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いつからバラエティ番組が始まった?

食材の質を見る時、<鑑定>が使えるというのは実に便利だ。

日本で売っている高品質な食品とは違い、異世界のものはというと混ぜ物や古い物が結構多い。

特に粉物なんかはそれが顕著で、革袋に入っているのを良いことに石とかが混ぜられている時がある。

ダンジョンにいた時は全部<ネットショッピング>の商品で食事などを用意していたので品質を気にすることはなかったので<鑑定>を使う機会は全然ない。

だけど城下町に来てからはこの<鑑定>は大活躍している。

異世界転移特典として転移者全員に譲渡されるのも分かる気がする。

このスキル、冒険するにあたっては凄い便利だ。

私の持っているのはプロトタイプだけど、十分物の情報を知るのには役に立つ。

適正価格や品質、どういった用途で使われる物なのか分かる上、食品なんかだと美味しい調理方法なんかも分かる。

ダンジョンで使用されてない分張り切っているのか、その他項目の顔文字と雑談がウザいけれども。

しかし<鑑定>のおかげで粗悪品を見抜けるし、値引きもやりやすいのも事実だ。

一家に一スキル、商店街で買い物するおばちゃん達が喉から手が出るほど欲しがりそうなスキルである。


いや、値引きがしやすいのはマサムネのおかげでもある。

正確にはマサムネの女性キラーっぷりと口の上手さのおかげだ。

店員が若い女性だったらその整った顔と良い声で悩殺し、奥様であれば私と家族を装って相手を称賛して陥落させ、気の難しそうな親父さん相手には「娘が友人のプレゼントを買いに行きたいと言ったので同行したんだ」と私をダシに口八丁並べて値引きさせていた。

