔物達と、その魔物達のトップに存在するダンジョンの主の魔物、「アイネス」がいる」と曲解したようだ。
そう曲解した理由は、彼らの脳内でダンジョンマスター=魔物だと考えていたせいだ。
そりゃあダンジョンマスターって聞いたら誰だって配下達と同じ魔物をイメージするだろうけれど、そこまで暴れるものか?と思う。
しかし、私がその噂のダンジョンマスター「アイネス」だと知り、その考え方が間違いだったというのを確信。
更に唯一気が立ってないサバトラからケネーシア王国の王族達と私達の関係性を一から説明を聞き、三人は漸く全てが自分たちの誤解&依頼主の嘘だったと知った。
それからはもう、ハイスピードだった。
迷惑を掛けた令嬢子息達とエルミーヌさんにはお茶会を台無しにしたことを凄い勢いで謝罪し、無礼を行った事に対する慰謝料として袋いっぱいの金貨を全員に一括で支払い、更にマリアやライアン達にも突然戦闘を仕掛けてきた事を必死に謝りながら魔力回復ポーションを渡した。
あまりの反省っぷりに、エルミーヌさん達が軽く引くぐらいだった。
彼らは普段の言動こそ結構ゆるくてこの貴族社会には反感を買いそうな様子だけど、自分達が本気で悪いと判断した事への謝罪は本気でするからね。
そうしなければ一軍に属する自分達の立場がいとも簡単に崩れる事を彼らは知っているからだ。
そういう教育はちゃんとされているんだな…。
そして今、彼らは私に向かって土下座をしている。
誰しもが驚くような、それはそれは見事な土下座を公衆の面前で行っている。
ちょくちょくチャラ男が頭を上げようとしてるけど、両端のギャル子とイケ男が彼の頭を抑えて阻止している。
先程エルミーヌさん達にした謝罪よりも必死度が遥かに上である。
先程までウェイウェイと調子に乗っていたであろう彼らが一気に態度を変えてただのダンジョンマスターでしかない私に頭を擦りつけて頭を下げていればエルミーヌさん達が困惑するのも無理はないだろう。
私はため息をつきながら、彼らに言った。
「いやあ、貴方達がつい勇者面したくなるのは分かりますよ。強力なスキルとチート級のステータス持って、王宮で皆から褒めそやされれば調子に乗りたくもありますよね。でも、どこでもその扱いが当たり前じゃないとか分かりますよね?いくら王宮にいた人からの必死の頼みだったとしても、まずその話が真実なのかを事実確認とかしませんか?しかもマリアさん達は最初、手を出さずに場所を移すことを提案してきたわけですよね。それなのにその提案を跳ね除けて大暴れって…仮に勇者でも許されない事ですよね?」
「アイネス*…******************…。」
「************。」
「アイネス***、ソノクライ、ニ、シタラ、ダッテ。ミンナ、モウキニシナイ、ダッテ。」
「駄目ですよ。此処で簡単に許しては。謝ったからと、賠償金を渡したからと全てを許しては皆さんの得にはなりませんし、彼らの為にもなりません。マリア達の采配が間違っていればエルミーヌさん達に大怪我を負わせかねない可能性だってありましたし、ライアンさん達もただでは済まなかったかもしれない。そういう事態に発展すれば、後から悔いて『後悔』では済まされません。エルミーヌさん達がなんと言おうと国王様や皆さんのご両親が3人を処罰していたでしょうし、ダンジョン側も彼らと彼らにデマを吹聴したその依頼人とやらを許さなかったでしょう。社会っていうのは、時として「ごめんなさい」の一言とお金だけでは済まされないんですよ。」
「*、****…。」
「むしろ、こうやって周囲からの許しがある時こそ誰かが徹底的に怒りを示さなければならないと私は考えています。誰かが徹底的に彼らに怒りを見せることで「次も大丈夫だろう」なんて甘えた気持ちを叩き潰すんです。人生にコンティニューボタンはない。都合の良い所から巻き戻しなんて、スキルがなければ有り得ない。許されない。許されてはならない。言っときますが私は同郷の者だろうが同級生だろうが救世の勇者だろうが、気に食わなければ容赦はしません。本気で怒っていれば逆エビ固め程度じゃ済ませませんよ。それぐらい、中学の頃の私を見たことがある皆さんなら…分かっていますよね?」
「「はい!!!!本当にすみませんでした!!」」
一つ睨みを付ければギャル子とイケ男が同時に謝罪の言葉を述べて更に頭を下げる。
その顔色は好調とは言えない青色である。
この三人と私は小学生からの仲。
例え関係性が薄かろうと、お互いの話が浮上すれば当然耳にする。
そう、彼らは私の“黒歴史”を知っているのだ。
彼らは私が部活の先輩と何があったのかを噂で聞いているはずだし、当然、私がその先輩に対してどういった対応をしたのかも知っている。
そして、私がこの場でキレていたらその時と同等に彼らに対して同じような事をしていただろう。
それを、彼らは知っているからこんなにも低姿勢なのだ。
理由も、経緯も、何も関係ない。
全ては、私がキレるような真似をしたのかが問題なのだ。
彼らはそれを悟っているから、こうやって許しを乞うように土下座をしている。
