処刑人!
ハイドは少し考えているようだ。
〈戦いは上手いけどあれ以上は多分伸びないだろうね〉
と、最初に口に出したのはそういう評価。
ま、あれが限界だというのはなんとなく察することができた。
〈ミーミルはスキルを一つしか使ってないしさらに戦いが上手くなったんじゃない? やっぱり才能あるね〉
「私も評価されんの?」
〈さすがはおいらの主! で、合否なんだけど…〉
ハイドが下す判定はどうなんだろうな。クリアしてるといいんだけど。
〈ま、合格でいいんじゃない? おいらと張り合えないのは気に食わないけど人相手なら充分だろうし〉
「そう。私は?」
〈文句なしの合格! もう本気のおいらに数秒たえるくらいには上手い!〉
「前のは本気じゃないんだ」
〈さすがに全力はまだだよ。ミーミルは才能があるから認めたんだ。あのカウンターは見事だったよ。躱されると思ってなかったし。スキルとか何も使ってなかったんでしょ〉
「まあね。あれは反射神経」
あれはなんとなくやばいと思って避けたら攻撃が前に来たので攻撃しただけ。
〈それじゃ、試練は終わり。おいらはもうひと眠りするけどミーミルもする?〉
「いや、私はやることあるし」
〈そっかぁー。じゃ、暇なときまたきて喧嘩か眠ろう〉
そういうとハイドは眠り始めた。
私は神獣化を解く。
「どうだった」
「非常に残念なのですが…」
「やっぱダメでしたか…」
「合格のようです」
「…紛らわしい!」
ハイデルはそういって、手を天に掲げた。
「爺上、これで僕も処刑人として…」
「ああ。名乗ってもいい。しかし…」
エーデルさんは私に近づいてくる。
「手加減してくれたんだろう? ミーミルはまだ力を隠しているな」
「わかる?」
「ああ。経験で何となくな。手加減してミーミルを倒すのがやっとで務まるのだろうか」
「人間相手には充分だよ。ただ、後は経験を積ませるしかないだろうね。とりま、おめっとさん。戻ろうぜ。報酬ももらいたいしな」
「ああ。わかった」
私たちは拠点に戻ることにした。
拠点に戻り、私はエーデルさんと対面する。
胸元からナイフを取り出した。そのナイフは金色に輝いている。二人はそれを見て驚いていた。
「それってNPC特別職のナイフじゃん!」
「ってことは、処刑人になるのか?」
「そうそう。これは私の報酬だからねー」
「唯一だよ。プレイヤーで処刑人って…」
私はナイフを胸のあたりに突き刺した。
ナイフはずぶずぶと私の中に沈んでいく。
《処刑人スキル:死点を手に入れました》
《処刑人に転職しました。爪、グローブは装備不可能、ナイフ、鎌、槍を装備できるようになりました》
《処刑人特別スキル:審美眼を手に入れました》
説明を見ると、死点というのは急所の位置がわかるらしい。そこに攻撃すると必ずクリティカルヒットとなるという。
審美眼は鑑定とほとんど同じスキルのようだ。違いは鑑定は例えば化けたモンスターは見破れないが審美眼は見破れるとかそういったことらしい。
「助かった。これからも悪いことはせず人のためになることをすることだ。俺らはあんたらを手にかけたくないからな」
「そうするよ。返り討ちにするのはいいよね?」
「まあ、それは仕方ないだろう。相手も殺す気ならばこちらも殺す気で行かねばなるまい」
そこらへんがちょっと曖昧だろうが…。
エーデルたちは拠点から出ていった。
「ってことで、処刑人! 私はなりました!」
「くっ…NPC特別職に就けるのは素直に羨ましい…」
「NPC特別職ってこれだけか?」
「いや、他にもあるらしいが今判明してるのはそれだけだ。っていうか今判明しただけなんだが。運営からそういうのはあるから条件を達成してなってみてねと言っていたが…神獣をテイムするのが条件とは。なれないわけだ」
「私もなりたい! 当面はそれ目標ね!」
「目標が次々入れ替わるなぁ…」
ま、楽しければいいんですけどね。