大抵の商人達はその口車と顔の良さに乗せられ、適正価格の半分から70%ぐらいの値段にまで値引きしていた。

マリアやライアンも顔は良いから同じくそのルックスで値引きをしてもらえるかもしれないが、マサムネほど自然な流れのまま相手に値引きさせるのは出来ないだろう。

マリアやライアンが人を魅了して操るタイプなら、マサムネは人を共感させ、その気にさせて誘導させるタイプだ。

詐欺師とかになればマサムネなら多くの人を騙す事が出来るだろう。

横で購入した物を革袋に入れるマサムネの方を見れば、彼も私の視線に気がついて此方を見た。

マサムネさんと目があった後、私は一つため息をついて、マサムネさんに言った。


「マサムネさん、詐欺だけは絶対に手を染めないでくださいね?」

『しねーよっ!?嬢ちゃんはオレを何だと思ってんだ!』

「仮に人を騙すにしてもサバトラさんと手を組むのは出来る限り勘弁してください。貴方達二人が手を組んで本気を出したら、国まで騙せてしまいそうで恐ろしいです。」

『仮にでもやる前提で言うなよ!サバトラもオレも、そんな気はねぇよ!』

「なら安心しました。ダンジョン内に職業詐欺師が出現したらどうしようか不安でしたので。」

『そのまま安心しててくれ。余計な誤解されんのは嫌だからな。』


マサムネはやれやれ…と言った様子でため息を付く。

本気でマサムネ達がするとは思っていないけど、疑われた時とかに言質として取った方がいいからね。

そんな下らない会話をしながらお土産を買っていき、人混みの多い道を歩いていると、途中で帽子を深く被った青年と軽くぶつかってしまった。

揉め事を起こしてはいけないと思い軽く頭を下げて謝罪したが、青年は私の方を見向きもせずに何処かへと行こうとした。

しかし、私はすぐさまその青年の腕を掴んで制止した。

驚きを見せる青年を横目に、私はすぐに自身のポケットの中身を確認する。

すると案の定、財布が無くなっている。

人混みの中ぶつかり際に物をするなんてコテコテの方法でスリを働く人がいたんだな、と軽く感心してしまう。

満員電車並に人混みがあるわけでもないのにぶつかってきたら流石に気づくよ。


『おいおい、兄ちゃんよ。謝罪をするのもしないのも勝手だが、人の財布に手ぇ付けちゃ駄目だろ?』

『くっ…!』


マサムネはどうやら青年がスリを働くのを目撃していたようで、青年の方を軽く睨んだ。

青年のいる所からは反対の方にいた上に青年のスリっぷりはかなりの早さだっただろうに、良くその目で見えたものだ。

私はなんとなく雰囲気とぶつかり方で怪しいと思って思わず彼の腕を掴んでしまったわけだけれども。


『その手慣れた感じ、お前常習犯だろ。ちょいと一緒に騎士たちのいる所まで来てもらおうか。』

『チッ…、離せ!』

「あっ、ちょっと…。」


騎士、と聞いた青年が私の手を振り払い、急いで逃亡を始めた。

青年が走り出したのを見てマサムネは舌打ちを打つと、革袋の紐を掛けた。


『嬢ちゃんはその辺の店の前で待っててくれ。あの盗人から盗まれたもんを取り返してくる!』

「あ、はい。」


それだけを言うと、マサムネは青年の走り去った方向へと行ってしまった。

マサムネは喫煙で体力とかは魔物たちの平均以下だけど、十分早いからすぐに追いつけるだろう。

ポツン、と一人取り残されてしまった私は、ため息をついてマサムネの言う通りに近くにあったお店の前でマサムネが帰ってくるのを待つことにした。

果物が陳列されている店の前にやってくると、たくましそうなおばさ…もとい奥さんが話しかけてきた。


『おや、嬢ちゃん一人でお買い物かい?』

「**(いえ)、**(父と)、*****(待ち合わせ)。」

『おや、そうかい!良かったらなんか一つ持ってくかい?ただ待ってるのも暇だろう?』

「*****(ありがとう)。」


奥さんの粋な計らいに礼を良い、私は陳列された果物を見比べ始める。

多分財布を取り返して戻って来る時にはマサムネは息切れしているだろうから、水分が多そうな物を選ぼう。


「<鑑定>…っと。」


色艶の良さそうな果物に目をつけ、私は<鑑定>を使った。

すると私の目の前にその果物の鑑定画面が現れた。

しかし、私はそれに表示されていた言葉に変な声が出そうになった。

その他欄に書かれた、いつもの鬱陶しい顔文字と人間が書き込んでいるような追加コメント。

しかし、今回のコメントは他のものとは少し違っていた。


【名前】スーチ

【用途】食用。

【状態】新鮮。

【その他】地球のスモモとほぼ同一種の果実。水分を多く含んでいる。生のままでも食べられるがパイにして食べればなおよし。身の真ん中の種は食べられない。

後ろに怪しい人3人がいるよ!君を狙っている!早く逃げて!(@_@;)


私はそのコメントを見た後、こっそりと後ろの方を確認する。

すると、確かに私の方を見て虎視眈々と獲物を狙っているような目をした平民らしくない人たちが3人ほどいる。

3人の見た目は何処か薄汚く、昨日見た鍛錬場の騎士達の誰かでもない。

つまり、王宮が私の監視の為に出した私服兵士ではない。

王宮とは関係のない傭兵、それも良からぬ動機を持っての者だと推測がついた。


彼らが徐々に此方に近づいてこようとしているのも見えた。

私は彼らに見えないようにメモ帳を取り出し、鉛筆でマサムネへの伝言を書くと、目の前の奥さんに手渡した。


「**(父が)、***(来た時)、**(渡す)。」

『え?』

「******(お願いします)。」

『あ、お嬢ちゃん?!』


私は奥さんにそれだけ伝えて、果物屋を後にした。

速歩きで彼らのいる方向から反対の方向へと逃げつつ、私は適当な場所に向かって<鑑定>を使った。

<オペレーター>は、彼らの会話が聞こえてきた時に分かるよう、使わない。

不審者に使うのも止めた。もし使えばその人が誰か特定出来るだろうが、万が一<鑑定>を使われたとバレれば強硬手段に移行する可能性があったからだ。


【名前】ケネーシア王国城下町

【その他】ケネーシア王国の王城を囲うように存在する街。

まだ追いかけてきてるよ!走って逃げて、誰もいない所で<隠蔽>を使って!Σ(゜Д゜;≡;゜д゜)


「こんな状況まで顔文字を使わないでください!」


私は速歩きからガチ走りへと移行した。

途端に後ろの3人も走りへ移行する。

イグニとの特訓のおかげで体力も足の早さも問題ないけど、街の構造を知らないせいで上手く撒く事が出来ない。

<隠蔽>を使って撒きたいところだけど、人混みの多い中で姿を消す訳にはいかないし、手頃な裏道も私を追いかける不審者達の仲間らしい人が待ち構えていると<鑑定>から伝えられているため入ることが出来ない。

<マップ>スキルを所有していない私が情報を得るには<鑑定>を使うしかない。

全く、いつから某バラエティ番組が始まってしまったのだろうか?

