レースの始まり
翌日。イベントが始まる。
イベントは午前9時から。普段なら学校にいる時間。だがしかし、今日からずっとイベントに参加できる。
あっ、サボってるわけじゃないですよ? シルバーウィークですシルバーウィーク。
土日に敬老の日、秋分の日、天皇誕生日に振替休日。ね?
合計で六日間あるんです。
で、今現在、知らない世界に飛ばされたんです。
この世界に飛ばされたのは私だけではなく、たくさんのプレイヤーが来ていた。
というのも、ここがイベント会場らしい。
「わざわざイベントのために世界一つを用意するなんて…」
本気か?
私はとりあえずもう少しでルール説明などがなされるようなので黙ってそれを待つことにした。
そして、9時を上回るチャイムが鳴る。
すると、私たちの目の前にモニターが現れ、ペストマスクを被った人が立っていた。
『どうも。私はあなた方が遊ぶ世界の管理者のアンクロードと申します。今回のイベントのルール説明をさせていただく役目を授かりました』
と、深々と礼をする。
怪しい雰囲気も相まってるな…。こういうのは普通熱い熱血漢の人だと思ってたが。
『そんな堅くかしこまったように言うなよ〜。あ、俺はもう一人の主催者、アンダーでーす。よろしくー』
と、画面にもう一人の男性が現れた。
その人は仮面舞踏会みたいな目だけを隠すマスクをつけ髪は茶髪でノリが軽そうだった。
『えー、俺らが主催してこのイベント、通称"メイクアップレース"を作り上げました。では、ルール説明をアンクロード、お願いねー』
『…えー、ルールはですね、まず、レースということなのでスタート地点が有ればゴール地点もあり、一番早く着くようにしてもらいます。ですが、ただ普通のレースではございません』
『この歴史のカケラというものを集めつつ一番を狙うんだぜ』
と、アンダーさんの方が何かを手に持っていた。
それはコインが欠けたような感じのものだった。そのようなものを集めつつ一着で…ということか。
『一着で着いたとしてもこのカケラが少ないと負けてしまうかもしれません』
『ポイント制だからねー』
『はい。一着でゴールした場合600ポイント、二着は300、三着は150ポイントもらえますが四着以降はゴールポイントはありません』
『このカケラは一つ10ポイント。この大陸全土に広く散らばってるぜ。山や海や谷、森。あらゆる場所にある』
『イベント期間は日曜日までとしましょう。日曜日までにゴールについていなかったら歴史のかけらのポイントは反映されません。ゴールは絶対にすることですね』
…ふむ。
なるほどな。遅くてもいいからたくさん集めるか、程々に集めて一着を狙うか…。
ゴールポイントは是非とも欲しいが。
『ちなみにー? このカケラ、お前らが死んだら所持している数の半分落としてしまいまーす』
『ちなみに、魔物やNPCにやられた場合のみとなります。プレイヤーが殺した場合カケラは紛失しません』
『このゲームではPKを強く禁じるぜ。だが、正当なる防衛と俺らが判断したら続行可能、判断できなければイベントに参加する権利が失われるぜ。俺らが厳正に判断してやるから監視の目がないと思うなよ?』
ふむ、PKは禁じられたか。
妨害もなかなかしにくいということになったな。
『ルールはこれくらいです。では、次にスタート地点とゴール地点を説明いたします。皆様に地図をお配りしていますのでそちらを開いてください』
と、アイテム欄に地図があったのでそれを開く。
『今あなた方がいるところはスタルトという海岸近くの都市となります。ゴールはその反対にあるフニッシュという都市になります』
『遠いだろー? どんな方法を使ってもいいから向かうんだ。だがしかし、神獣に乗ることは禁止とするぜ』
あっ、まじすか。これは私だけですね。
『ま、大方説明することはこれぐらいだ。9時30分になったらスタートの合図をだす。それぞれ準備をすることだな』
『私たちはあなた方に極力干渉いたしません。レースをお楽しみくださいませ』
と、画面が暗くなりモニターが消える。
どうやらレースが始まるまでこの街は出られないらしく門の方をみると封鎖されている。
30分までもう少し。今はどうやらスキルはなにも使えない状態だな…。
「み、見つけたミーミル!」
「探したぞ」
「あ、二人とも」
ミカボシとクシナダが人混みを掻き分けやってきた。
「ま、負けないからね!」
「私もだ」
「それ言う為だけに人混みかき分けてきたの?」
ただ宣戦布告しにきただけですか。
「ま、私も負けるつもりはないよ。誰が一番ポイントを稼げるか勝負だね」
「1位は私だよ!」
「…取れるかなあ」
誰かがランキングに入ること前提か。
「あっ、もうそろそろ始まるよ!」
と、カウントダウンが始まった。
あと10秒で始まってしまう。私たちは門の方を向いた。
「5」
「4」
「3!」
「「「2」」」
「「「1」」」
『では、レース、スタートです!』
私たちは一切に走り出した。