そうして謝罪の意を示さないと、私の怒りのカウントがリセットされないと過去の記憶で分かっているから。
しかし、そろそろもう土下座もいいだろう。
彼らに聞きたい事は山程あるし、なによりこのまま土下座させた状態ではお茶会の再開も出来ない。
ここらで彼らへのお説教は終わりにしよう。
「もう怒ってないんで、土下座しなくて良いですよ。今後は後先考えない行動は止めてくださいね。此処はもう、あの学校とは違うんですから。」
「ありがとう…。改めて言わせてくれ。君の仲間達に酷い真似をして本当に申し訳なかった。」
「わ、悪かったわよ…。」
「どうもサーセンっした☆」
「よし、チャラ男くんはそのまま正座続行しててください。」
「ガビーンっ!」
ちゃんとした謝罪も出来ないチャラ男には容赦なく正座続行させつつ、私はイケ男達に問いかける。
「で、ギャル子さん達は…」
「ギャル子呼ぶなって!」
「…桃住さん達は、一体どうしてこんな事したんです?早乙女さんは何かしら食い違いがあれば依頼があったとしてもすぐに中止しそうだと思ってたんですけど。」
「名字…いや、なんでもない。確かに途中でそうしようと思ったんだけど、彼女が持っているそれを見て、つい頭に血が昇ってしまったんだ。」
「それ?」
「*****…*********?」
イケ男の言葉に首を傾げていると、先程チャラ男に壁ドンされていた令嬢が手のひらに持っていた物を見せた。
それは、私が先程彼女に渡した折り紙の花である。
「それって、折り紙の花のことですか?」
「あれを作ったのって、アンタでしょ。」
「え、そうですけど…なんで分かるんですか?」
「こもりん、ジュギョー中とかジシュー時間の時とか周囲で話し合いとかしてると良く折り紙してんじゃん。しかもやたらクオリティ高いやつ。」
「あれと同じ花の折り紙を作ってるのウチら見たことあるし。で、あれ見た時に「あ、これこもり子ちゃんが作った奴じゃん」って思って…。」
「元々聞かされていた話もあって、魔物達に傀儡にされている人間というのが小森さんだと勘違いしちゃったんだよ。操られていないっていうのは小森さんを見てすぐに分かったけれど…。」
「いや、なんでひと目見ただけで折り紙の作成者が分かるんですか。」
折り紙なんて相当独特な作り方をしなければ特徴なんて出ないはず。
たった一度…しかも結構な距離から見ただけで作成者が瞬時に判別出来るものだろうか?
あ、異世界転移者なら<鑑定>で分かるのか。
それならまあ納得だけれど…というかいつの間にか折り紙作っている姿見られてたのか。恥ずかしっ。
「あと、私が操られていないとか考えなかったんですか?」
「だってこもりん、学校とゲーセン以外じゃ全然外出たがらねー引きこもりんじゃん。こんなお偉いさんが集まりそうなパーティーとか操られでもしなけりゃいかねーっしょ。」
「ぐぅの音も出ないですね。」
正論である。
確かに学校で「引きこもり子」というあだ名が流行るぐらい私は出不精だ。
そんな私が自らパーティーに…しかもキラキラとした貴族王族の人達が集まるだろう格式高いパーティーに参加するわけがない。
実際当初誘われた時も即答で拒絶してたし、異世界の動物のこと出されなければなんやかんや言って参加拒否するつもりだったし。
むしろ私という人間性を知っている人達がその事実を知れば洗脳を疑うのも無理はないだろう。
「ちゅーか、いつの間にこもりんってばダンジョンの主とかになってたん?」
「色々あってダンジョンマスターになったんですよ。ダンジョンマスターにならなかったら私、此処らを冒険どころか、言葉が全く通じない世界で生き延びなければいけなかったんですよ。今は一方的にとはいえ話が分かるようにはなりましたけれども。」
「はぁ!?言葉通じないの、アンタ?!」
「うげーっ、それマジダリーやつじゃん。むしろそれで良く生きてたわ。」
本当に私もそう思う。
ゴブ郎くんと仲良くなって、ダンジョンマスター登録が出来ていなければ私は何の知識もなく、言葉もスキルも通じない状態のままこの世界を彷徨わなければいけなかった。
最悪この二ヶ月間の間に死んでいただろう。
本当、転移者で格差があるのは勘弁して欲しい。
「まあ、そこら辺はまた追々説明しましょう。それはさて置き、皆さんは今まで何してたんですか?単純にこの地での冒険を楽しんでた感じですか?」
最初から異世界転移を拒絶していた私とは違い、彼らを含めた他の5人は異世界転移希望者だったはずだ。
しかも異世界転移者特典は普通に貰えていただろうし、ステータスもスキルも私より上のはずだ。
多分、この約二ヶ月間は大いに充実した異世界生活を過ごしていたのだろう。
ちょっと嫌味のような質問をしてみると、癪に触ったのか、ギャル子とイケ男がプルプルと身体を震わせ顔を俯かせている。
そしてバッと顔を上げると、顔を赤くして大声で言ったのだ。
「「小森さん(アンタ)を探してたんだよ!!!!」」
「………はぁ?」
あれ、二人共キャラ崩れてません?




