盗賊の裏切り
わたしたちが洞窟から出ようとしたところで複数の気配を感じる。
私は一応彼らを引き留めた。
「何かがいる。警戒していったほうがいい」
「きっとあいつらだろう。問題ない」
そういってスケアリーは洞窟から出る。
私はそうなのか?と思いながらもスケアリーについていくと、スケアリーの首元にナイフを突きつける盗賊がいた。
「…おい、何の真似だ」
「何の真似ってか? はっ、見てわからねーの?」
と、盗賊の一人がスケアリーを嘲笑う。
「俺を裏切るのか?」
「裏切るも何もこいつら全員最初からお前の仲間じゃねえよ?」
「そうか」
スケアリーは火を噴き出した。男は丸焦げになり倒れる。
「裏切るんなら相応の覚悟はできてるんだろうなァーっ!」
「こいつ火を噴いた…兄貴、どうします?」
「構わねえ! たかが三人だ、やっちまえ!」
そういって襲い掛かってくる盗賊。
私はナイフを投げ、心臓に突き刺す。ミカボシも弓矢で牽制したり、剣で切り裂いたりしている。実力的にはこの盗賊団は弱い。
リーダーが強すぎたのかもしれんな。
「俺もハナからテメエらを仲間と思ったこともねえよ! 今の俺は最高に気分がいい。その気分に免じて苦しまずに殺してやる」
レイピアを構えそのまま貫く。
盗賊団はあとは主犯格であろう一人とその取り巻き一人を残しているだけだった。スケアリーは男の首元にレイピアの先端を突きつける。
その男は完全にビビっていた。
「す、すいません! つい出来心だったんですぅ! またあなたの仲間に戻りますからぁ! 許してくださぁい!」
と、みっともなく命乞いをし始めた。
スケアリーは剣先を下ろすつもりはなさそうだ。
「盗賊はいつ死ぬかもわからねえ。命乞いする時点で一流の盗賊にはなれねえぞ」
「お願いします! 助けてください!」
と、土下座までし始めた。
私ならば許さない。一度裏切ったんだ。また裏切るかもしれない。裏切った相手を許して信用するなんて到底無理だしな。
それに、助かりたいがだけの命乞いにも見えるしな。
「じゃあ、こうしよう。お前ら二人で戦って勝った方が生き延びるということで」
そういうと、男ははっとして武器を構え、取り巻きの男を殺す。
いきなりのことで反応できなかった。すぐに殺せるというクズさ。これもう案外清々しいな。
「ほう、戸惑わないか」
「こ、これでいいんですよね?」
「ああ。そいつとの戦いでは生き延びた」
と、スケアリーはレイピアで切り裂く。
「は、話が違う…」
と、言いながら地面に倒れる。
「話が違う、ね。別に俺は殺さないといってないぞ。勘違いした方が悪い」
スケアリーはレイピアをまた腰にひっさげる。
そして私たちのほうを向き直った。
「すまないな。こんな裏切りにつき合わせて」
「それはいいけど盗賊団スケアリーだけになったけど」
「それは別にいい。ミーミル。王都に向かうぞ」
「ああ、早速行くんだね」
「セッティングはできるといったろう。だがいいのか。お前も貴族殺しの一端を担うんだぞ。重罪人になって処刑されるかもしれない」
「ま、許可をとるさ。それに、貴族じゃなきゃいいんでしょ」
国としても私を安易には殺せないはずだからね。
ただ処刑人としてはダメかもしれないが…。聞いてみるか。
「ま、ちょっと準備するから待っててよ」
「わかった。待っている」
そういって私たちは一度始まりの街に戻ることにした。