賞金120万を持ってきてから出直してきて欲しい。


<鑑定>の教えてくれた道を進んでいたのだが、ついに挟み撃ちにされてしまった。

私を追い詰めたことにニヤニヤと笑みを浮かべてジリジリと距離を詰める不審者達。

不審者達を警戒しながら、私は周辺の様子を伺った。

小店が並んだ街道から外れたおかげか、先程よりも人気が少ない。

すぐ側には丁度脇道がある。

<隠蔽>を使えば私に触れることも出来なくなるわけだから、使うなら今かもしれない。

<隠蔽>を使えば相手側に私のスキルを一つ晒すことになるわけだけど、<隠蔽>一つなら問題もないだろう。


私はいざスキルを使おうと身構えたその時、私も目の前の不審者達も想像だにしていないことが起きた。

突如、背筋も凍りつくような寒気を感じたのだ。

私を含め、誰もが身を凍らせ、動けなくなってしまう。

そして次の瞬間、私の周囲を囲うように冷たい風が砂埃を巻き上げながら発生したのだ。


『うわっ!』

『風か!?』

『目が…!』


風が巻き上げた砂埃に目をやられ、目をつぶる不審者達。

私も突然の風に驚愕を隠せず、思わず目を瞑ってしまった。

すると、後ろから首の裾を強い力で後方へと引っ張られた。


「へぁっ?!」


何の抵抗も出来ずに私はそのまま何処かへ引きずり込むように引っ張られてしまう。

一体何処まで続くのだろうか、と思っていると、突然私を引っ張る力が無くなり、思わず後方へ転がってしまった。

目を回しながらも周囲を見渡すと、私は全く違う場所にいて、目の前にいたはずの不審者達の姿も見えない。

どうやら、脇道を真っ直ぐ通った先の道のようだ。

私の後方には堅く閉ざされた古びた鉄の門があり、その向こうには大きな貴族のお屋敷が見えた。

庭の草木も手入れされてないのか枯れはて、どっからどう見ても人っ子一人もいなさそうな朽ち果てたお屋敷。

人ならまず近寄りたくないであろうお屋敷であるにも関わらず、私はその門の方へと手を伸ばしてしまう。

誰かに、呼ばれた気がしたのだ。


『おいっ、あの娘を早く見つけるんだ!』

『手分けして探せ!』

『あっちの方に行ってみるぞ。』


脇道の向こうから聞こえてくる不審者達の声にハッと我に返った。

私は慌てて<隠蔽>を使い、身を隠す。

そのすぐ後に不審者達がやって来て、辺りを見渡して私を探す。

しかし姿を消した私に誰も気づく様子はない。

内心バレやしないかと緊張で胸がバクバクと高鳴っていた。

こんな胸のざわめき、初めてです。


心の中でそんなギャグをかましていると、不審者の一人が屋敷の門の方へ手を伸ばした。

しかしそれを、他の人が制止した。


『おい、馬鹿!そこに入ったら生きて出られなくなるぞ!』

『っと、そうだった…。わりぃな。』

『ったく、気をつけろ。目的の娘もそんな屋敷に行くわけがないだろう』

『そりゃそうだよな。なにせ彼処は、呪われてるんだからな。』

(呪われている?)


不審者達の会話に私は首を傾げた。

確かに見た感じ呪われてそうなくらいボロボロで薄暗い屋敷だけど、そんなに言う程だろうか?

