私は楽園を目指す
レースが始まった。
みんなは走って門を出ようとしているが…私は一人街の中を歩いていた。
というのも私は他のプレイヤーよりは素早いし多少距離がある程度なら別に問題はない。
このスタルトという街にもなんかあるかもしれない。ただのレース、というわけじゃないんだろう?
「よし、周りは街から出て行ったな」
距離を離されたら追いつけないという考えもあるんだろうな。
だが私の勘は何か言っている。この街に何かがあると。
「さーて、レッツラ探索ぅ!」
私が最初に訪れたのは街の中心部にある大きな屋敷だった。
警備兵が立っており中を覗き込むとメイドが庭を掃除している様子が見れる。
「おい、なにをしている」
と、警備兵が私の行動を怪しんだのか剣を突きつけてきた。
私は手を上げる。
「いえ、気になったもんですから。自分レースの参加者でしてレースに参加するために他所から来たもんで珍しいな…と」
「レース!? ああ、メイク・ヒステリー・イン・ザ・レースの…。ふむ、中に入れ」
「えっ、いいんすか?」
「レースの参加者が来た場合通せと言われている」
と、門を開けた。
やはり。私の勘は間違いじゃない。通れと言われるくらいなのだから何かがあるんだろう。
私は恐れずに中は足を踏み入れる。メイドさんたちは掃除の手を止め一列に並ぶ。
「いらっしゃいませ」
と、モノクルをかけた少し年老いたメイド…。たぶんメイド長が、私の目の前に立った。
「先ほどの話を聞いておりました。レースの参加者様でございますね。旦那様がお待ちです。どうぞこちらに」
とツカツカ歩いて行く。
私はそれに着いて行くことにした。
「すげー庭」
「ええ。自慢の庭師が整えてるんです。人の目に触れるところですので少しでも着飾らなくてはなりませんからね」
「庭ってのはそういうもんだよなぁ」
豪華な庭を抜け玄関にまでやってきた。
玄関を開くと中にもまだメイドがいたらしく、慌てているメイドもいた。
「い、いらっしゃいま…ひゃっ!」
と、そのメイドが転び、持っていた花瓶が宙を舞う。
花瓶の中の水が私に降り注いだ。
「も、申し訳ありません! あなた、なんてことをっ…!」
「す、すいませんすいません!」
「申し訳ありません。うちのものが粗相を…」
「いいっすよ。花瓶が当たんなかっただけまだ」
私はタオルを渡されタオルで頭を拭く。
拭き終わったタオルをメイドに渡す。私はそのまま旦那様が待っているという書斎らしき部屋に連れて行かれた。
「旦那様、レースの参加者様を連れてまいりました」
メイドがノックし言うと入れてくれと言う声が中から聞こえて来る。
メイドが扉を開き、私は中に入って行く…。中に入ると髭面の男の人とソファには女の子が座っていた。
「そこのソファに座ってくれ」
と言うので私はソファに腰をかける。
やはりこれはミカボシが言っていたイベント時のイベントだろう。
やはりこの街に残っておいてよかった。
「さて、レースの参加者である君に頼みたいことがある」
「なんでしょう?」
「あなたには、楽園を目指して欲しいんです」
「エデン?」
なんだそれは。
エデン?初めて聞くな。
「エデンとは私たちもわからない。だが興味がある。なので行ってもらいたい」
「…ふぅん」
「エデンに関する文献がある。それを読み上げる」
と、男の人は本を取りページをめくる。
「光の入らぬ闇。歴史を集めたものが楽園を目にした…という内容です」
「…ふむ」
「これがなんなのかはさっぱりわかりません。ただ場所には心当たりがあります。マグドレスの森でしょう。あそこの奥地は木々によって日が遮られておりいつも暗いのです。光の入らぬ闇は多分そこでしょう」
マグドレスの森…。
私は地図を開いて見てみるとゴールからは一番遠いところにある森だった。
時間かかりそうだ。だがしかし、楽園か。見てみる価値はあるだろう。
「受けてくれるでしょうか」
「もちろんですとも」
「助かる。マグドレスの森はこの街の西門から行く方が近い」
と、言われたので私は西門に向かうことにした。
楽園、楽園ねぇ。




