大好き
ほんっと、昨日から散々な目にばかり会う。
これも幸運の代償なのかもしれないが…。私はお風呂に入り、髪の色を落とす。染髪スプレーってのはあまり好きじゃないんだよな。
ぜってえ許さねえ。私は恨み言を言いつつ髪を入念に洗う。黒い液体が落ちているので落ちてきているだろう。
「ほんと死ねばいいのに」
そういいつつもシャワーを止め、脱衣所に出る。
ゲームと言い現実と言い。なんで私がこんな目に遭わなくちゃならないんだ。私がなんか悪いことしたんですか。
落ち込むわぁ。気分が落ち込む。
「ま、いつまでも怒ってたってしょうがないしゲームでもするか」
切り替えないとな。
もう終わってしまったことだ。結果は変わらん。怒ってたってしょうがないか。
私は階段を上って部屋に行く。と、そこには父さんと母さんの二人がいた。私の部屋の扉が開かれており、驚いたような顔をしている。
あっ…そういやあの機械、父さんたちに黙って買ったんだった!
「…落ち込んでるところ悪いんだけどアテナ。これは何だい?」
「あっ、え、えっと、ゲーム機?」
「こんなMRIみたいなものが? いくらしたの?」
「ざ、ざっと五百万ちょい…」
そういうと父さんが笑顔になり、一階へ行こうといってきたので私は素直にうなずいた。ちくしょう! いいことがねえぜ!
父さんはちょっと怒っており、親に黙ってこんな高いものを買うんじゃないと言われた。うん、まあ、その通りなんだけどさ。
私は未成人だし親に普通は許可が必要なんだよな。
「言ってくれたら買ってあげたのに。500万か。アテナの口座に入れておこう」
「え、あ、いいよ」
「とかいってもう口座には金はないんだろう。今まで放置してきた分の金と思ってもらっていいぞ」
というので、ありがたく受け取ることにした。
「…あ、その。ありがとう。お父さん大好き」
「…もう一度、言ってもらえる?」
と、父さんは携帯を取り出し始めたので私は部屋に急いで戻る。
「アテナ! お母さんも好きだよね!?」
「今日は感謝してる。大好き」
「パパ! 今日は仕事さぼるわ!」
「ああ、そうだな! 焼肉だ!」
ただ大好きって言っただけだろうが! 恥ずかしい!
こういう反応するからあまり言いたくないんだよ。でも、やっぱ親なんだなぁ。前までちょっと嫌いだったんだけど…。
私はちょっと落ち込んでいた心が晴れるような気がした。
「なに落ち込んでたんだよ私は。馬鹿みたいだな」
よし、心も落ち着いてきたことだし…。
ゲームスタート! 平日の午前中にゲームだなんて背徳感がすごいよね。だってみんなまだ学校だぜ? そんなかゲームって…。
……。
「さすがにミカボシたち待とうかな」
最近、一人行動が多いからな。ハイドだってあれはほとんど一人行動でやったもんで、ミカボシたちと何かをしたことはそれほど多くない気がする。
私はゲームを起動しようとしていた手を止め、本棚にある何度も読んだ小説を手に取る。
ミカボシたちが帰宅する時間まで本でも読んでよう。