霊感がないので全く分からない。


『あっちを探してみるぞ!』

『急げ!なにせ今回はお偉いさんが大金積んでの依頼なんだ。逃げ切られる前にさっさと見つけるぞ!』


やがて不審者達は此処の探索を諦め、他の場所へと去っていってしまった。

完全に不審者達の姿が見えなくなった後、私は<隠蔽>を解除する。

そして改めて門の向こうに存在するお屋敷の方を見た。


「呪われたお屋敷、ねぇ…。」


もっと近寄って、<鑑定>で屋敷を調べたら何か分かるだろうか?そんな事を考えながら私は門の方へと手を伸ばした。

しかしそれを、不審者達が行った先とは反対方向からやって来たホームレスらしき老人の男性に止められた。


『お嬢さん、その屋敷に近寄んない方が良いぞぉ。なにせそこに入った人間は、皆行方を晦ませてるんだからなぁ。』

「行方を晦ませている?」


思わず復唱すると、私が違う言語を使っていることにホームレスの老人は目を見開きつつも、話を続けてくれる。


『なんじゃ、お嬢さん異国のもんかなんかかい?だったら知らないのも無理はないだろうなぁ。だったら教えてやるわい。そこはな、昔とある貴族さんが住んでいたお屋敷だったんじゃよ。』

「貴族…ですか?」

『王族に仕える貴族さんで、仲の良い公爵夫婦と娘さん2人と息子さん2人が住んでおったんじゃがな、30年ぐらい前のある日に盗賊に押し掛けられて侍従のやつらも含めてほぼ全員殺されちまったそうなんじゃよ。殺されちまったもんは全員、それは酷い死に方をしとったそうなんじゃ。以来、あの屋敷に入ったもんはみーんな戻ってこなくなっちまうようになったんじゃよ。じゃから、だーれもあの屋敷に近寄るもんはおらんのじゃ。』

「なるほど…だから呪われている、と言われているんですね…。」


ホームレスのお爺さんの話を聞いて、何故古びた屋敷が残されているか納得がついた。

なるほど、まさにホラー映画の定番と言っていい過去を持つお屋敷だ。

不審者達があの屋敷に近づきたがらなかった理由も理解できる。


『お嬢さんも、滞在中はその屋敷に近づかん方がいい。ただでさえ最近は拉致だとか人身売買だとかがあるそうじゃからのぉ。気ぃつけんさい。』

「はぁ…、*****(ありがとう)。わざわざ教えてくれて…。」

『おーい…、嬢ちゃん…!』


気になる話を教えてくれたホームレスの老人に、私は頭を下げてお礼を言った。

そこに、手を振って此方に駆け寄ってくるマサムネの姿が見えた。

マサムネは私と老人の側までやって来ると、膝に手をついてぜぇぜぇ呼吸を切らしながら私にたずねてきた。


『ぜぇ…ぜぇ…、嬢ちゃん、無事だったか…?!』

「私はなんとか。むしろマサムネさんの方が大丈夫ですか?」

『嬢ちゃんの財布をスッた野郎は…はぁ、すぐ捕まえて財布を取り返すことが出来たんだが、どうもソイツが他の奴らに嬢ちゃんの懐から財布スッてオレと嬢ちゃんを分断させろって金を積まれて言われたそうでな。それで近くの果物屋の姉ちゃんに嬢ちゃんの伝言の紙を手渡されて、慌てて上から嬢ちゃんを探して来たんだよ。』

「え、上からってどうやって?」

『盗人の野郎を抱えたまま建物の壁をよじ登って屋根の上からちょいとな。で、嬢ちゃんを見つけたら屋根の上を辿ったまま此方にやって来た。盗人のやつはそこらで巡回してた兵に引き渡してきたから安心しな。』

「盗人さんを抱えたまま…ですか?」

『別に盗人に怪我とかはさせてねぇよ。まあ、随分と臆病な奴だったみたいで、登りきった頃には漏らしちまってたようだけどな。』


人一人を抱えたまま壁を登るとすると、その盗人をおんぶするか俵のように抱えるぐらいしか出来ないはずだ。

盗みを働いた人におんぶなんて優しい真似はしないだろうし、恐らくは俵持ちの不安定な状態で高い塔の上まで連れられたのだろう。

そりゃあ誰でもビビる。

後で王宮の人に怒られないかな?


