スケアリーの事情
体力はまだ有り余っている炎鳥。
だがその反面、私たちは体力が残り少ない。私は神獣化し、一気に片をつけることにした。私はジキルタイガーになり、とびかかる。
「なんつーパワーだ…。あれはミーミルなのか?」
「ぼさっとしないのスケアリー! 私たちも追撃するよ!」
「あ、ああ。すまん」
私が再び飛び始めたフェニクスを地面に叩き落とし、そのまま上空から牙を剥く。そのまま急所にかみついた。
苦しそうに叫ぶ炎鳥フェニクス。
「きゅ、キュエ…」
と、その時、フェニクスは体力がなくなったのか、動かなくなった。地面に広がっていた炎もなくなり、完全に死んだ。
私は、とりあえず持っていたポーションをがぶ飲みする。ポーションはメロンソーダ味で、とても美味しい。ちなみにポーションがメロンソーダ、ハイポーションがクリームソーダらしい。なにそれ美味そう。
「俺にもポーションを寄越せ。さすがに火傷がひどいんだ」
「ん」
私はポーションを投げる。
スケアリーはふたを開け、がぶ飲みし、飲み干したら瓶をそこらへんに投げた。
「さて、進化の石とご対面といこうか」
スケアリーは立ち上がる。
私はそのスケアリーを食い止めた。
「どうした」
「いや、疑問があってさ。どうして君みたいなのが盗賊なんかしてるのかなって」
「…理由はなんでもいいだろ。俺は人間が嫌いで信用できない」
「それは私たちも?」
「どうだかな…。俺は俺の身の上話をするつもりはないぜ。俺とあんたらは一時的に手を組んでるだけだ。この依頼が終わったら関係は元に戻る」
と、そういい行こうとした。
「…宰相?」
そういうと、スケアリーは足を止めた。
いや、なんだか重なった気がした。宰相とスケアリーが。
スケアリーは突然こちらを振り向き、私の胸倉をつかむ。
「あんなのと一緒にするんじゃねえ。反吐がでる。次にあいつと俺を重ねてみろ。俺はお前を殺す」
「…宰相と何か関係があるの? 血縁関係、とか?」
「どうだっていいだろ」
「私に教えるのはいいんじゃない? 私は一応、王とは繋がりがあるし、王も私を無碍にはできない。私ならば宰相に恨みがあるなら晴らせるんじゃないかな」
気になったので聞き出してみることにした。
実際、私はそういうことができる。神獣の影響は強いからな。
私がそういうと、力を弱め、乱暴に振り下ろす。
そして、地べたに座った。
「話してやる。座れよ」
「あ、うん」
私たちは地面に座った。
「この国の宰相は俺の叔父に当たるやつだ。俺は一応貴族の血が流れている。俺の父はこの国の宰相だった。だが三年前、父が急死した。料理に毒が入っていたそうだ。実行犯は新米料理人。そいつはあろうことか俺に指示されたといいやがった」
…なるほど。黒幕として。
「俺は毒を盛れ、なんていったことはない。父のことを尊敬していたしいずれかは父のような宰相になりたいなんて思っていた。だから、俺は違うと訴えた。が、あいつは俺を黒幕だと、企んだ首謀者だと言い張った!」
「……」
「犯人はあいつだ。俺は宰相を絶対許さねえ。何が何でも復讐してやる。わかったろ。俺はあいつが嫌いなことが。人間が信用できない理由が」
なるほど。
濡れ衣、ね。貴族の中ではよくあることなのかもしれない。が、当事者はたまったもんじゃないだろう。
人間の黒い部分を見すぎた。彼はあまりにも純粋すぎたのかもしれないな。純粋すぎたからこそそれに耐えられなかった。いや、尊敬している父を殺されたからこそ耐えられなくなったんだろうな。
「おい、お前は宰相をどうにかできるんだろうな? 本当にか?」
「そりゃもちろん。私がその復讐、手伝ってあげようか?」
「…裏切るなよ」
「裏切らないよ。私は絶対に」
私はそう力強く言い放つ。
「ミカボシ。これが終わったら先戻っていていいよ。私はまた王都に行くから」
「うん。気を付けてね」
「…ありがとう」
と、涙を流し、頭を下げた。
「さ、進化の石でしょ。取りに行こうか」
私は立ちあがり、そう促した。




