馬車内での決闘
私たちは馬車に乗っている。
馬車は長閑に揺られ、王都までの道を走る。この馬車は特別で普通の馬よりデカイ馬が引っ張るので馬車内も結構広い。まるで電車みたいだった。
「なんつーか、異世界版バスって感じだな」
私はそう笑いながらミカボシを見る。
私たちは王都に向かっていた。
「まだ不機嫌なの? どんだけ歩きたかったの?」
「…だってぇ、歩いて向かうっていうのに憧れてたんだもん」
「こっちのほうが早く着くだろう。帰りは歩きでもいいんだぞ」
「帰りは歩きね!」
「はいはい…」
私たちは王都に向かっている。
窓の外の景色はとても変わりばえはせず、風に揺られる草木、休んでる動物たち。
田舎だなあという感じだ。
私は座りながら窓の外の景色を眺めていると。
その安らぎの気持ちはすぐ崩壊した。
「ミーミル! 危ない!」
と、ミカボシがそう叫んだ。
私は振り向くと男が剣を薙ぐ。私は前屈みになり、躱し、剣を蹴り飛ばす。
「おい、人が休んでるってのに何しやがる」
「…許さねえ」
「…は?」
男はまた剣を取り出す。
乗客は悲鳴を上げていた。
「うるせえ」
と、男は乗客を斬り殺す。うわー、躊躇ねえ。だが、相手はクズだってことが分かったならこちらもやりやすい。
私は闇の二面性を発動させ殴る。が…。
「きかねえなぁ!」
と、私の腕が男の体を突き抜けた。
私は思わず後ろの壁にぶつかり馬車の後ろが壊れ外が丸見えになった。
馬車の御者の人が驚き、急ブレーキがかかる。
「俺は物理攻撃が効かねえんだよぉ…! ふひひ! テメェを殺すために強くなったんだぜ?」
「私なんかした? 記憶にないけど」
少なくともこの男に何かした覚えはない。
「テメェがジキルタイガーなんかをテイムしやがるから…! 俺がテイムするつもりだったのによぉ…」
「…単なる逆恨み?」
「うるせえ! これは正当なる恨みだ!」
いや、早いもん勝ちでしょ。
そう言いたいが聞く耳は持たなさそうだ。物理攻撃が効かない、か。
私は考えていると御者の人が近寄ってくる。
「ちょっと! 喧嘩は…」
「あ?」
男は首に剣を突きつけていた。
御者はビビってしまい何も言わなくなる。
「おい、走らせろ」
「は、はい!」
馬車は再び走り出す。
乗客は前の方に避難し、ミカボシとクシナダが守っている。
私は男と対峙する。物理が効かない、か。私は魔法攻撃は出来ない。つまりこの男には手も足も出ないということだ。
「死ねえ!」
と、剣で切り掛かってきたので私は殴り飛ばす。
私は腕だけ神獣化させ、掴みかかる。神獣化すると、どうやら掴めるようだ。
「なっ…」
「神獣化便利ィ…」
私はこのまま爪で引き裂こうとすると男は左手でナイフを取り出し私の腕に突き刺す。
私は思わず手を離すのだった。
「見くびっていたよ。お前を…」
「そりゃどうも…」
ダメージを受けた。
私は足も神獣化させる。半獣化って感じか。ビーストモードって勝手に呼ぼうかな。
私はビーストモードになり、四つん這いになる。ジキルタイガーに完璧に変身すると小回りが効かなくなるからな…。人間に近いほど小回りが効くということもわかった。
ここは小回りが効かないと落ちるかもしれないからな。
「謝るなら今のうちだぜ?」
「謝らない。俺は悪くない」
「あっそ。私だって悪くない!」
私は床を蹴る。
「俺は学んだ。もう近づけさせない」
取り出してきたのは、パチンコ。
私の腕に鉛玉が当たる。ダメージを受けた。遠距離武器もあんのかよ…!
なら作戦変更! 私はただ突っ切るのみよ!
私は落ちている木片を手にする。
木片を手にし、足を人間に戻して向かっていく。
「はっ! 近づけさせないつったろうが!」
とパチンコを打ってくるので私は木片でそれを弾く。
次々と打ってくるので、私は野球のように弾き返し、とうとう近づいた。
「ぶっ殺してやる!」
私は爪で切り裂いた。
男は私を掴む。そして、ニヤリと笑った。まずい、まさか…。
「まだ生きるのかよぉ! てめえ!」
「俺はもう少しで死ぬ…。体力は0だがスキルのおかげで生き延びてるんだ…。俺だけ死ぬなんてのは嫌なんでなぁ!」
まずい。
男は私を引っ張った。私の体が宙を舞う。いや、落ちている。走っている馬車から突き落とされた。
「ミーミル!」
ミカボシの声が聞こえる。
男は散りとなって消えていく。完全に死んだようだが!
ちぃ、地面にぶつかるか! 走っている馬車から落ちたんだ。死ぬくらいのダメージは覚悟しねえとなぁ…。
南無三!
私は地面に激突した。
地面に体がぶつかり少し転がっていく。ああ、これは死んだな。
体力ゲージが0だ。腕にナイフを受け、パチンコ弾だって受けた。体力は結構減っていたし、素早さ特化だから防御はあまりない。
あとで追いかけるか…。ハイドに乗って。これだったら歩いて行ったほうがまだマシだったな…。




