麻薬…?
始まりの街は戻り、拠点に戻ろうと路地裏を歩いてる時だった。
身なりの汚い男が座り込んでいる。
「あぁ? 何みてんだコラァ…?」
と、のらりと立ち上がる、
身長は高いが、目の焦点がおかしい。ラリってる?
男はいきなり笑い出した。
「うきゃきゃきゃ! てめえも薬が欲しいのかぁ?」
「……」
ヤク中か。
ゲームとはいえこういう表現はいいのだろうか。まあ、たしかに現実でもいないわけじゃないけど…。
私はナイフを構える。
男もナイフを構えた。
「なんだよぉ…その反抗的な目はよぉ…。そういうの見てっと俺、ムカツクんだよなァ…」
「……」
「なんかいえよぉ!」
と、男はナイフを突き刺そうとして突進してくる。
私はナイフをナイフで弾き胸の辺りに突き刺した。男はよろよろと後ずさる。胸の辺りに手をやり、顔色を変えてそのまま倒れた。
「お? なんだ。もう終わってんのか」
と、振り向くとエーデルさんが立っていた。
「襲われて返り討ちにしたんすけど…」
「そうか。この男はなぜ襲ってきたか分かるか?」
「目がラリってたのでクスリかな」
「なるほど、薬物か…。ここ一週間、ここいらで麻薬密売人が横行してるらしくてな。不思議なことにここの路地裏と隣の路地裏くらいにしか被害者はいないんだが…」
「薬物…」
エーデルさんは薬物密売人が誰かは知らなさそうだが心当たりはあるのだろうか。
「麻薬密売人の心当たりとかは?」
「容疑者は三人だ。まず、メリィ・シープ。魔力草を買い占めている。薬の材料は魔力草も少し必要になる。買い占めるのはおかしいからな」
なるほど。買い占めか。
まあ、それは多分私が原因だ。
「メリィ・シープさんは多分大丈夫ですよ。前に羊が魔力草を食べて進化したことがあって私が魔力草を研究してみてはと告げたんです」
「なるほど。人柄的に人に危害を加える奴ではないとわかっていたがそんな理由があったか。わかった」
でもタイミングが悪かったと言うべきか。
「まあいい。二人目はアンドロ。雑貨屋の主人の息子だ。魔力草がないか尋ね回っていたそうだ」
「なるほど。あったことはないな」
「三人目はこの街の領主サマだ。近頃領主がこの街に来ているのを目撃している人が多い」
ふーむ。犯人探しか…。
「ま、この二人には気を付けろってこった。死体は俺らが処理しておくから行っていい」
「あい」
それにしても薬物って怖いっすね。
私は拠点に戻るとなにやら怪しいものを作ってる四人がいた。
ミカボシ、クシナダ、フーとリオン。デカイ釜の前に立ち棒でかき混ぜている。
「…変な煙立ってるぅ」
私は四人に近づく。
「なにしてんの?」
「錬金だ。特別な錬金でな。ノンプレイヤーキャラクターの前でやっちゃいけない錬金だ」
「そう言うのあるんだ」
「プレイヤーは匂いを感じない設定に出来るだろ? 匂いを嗅ぐとやべーんだよ。状態異常:中毒になってな。まあ、魔力草を使ってるからだろうが…」
…ん?
「なあ、その錬金いつからやってる?」
「ああ、そういや今日初めて見せるのか。一週間近く前からだな。たまにやってる」
「すごいんですよ! すごい効果を持ったMP回復薬が…」
「……」
あれ、薬物事件の時期と一致している? まさかな。
いや、でも今日ヤク中に出会ったのはここくる路地裏。ここいらってことだからここら辺で…。
ここくる路地裏と隣の路地裏にしかいない…?
まさか…?
そんな一抹の不安を覚えたので私は外に出て扉を閉める。
私は拠点を出て嗅覚設定をオンにすると、なにやら甘ったるい匂いがしてくる。
私はすぐに鼻を押さえ嗅覚設定を戻す。匂い漏れ出てんじゃねえか!
「おい、今すぐやめろ!」
「なんで?」
「匂いが漏れ出てるんだよ! 処刑人も探してる! やめなきゃダメだ!」
「うそっ!?マジで!?」
ごめんなさい、犯人はコイツらでした。
私が知らなかったんだから分かるわけがない。こんな狭い空間だけでやるからだ。
工房とかそれを用意したらいいんだよ。
「私が襲われたのもお前らが原因じゃねえか!」
これはエーデルさんに説明しないとなあ。




