満月の鳥
私たちはいざ、帰ろうと王都の門の前に立っていた。
「さぁー!いくぞー!」
と、意気揚々に手を掲げるミカボシ。
すると、門番の人が慌ててこちらに近づいてくる。門番の人は私たち三人を掴んだ。
「ちょ、なにするんすか!」
「行ってはならない! 神獣が闊歩している! 暴れてるんだ!」
「暴れてる?」
暴れてる?
私たちは抵抗をやめ、王都の中に戻る。すぐに門は閉められ、外の様子が見れない。
私たちは守衛室に通され、お茶をいれられもてなされていた。
「すまないね。今神獣のフルムーン・パレスが人を襲うようになって…」
「フルムーン・パレス?」
「三日月のような綺麗な鳥なんだよ。その羽は高く売れると言われてるんだ」
二人の目が変わった。
「ねえねえミーミル! テイムしよテイム!」
「いや、うちにはジキルタイガーいるしダメでしょ…」
「えぇー!」
ただ一度見てみたいという好奇心はある。
会ってみるか。いざとなったらハイドを呼び出せばいいしな。神獣一匹こちらの味方だしな。
私はお茶を飲み干した。
「会うだけならいいがテイムは無理だと考えろ。すいません、門番さん。どうしても行きたいんです。通してくれませんか?」
「ダメだ。国民の安全を第一に行動せよとの王の命令がある。刺激するわけにはいかんからな」
まあ、そうだろうな。
二人はとても残念そうにしている。こればかりは仕方がない。王都にいた私たちが悪い。
私は二人を連れて帰ることにした。
「すんません、出直します」
「そうしてくれ」
二人はため息をついている。
私も私で帰れないのは辛い。私は夜の王都を歩いていると、突然あたりが真っ暗になった。
「え?」
上を振り向くとデカイ鳥が足を向けて降りてきている。
私は逃げようとしたがなぜか動けず、そのまま鳥の足に掴まれてしまう。鳥は静かに満月の下を飛んでいく。
『アナタ、ジキルタイガーの契約者様ですね?』
と、綺麗な女性の声が聞こえる。
『乱暴に連れ去ってしまい申し訳ありません。一度貴方様と話してみたかったんです』
「あ、えっと…」
『付近を飛んでいるとジキルタイガーが人であるアナタ様を乗せていたのを見たもので。あのジキルタイガーが?と思い』
と、どこか木の上に着地し離される。
どうやら私が目的で付近で暴れていたらしい。私のせいのようですね。
『我々神獣は気に入った人に仕え、使役されたいと願うのですが…。アナタ様は強さと美しさを感じます。私もぜひテイムを…と思うのですが、神は一人に仕えれる神獣は一体までと決められておりますので…』
なるほど。一人で複数の神獣と契約できないのか。
『アナタ様のお仲間もアナタ様がお仲間様とチームを組んでいるということから不可能なのです。うう、うらめしや…』
ほう?
チーム一組につき一体までという制約もあるようだ。
まあ、そうでもしないとバランスが崩れるからな。仕方ないだろう。
「ってかここどこ?」
『ここは私の聖域です。精霊樹と呼ばれる木の上に巣があるんですよ。神獣をテイムしている人は誰でもどの神獣の聖域にも入れるんです』
うふふ、とフルムーン・パレスは笑う。
すっげ、なんつーか、ケモナーとかそういうわけじゃないけど可愛い。
『ジキルタイガーさんは元気ですか? あの子は神獣の中で一番喧嘩っ早いし眠るのが好きな子で…』
「めちゃくちゃ元気っすね。たまに私ともやりあってます」
『そうですか。ああ、何か飲み物いりますか? 木の実のジュースでよければあります』
「あ、お構いなく…」
『そ、そうですか』
なんつーかこういうのが不慣れなんだろうか?
私はこの木の巣を少し見て回ることにした。フルムーン・パレスは本当にデカイ。巣も巣でめちゃくちゃ広い。
「…ん?」
私が目にしたのは木の中にあったものだ。これはハイドの聖域でも見た石。ハイドはピンク色だったがフルムーン・パレスのは緑色に光っていた。
なんなんだ? これは一体。
『気になりますか?』
「めっちゃ」
『それは神獣の輝石といいまして。我々の力や我々の力を好む妖精の力があるんです。触ってみてください。進化できるかもしれません』
というので私は手を伸ばして触れてみる。
すると、ぴかーっと光り始めた。緑色の光が私を包み込む。
《月の民に進化します》
というアナウンスが流れ
《月の民に進化しました》
《スキル:月の重力 を取得しました》
という。月の民? 月の重力?
私は髪がいつもの金色になってるのに気づく。月の民はどうやら素早さが高くなるけど防御力が少し低くなるらしい。私にぴったりだ。
あと、月の重力は夜にしか発動できないスキルで自分の体重を軽くするという効果がある、
いや、まじで進化するとは思わなかった。
『可愛いです! アナタ様は月の民となりました。月の力を借りて戦いましょう』
「は、はあ…」
『頬に月のマーク。とても可愛いですよ』
「あ、ありがとう?」
めちゃくちゃ話しやすいじゃないですかやだー。
「あの、そろそろ帰りたいんすけど…」
『あっ、そうでしたね。では背中にお乗りください』
私はフルムーン・パレスの背に乗るとパレスは羽ばたく。
そして、王都までいくと月の重力を使って降りてみてくださいという。私は背中から飛び降り、地面すれすれのところで月の重力を使うとふわりと着地する。おぉー。
『では!』
と、飛び去っていった。
このこと知ったらミカボシたち羨むだろうなぁー。反応が楽しみだ。




