協力関係
目の前のパンドラさんから協力を持ち掛けられた。
受けるべきか否か。私に対するメリットがない。そもそも、協力するメリットがないだろう。このレースは団体戦ではなく個人戦。メリットというものはないだろう。
「私たちはレースはどうでもいいんだよね。本当は。私たちはイベント特別イベントがしたい。協力してくれたら私たちが集めたかけらをあげるよ」
「…ということは私はイベント特別イベントを見つけろと?」
「そゆこと」
どゆことだよ。
だが、いまいち信用にかける…。二つ返事で受けれるはずがない。なので条件を付けることにした。
「じゃ、これから見つけるかけらは全部私にください。それでいいのならば協力します」
「んー、ま、いいわ。私は構わないわ」
「私もいいぞ」
「はいはーい。じゃ、交渉成立。で、ミーミルさん。イベント特別イベントを探してきてもらえるかな?」
というので、私はため息をついた。
「いえ、もうそれらしきものはありますから」
「…早いね」
「スタートを誰よりも遅らせましたからねそのせいで…。街に残り続けて探索してましたから」
だからこそ見つけられたというものだろう。
私はとりあえずかけらを全部受け取った。パンドラさんが渡してきたので受け取り、私はマグドレスの森に行こうといった。
「っていうか今思ったんですけどレースに参加しないのにかけらを集めようとしてた理由ってなんですか?」
「ん? あー、高額で売りつけようと思って。高額で売りつけつつ、イベント特別イベントを探してーって感じだったんだよ」
金稼ぎか…。
「それで、なんでマグドレスの森に?」
「えっと、そこには楽園があるそうです」
「「「楽園?」」」
私がそう言うと三人が疑問の声を上げた。
「ま、私もいまいち信じられてないんですけどね。ある貴族がマグドレスの森の奥地に歴史のかけらを集めていくと楽園があるといったんです」
「なるほど。だからこれから見つけるかけらはくださいと」
「集めたやつ全部失うかもしれませんからね」
「なるほど。じゃ、まずマグドレスの森にいこうか。ここなら走って向かったら夜にはつくでしょ」
というので、私たちはマグドレスの森に向かうことになったのだった。
マグドレスの森についたのは現実時間で8時の時だった。
いや、あんなに早かったのはワグマさんがバフをかけていたということであまり速くなかったのだ。私は素早さ自体が高いので移動も楽々なのだが、バフがない三人はちょっと遅かった。ビャクロさんはちょっと早かったけど。
「夜に来ると相当不気味だねー。暗さも相まってこれはでるわ」
「ですねー」
私とパンドラさんがそう感想を言うと。
ビャクロさん、ワグマさんは固まっていた。
「…でるの?」
「いや、あくまででるかもってだけだけど…」
「…ねえ、明日にしない? 今日はもう」
「そ、そうだな。明るいうちにいったほうがいいだろう。暗いと危険だからな」
と、なにやら行きたくないのか、そう提案してきた。
二人は少し震えている。
「…幽霊ダメなんですか?」
「情けないことにね。ミーミルさんは大丈夫なの?」
「イギリスじゃもう全然。叔母さん家が事故物件でよく泊まってました」
「ひえっ」
「そうか。イギリスじゃ事故物件のほうが値段高いもんね。日本じゃ安いからね。大学生活の時に事故物件のアパートに泊まってたんだよ私」
そういうと二人は固まっていた。
「…初耳なんだけど」
「え、あ、大学の時パンドラの部屋にたまに泊まってたよな。あれ事故物件…?」
「言ったら絶対来ないだろうから黙っておいた。っていうかワグマはそれぐらい調べれるような財力あるんだから調べたら一発でわかるのに」
そういうと、二人は倒れたのだった。
そんなにダメなの? 幽霊可愛いじゃんね。
「パンドラさんが泊まってた事故物件って何起きたんですか?」
「殺人。被害者はばらばらにされて内臓が抉りだされててさー。それはもうむごかったらしいよ。そこに住んだ人は呪われるとか言ってて不動産屋にも心配されてたけど呪われることはなかったかな」
「ほえー、そんなすごい事故物件なんですね」
ま、たしかにバラバラ死体で内臓が抉りだされてたということを聞いたら私はちょっと住みたくないな。
幽霊や呪いとかは別にいいんだけどそういう光景を思い浮かべると気持ち悪くなるな。
「ま、二人が倒れちゃったし今日はここでやめよっか」
「じゃ、ログアウトしますか…つってもここセーフティーゾーンなんですかね」
「あれ、セーフティーテント持ってないの?」
「まぁ、はい。持ってないですね。そういうの必要なかったんで…」
そういうと、パンドラさんは仕方ないと言わんばかりにアイテム欄から何かを取り出した。
「二つあるから一つ上げるよ。こういう野営の時はそれがないとダメだよ」
と、もらったのだった。
はい、以後気を付けます。




