迷いのマグドレス
私たちは森の中を歩いていた。
「神獣はこの世界にも来てるの?」
と、三人が驚いていた。
ま、違う世界だから来られるはずがない…。と思うが、多分来ている。世界をどうやって超えてきたのか、この世界は何なのか。それも気になるところだが…。
「この世界でテイムした方がいいらしいですね。条件がちょっと緩くなってるそうですから」
「なるほど。世界を越えてくる…か。いや、この世界はもしかしたら…」
「パンドラ、なにかわかったの?」
「いや、まだ仮定の段階だけどね」
???
なにがわかったんだろう。
「それでもいいから話してちょうだい。気になるわ」
というと、パンドラさんは口を開いた。
「まずこの世界って多分私たちがゲームで暮らしていた世界とパラレルワールドかもしれないってことだよ」
「パラレルワールド? なんだそりゃ」
「違うほうを選択した世界…。たとえばビャクロなら小さいころから柔道をやってなかった世界っていうのもあるんだ。一種の考え方なんだけど」
でもこの世界がパラレルワールドというのはなんか問題があるんだろうか。問題があるんなら解決しなくちゃいけないが…。問題がないのなら解決しないでもいいんじゃないか?
そもそもなんでいきなりパラレルワールドの話になるんだろう。
「なぜパラレルワールドだと思うのよ」
「地図を見てなんとなく感じたんだけど…。元の世界の地図の大陸の一つにそっくりなんだよね」
「そっくり?」
「そう。反転させたって感じの地形なんだよ。だからパラレルワールドなんじゃないかなーって。ま、パラレルワールドで問題があるかないかと言われたらないんだけど…」
「問題はやっぱないですよね。焦った…」
でも、パラレルワールドがあるという証明にはなるのか。
つまり現実に戻ってもパラレルワールドに行ける方法があるかもしれない、そういうことが言いたいのだろうか…。
「それにしてもまだ奥地にはつかないのか? 結構歩いてるつもりだが」
「そうだな…。たしかに話ながらも結構歩いてるけど…」
私はなんとなく後ろを振り向いた。
すると、そこには森の入り口があったのだった。
「…あれ、私たちループしてね?」
「ループ?」
「森の入り口なんですよまだここ…。戻されてる?」
「うそっ!?」
三人が後ろを振り向いた。
後ろには確かに入ってきた森の入り口がある。光景は本当に同じで、私たちはいつの間にか入り口に戻されていたらしい。
マグドレスの森はいわゆる迷いの森、か。こりゃたどり着けないわけだわ。ループしてるもん。
「決められた道があるのかもしれないな。でも、一本道だったしな」
そう。
決められた道があるというのはいいが、一本道だったのだ。ずっと整備されていた道を歩いていたためにループしたことに気づかなかった。
分岐点なんてものは歩いていて存在しなかったのだ。
「こりゃたどり着くのに時間がかかりそうだ…。レースの一着は諦めたほうがいいかもしれないな」
「そうですね。ま、レースは諦めますよ」
レースで勝ちたかったが問題はない。
すべてはポイント制なのだ。歴史のかけらを集めて勝つしかあるまい。
「さて、もう一度歩いてみよう。今度はじっくり観察するさ」
といって、私たちは歩き出した。