『爺さん、嬢ちゃんの相手をしてくれてあんがとうな。コイツは礼だ。』

『お、おお…!』


マサムネは自分の財布から銀貨をいくつか手渡し、ホームレスの老人に礼を告げた。

お金をもらった老人は、此方にへこへこと頭を下げて何処かへと去っていった。

そしてマサムネははぁ、と大きくため息をついて苛立った様子で呟いた。


『にしても、わざわざこんな姑息な真似を使いやがって許せねぇな…。確か、この街には拉致が噂になってんだっけか?』

「いえ、多分違うと思います。」

『えぇ?じゃあ誰が…』

「結構な権力を持った方、みたいですよ?先程私を追い掛けようとしてきた人たちが話しているのを聞きました。『お偉いさんが大金積んでの依頼』だ、と。」


それを伝えると、マサムネが目を細めた。

マサムネは顎に手を添え何かを考えると、私にたずねてくる。


『嬢ちゃん、オレ的にはもうこの国に滞在しないほうが良いと思うんだが、どうする?実際に危害が加えられそうになった以上、今から帰っても文句を言われねえと思うんだ。』

「まあ、それはそうですね。」

『どうする、嬢ちゃん?』


マサムネの言うことも分かる。

覗きに拉致未遂。

この二つを国王様に報告してしまえば私達が今からダンジョンに戻っても他の貴族達から文句は言われないだろうし、安全面を考えるのであれば私はこの国に留まるべきでない。

私は少し思考を巡らせた後、マサムネに言った。


「いえ、この際ですから最後までいることにしましょう。」

『それは、王国の奴らのメンツを立ててやる為か?』

「いいえ。単純にこのまま真実が解明されないまま放置するのが嫌なだけです。どうせ帰るのでしたら、全てがハッキリしてから気持ちよく帰りたいです。私は、やられたらスルーするか何倍にもしてやり返すタイプですので。」

『ハッ、このままやられっぱなしで自然解決させんのは気に食わないってことだ。』


ミステリー小説で真実が明かされないまま打ち切りになってしまうほど最悪な終わり方はない。

ミステリーというのは、真実が明かされないと成立しないのだ。

「犯人は既に死んでいる」「犯人は登場人物全員だ」という終わりだろうが、真実さえ明かされればそれでミステリーは成立する。

なにより、散々走らされて危ない目に遭ったのに何の反撃も文句を言う事も出来ないなんて嫌だ。


途中帰還の提案を出しつつも、マサムネ自身も同じような事を考えていたようだ。

私の回答に、満足げな笑みを浮かべた。


『オレにもその気持ちは分かるからな。良いぜ、嬢ちゃんの気の済むまで一緒に残ってやんよ。』

「だから今回のことはイグニとマリアには伏せてください。」

『なんでその二人なんだ?』

「二人は良くも悪くも私との距離が近いですから。街を出たら拉致されそうになったなんて言ったら絶対にダンジョンに戻されますよ。」

『なーるほどな。確かにあの二人ならそれくらいしそうだ。』


マサムネはケラケラと笑いながら私の服についた泥を払う。

こういう時、マサムネは緩いから楽だ。

マリアやイグニ、それにベリアルやフォレスだったら容赦なくダンジョンに強制帰還させられていただろうし、私の知らないところで関係者全員皆殺し、とかも余裕でしそうだ。

今回に限っては、まだその段階に入るわけにはいかない。

後で知られたら怒られそうだけど、それまでは黙っていよう。


『そろそろ午後2時を回るだろうし、また変な奴らが絡んでこない内にマリアの姉ちゃん達とも合流しようぜ。』

「それもそうですね。取り出す時に変な物がくっついてくると怖いからそのまま持ってましたけどお財布ももう<アイテムボックス>に入れちゃいましょうか。お金を盗まれずに済みますしね。」


分断される要因を生まないよう、私達は持っていた財布や荷物の半分を<アイテムボックス>の中に仕舞う。

時間を確認すれば、もう待ち合わせの午後2時まであとわずかだ。

街外れから噴水のある場所までは結構遠い。

私とマサムネは急いで待ち合わせ場所へと駆けていったのだった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 流石に展開がお粗末すぎない? 章の始まりから前日まで続く分かり易いフラグ 事前に決まっていた外出予定 出かける際普通なら絶対に付いてきて護衛しそうなイグニが何故かスルーでマリアすら護衛…
[一言] スーチーば(ここで発言が途切れている)
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